「よくそんなに長く旅できるね。僕、飽き性だから、3ヶ月もすると旅に飽きちゃうんだよね」と言われることがある。実は私もこの意見には非常に同感。「旅は毎日刺激でいっぱい」と思われがちだけど、案外そういうわけでもないので、やっぱり2ヶ月、3ヶ月もすると正直飽きることだってある。
連載「旅って面白いの?」とは 【毎週水曜更新】 世界一周中の小林圭子さんの旅を通じて生き方を考える、現在進行形の体験エッセイ。大企業「楽天」を辞め、憧れの世界一周に飛び出した。しかし、待っていたのは「あれ? 意外に楽しくない…」期待はずれな現実。アラサー新米バックパッカーの2年間ひとり世界一周。がんばれ、小林けいちゃん! はたして彼女は世界の人々との出会いを通して、旅や人生の楽しみ方に気づいていくことができるのか。 |
第28話 久しぶりの学園生活スタート! 目指すは旅人マッサージ師!? 〈タイ〉
TEXT & PHOTO 小林圭子
旅を長く続けるコツは
イベントを挟むこと
なんでもメリハリが大事です
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これまでの旅を振り返ってみると、初っ端のフィリピン英語留学(6週間)を皮切りに、オーストラリアでのアドベンチャーツアー(10日間)、タイのコースコーン島でのボランティア活動(2週間)、カンボジアでのヨガリトリート(6日間)、と、いろんなイベントを旅に織り交ぜながら進んできた。それ以外のときは、時折、現地に住む友人・知人を訪ねるなどしながらも、基本的にはひとりであっちへ行き、こっちへ行きしているわけで、そう考えると、意識的にか無意識的にか、なんとなく自分の旅はメリハリがあるなぁ… なんて。
ひとり行動と集団行動。短期でサクサクッとまわることもあれば、少し長めに滞在してゆっくりその土地に腰をおろすこともある。あまりスタンスを決めこまずに、そのときの気分とやりたいことに応じて、自由にスタイルを変えるのが自分には合ってるんだろうな、と思う。そのおかげで、「あー、やっぱり集団行動、苦手だわ… 」と、わかっていたくせに無駄にへこんだり、いろいろ反省させれらることも多いけれど…(まぁ、そういうのもたまには大事なのかな、と…苦笑)。
そして、なぜメリハリがあった方が良いかと言うと、時々、
「よくそんなに長く旅できるね。僕、飽き性だから、3ヶ月もすると旅に飽きちゃうんだよね」
と言われることがある。実は私もこの意見には非常に同感。「旅は毎日刺激でいっぱい」と思われがちだけど、案外そういうわけでもないので、やっぱり2ヶ月、3ヶ月もすると正直飽きることだってある。そんなちょっとテンションがやや下がり気味になったときに、こういうイベントを挟むことは、気分転換にもなるし、普段の旅とはまた違った面白みや刺激を与えてくれるので、それこそ人一倍飽きっぽい私が、長く旅を続られているコツなのかもしれない。
次のイベントはタイ式マッサージ!
学校選びで重要視した3つのポイント
そんなイベント好きな私が次に選んだのが、チェンマイでタイ古式マッサージの学校に通うこと。これはもともと初めから計画していたわけではなく、直前までいた中国で、ゲストハウスで知り合った日本人女性から教えてもらったのがきっかけだった。彼女も旅の途中でチェンマイを訪れた際、1週間ほどマッサージを習ったらしく、「すごく楽しかったから、もし興味があるなら行ってみたら?」と勧めてくれた。1週間から習えるなら気軽だし、ネタとしても良いかもしれない(大阪人としてはすぐにネタになるかを考えてしまう… 笑)。ちょっとやってみようかな、と、単純な私はすぐその気になり、早速調べてみた。ところが…
「思ったよりいっぱいあるな… 」
検索してみると、たくさんのマッサージ学校が出てきた。日本人に人気のところや、欧米人がたくさんいるところ。大きくてしっかりカリキュラムがあるところもあれば、こじんまりと生徒のレベルに合わせてマンツーマンで教えるところ、などなど、なかなか多様性に富んでいる。そもそも何も知らずに学校に行こうと思ったのも、今思えば恥ずかしいくらいなんだけど、大きく分けて「バンコク式」と「チェンマイ式」があるということも、このとき初めて知った(両者は技の数もスタイルも異なり、チェンマイ式の方が、ストレッチの要素を多く取り入れている… らしい… 笑)。
「さて、どの学校に行こうかな… 」
さっきまで「気軽に… 」なんて思っていたにも関わらず、こうなってくると、学校選びの段階でだんだん本気になってきた。せっかく行くからには自分に合っていて、楽しめそうなところに行きたい。そうやっていくつかの学校をピックアップして、比べに比べて、散々悩んで最終的に申し込む学校をひとつに絞った。
決め手になったのは、まずは、「授業に日本語通訳が入るかどうか」。タイ人の先生が教えてくれるのはもちろん大歓迎だけど、全部タイ語のため全く言ってることがわからないとさすがに厳しい。かと言って、全て英語で説明されても細かいところまでは理解できない。ちゃんとコミュニケーションが取れるかどうかはかなり大事だと思った。
次に、「初心者でもOKかどうか」。行ったは良いけれど、私以外、全員プロのマッサージ師、もしくは「経験者のみ歓迎」みたいなところだと、始めからつまずく可能性が大きい。他の受講生の人たちと和気藹々楽しみたいのに、自分だけ授業についていけず、毎日泣きながら居残り練習… なんて、想像しただけで嫌気がさしてくる。根性無しの私のことだから、途中で「あれ、なんでマッサージなんかやってるんだっけ? つまんないし、もうやーめた! 」なんてことにもなりかねない。何も知らない素人にもイチから丁寧に教えてくれることもかなり重要なポイントだった。
そして最後に、「コースの多様さ」。はじめは1週間くらいでちょっとかじってみよう、くらいに思ってたくせに、いろいろ見ているとだんだん欲が出てきて、「タイ古式だけじゃなくて、オイルマッサージもやってみたいな。おっと、フットリフレクソロジーも良いかも… 」なんて、これまた何がどういうものか、なんてことはぼんやりとしかわかっていないにも関わらず、どれもこれも面白そうに思えてきた。そして結局、そんな欲張りな私が申し込んだのは、タイ古式・オイル・フットリフレと、さらにルーシーダットン(タイ式ヨガ)の4つがセットになった1ヶ月のコースだった。こんなことをやっているから旅がなかなか進まないし、お金もどんどん減っていくんだとわかっているんだけど… ね(苦笑)。
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たくさんの生徒さんに囲まれて
ドキドキ半分びくびく半分(笑)
みんなの受講理由は何だろう?
そして、いよいよ入学初日。「これからどんな1ヶ月が始まるんだろう」と、ドキドキしながら朝を迎えた。
この学校はチェンマイのマッサージ学校にしては珍しく全寮制で、生徒は授業だけじゃなく、寝食の時間も共に過ごす。チェンマイ特有のスローな空気感はあるものの、基本的には朝から夕方まで決められたとおりに1日のスケジュールが流れていく。そう、つまりはバリバリの団体行動。協調性のない私としては、あんまり得意じゃないやつ。それだけでも若干不安があるのに、更に思っていたよりも生徒の数が多かった。同じタイミングで入学した同期メンバーだけでも20人以上。どうやら時期的に一番多い時期らしい(朝晩は涼しくて過ごしやすいし、ちょうどロイクラトン祭に合わせて来る人が多いから… かな? )。
あたりを見回してみると、9割以上女性で、20代前半のピチピチギャルも多い。「おぉ…、まずい…。うまくやっていけるかな… 」ピチピチ感ゼロの私に、早くも臆病風が吹き始める。友達同士で参加している人も何組かいた。全員がまったく初対面で「はじめまして」の状態ならまだしも、既にできあがっている輪の中に入っていくのは、もともとちょっと苦手。「うーん、まぁ悩んでも仕方ない。焦らず、ゆっくり馴染んでいこう」と、無理せずマイペースでやっていくことに決めた。
ところで、私は勢いで入学を決めてしまったけれど、まわりの生徒さんの受講理由で多かったのは、「日本でエステやマッサージの仕事をもともとしていて、勉強のために、もしくは、新たな技を習得するために」というものや、「作業療法士の仕事をしていて、マッサージの技術を仕事に取り入れたい」というもの。また、「これまでマッサージの仕事はしたことないけれど、帰国してからマッサージの仕事に就きたいから」という人も結構いた。中には「もともと以前から興味があって」とか、「マッサージを受けるのが好きだから、逆に自分でもちょっとやってみたくなって」というような、趣味が高じて、みたいな人も何割かはいたけれど、私のように「旅の途中でちょっとふらっと寄ってみました」という人はさすがにいなかった(笑)。わざわざ日本からこのためにみんな来ているわけだから、それなりに本気度が高いんだろうな、という印象を受けた。さてと、私もマジメにやらねば…。
寮に食事にアクティビティに…
魅力的なのは授業だけじゃなかったよ!
また、学校が全寮制にしているのには、おそらく地理的な理由も大きいんじゃないかと思った。というのも、この学校はチェンマイの市街地から少し離れたところにあり、車で30分くらいかかってしまうという、なかなか長閑な場所にあったから。周りに宿泊できるような施設はないし、毎日朝早くから30分かけて通学するのも大変だし、寮を用意してもらった方が参加する側としてもラクでありがたかった(しかも部屋はぬくもりを感じる木の部屋で、とてもキレイで居心地が良かった)。
そんな辺鄙な場所にあったから、食事については、朝ごはんと昼ごはんが毎日準備されていた。これがまた本当においしくて、タイ料理として定番のパッタイやカオマンガイ、カオソーイなどをはじめ、毎日、日替わりでいろんな料理が出てくるものだから、午前中の授業では「今日のお昼ごはんは何かなー? 」なんて毎日そればっかり考えていたほど(笑)。
さらに、学校ではいろんなアクティビティも用意されていて、週末になると、「エレファントキャンプ」に行ったり、ちょっと変わったものだと、「ミャンマーやラオスへの国境越えツアー」や、「モン族に会いに行くツアー」なんてのもあった。また、サタデーマーケットやサンデーマーケットも週末の夜には市街地で開催されているので、そうなってくると、朝から晩までイベントが目白押しなわけで…(笑)。平日はしっかり勉強して、週末は目一杯楽しもう、という流れが、みんなの中ですぐにできあがっていた。
そして、肝心の授業は… と言うと、やはり人数が多かったため、どのコースも2つか3つのクラスに分かれておこなわれた。1クラス10人前後のちょうど良い人数で学ぶことができたし、どの先生も教えるのがとても上手で、初心者のレベルに合わせて丁寧に説明してくれた。特に私がいたクラスは初心者が多かったからか、のびのび和気藹々とした雰囲気で、当初「ついていけなかったらどうしよう… 」なんて心配していたことも忘れてしまうほどだった。
こんな感じで順調に滑り出した学校生活だったけれど、まさかこの後、自分の身にいろんな事件が巻き起こることになるとは、このときはまだ知る由もなかった。(了)
【写真でふりかえる タイ 】
(次回もお楽しみに。毎週水曜更新目標です 旅の状況によりズレることもございます… )
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連載バックナンバー
第1話 世界一周、ふたを開けたらため息ばかり(2014.10.8)
第2話 旅は準備が一番楽しい。出発までの10ヶ月なにをしたか(2014.10.22)
第3話 ダメでもともと、初めての協賛(2014.11.5)
第4話 出発まで5日。ついに協賛決定!(2014.11.19)
第5話 最初の国の選び方。わたしの世界一周はフィリピンから(2014.12.03)
第6話 カスタマイズ自由が魅力のフィリピン留学(2014.12.17)
第7話 出国していきなりの緊急入院で知った、フィリピン人の優しさと健康に旅を続けていくことの難しさ(2014.12.31)
第8話 世界の中心でハマったいきなりの落とし穴 。負のスパイラルに突入だ!【オーストラリア】(2015.1.14)
第9話 いきなり挑むには、その存在はあまりにも大きすぎた! こんなに思い通りに進まないなんて…【オーストラリア】(2015.1.21)
第10話 いざ、バリ島兄貴の家へ!まさか毎晩へこみながら眠ることになるなんて…【インドネシア】(2015.1.28)
第11話 今すぐ先入観や思い込みを捨てよう! 自分で見たものこそが真実になるということ<インドネシア>(2015.2.4)
第12話 心の感度が鈍けりゃ、人を見る目も曇る。長距離バスでの苦い出会い 〈マレーシア〉 (2015.2.11)
第13話 海外に飛び出すジャパニーズの姿から見えてくる未来 〈マレーシア〉(2015.2.18)
第14話 欲しい答えは一冊の本の中にあった!「旅にも年齢がある」という事実 〈マレーシア / タイ〉(2015.2.25)
第15話 ボランティアで試練、身も心もフルパワーで勝負だ! 〈タイ / ワークキャンプ前編〉(2015.3.4)
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第17話 目の前に広がる青空が教えてくれた、全てに終わりはあるということ 〈カンボジア〉(2015.3.18)
第18話 偶然か必然か? 新しい世界の扉を開くとき 〈カンボジア〉(2015.3.26)
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第21話 強面のおじさんが教えてくれた「自立」と「選択」の重要性 〈ベトナム〉(2015.4.16)
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第27話 3人のケイコの運命的な出会い 〜年上女性から学んだ自分らしい生き方とは〜 〈タイ〉(2015.7.8)
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小林圭子さんが世界一周に出るまでの話
『一身上の都合』 小林圭子さんの場合「次なるステージへ挑戦するため」(2014.5.19)