継続のリテラシー【第5話】 諦めたらそこで試合終了か? / 若杉アキラ

waka_f書店で初めて自分の本を見つけたときの感激は、絶対に忘れません。『メモの魔力』や『バカとつき合うな』など、自分も読んだことのある本たちと一緒に平積みにされてました。まさかの光景ですよね。文章を書き始めて2年半。何度も書くことを諦め
連載「継続のリテラシー」とは  【毎月25日更新】
「続けること」に特別な能力(リテラシー)は必要なのでしょうか。若杉アキラさんは「自分の本をつくる方法」を受講するまで、日常的に文章を書く習慣はなく、書くことに苦手意識もあったと言います。しかし、2017年1月の講義終了後すぐにブログを立ち上げ、書くことを継続させます。そして受講から2年半後の2019年6月、はじめての出版を実現させました。週1ペースでブログをコツコツと更新するなど、出版に向けてやるべきことを着々と進めていった若杉さんに、「続けること」をテーマに出版までの道のりを振り返ってもらいます。

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 第5話   諦めたらそこで試合終了か?

                   TEXT :  若杉アキラ                      


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 必殺、アクションレコード!

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2019年1月、週1ブログを続けて丸2年。

本の執筆がスタートしました。原稿の〆切は3月末、逆算して1日3・4ページずつ書き続けていく作戦です。そこで私は、アクションレコードをつけることにしました。

アクションレコードとは、「行動記録」のことです。…えっ、それなら行動記録と言ってくれ、と言われるくらい継続の必殺技ともいえる方法です。ダイエットや試験勉強でも「記録をつけると続きやすい」って言われますよね。

話を元に戻すと、私は原稿の〆切に向けて、部屋の大きなカレンダーにアクションレコード改め、「行動記録」をつけていくことにしました。

記録をつけはじめると、「良い記録をつけたい」って思いますよね。「記録をつけるから、やらなければ」と行動への義務感も生まれますが、どちらにしても行動は続くので、何かを続けたい人は記録をつけると続けやすくなります。

「でも面倒くさい」っておもう人もいるでしょう。実は、私もそれで三日坊主になるときがあります。細かく記録付けするのは面倒です。なので、「続けるための記録付け」は簡単にできる環境をつくることがポイントです。

私の場合、部屋の大きなカレンダーに、「〆切まで何日で何ページ書く」という2つの数値を書き込むだけにしたので、5秒あれば十分です。これが30秒だったら嫌になっていたかもしれませんが、5秒なら自分にとっては面倒にならなかったのです。

 

「続けるための記録付け」につかった部屋の大きなカレンダー

「続けるための記録付け」につかった部屋の大きなカレンダー

 

 

 「義務感と環境」でマネジメント

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「記録をつけると続けやすいのは分かった。でも自分には合わない」という人もいるでしょう。

そう、合わなくてもいいんです。そもそも誰にでも合う方法なんてありませんから。そんな方法があれば、「続かない…」と悩む人もいないわけで、「継続」や「習慣」をテーマにした本が毎年のように出版されることもないでしょう。私自身、続けられたり、続けられなかったり、どうすれば続けられるか模索しています。

でも結局は今この瞬間、「好き、楽しい、やりたくてしかたがない」っていう超前のめりな行動意外は、「続けたい行動」を「義務感と環境」でマネジメントする方法に行き着きます。

私の例で言うと、本を書くためにお金を払って学び始めました。ケチかケチじゃないかと言われればケチな私は、「元を取るために頑張ろう」と続けたくなる環境をつくり、仲間にブログを更新するからと言った手前、「更新しなければ」と義務感を自分に持たすことで、「ブログを書く」行動を続けることができました。

お金に無頓着な人や宣言で義務感なんて湧かないっていう人もいるでしょう。なので、「義務感と環境」をどう使うかは人それぞれ違う。

「自分は何に義務感を持つか」
「自分はどんな環境だと続けたくなるか」
「その義務感と環境は自分にどれくらい必要か」

こうした問いを立て、自分を知ることです。どんな条件がそろうと、自分の行動は続くのか。その条件をそろえる能力こそ、「継続のリテラシー」ではないでしょうか。

 

何度諦めても、また始めればいい

何度諦めても、また始めればいい

 

 101回目のリスタート 

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〆切まで残り1ヶ月。

「もう絶対に間に合わない。〆切を延ばしてもらうしかない…」

予定では7、8割書き上げているはずが、進捗は5割を下回っていました。インフルエンザにかかり1週間ダウンしたこと。仕事のトラブル対応に追われ、思うように執筆が進まなくなってしまったこと。書けない理由(完璧な言い訳)はたくさんありました。

「〆切を延ばしてください」と、編集者さんに送るメールをつくり、あとは送信ボタンを押すだけ…なのに、どうしても押すことはできず…。メールも送らず、原稿も書かず、その日はとにかく寝ることにしました。

翌朝、メールを送ろうか悩みましたが、「とりあえず、やれるところまでやってみよう」と執筆を再開しました。思い返せば、初めて2000字のエッセイを書いたときも、週1ブログの更新も、何度も何度も諦めて、何度も何度も再開しているのです。

「もうムリ」「自分にはできない」っていう時は、できない理由が山のように出てきます。「気合だ」「根性だ」「もっと頑張れ」という人もいるかと思いますが、私にはムリです。

「もうムリ」「自分にはできない」と精神的に追い込まれたときは諦める。諦めて、「できない理由」「したくない理由」をすべて吐き出す(吐くといっても本当に吐いちゃダメで、ペンやキーボードを使って何かに書き出すということです、念のため…)。

でも諦めたことは人に言わない、まだナイショ。とりあえず寝て忘れる。

諦めるのは、「もうクリアできない…」とゲームのリセットボタンを押すような感覚です。「このクソゲーが!!」と怒ってやめたゲームを何度も再開したことがあるのは私だけではないでしょう。そう考えると、自分が本当に続けたいことは、必ず再開します。

何度諦めても、また始めれば、それは続けているのと同じです。諦めてもそこで試合終了にはなりません。まだ試合時間は残っているからです。100回諦めても、101回目のリスタートを切れば、何度だってチャレンジすることができるのです。

何かをやめることで、何かを続けることができる

何かをやめることで、何かを続けることができる

 

 やめ時はいつか?

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2019年3月、週1ブログを続けて2年3ヶ月。

1つの決断をしました。

週1ブログの更新をやめたのです。本の執筆と並行して続けてきましたが、正直キツかった…。でも更新を宣言していたから、やめたくなかった。しかし、いよいよ〆切日が迫ってきてどうしようもなくなり、本の執筆を優先することに決めました。

「読者に申し訳ない」「有言不実行だ」と罪悪感もありました。しかし、よくよく考えてみるとブログの目的は、本を書くための練習です。練習のために本番が疎かになっては本末転倒。ブログは本を書くために力をつける手段であって、目的ではない。それがいつの間にか自分で用意した義務感や環境に縛られ、やめ時を見失っていたのです。

続けることは目的ではなく手段です。継続してきたこと、習慣にしてきたこと、積み上げてきたものがあったとしても、それ自体が目的ではない。

やめ時を見極めることも、続けるためには必要です。なぜなら、何かをやめることで、何かを続けることができるからです。

書店で平積みになった自分の本『捨てる時間術』

書店で平積みになった自分の本『捨てる時間術』

 

 連載「継続のリテラシー」のおわりに

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2019年6月、拙著『捨てる時間術』が出版されました。

書店で初めて自分の本を見つけたときの感激は、絶対に忘れません。『メモの魔力』や『バカとつき合うな』など、自分も読んだことのある本たちと一緒に平積みにされてました。まさか…の光景ですよね。

文章を書き始めて2年半。何度も書くことを諦めて、その度に「文章はやめて他の表現方法を見つけよう」と現実逃避しましたが、「やっぱり書きたい」と心に突き動かされてまた書き始めるわけです。

書くのは苦しい、本当に苦しい。でも、その苦しいところで終わりにしてしまったら、その先にある喜びや楽しさを感じることはできない。だから書く、書き続ける。でも苦しくて投げ出したくなるときもある。そんなとき考える…。

「自分は、どんなとき行動したくなるか」
「自分は、どんなとき行動したくないか」

…また今日も考え、とにかくやってみる。「初めて」「諦めて」「また始めて」その繰り返しが結果として、続いていく。「続けること」に特別な能力は必要ないのです。

連載「継続のリテラシー」は、これで終わります。

これまでお読みいただき、本当にありがとうございました!

2020年も皆さまにとってステキな年になりますように。

 

 

 

 

若杉アキラさんへの感想をお待ちしています 編集部まで

 

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  若杉アキラさんの著書『捨てる時間術』 

若杉アキラ「捨てる時間術」

最適な「人生のペース」が見つかる 捨てる時間術 
若杉アキラ著(日本実業出版社刊)

ムダを手放せば、自由な時間が手に入る! 「毎日やるべきことに追われて時間がない」こうした時間についての悩みを抱える人は、気づかないうちに「他人のペース」に振り回されて、「自分のペース」を見失ってしまっているかもしれません。最適な「自分のペース」を見つけ、自由な時間を手に入れるためには「ムダを捨てる」ことが必要です。70のちょっとしたコツで、「時間のミニマル化」が実践でき、心も体もラクになります。購入は全国の主要書店かこちらにて。

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若杉アキラ韓国版「捨てる時間術」

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連載バックナンバー【全5話】

第1話 「好き」と「嫌い」と上手に付き合う
第2話 「お金」「仲間」「プライド」
第3話 「目標の階段」をつくる
第4話 「何をするか」より「誰とするか」

 過去の若杉アキラさんの執筆エッセイ 

TOOLS 93 起業すれば自由になれるのか?

TOOLS 97 廃業寸前、見栄もプライドも捨て去って見えた景色
TOOLS 100 今だから言える、寂しさの正体
TOOLS 102 好きなことの本質に気づく方法
TOOLS 105 初めて個展をひらきたくなった日に読む話



若杉アキラ

若杉アキラ

時間ミニマリスト/週3起業家/シニア不動産コンサルタント。1983年生まれ、妻と娘ふたりの4人家族。会社員時代、終電帰り、サービス残業、週90時間労働の疲労と心労がたたり体調を崩す。27歳で不動産会社を起こすも週7日労働で時間に追われる。「忙しさに振り回される人生から抜け出そう」と奮起し、時間のミニマル化を実践。現在、週3日だけ働き、「歳をとっても安心して借りられる住まいの提供」をモットーに、シニア不動産事業を展開し、県や地域からの信頼も厚い。また、iPhone写真家として、日常をテーマに作品提供や個展開催を定期的に行っている。 Instagramは @akira_wk