継続のリテラシー【第2話】 「お金」「仲間」「プライド」 / 若杉アキラ

waka_f心を動かされる本に出会うたびに「いつか本を書いてみたい」と思いながら、結局なにも行動せず。10年という月日が流れていきました。その間、企画書を作ることはもちろん、ブログを書くことすらありませんでした。
このままでは10年後も
連載「継続のリテラシー」とは  【毎月25日更新】
「続けること」に特別な能力(リテラシー)は必要なのでしょうか。若杉アキラさんは「自分の本をつくる方法」を受講するまで、日常的に文章を書く習慣はなく、書くことに苦手意識もあったと言います。しかし、2017年1月の講義終了後すぐにブログを立ち上げ、書くことを継続させます。そして受講から2年半後の2019年6月、はじめての出版を実現させました。週1ペースでブログをコツコツと更新するなど、出版に向けてやるべきことを着々と進めていった若杉さんに、「続けること」をテーマに出版までの道のりを振り返ってもらいます。

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 第2話  「お金」「仲間」「プライド」

                   TEXT :  若杉アキラ                      


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 本を書くきっかけ 

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1冊の本には、読者の人生を変える力があります。

当時23歳、飲食店の厨房で働き、週90時間労働の毎日、朝晩の満員電車にゆられながら高橋歩さんの本を、何度も読み返していた私もその1人です。

「自分の店を持つためには何年も修行が必要だ」と考えていた私にとって、著者が20歳で店を持つまでの考え方や体験談・生き方を知れたことは、その後、人生を軌道修正していく大きなターニングポイントになりました。

「本ってすごいなぁ。著者ってすごいなぁ。カッコイイなぁ」

“自分もいつか本を書いてみたい” と憧れを抱きました。いまから13年前の話です。

以後、心を動かされる本に出会うたびに、「いつか本を書いてみたい」と思いながら、結局なにも行動せず、10年という月日が流れていきました。

 

私の人生を変えた高橋歩さんの作品

私の人生を変えた高橋歩さんの作品

 

 お金を払うと続きやすい 

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出版に向けて動き出したのは3年前。33歳のころです。

「いつか本を書いてみたい」と口にして10年…

その間、企画書を作ることはもちろん、ブログを書くことすらありませんでした。このままでは10年後も20年後も同じことを言い続けている気がしました。

こういう人、よく飲み会で見かけませんか?

「英語を勉強しようと思っている」「独立しようと思っている」など、「〇〇しようと思っている」と言っていつまでも行動せず、毎回同じ話ばかりする人。

もちろん人それぞれ事情がありますから、他人がとやかく言う話ではないでしょう。ただ個人的には、行動する人の話を聞くほうが好きなので、自分も行動する人でありたいと思っています。

25歳で飲食から不動産に転職、27歳で起業、32歳で写真展をひらきましたが、最初から不動産の知識や起業の方法を知っていたわけでも、写真展をひらく人だったわけでもありません。最初はいつもド素人、無知な自分にお金を払い投資して、行動しながら学んできました。

具体的には、飲食から不動産に転職するときはお金を払いマネースクールに通いながら不動産投資をはじめ、起業は手持ち資金で事業をはじめ日々の運営から学び、写真展はギャラリーを予約してお金を払ってから準備をはじめました。

「できるか分からないことにお金を払うのは心配」という意見もあるでしょう。

たしかに、損する可能性があることにお金を払うのは不安です。お金を払うと「元を取りたい」「損したくない」という気持ちになりますよね。

「コンコルド効果」という言葉を聞いたことありませんか?

「コンコルド効果」とは、ある対象への金銭的・精神的・時間的投資を続けることが損失につながるとわかっているにもかかわらず、それまでの投資を惜しみ、投資がやめられない心理現象のことです。

「お金を払い損するとわかっていてもやめられない」って病的ですよね。

でも別の見方をすれば、自分のやりたいことにお金を払うことで、「せっかくお金を払ったのだから続けよう」と、行動し続ける動機になります。

そこで私は、お金を払い本のつくり方を学ぶことにしました。2016年の年末から2017年の年明け、自由大学の「自分の本をつくる方法」という出版講義に参加することにしたのです。

 

 

 仲間がいると続きやすい 

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師走のよく晴れた朝、表参道にある小さな教室で講義は始まりました。

10人の同期メンバーと年末年始の長期休みをつかった集中講座。世間が年越しモードでのんびり浮かれているところ、学ぶために集まった同期の仲間は超個性派ぞろい、良い意味で普通じゃないステキな変人の集まりでした。ふだん1人で仕事をすることが多い私にとって、こうした仲間と切磋琢磨できることは本当にうれしく特別な時間です。

書くことをスタートして約2年半、いまあらためて思うのは、「1人でやらなくて良かった」ということです。1人だったらとうの昔に挫折していました。

最初のピンチは講義で人生初のエッセイを書いたときです。

目安は2000字。

正直、講義を受けるまで2000字なんて書いたことありません。

全然書けなくて何度も諦めかけた(いや、何度も諦めていた…)のですが、「一緒に出版しよう」と励ましあった仲間のことを思うと、「まだ諦めたくない」と踏み留まり、人生初のエッセイを書き上げることができました。

「仲間がいるから続けられた」

そんな経験はありませんか?

「んっ? ピンッとこない?」

では別の見方をしてみましょう。

「会社をやめられない」という人生相談を聞くと、「自分がいないと仕事がまわらないから」という理由で、会社に踏み止まっている人も少なくありません。仲間に迷惑をかけたくないからです。

多くの人は「仲間に迷惑をかけたくない」「がっかりさせたくない」という気持ちを持っています。「仲間の期待に応えたい」という欲求が、行動を続ける動機になっているのです。

しかし、その気持ちに引っ張られすぎて、自分のやりたいことができないのは本末転倒。仲間とは、「自分のやりたいことを応援してくれる人」「切磋琢磨できる人」のことです。

こうした仲間の期待に応えようとする気持ちが、自分の諦める心に、「待った!」をかけて、行動を続けさせてくれます。

 

自由大学「自分の本をつくる方法」に参加

自由大学「自分の本をつくる方法」に参加


 プライドを賭けると続きやすい 

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「週1で2000字のブログを書きます」

講義の最後に、同期の仲間と教授の深井次郎さんの前で、宣言しました。

宣言することで自分にプレッシャーを与え、「有言実行したい」という自分のプライドを賭けて、書くことに向き合っていこうと思ったのです。「口だけの人」なんて言われたくないですよね。

もちろん「宣言」しなければ、口だけの人になることはありませんが、「宣言」しなければプレッシャーを自分の力に変えることはできません。怠け者の私が行動し続けるためには、自分のプライドを賭け、「口だけの人」になりたくないというプレッシャーを自分に与える必要がありました。

そこでブログ開設と書くことの継続を宣言したのです。

こうして講義が終わった翌週にブログをはじめ、今年の3月まで約2年3ヶ月に及ぶ、「毎週水曜よる9時更新」の執筆生活をスタートさせました。

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第2話はここまで。

次回は、1円の収入にもならないブログに、仕事以上の時間と労力をかけた執筆生活を振り返っていきます。

本日も、お読みいただきありがとうございました。

 

(次回もお楽しみに。毎月25日更新予定です) =ー

 

若杉アキラさんへの感想をお待ちしています 編集部まで

 

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若杉アキラ

若杉アキラ

時間ミニマリスト/週3起業家/シニア不動産コンサルタント。1983年生まれ、妻と娘ふたりの4人家族。会社員時代、終電帰り、サービス残業、週90時間労働の疲労と心労がたたり体調を崩す。27歳で不動産会社を起こすも週7日労働で時間に追われる。「忙しさに振り回される人生から抜け出そう」と奮起し、時間のミニマル化を実践。現在、週3日だけ働き、「歳をとっても安心して借りられる住まいの提供」をモットーに、シニア不動産事業を展開し、県や地域からの信頼も厚い。また、iPhone写真家として、日常をテーマに作品提供や個展開催を定期的に行っている。 Instagramは @akira_wk