TOOLS 125 謎の独立国家ソマリランドで身を守る方法 / 武原真彦(臆病な冒険家)

ガイドさん(左)と観光地の警備スタッフ(右)

恐怖心と好奇心のせめぎ合いに翻弄されながらも、臆病キャラ払拭のためにソマリランド行きを決めました。その後、自分で手配しなければならない航空券の購入をビビって先延ばしにしていたら、満席になってしまい、旅行会社に出発を半年遅らせてもらったのは内緒です。

謎の独立国家ソマリランドで身を守る方法
武原 真彦 ( 臆病な冒険家 )


自由に生きるために 
予想を超える国に順応しよう

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「どんなに頑張っても、旅のリスクはゼロにはなりません。それは人生においても同じだと気付くことができました。恐い… と身がすくむことも多いですが、これからもたくさんの未経験に挑戦していきたいです」

前回の最後はちょっと偉そうな感じになってしまいました…。口だけになってはいけないので、今回は過去1年以内に行なった挑戦の中で最も大変だったソマリランド旅行のエピソードとそこから得た教訓をお伝えします。

 

ソマリランドとは?

ソマリアは聞いたことがあるような気がするけど、ソマリランドは聞いたことが無いという方が多いかもしれません。ソマリランドはソマリアの北部に位置する自称の独立国家です。リアル北斗の拳や世界最恐国と呼ばれる南部ソマリアとは対照的に治安はとてもいいと言われています。

たまたまイギリスの旅行会社が現地ガイドの手配をしてくれることを知り、恐怖心と好奇心のせめぎ合いに翻弄されながらも、臆病キャラ払拭のためにソマリランド行きを決めました! その後、自分で手配しなければならない航空券の購入をビビって先延ばしにしていたら、満席になってしまい、旅行会社に出発を半年遅らせてもらったのは内緒です。

海も山もあり、意外に自然豊かな面も

海も山もあり、意外に自然豊かな面も

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ガイドが来ない!?

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今回の旅行では、いつもよりもガイドの重要性が増します。ソマリランドを含めたソマリアには日本大使館が無く、ケニアの大使館がソマリアも管轄しています。何かあってもすぐに助けが来なさそうです。そもそも日本とソマリランドは国交がないので、助けに来てくれるかどうかも微妙……。

というわけで、トラブルの際はほぼ100%ガイドに頼らざるを得ません。なのに、僕のガイドは時間にルーズ! ソマリランドに到着した日の晩、

「明日は9時に迎えに来るから、ホテルのロビーで待ってて」

と言うので、9時少し前からロビーで待っていました。しかし、9時半を過ぎても一向に現れません。ここがヨーロッパのどこかならまだしも、ソマリランドに一人置き去りにされてはたまったものではありません。慌ててホテルのスタッフに頼んで、旅行社の緊急連絡先に電話をしてもらいましたが、繋がりませんでした。絶望感に打ちひしがれながらロビーのソファに座りこみ、これからどうしようかあれこれ考えを巡らせていると、10時をちょっと過ぎたころやっとガイドが登場。

「え!? 9時って言ってた? ごめん、10時の間違いだよ」だって。

ちなみに彼、今回の旅行の前半で訪れた港町で家族へのお土産に新鮮な魚を大量に購入していました。家に帰って魚の入ったバケツを車から下ろすときに中の水を車内にこぼしてしまったそうで、翌日から車内がめちゃくちゃ生臭くなっててつらかったです……。

ガイドさん(左)と観光地の警備スタッフ(右)

ガイドさん(左)と観光地の警備スタッフ(右)

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ホテルの水回りトラブル

 

初日に利用したホテルでの出来事です。トイレに行こうと思ったら、水が流れず、シャワーも出ませんでした。フロントに言いに行くと、「すぐに修理のものを向かわせます」と頼りがいのある返事。しかし、いくら待っても修理に来ません。再びフロントに行くと、

「ごめん、忘れてた。すぐ行くから部屋で待ってて」と。

今度はすぐに修理の人が来たものの、

「今、別の部屋を修理しているので、もうしばらく待って頂けないだろうか?」

と言います。あまりに申し訳なさそうだったので、了承しました。結局、一晩修理されず、翌朝チェックアウトすることに…。

後日、再びこのホテルを利用することになったので、部屋に入ってすぐに水回りをチェック! シャワーは出るものの、トイレは流れず。またまたフロントにクレームを言いに行くことに。なんと今回はスタッフがそのままついて来てくれました。どうやら元栓がしまっていたらしく、無事解決。安心して、部屋で仮眠を取ることにしました。

夕方に目が覚めて、シャワーを浴びようとバスルームへ入ると、なんと床が水浸し! トイレの配管が破損していて、水が少しずつ滴り落ちていたのです。再びフロントへ。最終的に部屋を変えてもらうことができました。ホテルで落ち着くのにも一苦労でした。

ホテルからの景色

ホテルからの景色

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ハエに囲まれる食堂

 

車で次の目的地へ向かう途中、ローカルな雰囲気の食堂で昼食を取ることに。地元の人達でかなり賑わっています。期待して店内に入ると、度肝を抜かれました。おびただしい数のハエ、ハエ、ハエ…。深呼吸したら、鼻の穴にハエが詰まるんじゃないかってほどに飛び回っています。ただ、ガイド達は何食わぬ顔で席についたので、僕も彼らの後について着席。

運ばれてきたのは謎肉とピラフ風のご飯。ハエを払いのけながら、おそるおそる口に運んでみると、意外においしい! シンプルな味付けながらも旨味が効いています。ここに限らず、ソマリランドの食事はどこもおいしかったです。

ちなみにソマリランドでは、手づかみで食事をします。僕は以前にスリランカ料理教室へ行った時に手づかみでの食事法を聞いていたので、スムーズに食事することができました。それを見た護衛の兵士が意外そうな顔をしていたので、ちょっと得意な気持ちになりました。

ソマリランドの食事

ソマリランドの食事

 

...以上、今回はトラブルを中心に書いたので、ソマリランドに対してネガティヴなイメージを持ってしまう方が多いかもしれませんね…。ただ、僕個人としてはソマリランドに行って良かったと思っています。見るもの、出会うもののほとんどが僕の予想とかけ離れていて、とてもいい経験ができました。

臆病はまだ完全に克服できていませんが、これからもいろいろなところへ行ってみたいです。

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ソマリランドを楽しむ方法
1. ソマリランドのガイドにはサービスを期待せず、一緒に旅行する友達ぐらいに思っているのがいいかも。
2. ホテルの部屋に入ったら、必要最低限の設備が動くか、共用トイレの場所をチェックする。
3. 食は異文化に触れる貴重な機会。少し不衛生でも挑戦する。

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武原真彦

武原真彦

(たけはらまさひこ)臆病な冒険家 / 会社員。1984年大阪府池田市生まれ。チキンラーメン発祥の地に生まれたのにチキンラーメンが苦手。数学も苦手なのに、環境問題の解決に貢献したいと理系を志し、案の定浪人するも、翌年無事に大阪大学工学部に入学。博士前期課程修了までの6年間お世話になる。その後、大学推薦で大手企業への就職を狙うが、リーマンショックの影響を受け、あえなく失敗。地元のガスセンサーメーカーになんとか就職するも、鬱屈とした日々を過ごす。しかし、さすがにこのままでは行けないと一念発起、2015年に転職を果たし、神奈川県に引っ越す。現在は自動車の排気ガスセンサー用の材料開発に携わる。好奇心の赴くままに様々な知識を吸収するのが好き。趣味は、海外旅行とオンライン英会話。note始めました。https://note.com/takeharamasahiko