継続のリテラシー【第4話】 「何をするか」より「誰とするか」 / 若杉アキラ

waka_fだから、本を書くことで「どんな人と関わっていきたいか」「自分は誰を救いたいか」を徹底的に考えました。その結果、私が救いたい人は過去の自分。過去の自分のように「いつも時間に追われ、やりたいことができない」と、もがいている同世代の
連載「継続のリテラシー」とは  【毎月25日更新】
「続けること」に特別な能力(リテラシー)は必要なのでしょうか。若杉アキラさんは「自分の本をつくる方法」を受講するまで、日常的に文章を書く習慣はなく、書くことに苦手意識もあったと言います。しかし、2017年1月の講義終了後すぐにブログを立ち上げ、書くことを継続させます。そして受講から2年半後の2019年6月、はじめての出版を実現させました。週1ペースでブログをコツコツと更新するなど、出版に向けてやるべきことを着々と進めていった若杉さんに、「続けること」をテーマに出版までの道のりを振り返ってもらいます。

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 第4話  「何をするか」より「誰とするか」

                   TEXT :  若杉アキラ                      


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 誰とドコに向かう? 

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2018年9月、週1ブログを続けて1年8ヶ月。

自分の本をつくる方法』を受講後、3ヶ月間のグループセッションを経て、教授の深井次郎さんとマンツーマンで本の企画づくりを進めてきました。その中で1つ、忘れられないエピソードがあります。

企画づくりの最終段階で、「やっぱりテーマを変えたい」と私が言い出したのです。二人で何度も話し合い進めてきた企画の最終段階になってから「テーマを変えたい」って…。

「もっと早く言ってくれよ!」ってふつう言われた方は怒りますよね。

でも次郎さんは、「うん、また練り直そうよ。著者が気乗りしないテーマは意味がない」と私の考えを受け入れてくれたのです。その後も『目先のヒット』を狙うより『著者としてどんな人生を歩みたいのか』という長期的な視点で私をサポートし続けてくれました。

起業や不動産、お金をテーマにしたビジネス書でいくか、もっとゆるく暮らしかたの実用書でいくか、何度も考えて最終的に「時間術でいこう」と決めてからも、「テーマが読者に求められるか不安…」と相談したこともあります。

それでも次郎さんは著者視点で、「相手に合わせる前に、まず自分が何をやりたいのか」と問いかけてくれるのです。「やっぱりテーマを変えたい」と言い出し、これまでの仕事を振り出しに戻してしまった私に向けて…。

スポーツや勉強でも、一緒にゴールや目標に向かって並走してくれるコーチや先生がいると技術的なサポートだけでなく、精神的な支えにもなりますよね。

「成功したい」「成果をあげたい」という気持ちはもちろんありますが、「うまくいかなくても、この人とだったら受け入れられる」という人とゴールに向かっていくと、「自分を信じてくれる人の期待に応えたい」「応援してくれる人を喜ばせたい」というエネルギーが湧いて、行動を続ける原動力になるのです。

できたての本を片手に教授の深井次郎さんと。

できたての本を片手に教授の深井次郎さんと。

 

 

 誰を救えるか、救いたいか? 

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「企画書のテーマ選びで迷っている」「専門テーマがいくつかあってどの分野で書くか決められない」など、本のテーマ選びで相談されることがあります。

私も苦戦しましたが最終的には120%納得のテーマで、本を書くことができました。そんな私のテーマ選びの方法についてご紹介します。

商業出版を目指す人にとって本は商品です。

スーパーやコンビニで商品を買うとき、「せっかく作ってくれたから…」といって役に立たない商品を買う人はいません。自分や家族の役に立ちそうだから買うわけですよね。

なので、商品となる本のテーマ選びは「読者の役に立つこと」が大前提となります。そのためには、自分のスキルや経験が「誰の役に立つのか」「誰を救えるのか」と考えることが大切です。

「本のテーマは、他人が求めることを書けばいい」という意見もあります。たしかに、それはそうなのですが、「求められる」という理由だけで、本を書くことに抵抗がある人もいるでしょう。

私自身、10年ほど続けてきた起業の経験を活かし、「儲かる系の起業本」を書こうと思ったこともあります。でも読者層となるギラギラ系の起業家と関わっていくのは、自分が望む人生ではない…。別にそういう人が嫌いなわけではありませんが、私は本を通して「読者の心を癒したい」「心のつながりを持ちたい」と考えていました。

だから、本を書くことで「どんな人と関わっていきたいか」「自分は誰を救いたいか」を徹底的に考えました。その結果、私が救いたい人は過去の自分。過去の自分のように「いつも時間に追われ、やりたいことができない」と、もがいている同世代の仲間を救いたい。つまり自分が最も感情移入できる読者に向けて本を書くことに決めました。

本の執筆は長期戦です。著者となれば一生。「求められる」という理由だけでなく、心揺さぶられるテーマであることが私にとっては大切なのです。

 

「何をするか」より「誰とするか」

「何をするか」より「誰とするか」

 

 「誰とつくるか」で「何ができるか」は決まる

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2018年12月、週1ブログを続けて1年と11ヶ月。

『企画書の決裁が承認されました』と編集者さんから連絡を受けたときは、嬉しさよりも「ここからが本番だ」と強く思ったことを覚えています。ついに出版が決まったのです。

本を出してからは、「無名の著者がどうやって出版社に企画を持ち込んだのか」と聞かれることも増えてきたので、私が実践した方法をご紹介したいと思います。

まず出版社選びですが、自分の書きたい分野をあつかっている出版社に企画を持ち込む必要があります。子供向け絵本しかあつかっていない出版社に、大人向けビジネス書の企画を持ち込んでも相手にされません。これは一緒に本づくりをする編集者さんに対しても同じです。編集者さんの作っている本、好みにあう企画を持ち込むことが大切です。

「でも編集者さんと面識ないし、作りたい本や好みなんてわからない」という人がほとんどでしょう。私もそうだったのでご安心を。誰でもかんたんに編集者さんの作っている本や好みなどを知ることはできます。

「好きな本」「書きたい本の類書」の奥付やあとがきを読んで、編集者さんの名前を探し、ネット検索とSNSチェックでどんな人かを調べるのです。いまの時代、自身の考えを発信している編集者さんも多いので、自分と合いそうな編集者さんを見つけて、読んだ本の感想を一言添え、企画書を出版社の編集者さん宛に送ります。

「書きたい本の類書」を作っている編集者さんなら、企画に興味を持ってくれる可能性もあるでしょう。ちょっとストーカーっぽい感じもしますが、本づくりは編集者さんとの二人三脚です。一生に一度の出版になるかもしれない無名の著者だからこそ、自分と自分の企画を理解してくれる編集者さんが必要なのです。

編集者さんに企画書を送ってから数日後。

『書籍企画のご提案、ありがとうございます』とメールがきたときは、飛び跳ねて喜びました。一か八かのラブレターに返信がきたような感覚です。後にも先にも、出版への道のりで、1番嬉しかった瞬間です。

「何をつくるか」はもちろん重要ですが、「誰とつくるか」も大切なことです。なぜなら、「誰とつくるか」で「何ができるか」は決まるからです。

第4話はここまで。

次回は、連載の最終話。〆切りに向けて原稿を書き出します。「もう絶対間に合わない」「これ以上書けない」という執筆期間のドン底で見つけた継続のリテラシーとは?

本日も、お読みいただきありがとうございました。

 

 

(次回もお楽しみに。毎月25日更新予定です) =ー

 

若杉アキラさんへの感想をお待ちしています 編集部まで

 

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連載バックナンバー

第1話 「好き」と「嫌い」と上手に付き合う
第2話 「お金」「仲間」「プライド」
第3話 「目標の階段」をつくる

 過去の若杉アキラさんの執筆エッセイ 

TOOLS 93 起業すれば自由になれるのか?

TOOLS 97 廃業寸前、見栄もプライドも捨て去って見えた景色
TOOLS 100 今だから言える、寂しさの正体
TOOLS 102 好きなことの本質に気づく方法
TOOLS 105 初めて個展をひらきたくなった日に読む話



若杉アキラ

若杉アキラ

時間ミニマリスト/週3起業家/シニア不動産コンサルタント。1983年生まれ、妻と娘ふたりの4人家族。会社員時代、終電帰り、サービス残業、週90時間労働の疲労と心労がたたり体調を崩す。27歳で不動産会社を起こすも週7日労働で時間に追われる。「忙しさに振り回される人生から抜け出そう」と奮起し、時間のミニマル化を実践。現在、週3日だけ働き、「歳をとっても安心して借りられる住まいの提供」をモットーに、シニア不動産事業を展開し、県や地域からの信頼も厚い。また、iPhone写真家として、日常をテーマに作品提供や個展開催を定期的に行っている。 Instagramは @akira_wk