ちいさなお店をはじめたこと。~等身大で、自由な働きかた~【第39話】ちいさなお店の安全を守るために、考えておきたいこと

ノマディッククラフトヨメのちいさなお店をはじめたこと。来客の中には悩ましい対応を迫られる場合も。残念ながらいつも商品はほとんど見てもらえず、どうやら目的は「お話すること」のみ。一度も買い物をしたことがないとはいえ、お店に訪問してくださる以上はお客様です。根本には誠意を持って対応したい気持ちが
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第39話  ちいさなお店の安全を守るために、考えておきたいこと  

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こんにちは、ノマディックラフト ヨメです。

「お店をやりたい!」と考えたとき、たいてい頭に浮かぶのはワクワクと楽しいイメージです。その一方でふと「でももし、変な人が入ってきたらどうしよう?」という不安を覚えたことはないでしょうか。

お店を開けるということは、誰に対しても扉を開く、ということでもあります。2013年のオープンから今まで、ありがたいことにノマディックラフトは大きなトラブルなく続けてこられましたが、だからといって安全面での心配がないわけではありません。

そこで今回は、ちいさなお店の「安全・安心」に関わる出来事について触れてみたいと思います。


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 ショップを開けると
 お客様だけでなく、いろんな人がやってくる

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「お店」という形を取ると、良くも悪くも、お客様以外の人もたくさんやってきます。そのひとつが「勧誘」。

もちろん勧誘にもいろいろあって、前向きな例で言えば「ネット通販をしているなら、契約をしませんか?」と宅配便業者さんがやってきたり。これは毎月ある程度の発送量が見込める場合、契約すれば送料を安くできるけど……どう? というご提案です。イベント中心の売上げである私たちは、そこまで多くの出荷がないので契約はしませんでしたが、ネット通販を重視する人には悪いお話ではない、と思います。

また、「この地域で商売をするなら、口座を開きませんか?」と、地元を拠点にしている地方銀行や信用金庫の営業さんが来ることも。これも前向きに開設を検討する価値のある勧誘です。というのも、地方銀行や信用金庫は、地域の個人事業主や小規模事業者とお付合いの深い存在です。口座を開いてキチンと積み立ての実績を作れば、将来ローンを検討したい状況が生まれたときなど、メガバンクよりも親身になって相談に乗ってもらえる可能性が高まるからです。

現在のお店が賃貸契約かつ築年数が古いこともあり、限られた期間で引越しをする可能性が高い私たちは、丁重にお断わりしました。しかし腰を据えられそうな場所が見つかれば、その地域の銀行に口座を開こうと思っています。

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 来客の中には
 悩ましい対応を迫られる場合も 

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さて、勧誘の中には少し面倒なものも。 「インターネット回線を変えませんか?」「電気料金の見直しは?」「ウォーターサーバーに興味は?」などなど、サービスの勧誘。「フリーペーパーに宣伝を出しませんか?」という広告営業。ときには「宗教についてのお話を」という布教の方も訪れます。

今のところトラブルはありませんが、ときどきお客様が店内にいて接客中なのにも関わらず、お構いなしにパンフレットを広げてサービスの説明を強行しようとする人もいて、困ってしまうことがあります。「今は忙しいので」と曖昧に断ると「いつなら時間がありますか?」と再訪を希望されてしまうので、その気がない場合は失礼のない程度にキチンとお断わりするようにしています。

巡回中のお巡りさんに「犬がいると一定の防犯効果があるんですよ」と教えていただきました。看板犬レラも安全にひと役かってくれているのでしょうか。

巡回中のお巡りさんに「犬がいると一定の防犯効果があるんですよ」と教えていただきました。看板犬レラも安全にひと役かってくれているのでしょうか。

このように、来訪者がお客様ではないなら、自分たちに必要・不必要という観点で対応を判断できます。しかし、相手がお客様である場合にはそうもいきません。

たとえば以前、毎週いらしてはアトリエショップの椅子に腰掛け、2時間ほど滞在する年配の男性がいらっしゃいました。残念ながらいつも商品はほとんど見てもらえず、どうやら目的は「お話すること」のみ。一度も買い物をしたことがないとはいえ、お店に訪問してくださる以上はお客様です。根本には誠意を持って対応したい、という気持ちがあるのですが、ある日「メールアドレスを教えて」と言う申し出が。お店のアドレスが記載されたショップカードをお渡しすると「もっと個人的な連絡をしたいんだけど、あなたのメールアドレスは教えてくれないの?」とのお返事。女ひとりで店番をしているとこういうこともあるのか、とため息が出たのを覚えています。

結局「こんなことがあったんだけど」と店主に相談し、その男性が来たときヨメはご挨拶だけにし、店主が主に接客をすることにしました。一度だけ「なんで避けるんだ!」と言われましたが、「ヨメは作業があって」と、うまく店主がカバーしてくれているうち、いらっしゃらなくなりました。

今でも、悪気はなかったのかもしれないのに、あの対処で良かったのかな? と思うことがあります。しかし、わざわざ「個人的な」と言うニュアンスに抵抗を感じたのも事実。後になって考えれば「個人のメールは教えられません。要件はお店のメールにお送りください」とはっきり言えばよいだけだったのですが、思わぬ展開に焦ると、しどろもどろになるものだ、というのもよい勉強でした。

強盗などが恐ろしいのはもちろんですし、女性ひとりでお店をやっている知人に聞くと、局部を露出したまま店に入ってきた男性がいた、という怖い経験がある人も。大声を出したら逃げていったそうですが、それから市販の防犯ブザーをレジ近くに置くことにした、とのこと。

とっさのときは、なかなかパッと気の利いた対応ができないものです。「もし刃物を持った強盗が来たら、レジのお金をまるごと渡す代わりに、現金〇〇円以上になったら必ずATMに預けて、被害額を最小限にしよう」「裏口から逃げられるように、通り道を広くしておこう」など、危険を感じる人が入ってきたらどうすべきか、助けを呼ぶには?どこに連絡する?逃げる時のルートは?など、前もって頭の中でもしもの場合に備えたイメージトレーニングをしておくことも大事であると思います。
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 天変地異や事故のことも
 心に留めておこう 

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安心・安全で言えば、お店のすぐ目の前で、大きな火事があったこともありました。

それまでは、目の前で火事が起こればわりとすぐ気づくのではないか、という感覚もありましたが、実際は火の手があがっていても店の中にいると全く分かりませんでした。外からメガホンでアナウンスをする声が聞こえるのに気づき、耳を澄ますと「近隣住民はただちに避難してください」というフレーズ。外に出ると、すでに店の前の通り一面に煙が立ちこめている状態でした。

慌てて、その場にあったトートバッグに電話とお財布、ノートパソコン、通帳が入ったポーチ、看板犬レラのおやつとお水を突っ込んで、5分で外に出ました。同じように外に出てきた、顔見知りの近所の方たちと話をしているうち、店の目の前まで非常線が張られて、あっという間に立ち入り禁止に。そのまま消化活動が終わるまで、界隈の人は自宅から閉め出されてしまいました。

西小山での火事

近くのお寺が、ご厚意で冠婚葬祭用のスペースを開放してくださったため、地域住民はそこにいったん避難しましたが、風向きによって延焼の可能性もあるため、いつ自宅に戻れるかも分かりません。お隣のご主人が、コンビニで大量にお茶や水を購入し、同じように家に帰れないでいる人たちに配ってくださり、本当にありがたいと思ったのを覚えています。

結局、夜には自宅に戻ることができましたが、火元の住宅にお住まいの方がお亡くなりになる大変痛ましい結果に。火の持つ恐ろしい側面を目の当たりにし、思わぬ時に起こる火災や地震に備えて持ち出すべきものをまとめておいたり、避難を想定した練習をしたりすることの重要性を再確認しました。

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身の危険を感じるようなことはないほうがいいのですが、考えないようにしていると、もしものときに動けなくなります。「万引があったらどう対応しよう?」「強盗が入って来たら?」など、最悪の場合も想像して自分たちなりの対応を考えておく。そんな、備えあれば憂いなしの準備があれば、さらに安心して過ごせるように思います。

次回もちいさなお店からのお話をお届けしますね。どうぞお楽しみに!

 

(月1回  第4土曜日更新の予定です)    

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 ノマディックラフトのイベント出店情報 

テラデマルシェ
6月30日(土)、7月1日(日) @東京 台東区・宋雲院
上野駅の浅草口から徒歩5分。台東区役所のすぐそばにある風情あるお寺・宋雲院さんで開催される、作家の手仕事を集めた手作り市です。雑貨やアクセサリー、パンや珈琲などのブースが集合します。オムツ替えできるスペースもあるため、小さなお子さま連れのお客様もお気軽にどうぞ。私たちは看板犬のレラと一緒に前庭に出店しています。また、バッグに入れればペットも中に入れます。 
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 連載バックナンバー

第1話 家=店。人が思うよりもずっとちいさな投資でお店をはじめてみた(2015.6.13)
第2話 店から出て人に会う、出会いをつくる。〈イベント出展篇〉(2015.6.26)
第3話 1人2役 × 2。兼業夫婦は不安定? 時間も予定も「自由」のメリット・デメリット(2015.7.11)
第4話 なんで「少数民族の手仕事」? それはやっぱり「好き」だからです(2015.7.25)
第5話 暑さに負けず蚊に負けず。探して洗って、よみがえる古布たち 〈 仕入れ旅篇 〉(2015.8.8)
第6話 どうしてそんなに自由なの!? 現地の人たちと商品を作る(2015.8.22)
第7話 モン族の女性に聞いた、美しい刺繍の裏側にある物語(2015.9.5)
第8話
 小商いでも管理は大切。入るお金、出ていくお金何がある?(2015.9.19)
第9話 ショップカードにネームタグ… 地味だけど重要度は大! お店まわりのこまごま小物(2015.10.3)
第10話 大切さは名前と同じ。自分たちのロゴマークはどう作るか<デザイナー編>(2015.10.17).
第11話 大切さは名前と同じ。自分たちのロゴマークはどう作るか<実践編>(2015.10.31)
第12話 どこまでを手作りと呼ぶ? 手仕事を求める楽しさ、難しさ <買い付け編>(2015.11.14)
第13話 お客様との新たなつながり。看板犬レラが教えてくれたこと。(2015.11.28)
第14話 美しいものよ、輝け!お母さんとの約束。(2015.12.12)
第15話 生産者さんを訪ねて <鳥の笛ネックレス編(2016.1.14)
第16話 生産者さんを訪ねて <アカ族の村編(2016.1.30)
第17話 始まった… 年に一度の確定申告(2016.2.13)
第18話 手仕事は同じじゃないから美しい~『ORDINARY』とコラボグッズを作ったこと(2016.3.11)
第19話 生産者さんを訪ねて<カレン族の村編>(2016.5.21)
第20話 生産者さんを訪ねて<ラフ族の村編>(2016.6.18)
第21話 夫婦で働きながら、煮詰まったときにしていること。(2016.7.20)
第22話 おしゃれに見せるって難しい! イベントのディスプレイで四苦八苦。(2016.8.26).
第23話 ちいさなお店がイベントに出ることQ&A ≪前編≫(2016.8.26)
第24話 ちいさなお店がイベントに出ることQ&A ≪後編≫(2016.11.26)
第25話 ちいさなお店がイベントに出た1年を振りかえる(2016.12.24)
第26話 ちいさなお店の海外買い付け① 買い付け方法と情報集め(2017.01.30)
第27話 ちいさなお店の海外買い付け②航空券の準備 (2017.02.28)
第28話 ちいさなお店の海外買い付け③スケジュール決め&宿探しのパズル (2017.03.31)
第29話 ちいさなお店の海外買い付け④アイテム探しと値段交渉 (2017.04.30)
第30話 ちいさなお店の海外買い付け⑤価格はどう設定するか(2017.06.05)
第31話 寝台特急は楽しい出会いの宝庫(2017.06.25)
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第32話 オリジナル商品ってどう作るの?(2017.07.29)
第33話 成長し続けていくために考えること(2017.09.30)
第34話 ちいさなお店の意見の違い、どう乗越える?(2017.11.04) . 
第35話 安定している時期だからこそ、未来に種をまくこと(2018.1.09)
第36
 イベント成功のカギは、出店前後の「イメージトレーニング」にあり?(2018.1.27) 
第37 迷ったら、手を動かすこと(2018.4.3) 
第38 押しつけ? それとも説明不足? ちょうどいい「接客」の距離感とは(2018.5.3) 

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オーディナリー編集部がノマディックラフト参加の展示会を観に行った話

【レポート】遠い国の伝統的な手仕事がいっぱい!  

【関連サイト】
ノマディックラフト ウェブサイト http://nomadicraft.com/
ノマディックラフト 店主ブログ http://blog.shop.nomadicraft.com/
ノマディックラフト Facebook https://www.facebook.com/nomadicraft
木内アキ(ライターとしての仕事) ウェブサイト http://take-root.jp/

 


ノマディックラフト ヨメ

ノマディックラフト ヨメ

自然・旅・民族をテーマに、タイ、ベトナム、ラオスの山岳地帯に住む少数民族の手仕事を扱う、西小山のアトリエショップ『nomadicraft』を店主であるダンナとともに運営。母から子へ、脈々と受け継がれてきた素朴で美しい手仕事を紹介しながら、作り手である女性たちに仕事の機会を提供し、貧困の和を断ち切るための支援も行っている。ふだんはフリーランスのライター・木内アキとして「女性にまつわる人・旅・暮らし」をキーワードに、雑誌や書籍を中心に執筆活動中。目標は「キチンとした自由人」。 ノマディックラフト 店主ブログ http://blog.shop.nomadicraft.com/ 木内アキ ウェブサイト http://take-root.jp/