ちいさなお店をはじめたこと。~等身大で、自由な働きかた~【第20話】生産者さんを訪ねて<ラフ族の村編>

ノマディッククラフトヨメのちいさなお店をはじめたこと。

優しい雰囲気を全身から漂わせ、とてもよく笑う感じのよい方です。ちなみに、私たちがステキと感動した、例の衣装についているスタッズ。あれは星を意味しているのだ、と教えてくれました。sasamoto_s

 

第20話 生産者さんを訪ねて<ラフ族の村編>

 

.
こんにちは、ノマディックラフト ヨメです。

鳥の笛ネックレスアカ族カレン族と続いてきた生産者さんレポート、今回はラフ族の村をご紹介しますね。

*****

それってスタッズ!?
ラフ族衣装のインパクト

 

少数民族の手仕事を、エスニック雑貨とは違う「文化」の面でも紹介したい。そんなことを思い輸入を始めた当時、ヨメはまだラフ族の存在をよく知りませんでした。手仕事の生産をサポートしてくれている、少数民族のサポート団体の担当者Hさんとやり取りするなかで「ラフ族の衣装はステキですよ」と教えていただき、写真を送ってもらってびっくり。

「なにこれ?スタッズじゃない?」

ラフ族の女性が身につけている、黒と赤を基調にしたジャケットには、当時日本でも流行していたスタッズのような金具がポイントにあしらわれていたのです。「へえ!カッコいい!」と感動し、売れる・売れないを抜きにして個人的にほしくなりました。ラフ族の民族衣装を販売用に作る、ということはほとんどないそうで、Hさんが村の女性に頼んで作ってくれることに。3ヵ月後、手元に2枚のジャケットが届いたときは「すごい…」と感激したのを覚えています。
そのうちの一枚がこちら。

ジャケット

厳密にはスタッズといっても、アルミのような軽い金属が用いられています。独特の大きなボタンがまるでアクセサリーのような存在感。とてもステキですが、値段をつけるとそれなりに高くなってしまいますし、とても個性的なので好き嫌いも分かれるはず。

それでも、これを見てもらうだけでも価値があるはずだとイベントに並べてみたところ、とてもおしゃれな女性が「一目惚れした」と購入していきました。

残りの一枚は、貴重な資料として店頭にディスプレイしています。

ラフ族は東南アジア地域に広く分布する民族のひとつで、タイだけなくミャンマーや中国・雲南省にも多く暮らしているのだとか。黒ラフ、黄ラフ、シェレーラフなどグループに分かれていて、それぞれに衣装のデザインも違うとのこと。

 

山の中のさらに奥にある
ラフ族の集落へ

そんな個性的な衣装へのいきさつがあったので、ラフ族の村に行けるのは私たちにとっても感慨深い出来事でした。協力団体『The Mirror Foundation』の人たちと一緒に店主が市街地を出てから車で約40分。途中にある小さな街でバイクに乗換え(車は入れない道幅なのだそう)、さらに40分かけて集落へと到着。

ラフ族の村 

山の中にぽつんとある小さな集落に到着しました。店主がぷらぷらと散歩をしていると、村はずれのところに、今どきの洋服に身を包んだ若者たちがバイクで集まってたむろしていたのだとか。

「なんか、東京の住宅街のコンビニ前みたいな雰囲気で。若者はどこに住んでいても同じ感じなのかもね」

と店主は笑います。

ソーラーパネル

 

この村ではソーラーパネルを使って発電をしています。作れる電気の量は限られているため、家ごとに交代で電気を使っているのだとか。

村の子どもたち

わーっと集まってきたアカ族の子どもたちとは違い、山の奥でめったに外から人が来ないせいか、ラフ族の子どもたちはとっても人見知り。興味はあるようなのですが、近づくと逃げてしまうそうで、遠くから店主をじっと見つめています。

3ヶ月から半年、
長い時間をかけて織り上げる

カラフルな織物を作るのもラフ族の手仕事の特徴で、ノマディックラフトでもそんな織物を使った雑貨を輸入しています。

ブックカバー

ブックカバー

たとえばこのブックカバーに用いられているのが、鮮やかな色使いが特徴的なラフ族の手織りのテープ。

ラフ族の作り手

作っているのは民族衣装を身につけたこちらの女性。手前には彼女の作った織物を使ったポーチが並んでいます。優しい雰囲気を全身から漂わせ、とてもよく笑う感じのよい方です。

ちなみに、私たちがステキと感動した、例の衣装についているスタッズ。あれは星を意味しているのだ、と教えてくれました。

機織り

機(はた)を織っているところも見せてくれました。木や竹を使った手作りの織機です。糸を張るための重りにしているのは水を入れたペットボトル。機の原点のような、とてもシンプルな造りです。

このカラフルな織物を作るのに最も大変なのは、何百本という細い縦糸を、色彩のバランスを考えながらセットするときなのだとか。日々、家事の合間を縫いながら、3ヵ月、6ヵ月と長い時間をかけて布を織ってゆきます。

台所の風景

この日はもう遅いので、宿泊させていただくことになりました。写真は夕飯の準備中。村の人たちに負担をかけないよう、食材は自分たちで持ち込みます。

食卓の様子

竹で編んだ丸い食卓のうえで、みなで夕食をいただきます。

素晴らしい織り手である彼女に「どんな思いで織っているのか」と聞いてみると「伝統を守るとか、作るのが楽しいとかそういうことではなく、現金収入のために作らなくてはいけないから作る、というのが正直な気持ち」と話していました。

食料はほぼ自給自足でまかなっていますが、何かを売り買いするため市街地に出ると言っても、バイクと車を乗りついで1時間半以上もかかる場所。商売をするのも簡単なことではありません。家事の合間に作った手織物を、こうして定期的に素材を届け、完成品を買い上げに来てくれる団体の活動は、貴重な現金収入の手段なのだな、とあらためて感じました。

******

日本で彼女たちの作った手仕事を販売していると「これだけ手の込んだものを作るなんてすごいわね」と言ってくださるお客様もいれば「アジアのものなんだから、もっと安いんじゃないの?」と尋ねてくるお客様もいます。

物価の違いも含め、アジアの雑貨=安物というイメージが世の中に存在するのは否めません。だからこそ生産者の人たちがどのように時間をかけ、作っているかを私たち自身が知り、魅力をお伝えすることが、そういうイメージを少しでも変えていく一助になればよいな、と思ってやみません。

さて、今回で生産者レポートはいったんお休みし、次回もちいさなお店からお話をお届けしますね!どうぞお楽しみに!

(了)
ノマディックラフトのイベント出店情報

 

安穏朝市
@築地本願寺
6月19日(日)10~15時 ※雨天決行
http://annon-asaichi.blogspot.jp/
野菜や手作りジャムなどの食品や生活道具など作り手の顔が見えるものが揃う素朴な朝市です。
築地場外市場もすぐなので、朝食やランチがてらぜひ足をお運びください。

 

テラデマルシェ
@上野宋雲院
6月25日(土)・26日(日)11~17時 ※雨天決行
http://terademarche.jimdo.com/
上野駅からすぐのお寺にて開催される、魅力的な作家の手仕事が集まったマルシェです。手作りの雑貨はもちろん、美味しいパンやお菓子なども販売されます。

(次回もお楽しみに。隔週土曜更新です)
.

 連載バックナンバー

第1話 家=店。人が思うよりもずっとちいさな投資でお店をはじめてみた(2015.6.13)
第2話 店から出て人に会う、出会いをつくる。〈イベント出展篇〉(2015.6.26)
第3話 1人2役 × 2。兼業夫婦は不安定? 時間も予定も「自由」のメリット・デメリット(2015.7.11)
第4話 なんで「少数民族の手仕事」? それはやっぱり「好き」だからです(2015.7.25)
第5話 暑さに負けず蚊に負けず。探して洗って、よみがえる古布たち 〈 仕入れ旅篇 〉(2015.8.8)
第6話 どうしてそんなに自由なの!? 現地の人たちと商品を作る(2015.8.22)
第7話 モン族の女性に聞いた、美しい刺繍の裏側にある物語(2015.9.5)
第8話
 小商いでも管理は大切。入るお金、出ていくお金何がある?(2015.9.19)
第9話 ショップカードにネームタグ… 地味だけど重要度は大! お店まわりのこまごま小物(2015.10.3)
第10話 大切さは名前と同じ。自分たちのロゴマークはどう作るか<デザイナー編>(2015.10.17).
第11話 大切さは名前と同じ。自分たちのロゴマークはどう作るか<実践編>(2015.10.31)
第12話 どこまでを手作りと呼ぶ? 手仕事を求める楽しさ、難しさ <買い付け編>(2015.11.14)
第13話 お客様との新たなつながり。看板犬レラが教えてくれたこと。(2015.11.28)
第14話 美しいものよ、輝け!お母さんとの約束。(2015.12.12)
第15話 生産者さんを訪ねて <鳥の笛ネックレス編(2016.1.14)
第16話 生産者さんを訪ねて <アカ族の村編(2016.1.30)
第17話 始まった… 年に一度の確定申告(2016.2.13)
第18話 手仕事は同じじゃないから美しい~『ORDINARY』とコラボグッズを作ったこと(2016.3.11)
第19話 生産者さんを訪ねて<カレン族の村編>(2016.5.21)
.
オーディナリー編集部がノマディックラフト参加の展示会を観に行った話

【レポート】遠い国の伝統的な手仕事がいっぱい!

 

【関連サイト】
ノマディックラフト ウェブサイト http://nomadicraft.com/
ノマディックラフト 店主ブログ http://blog.shop.nomadicraft.com/
ノマディックラフト Facebook https://www.facebook.com/nomadicraft
木内アキ(ライターとしての仕事) ウェブサイト http://take-root.jp/

 

 


ノマディックラフト ヨメ

ノマディックラフト ヨメ

自然・旅・民族をテーマに、タイ、ベトナム、ラオスの山岳地帯に住む少数民族の手仕事を扱う、西小山のアトリエショップ『nomadicraft』を店主であるダンナとともに運営。母から子へ、脈々と受け継がれてきた素朴で美しい手仕事を紹介しながら、作り手である女性たちに仕事の機会を提供し、貧困の和を断ち切るための支援も行っている。ふだんはフリーランスのライター・木内アキとして「女性にまつわる人・旅・暮らし」をキーワードに、雑誌や書籍を中心に執筆活動中。目標は「キチンとした自由人」。 ノマディックラフト 店主ブログ http://blog.shop.nomadicraft.com/ 木内アキ ウェブサイト http://take-root.jp/