ちいさなお店をはじめたこと。~等身大で、自由な働きかた~【第17話】始まった…年に一度の確定申告

ノマディッククラフトヨメのちいさなお店をはじめたこと。

小学生の頃から算数が苦手で、「数字が得意!」という人にずっと尊敬を抱いてきたヨメ。フリーランスとして独立した後の一時期は「経理にかける時間を省いて、売上げを上げることに専念したほうが効率いい!」と考え、領収書と通帳の控え
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第17話 始まった…年に一度の確定申告 

 

こんにちは、ノマディックラフト ヨメです。

前回の終わりに「次は、ラフ族やカレン族の生産者さんを訪ねた時のお話を…… 」と書いてしまいましたが、この時期にぜひ触れたいトピックがあったことを思いだしました! ちいさなお店の2月の風物詩といえば、そうです。(憂うつな)確定申告の時期がやってきてしまったのです。生産者さんレポートの続きをお送りする前に、まさに今必要な、ちいさなお店の確定申告についてお話ししようと思います。

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とうとう来てしまった
2月は確定申告の季節


第8話
でもお金のことに触れましたが、経理がめっぽう苦手なヨメにとって、この確定申告という作業は本当に、本当に憂うつです…。3月15日(火)の締切日までに、ちいさなお店ノマディックラフトと、フリーランスのライター、それぞれの売上げを事業ふたつ分として青色申告しなくてはいけません。毎月きちんと収支管理をしていれば恐れることなし、さっとまとめて終わり! となるはずなのですが(そんなふうにやれたためしがないので、あくまでイメージです)、日々のいろいろに追われてやり残している作業もモリモリと。はあ、ため息。ちいさい店とはいえ、売上げをあげている以上ちゃんと税金の申告をするのが国民の義務。つべこべ弱音を吐く心の声と闘いながらの作業です。

写真/ PhotoAC

写真/Photo AC

それでも声を大にして言いたいのは「お金が苦手な人ほど、確定申告は自分でやってみるのがオススメですよ」ということ。というのも、一説によると、自営業をはじめてから3年以内に廃業する人が7割、とも言われています。信じること、楽しいことを続けていくためにはちゃんと利益も出さなければ成り立ちません。

つたないながらも、自分でお金の流れを管理していると、ふだん売上げや経費を捉えている漠然とした感覚と、実際のお金の動きが必ずしも一致していないことがよくあります。

「Aという商品がよく売れて喜んでいたけど、利益率を考えると、実はBという商品のほうがずっと貢献してくれていたんだ」とか「ここで在庫を切らしたせいで、輸入にかかる送料が利益を圧迫してしまった。もっと一回の入荷量を増やせるように工夫しないと」などなど、数字をとおして見えるリアルな問題点や発見は宝の山。お店の運営を安定させるヒントがたくさんあるように思います。

苦手な食べものは薬だと思って食べろ、と言いますが、私にとっての経理もそれと同じ。残り1ヶ月、ラストスパートをかけて、残してしまった事務処理を進めていく予定です。

 

溜めこんだ領収書
ため息…でもがんばる!

 

で、確定申告(青色申告)するために何をするかと言いますと、2015年度の売上げがいくらあって、経費にどのくらい使ったのか、お金の動きを明確にするには帳簿を完成させなければいけません。そのためには……

① 入出金の明細にモレがないかチェック
ヨメは、ネットバンキングと連動したオンラインの経理サービス『freee』を利用しています。これを使うと、通帳やクレジットカードなどの入出金を自動で帳簿に反映してくれる便利なものです。しかしいくら便利でも、一つひとつのお金の動きに対し「経費なのか、プライベートな支出か」という点は自分で登録しなくてはなりません。「このクレジットカードの支出は、ショップカードを作った時の料金だから『広告宣伝費』……」とか、一つひとつ分類して計上していきます。毎月末に入力し終わらなかった分をこれから片づけます。

② 領収書の入力
イベントのときの駐車場代や、出先で打合せをしたときの飲食費など、お財布の中の個人的な現金で経費を支払うこともあります。そういうときにもらった領収書を『freee』に入力する必要があります。これも毎月ちゃんと終わらせておけばいいのですが、ついつい溜めこんでしまいがち。これもドンドン片づけます!

お財布から出した領収書やレシートを入れている缶の中身……3ヶ月分くらい溜めこんでおります。この中から不要なものを捨て、必要なものは月別に分けて封筒に整理し、仕分け作業をスタート。

お財布から出した領収書やレシートを入れている缶の中身……3ヶ月分くらい溜めこんでおります。この中から不要なものを捨て、必要なものは月別に分けて封筒に整理し、仕分け作業をスタート。

③金庫の計上
アトリエショップの金庫にある「イベントの売上げ」や「お釣り用現金」も、精算を行います。店頭の売上げ控えを見ながら、売上げの内容を経理サービスに入力し、最終的にお釣りの残高と合っているかを確認する作業です。

本当は毎月決まった日に片づけておくのが理想です。ヨメは例年確定申告が終わった3月~6月くらいまでは「二度としんどい思いをしたくない!」と一生懸命入力するのですが、8月くらいからなあなあになってきて、溜めこんでしまう……という悪循環に陥りがち。今年こそは毎月キチンと帳簿つけしないと!

 

数え間違い厳禁!
全商品の棚卸し

 

レシートや領収書など、書類の入力が終わった後は身体を動かす作業が待っています。毎年2月は、お店の全商品を一つひとつ数えて在庫の数を照合する「棚卸」を行うのです。

なんのために行うかというと、売上げの合計を出すだけでは分からない利益の実態を知るため。計算式として、よく本などの説明に載っているのは以下のような計算です。

【売上総利益】=売上高-【期首棚卸高+今期の仕入れ-期末棚卸高)
すごくかんたんな例で説明してみますね。
仮に前年の在庫は0円だとします。1000円で売るブローチを600円で100個仕入れ、半分の50個が売れたとします。

棚卸の計算方法の一例

50000円売れた!と思っても、実際にあがっている利益は20000円であることがハッキリします。

面倒だな~と思う点として、ノマディックラフトの場合は、完成した衣料や雑貨をそのまま販売する「製品仕入れ」と、生地やパーツを輸入して自分たちで制作する「材料仕入れ」の二種類があること。

材料はまだ商品になる前のものなので「原材料」として仕入れ金額を計上します。製品仕入れの場合は一つひとつ原価が異なるので、エクセルで商品ごとの原価が分かる表を作り、棚卸しで判明した個数を入力すれば「原価×個数」で金額が出るようにしています。

 

オンラインでも持参でも
それぞれの申告方法にメリットが

 

便利なツールが開発されたおかげで、これらの入力を終えると『freee』が自動的に確定申告表を作ってくれます。ヨメはこれをネット申告『e-Tax』に取り込んで申告を行っています。ネット申告のよいところは自宅で好きな時間にできること。そして還付金の支払いがある場合は、処理が早いことです。

ただ税務署に申告に行くメリットもありまして、確定申告の期間中は申告書作成スペースが設けられている税務署も多く、質問に対応してくれる税理士さんや職員さんが常駐して、分からないところの指導を行ってくれます。その場にあるパソコンで申告書類を作れたりもするので、ヨメの友人のフリーランサーは、準備ゼロの状態で通帳と一年分の領収書を持って朝から税務署に行き、丸一日かけて現地で確定申告書を作るのが定番なのだとか。「3月に入るとすごく混むから、2月のうちがオススメ!」と本人談。

一年分を現地で処理……というのは極端ですが、初めての申告時など不明点が多いときは、抱え込んで悩まずに最寄りの税務署の相談窓口で申告書を仕上げる、というのも選択肢だと思います。

※ 国税庁HP 税務署の申告書作成会場など

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小学生の頃から算数が苦手で、「数字が得意!」という人にずっと尊敬を抱いてきたヨメ。フリーランスとして独立した後の一時期は「経理にかける時間を省いて、売上げを上げることに専念したほうが効率いい!」と考え、領収書と通帳の控えを郵送すれば帳簿に記帳してくれる外注サービスを利用していました。

苦手な事務処理から解放されたことでかなり気持ちが楽になり、売上げも順調に増えました。が、支出や出費がついついどんぶり勘定になり、後から「ここでもっとこうしておくべきだったかも」と思うことも。得るもの、失うもの、両方を天秤にかけて考え、「もう一度、自分でやってみるか」という結論を出しました。

 

計算式の写真

写真/Photo AC

 

事業をするのであれば、お金のプロである税理士さんと契約して、毎月経営の相談をしながら…というのが理想なのかもしれません。でも、うちのように「小規模だからそこまでは…」と思う方でしたら、

①まずは自分で経理&確定申告をやってみて、お金の流れをつかむ。

②そこで相談事や悩みが出てくれば、地域の公共機関がやっている無料の「経営相談」を利用する(帳簿や確定申告書の控えを持っていけば、いろいろアドバイスがいただけます)。

③必要に応じて、オンラインや外注の記帳サービスを利用する。

④税理士さんに相談する。

と、段階を踏んでトライするのが、お金の勉強としても、コスト面でもバランスがよいのではないのかな?と思っています。

次回までには申告作業を終わらせて、今度こそ、ラフ族やカレン族の生産者さんを訪ねた時のお話をお届けしますね。どうぞお楽しみに!

 

ノマディックラフトのイベント出店情報

寒い冬ももうすぐ終わり、春の訪れとともにイベントシーズンがスタートします。私たちも西小山のアトリエショップを飛び出して、各地に出かける予定ですので、どうぞお気軽に遊びにいらしてくださいね。

安穏朝市
@東京中央区・築地本願寺前広場
2月21日(日)  9~15時
詳細は http://annon-asaichi.blogspot.jp
毎月1度、本願寺さんの広場で開かれる暮らしの温もりや匂いを感じる素朴な朝市です。採れたての産直野菜から暮らしの雑貨までが揃います。私たちも看板犬レラと一緒に、ゆるゆると出店中。築地の場外市場からも歩いてすぐ。気持ちいい休日の朝、ぜひ足をお運びください。

 

よこはま大さん橋フェスタ
@横浜市中区・横浜港大さん橋国際客船ターミナル
2月27日(土)・28日 11~16時
詳細は http://pierfes.com
横浜港のシンボルである大さん橋にある、客船ターミナルで行われるイベント。食品を売るマルシェや雑貨などの販売ブースのほか、ライブなども開催される賑やかなフェスティバルです。今回は連載第2話に登場した『樂BAZAR』さんと共同出店予定!

 

ほか、詳細は随時お知らせします。

テラデマルシェ 3月26日(土)・3月27日(日)
小野路やまいち 4月23日(土)


(次回もお楽しみに。隔週土曜更新です)

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 連載バックナンバー

第1話 家=店。人が思うよりもずっとちいさな投資でお店をはじめてみた(2015.6.13)
第2話 店から出て人に会う、出会いをつくる。〈イベント出展篇〉(2015.6.26)
第3話 1人2役 × 2。兼業夫婦は不安定? 時間も予定も「自由」のメリット・デメリット(2015.7.11)
第4話 なんで「少数民族の手仕事」? それはやっぱり「好き」だからです(2015.7.25)
第5話 暑さに負けず蚊に負けず。探して洗って、よみがえる古布たち 〈 仕入れ旅篇 〉(2015.8.8)
第6話 どうしてそんなに自由なの!? 現地の人たちと商品を作る(2015.8.22)
第7話 モン族の女性に聞いた、美しい刺繍の裏側にある物語(2015.9.5)
第8話
 小商いでも管理は大切。入るお金、出ていくお金何がある?(2015.9.19)
第9話 ショップカードにネームタグ… 地味だけど重要度は大! お店まわりのこまごま小物(2015.10.3)
第10話 大切さは名前と同じ。自分たちのロゴマークはどう作るか<デザイナー編>(2015.10.17).
第11話 大切さは名前と同じ。自分たちのロゴマークはどう作るか<実践編>(2015.10.31)
第12話 どこまでを手作りと呼ぶ? 手仕事を求める楽しさ、難しさ <買い付け編>(2015.11.14)
第13話 お客様との新たなつながり。看板犬レラが教えてくれたこと。(2015.11.28)
第14話 美しいものよ、輝け!お母さんとの約束。(2015.12.12)
第15話 生産者さんを訪ねて <鳥の笛ネックレス編(2016.1.14)
第16話 生産者さんを訪ねて <アカ族の村編(2016.1.30.)

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オーディナリー編集部がノマディックラフト参加の展示会を観に行った話

【レポート】遠い国の伝統的な手仕事がいっぱい!

 

【関連サイト】
ノマディックラフト ウェブサイト http://nomadicraft.com/
ノマディックラフト 店主ブログ http://blog.shop.nomadicraft.com/
ノマディックラフト Facebook https://www.facebook.com/nomadicraft
木内アキ(ライターとしての仕事) ウェブサイト http://take-root.jp/

 

 


ノマディックラフト ヨメ

ノマディックラフト ヨメ

自然・旅・民族をテーマに、タイ、ベトナム、ラオスの山岳地帯に住む少数民族の手仕事を扱う、西小山のアトリエショップ『nomadicraft』を店主であるダンナとともに運営。母から子へ、脈々と受け継がれてきた素朴で美しい手仕事を紹介しながら、作り手である女性たちに仕事の機会を提供し、貧困の和を断ち切るための支援も行っている。ふだんはフリーランスのライター・木内アキとして「女性にまつわる人・旅・暮らし」をキーワードに、雑誌や書籍を中心に執筆活動中。目標は「キチンとした自由人」。 ノマディックラフト 店主ブログ http://blog.shop.nomadicraft.com/ 木内アキ ウェブサイト http://take-root.jp/