何もかもにはお金をかけられませんが、何もかも安くまとめようとするとチープに見えがち。プロに頼むところは頼み、自分たちで作る物は作る。これから、取り扱う商品量がもっと増えていけば、タグも業者に依頼したほうがよいはず……など、その時々「デザイン×コスト×労力」のベストなバランスを考えながら、等身大の運営を続けていきたいと思います。
第9話 ショップカードにネームタグ… 地味だけど重要度は大! お店まわりのこまごま
こんにちは。ノマディックラフト ヨメです。
第8回では、ちいさな店の運営にまつわるお金のことをお話ししましたが、今回はお店で使うこまかい小物のこと。たとえば商品につける値段表示のタグとか、購入品を入れる袋とか、販売を始めると必要になるものがいろいろ出てきます。あらかじめ何が必要かイメージし、用意したはずなのですが、実際に使ってみると「もっとこういうふうにしたほうが便利かも」など気づくことがたくさん。足りない物も出てくるので、その都度、新たに揃えたり改良したりしながら試行錯誤しています。
こういう小物の多くは消耗品。商品の見せ方にも関わるところなのでおしゃれにしたい反面、凝りすぎたり、お金をかけすぎると出費がバカになりません。なので、できるところは工夫してコストを抑えています。
商品につけるプライスタグも
完成までは紆余曲折
さて、そんな小物の代表がプライスタグ。商品一つひとつにつけて、値段を表示するアレです。ノマディックラフトではこんなふうに使用しています。
ロゴマークを入れてそれらしくしていますが、お店をはじめた当初はロゴもなかったので、市販のアルファベットスタンプを使って名前を入れただけの簡素なタグを使っていました。
初期型はこれです。ベースになっているのは、文房具屋さんで売っている単語帳! 裏面には手書きで商品名を入れ、税込価格をスタンプしただけのシンプルな物です(当時は消費税が5%でした)。紐は市販の刺繍糸を輪に結んで、通しただけ。店主とふたり、黙々と作業をして取りつけていました。
商品名と値段が分かる、という点では必要最低限の要素を果たしていたのですが、「これではいかん! 」と改良するきっかけになったのは「百貨店のイベントに出ませんか? 」とお話しをいただいたこと。出店の条件として、商品に ≪税抜・税別価格≫ をそれぞれ表記すること。そして ≪生産地≫ と ≪素材≫ を表記すること、とあったからです。
その要素を一つひとつ手書きするのか。そう思っただけで、ふたりとも無言に…。ちょうどロゴマークが完成したときだったので、このタイミングでロゴを入れたタグを印刷してしまおうか、と印刷業者をネット検索してみたのですが、一番安いタグだと紙質やサイズが限られて、今ひとつ気に入りません。かといって私たちの商売規模で紙質にこだわるほどタグにお金をかけるのはもったいない(それなら、商品をひとつでも多く紹介したい、と思ってしまいました)。それに加えて、詳細を表記する裏面の問題。値段はスタンプでなんとかするとして、≪生産地≫ と ≪素材≫ まで印刷するとしたら「ベトナム製 綿100%」「ベトナム製 麻100%」「日本製 綿100%」… など、タイ、ベトナム、ラオス、日本などの組合せがたくさん。それぞれを最小ロットで印刷してもすごいタグの在庫量になってしまいます。
これはなんとか自作するしかない。そう思って、作ったのが現在のタグです。自作、というと難易度が高く聞こえますが、作り方はお恥ずかしいほどにシンプル。参考までに、完成までのプロセスをご紹介したいと思います。
自宅のプリンタでコツコツと手作り
道具: パソコン、家庭用プリンタ、大型カッター、のり、値段スタンプ、穴開けパンチ 材料: 文具店などで売っているやや厚めのカラー用紙/A4、一般プリント用紙(白)/A4、麻紐またはループロック |
① Wordで表面を作る
印刷しやすいA4用紙をフォーマットとし、長方形5列×5段の表を作り(大きさはお好みで)、各欄にロゴを貼付けていきます。表の罫線は、あとで切り取るときのガイドとなるので、薄いグレーの点線で設定します。
※タグの上部に紐を通すための穴をあけるのと、ロゴ下の部分にミシン線を入れて切り取れるようにするので、天地は空け気味に。
② 家庭用プリンタで印刷
やや厚めのカラー用紙にプリントします。ノマディックラフトでは、表面に風合いのあるミ・タントという用紙の薄いグレーを使っています。プリンタは特別なものでなく、電話とFAXが一緒になったバリバリの複合機です。
③ 大型カッターでカット&ミシン線入れ
印刷した罫線に沿って、用紙をカットします。使っているのは『CARL』のディスクカッター。目黒の有隣堂でたしか3000円くらいで購入しました。安い割に優秀で、通常のカッターのほか、ミシン線が入れられる替え刃がついています。バラバラに切り離しつつ、ロゴの下部分にミシン線を入れる作業も並行して行います。1シート切れば25枚のタグができるので、いつもまとめて5~10シートくらいカットしてストックを作るようにしています。
④ パンチで穴開け
ミシン目を入れ、1枚ずつ切り離したタグができました。このあと、1穴パンチを使って糸を通す穴をあけます。この1穴パンチは、近所の100円ショップで購入したもの! 安い割に穴が空けやすい優れものです。
⑤ 裏面プリント&カット
①~③と同じ要領で、今度は ≪商品名≫ ≪生産地≫ ≪素材≫ を表記するための紙をプリント&カットします。タグの裏面に貼付けるので、より小さいサイズにカット。こちらは、どこにでもあるA4の印刷用紙を使用しています。最初はシールに印刷しようと考えていたのですが、シールよりもコストが安いうえ、わざわざストックを持つ手間も省けて管理がしやすいことから、なんとなく白い紙を使っています。こちらも、多めに作って小袋に分けて管理しています。
⑥ 貼付け&値段スタンプ
タグの裏に、⑤で作った商品説明の紙をのり付けし、ミシン線の下部分に ≪税抜価格≫ ≪税込価格≫ それぞれをスタンプします。これでタグ本体は完成です!
⑦ 紐またはループロックをつけて完成!
編み物などに使う細い麻紐を輪にして、タグに結びつけて作業終了。イベント前など時間がないのに、大量にタグづけしなくてはいけない場合は、簡単に装着できるループロックの力を借ります。衣類など、タグづけが難しいアイテムには安全ピンで取りつけます。
こうして無事、ノマディックラフトのタグが完成! 時間があるときにできるだけまとめて作り、ストックを持つようにしています。大変なようで、データさえ残しておけば等身大の量だけ追加できるので、意外に便利です。
できることを少しずつ
工夫しながら乗越えていく
他にも、消耗品の代表と言えば、商品を入れる袋。これも、オリジナルで作るのはコストが高いので、無地のクラフト紙の袋を数サイズ用意し、ロゴマークのスタンプを押して使っています。袋は、浅草橋にある包装資材の専門店『シモジマ』さんまで、ときどきまとめ買いに行っています。
また、ノマディックラフトにはレジがありません。販売の控え兼お客様にお渡しするレシートとして、カーボンのついた『KOKUYO』の複写式メモを使っています。こちらに ≪商品名≫ ≪価格≫ ≪合計金額≫ を記入し、複写のほうをレシートとしてお客様に渡す仕組み。記入面のほうには、控えとしてタグの価格部分をミシン線で切り取り、テープでペタペタと貼付け。お渡しする複写の紙にはロゴスタンプを押しています。
このロゴスタンプ、ノマディックラフトでお取り扱いしているアクセサリーブランド『JUJU』のデザイナーである前田さんから「スタンプ作ると本当に便利ですよ!」とおすすめいただいて制作したもの。オンラインでデータ入稿するネットのはんこ屋さんで作ってもらったのですが、あると伝票に押したり袋に押したり、時には封筒に押したりと何かと重宝しています。ありがとう前田さん!
最後に、店頭で配布するショップカードに関しては、ロゴをデザインしてくださったデザイナーさんにお願いしてキチンとしたものを作っていただきました。データをいただいたので、ストックが無くなったら自分たちでネット印刷などを使い、補充する仕組みです。
ロゴとショップカードをプロのデザイナーさんにキチンと作っていただいたおかげで、お店の印象がよくなったと感じています。何もかもにはお金をかけられませんが、何もかも安くまとめようとするとチープに見えがち。プロに頼むところは頼み、自分たちで作る物は作る。これから、取り扱う商品量がもっと増えていけば、タグも業者に依頼したほうがよいはず… など、その時々「デザイン × コスト × 労力」のベストなバランスを考えながら、等身大の運営を続けていきたいと思います。
*****
さ来週は、今回活躍してくれたロゴがどうやって生まれてきたか、お届けできればと思います。どうぞお楽しみに!
(了)
ノマディックラフトのイベント出店情報
安穏朝市 @東京中央区・築地本願寺前広場 10月18日(日) 9~15時 詳細は http://annon-asaichi.blogspot.jp 毎月1度、本願寺さんの広場で開かれる暮らしの温もりや匂いを感じる素朴な朝市です。採れたての産直野菜から暮らしの雑貨までが揃います。私たちも看板犬レラと一緒に、ゆるゆると出店中。築地の場外市場からも歩いてすぐ。気持ちいい休日の朝、ぜひ足をお運びください。. . テラデマルシェ @東京台東区・宋雲院 10月24日(土)、25日(日)11~17時 http://terademarche.jimdo.com/ 上野駅は浅草口から徒歩5分。台東区役所のすぐそばにある、風情あるお寺・宋雲院さんで開かれる手作り市です。作家が作る雑貨やアクセサリー、素材にこだわったスイーツなど約50ブースが集合します。二回目の出店となりますが、今回は看板犬レラも連れて行けそうです。広いお寺の本堂に、作家さんたちの作品がずらりと並んで見応えがありますよ! |
(次回もお楽しみに。隔週土曜更新です)
.
連載バックナンバー
第1話 家=店。人が思うよりもずっとちいさな投資でお店をはじめてみた(2015.6.13)
第2話 店から出て人に会う、出会いをつくる。〈イベント出展篇〉(2015.6.26)
第3話 1人2役 × 2。兼業夫婦は不安定? 時間も予定も「自由」のメリット・デメリット(2015.7.11)
第4話 なんで「少数民族の手仕事」? それはやっぱり「好き」だからです(2015.7.25)
第5話 暑さに負けず蚊に負けず。探して洗って、よみがえる古布たち 〈 仕入れ旅篇 〉(2015.8.8)
第6話 どうしてそんなに自由なの!? 現地の人たちと商品を作る(2015.8.22)
第7話 モン族の女性に聞いた、美しい刺繍の裏側にある物語(2015.9.5)
第8話 小商いでも管理は大切。入るお金、出ていくお金何がある?(2015.9.19)
オーディナリー編集部がノマディックラフト参加の展示会を観に行った話
【レポート】遠い国の伝統的な手仕事がいっぱい!
【関連サイト】 ノマディックラフト ウェブサイト http://nomadicraft.com/ ノマディックラフト 店主ブログ http://blog.shop.nomadicraft.com/ ノマディックラフト Facebook https://www.facebook.com/nomadicraft 木内アキ(ライターとしての仕事) ウェブサイト http://take-root.jp/ |