舛廣純子が聞く「しなキャリ図鑑」 【第15話】 フードコーディネーターのチカラ / watoさんの場合

masuhirojunko_long_bannerどうして多くのご縁が頂けているのかはわかりませんが、ただ言えるのは自分のやりたいことだけをチョイスしていたので、その場が楽しい空気だったのかもしれません。来る人も楽しい空気を共有してくれていて「こんなに楽しいならまた頼みたい」と思ってもらえたのかも。撮影の仕事にしても皆がわいわい集まる場所が好き
連載「しなキャリ図鑑」とは  【毎月2回更新 / 第2第4月曜】
「しなやかに生きる人のためのキャリア図鑑」の略称。キャリアカウンセラー舛廣純子が、イキイキと働く仕事人にインタビューし、その仕事に大切なチカラを中心にキャリア・仕事そのものも掘り下げます。10年後の未来に自分がどんな風に仕事をしているのかも見えづらくなった今の時代。インタビューを読むことで、自分の持っている力にも気づいたり、したことのない仕事に興味を持ったり、これから伸ばしたい自分の力を見つけられたなら、あなたの仕事人生も変化に対してさらに強くてしなやかなものになっていくかもしれません。

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第15話   フードコーディネーターのチカラ 
料理のその先の相手を思い、柔軟に地道に料理を創りだす

TEXT : 舛廣 純子


watoさん教えてくれた人
wato(わと) フードコーディネ-ター

病院での栄養指導、飲食店でのメニュー開発などを経て、独立。現在は、雑誌やwebなどでレシピを紹介したりイラストを描くほか、「wato kitchen」の名でイベントやパーティーへのケータリングも手がける。 出身地、岩手県一関市のFMにて毎週金曜夜「watoのおむすびラヂオ」放送中。著書に『リトルギフト』(サンクチュアリ出版)、『春夏秋冬ごはん帖』(ヴィレッジブックス)など。
Blog:http://blog.watokitchen.com
Twitter: @watokitchen
Instagram: @watokitchen

 

フードコーディネ-ターとは:食の商品開発、レストランプロデュース、販促・メディアなど、フードビジネスのすべてに関わりながら、スペシャリストとしての専門分野を持ち、それぞれの分野を複合的にコーディネートする食の専門家。 

 

<フードコーディネ-ターにとって大切な能力はなんですか?>

 

1. コツコツ続けること     地道さ 努力

おいしいものをつくるためには、試作を繰り返して、どこがおいしいかを見極める必要があります。特に雑誌などに載せるレシピは誰が作ってもおいしいと思える味にしなくてはいけないので、調理器具や火力によって味に誤差が出そうなものに関しては、条件を変えても同じようなものが作れるか何度も試しますね。ある意味実験のような地道さも必要な仕事です。あとは、私自身のキャリアを考えていても、以前にお世話になった方が、何年か先にお仕事を下さることもあり、大変なことがあってもコツコツ仕事を続けていれば、どこかにつながるのだなということは実感しています。

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2. 好奇心と柔軟性     好奇心 情報収集力 柔軟性 創造力

フードコーディネ-ターは新しいものにも敏感であったほうがいい仕事です。用事がなくても、デパ地下とコンビニはチェックするようにしていますね。何がどう売れていて、見せ方がどうなのかとか、リサーチしています。新しい料理を作るのにも、食材の新たな組み合わせを考えたり、頭ごなしに否定するのではなく、固定概念を崩すような自由な発想は大事ですね。冷蔵庫にある限られたもので何か新しいものを作ると、自分の引き出しになかったものを作れたりするので、楽しいです。

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3. コミュニケーション力  相手の立場に立って考える力 ホスピタリティ

フードコーディネ-ターの仕事は、レシピ作成もメディアの撮影のお仕事も、レストランプロデュースもいずれも、単に自分の作りたいものを作るのではなくて、料理のその先にクライアントさんや食べるお客様のいる仕事なんですよね。なので、なんで自分に依頼を下さったんだろうとか、相手はどういうことをしたいんだろうとか、そういうことをコミュニケーションを通して理解し、ニーズを満たそうということが大事な仕事だと思っています。

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<なぜフードコーディネ-ターになったのですか?>

 

食に大きな興味があったことと、偶然の重なりで、現在フードコーディネーターになっているのだと思います。

私の父は喫茶店のマスター、母は薬剤師をしていましたが、母は料理好きで、職業柄、よく食卓に上る食材のことを成分的な面からも話してくれていたもので、自然と食への興味は強くなりましたね。また薬剤師の母からは資格があったことで仕事や待遇面などで助けられてきた話もよく聞いていました。私自身、高校時代は、料理も好きだしイラストも描くのも好きで、どちらの道に進もうか迷っていたのですが、そんな母の影響もあり、まずは、国家資格である管理栄養士の資格取得を目指し、料理、栄養学の道に進みました。実際母の言う通り、フードコーディネ-ターとして仕事をする中でも、管理栄養士の資格を持っていたことで頂けたお仕事もたくさんあるので、私も資格には助けられました。

短大で栄養士の資格を取得し、病院で治療食や予防食を作り、指導をしていました。実務経験、資格試験を経て、管理栄養士になったのですが、同じころフードコーディネ-ターにも興味を持ち、資格を取得しました。当初目標だった管理栄養士の資格も取得できたことで、少したち、今度はいったん後回しにしていたイラストの勉強をしようと、病院を退職しました。築地にあるイラストレーターの学校に通いながら、通学途中にあったスープ屋でアルバイトを始めました。

スープ屋でのアルバイトは本当に偶然で。アルバイト探しに、銀座近辺をぶらぶらしていた時に入ったお店でした。もともと私もスープが大好きだったので、食後「人を募集していませんか?」と聞いたところ、ちょうどたまたまその時、社長が来ていて、面接して下さることになりました。管理栄養士の資格を持っているからカロリー計算できることや絵も描けることなどをお話したら、人は募集していなかったけれど、管理栄養士の人を実は採用したいと思っていたということになり、採用してもらえたんです。しかも、実はその社長は元グラフィックデザイナーでスープ屋を起業させた人だったもので、両方好きなことを追う私の考えにすぐに共感して下さり、意気投合したというのもありました。本当に偶然でしたが、結構自分でないところの扉をこじあけましたね(笑)。

そこでは調理、メニュー開発、カロリー計算、接客、マニュアル作り、新店舗立ち上げ等、色々なことに関わらせてもらい、たくさんの学びを得ました。今ケータリングの仕事をする中でも、スープの大量調理や保存のノウハウも活きていますし、初めて、そこで絵本のノベルティグッズなども作らせてもらい、イラストレーターの経験までも積ませてもらいました。感謝しかないですね。6年間そこで働きましたが、個人で同時にケータリングの仕事もするようになっていて、もっと自由にケータリングやイラストを描く時間を作りたいと思い、スープ屋を退職しました。

もともと好きだった具だくさんスープをスープ屋で学ぶ。 スープはwatoさんの得意料理のひとつ。

もともと好きだった具だくさんスープをスープ屋で学ぶ。スープはwatoさんの得意料理のひとつ。

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スープ屋で作ったノベルティの絵本でイラストを担当。 好きな「料理」を好きな「イラスト」で表現した初めての紙媒体での自分の作品。

スープ屋で作ったノベルティの絵本でイラストを担当。好きな「料理」を好きな「イラスト」で表現した初めての紙媒体での自分の作品。

 

ただ、しっかりと準備をせずに独立したもので、その後貧乏生活で大変だった時も、実はあったんですよ(笑)。半年間、困窮、田舎での充電期間を経て、書き溜めたイラストを展示したりして、そこからフリーランスを本格的にスタートさせました。

ケータリングの仕事でも、色々な偶然が重なりました。夜遅く吸い寄せられるように入った銀座のとあるギャラリーで、マネージャーさんと意気投合して、ギャラリーの展示のオープニングとクロージングでしばらく専属のようにケータリングをさせてもらっていた時期がありました。そこで出会った方にも、声をかけて頂き、ケータリングをしたこともありました。そうやって、何度もケータリングの仕事をしているうちに、以前のケータリングで私の料理を食べて下さっていた広告代理店の方から、数年してご連絡があり、サントリーさんのホームページで、四季ごとのメニューを紹介する仕事をさせて頂く機会を得ました。

当時は料理撮影業界のことなど何も知りませんでしたが、せっかくお声がけ頂いたのだからと撮影の世界に飛び込みました。何を用意していいのかもわからずに、手探りで撮影に臨んでいましたが、スタッフのみなさんに助けられながら、5年ぐらいその企画は続きました。

さらに、サントリーさんのお仕事をしたことで、色々なメディアのお仕事のご縁を頂くことにつながり、そこから先は偶然の連鎖でした。フードコーディネ-ター兼管理栄養士の人を探していた anan編集部の方が、サントリーさんのホームページで私を見つけて下さりご連絡を下さったんですよね。そして今度は、その『anan』を見て、『MORE』や『オレンジページ』など、様々な媒体からお声がけを頂くようになり、『anan』では連載を4年間持たせて頂きました。その後 FMラジオ J-WAVE でのお仕事も7年間ほど頂き、全然計画的にそこに向かおうとしていたわけではないのですが、ご縁があって、うまい具合に歯車がかみ合って、いまもお仕事を続けさせて頂いています。

出発点はケータリングを自分で始めたことでしたが、私には時代時代にキーパーソンがいて、その人と出会うことで、世界や仕事が広がっていきましたね。ケータリングも積極的な営業は実はしていないんです。お客様の口コミでお仕事を頂いていて。

どうしてそんなご縁が頂けているのかはわかりませんが、ただ言えるのは自分のやりたいことだけをチョイスしていたので、その場が楽しい空気だったのかもしれませんね。来る人も楽しい空気を共有してくれていて、「こんなに楽しいならまた頼みたい」と思ってもらえたのかもしれません。撮影の仕事にしてもそうなのですが、もともと、皆がわいわい集まる場所が好き、その真ん中においしいものがあるとみんなもっと楽しい、その役に立つと嬉しいなって、思いながらいつも料理をしています。よく笑っていると人に言われますね。

お会いした瞬間に包まれるハッピーオーラ。楽しくして幸せそうなwatoさんの笑顔や居心地の良さ、楽しそうに料理するその姿が自然とたくさんの人を引き寄せるのかもしれない

お会いした瞬間に包まれるハッピーオーラ。楽しくして幸せそうなwatoさんの笑顔や居心地の良さ、楽しそうに料理するその姿が自然とたくさんの人を引き寄せるのかもしれない

 

<フードコーディネ-ターとはどんな仕事?>

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いま主にしている仕事はレシピ作成や撮影、あとはケータリングです。

レシピ作成や撮影の場合は、撮影の前後に、アイディア出し、買い出し、試作、スタイリング準備、原稿作成等々があります。撮影は品数にもよりますが、10〜17時の時もありますし、12時間ぐらいかかる時もありますし、書籍だったりすると8時集合で終電までみたいな日が3日間ぐらい続く時もありますね。

レシピ作成は分量や時間を計測しながらする細かな仕事です。数字を扱いますが、栄養士の時の経験が活き、結構それはそれで好きなんですよね。塩分とカロリーに気を付けたレシピなんていうオーダーを頂くと、おいしいからといってそのままレシピ化できるわけでなく、そこにカロリー計算も加わり、塩分を抑えて薄味でもおいしくなる食材の組み合わせなどを考え、本当にパズルのように頭を使って仕事をしますね。

それとレシピ作成は、文章も書くため、文章力もあったほうがいい仕事です。間に入って下さるライターさんがいない時は、手順を考えて自分が書かないといけません。親切丁寧に書きすぎると、初心者の方には読みづらくなり、かといって簡潔過ぎもよくない。媒体によって字数も異なり、構成能力と計算力も使いますね。

ケータリングについては、打ち合わせから始まり、メニュー提案、見積もり提示、買い出し、仕込み、調理、当日の搬入や盛り付け、片付けといった仕事がありますが、準備から片付けまでで、大きなイベントの場合大体1週間ぐらいかかります。ケータリングは華やかそうに見えて、とても体力を使う仕事です。買い出し、荷造り、片付けだって大量なので一苦労です。段取りを考えるのも難しいですよね。最初は全然できていなくて、徹夜が当たり前でした(笑)。「足りるかな? 足りるかな? 来た人みんなおなか一杯にしたいなぁ」と思うと、つい作りすぎてしまったりと、予算管理も難しいです。

でも、これ入れてみよう、こう盛り付けてみよう、などなど、自由なひらめきで変えていけるという部分は、撮影とはまた違った楽しさを感じます。

ケータリングって、ご依頼くださった方にとっては、ちょっと特別な非日常、つまりハレの日の食事なんですよね。だから、その期待に応えたいってついつい頑張っちゃうんですよね。皆さんが喜んで食べて下さっているのを見ると、単純に嬉しくなって、大変だったことも吹き飛んじゃうんです。

期待に応えたくて、おなか一杯に食べてほしくて、ついつい頑張りすぎてしまうケータリングはなかなかの体力勝負な仕事

期待に応えたくて、おなか一杯に食べてほしくて、ついつい頑張りすぎてしまうケータリングはなかなかの体力勝負な仕事

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今はケータリングは月2本ぐらいです。他には、いくつか連載のお仕事をしています。雑誌『OZmagazine PLUS』ではお弁当レシピ、『栄養と料理』では季節ごとのレシピ、東洋水産HPではマルちゃん製品を使ったレシピなどを紹介しています。

栄養の知識をベースに仕事をさせて頂いていますが、今はさらにそこに「楽しんで食べることも大事」なのかな思っているんです。「おいしくなぁれ」と思って作っていれば、やっぱりおいしくなるし、「楽しいね」「おいしいね」と言って感謝して食べていれば、身体にもいい気がして。「からだもこころも健やかになる食事」や「食べる環境」にも興味があります。

栄養やバランスだけでなく、「おいしくなぁれ」「楽しいね」がそこに加わることでこころもからだも健やかな食事に。

栄養やバランスだけでなく、「おいしくなぁれ」「楽しいね」がそこに加わることでこころもからだも健やかな食事に。

栄養やバランスだけでなく、「おいしくなぁれ」「楽しいね」がそこに加わることでこころもからだも健やかな食事に。

 

著書もたくさん。自分でイラストも描く。

著書もたくさん。自分でイラストも描く。

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<一日の仕事スケジュールは?>

撮影の日は…
8:00    
撮影のため集合 → その後ずっと日中は撮影
17:00   解散
帰宅後 レシピ作成、挿絵作成、メールや事務処理

 


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<仕事のやりがいや面白みはどんなことですか?>


おいしいと言ってもらうことももちろん嬉しいですが、最高の誉め言葉は「おかわり」なんです。人が喜んでくれることが自分の喜びなんだと思います。おいしいものをいっぱい食べてもらえた、そういう瞬間は嬉しいですね。単においしいだけでなく、作ったもので、誰かの活力になれていると思えるとさらに嬉しいです。

料理を作るというクリエイティブな作業ももちろん楽しいですが、それを食べている人をただ眺めているのもまた、楽しくて嬉しいんですよね。

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watoさん5

皆でわいわい食事を囲めるアトリエ。アトリエのこのカウンターから、皆がおいしそうに食事をするのを見守る時間がただただ嬉しい。

 

watoさん4

アトリエの壁に自分で絵を描く。ほっこりするアトリエはなんとも居心地が良い。

 

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<もっとも嬉しかった経験はどんなことですか?>

毎年恒例になっているケータリングのお仕事があって、日本酒の八海山さんと、1月に七草の節句、9月に重陽の節句のイベントを開催させて頂いているんですけれど、もう6年も声をかけて頂いているんです。料理をしていて一番うれしい言葉は「おかわり」と言われることですが、お仕事もそうやって継続して声をかけて頂けるということは「おかわり」と言って頂けているということ。すごくありがたいですよね。おかわりと言って頂いて初めて、去年のあの仕事はあれでよかったんだなってほっとします(笑)。

あとは、憧れのケンタロウさんに私の作った料理を食べて頂けたことがあり、お母様の小林カツ代さんとともに「おいしい」と言って頂いたのは、忘れられない記憶です。.

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<逆に今まででもっとも大変だった経験や辛かった経験は?>

基本的に大変だったことって、結構すぐ忘れちゃうんです(笑)。いつも大変で、いつも楽しくて、なんですよね。

一番の失敗は、ホールケーキをすごくかわいくデコレーションして届ける途中で、人にぶつかってひっくり返してしまったことがあって、その時は パニックで理解できない状況になってしまい、そばを歩いていた方に助けてもらったほどでした。不幸中の幸いですが、夜のパーティ向けのケーキだったのを、昼にお届けしようとしていたので、急いで家に帰って、泣きながら、どうにか作り上げましたね。

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<フードコーディネ-ターの仕事の未来はどうなっていくと思いますか?>

 

食べることは人に必要なので、需要がなくなることはないと思います。ただ、昔よりも、食に対して色々な考え方が増えてきていますよね。マクロビオテック、ローフード、一日一食、もしくは食べないなど。基本的にはなんでもまんべんなく食べることがいいとは思いつつ、絶対にこれがいい、とは言い切れないとも思っています。自分自身も全てを試したわけではありませんしね。別の考えを否定するのではなく、人それぞれの体調、体質、思想、育ってきた地域や環境などを加味して、身体と食事というものを考えていく必要があると思います。色々な食事のあり方が生まれてきているからこそ、それぞれの領域でレシピを作っていく仕事なども今後はニーズがあるのではないでしょうか。

あとは個人的には、日本各地のおばあちゃんたちが作ってきた郷土料理をレシピにして保存するような活動もしたいなと思っています。郷土料理にはその土地しか使わない食材や、歴史、物語があり、そういったものをもっと知りたいですね。そしてその食材で新たなレシピ提供を考えるなど、食を通して地域交流もしてみたいです。

私の祖母に教えてもらった押し寿司も、お子さんや企業さんの交流イベントの一環でお教室をやらせて頂いたこともありますが、みなさん楽しそうに参加して下さりました。

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おばあ様に教えてもらった押し寿司。日本各地のこうした郷土料理を保存していきたい

おばあ様に教えてもらった押し寿司。日本各地のこうした郷土料理を保存していきたい

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<今の仕事と同じように向いていそうな仕事はありますか?>

食品企業の研究室にも興味があります。レシピ作成のための、試作の繰り返しも、まさに実験のような感じですしね。細かい作業がけっこう好きなんです。
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キャリアカウンセラー舛廣純子の  シゴトのチカラ考察 
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お会いした瞬間に「ハッピーオーラの方だ」、そう思ったwatoさん。

伺ったアトリエも含め、笑顔も声も所作も全てが温かで優しくて包み込んで下さるそんな空気を持っている方、楽しく居心地の良い空気を作って下さる方― watoさんの最大の魅力であり武器は、もしかすると「この人と一緒に仕事をしてみたいな」そんな風に思わせる心地よく楽しい空気感なのかもしれません。

キャリアを伺っていると、転機のたびにチャンスや気付きを与えてくれる人がいて、キャリアは好転し、展開していきましたが、それにはきっとそんなwatoさんの人を惹きつける力が影響していたのではないかと思います。もちろんそれはwatoさんの明るく穏やかでオープンマインドな性格も強く影響していると思いますが、おっしゃる通り「やりたいことだけをチョイスしていた」からこそ、そこに楽しい空気やエネルギーが生まれていたのではないかとも思います。

加えてwatoさんのベクトルはいつも自分ではなく「相手」にあります。仕事を下さるお客様、目の前で自分の食事を食べる人、一緒に仕事をする人―単に自分の好きなことに突き進むエネルギーだけでなく、常に周囲を気配り、「相手」のためを思い、「好きなこと」×「相手」にエネルギーを注げるからこそ、まわりには人が集まり、人や仕事のご縁が舞い込んでくるのだと思いました。

相手の求めているものを汲もうとする「コミュニケーション力」の高さはフードコーディネーターだけでなく、どんな仕事にも大切なチカラだと思いますし、フリーランスで仕事を成功させるためにはより一層必要なチカラなのだということを改めて感じました。

一見華やかに見えるフードコーディネーターの仕事ですが、レシピ作成は実験のように、何度も計測したり作りなおす「コツコツ続けるチカラ」が必要だったり、ケータリングでは大きな鍋や大量の食材を持ち運んだり、何日間もかけて作るなど体力勝負な一面も。さらにはレシピ作成には文章構成能力も必要とされます。

「コミュニケーション力・ホスピタリティ」× 「理系的な数値管理」 × 「体力・ガッツ」 × 「文章構成能力」 ― フードコーディネーターは結構マルチにいろいろなチカラが必要な仕事なのかもしれません。

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watoさん手作りのチーズケーキをご馳走になる。watoさんのように優しい味。幸せな味。

watoさん手作りのチーズケーキをご馳走になる。watoさんのように優しい味。幸せな味。

 

(次回もお楽しみに。毎月2回、第2第4月曜更新です)
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PEOPLE 04 舛廣純子(キャリアカウンセラー)
就職は子育ての最終章。就活生の親に読んで欲しい本を出版

 


舛廣純子

舛廣純子

ますひろ じゅんこ フリーランスキャリアカウンセラー。1972年、東京都出身。日本女子大学人間社会学部文化学科卒業後、化粧品商社に営業職として入社。会社の民事再生、自身の出産・育児を機に2 回の転職を経験。自らの転職経験からキャリア支援に関心を持つようになり、社会保険労務士、キャリアカウンセラーの資格を取得。2007 年、キャリアカウンセラー・講師として独立。大学生の就職支援・キャリア教育、社会人の転職支援・キャリア形成支援を中心に活動。支援学生の高い就職率とわかりやすいセミナーには定評がある。特技は長所探し。2013年12月に学研教育出版から『就活生に親が言ってはいけない言葉 言ってあげたい言葉』を出版。ブログ:http://ameblo.jp/shuukatsumamanoblog/