TOOLS 20 後悔しない道の選び方(後編)/舛廣純子(フリーランスキャリアカウンセラー)

自分があれだけ調べて考えて選んだのだから頑張ろう
TOOLS  20
後悔しない道の選び方(後編)
舛廣純子(フリーランス キャリアカウンセラー)

自由に生きるために
自分の意思決定スタイル(くせ)を知ろう

ーーー
ーーー

 

前回は、自分で決められないタイプについてお話ししました。今回は逆に、自分で決めるタイプについてです。自分で決める、「意思決定を実行する」スタイルにおいても、注意が必要なスタイルやケースと言うのはあるのです。

意思決定を実行する 4つのスタイル

私は完全に「自分で決める」=意思決定を実行するタイプです。日常、何を食べるのかといった些細なことに関しては、人任せにしてしまうこともありますが、大きな道はすべて自分で決めてきたなという自覚があります。ただし、「自分で決める」からと言って、自分の選択に後悔が一度もなかったわけではありません。自分の陥りがちな意思決定スタイルを知ったことで、だんだんと悔いのない意思決定ができるようになってきたように感じています。

⑤ 直感的

考えるよりも、フィーリングや感覚を大事にする、「直感」に基づいて道を決めていく意思決定するタイル
ーー
「ピンときた!」「びびびっときた!」「~な気がする!」こんな言葉をよく言う方は直感スタイルの人が多いですね。かつての私自身がまさに「直感的」でした。直感と言うのは、今までの経験に裏打ちされて、生まれてくるものでもあるので、この意思決定スタイルもある意味理にかなっているところはあるのですが、自分の経験や判断に基づく直感だけに頼ってしまうと、意思決定に至るまでの考える時間が短く、どうしても限定的な情報からの判断に陥り易かったり、物事を複合的な側面から見ないため、「もうちょっと調べて決めればよかった」という後悔にもつながります。「良く調べたうえで、最後の最後は直感を大事にする」ぐらいが、いいのかもしれませんね。

⑥ 衝動的

「直感的」以上に、もっと何かに突き動かされるかのごとく、一つの選択肢を選んでしまうスタイル
ーーー
「衝動買い」とはよく言ったもので、たとえば、靴を買おうと決め、「ピンと来て」買い物をするのが「直感的」であるとしたら、「衝動的」なスタイルは、そもそも靴を買うことすらも考えていなかったのに、「タイムセールですよ~」の声を聞き、店頭の最前列にあった靴を衝動的に買ってしまう、でもよく考えると、靴を買う必要は全くなかった、そんな意思決定と行動の仕方を言います。

あまり、キャリアのように大きなものを決める際の意思決定、特に新たな道を選ぶ場合にはないスタイルかもしれませんが、「会社を辞める」なんていう意思決定は結構「衝動的」であることも多いのではないのでしょうか。

行動へのスピードが速く、チャンスをつかめることもある反面、「なんであんなこと言っちゃったんだろう」「どうしてもっと考えなかったんだろう」「あ~、あの時に戻りたい」そんな「決めてしまった人」特有の後悔がもっとも多いスタイルです。

衝動的な意思決定に陥る引き金は、感情の爆発や焦燥感も多いので(衝動買いも今買わなきゃなくなる、という焦りが誘発する場合が多いですよね)、感情のコントロールが難しい人、焦りやすい人は、そうなりそうなときには、意思決定までに意図的に時間をかけるといいですね。

「よく調べようよ」「えー、次のに乗っちゃおうよ」

「よく調べようよ」「えー、次のに乗っちゃおうよ」


⑦ 苦悩的

自分で意思決定しようと、情報を多く集めすぎて、意思決定に時間がかかりすぎてしまうスタイル
ーーー
これもカウンセリングでご相談者の多いスタイルです。複数内定を獲得した学生が、一社を選ぶのに悩んで駆け込んでくる、なんていうのもこのスタイルです。このスタイルの方も、頭の中でもんもんとしていることが多いので、情報をしっかり整理して書き出したり、その情報が信ぴょう性の高い情報なのか否かを吟味、整理していきます。ただ、最後の最後は、自分が何を大事にしているのか、自分にとって本当に譲れないものは何なのか、それを明確化することがもっとも大切です。全く同じ選択肢が並んでも、人によって満足のいく選択肢は異なるわけですから、結局は最後は「自分は何を求めているのか」なのです。

⑧ 計画的


複数の選択肢、それぞれの選択肢の情報収集・比較から、客観的・合理的に意思決定をするスタイル
ーーー
これが、もっとも後悔が起きにくい意思決定スタイルと言えます。私も人生で幾度かの意思決定の失敗(前向きに言うと学び、笑)を経て、最近はこのスタイルを選択することも増えました。

就職において、沢山の企業説明会や面接に行き、できれば複数内定を獲得して、吟味した上で、会社を選ぶことを勧めるのはそのためです。もちろん、この意思決定スタイルが絶対的な正解ではありませんし、直感的に最初に出会った企業に就職することがハッピーにつながる人ももちろんいます。

ただ、時間をかけて「自分で見て(情報を集めて)」「自分で考えて(比較して)」「自分で決めた」意思決定は、意思決定したあとにネガティブな事柄が起きたとしても、「だって自分であれだけ調べて、考えて、自分の意思で決めたんだからしょうがない」と「腹をくくれる」ことにつながります。

「腹をくくれる」ことが頑張りや踏ん張りにつながり、簡単には乗り越えられなかったものを乗り越えさせる力の源泉になったり、乗り越えたことが、その人が自分を信じる力にもつながります。
ーーー

自分で考えて決めたがゆえ苦難を乗り越えた
「計画的スタイル」の女子学生
ーーー

以前、5社も内定を獲得した学生がいました。彼女はわずか3か月間で5社から内定を獲得したのですが、最終的に意思決定するまでには2カ月近くの時間をかけました。ただ、頭の中でもんもんと悩むのではなく、自分の心配している点を書きだし、それを確認すべく、企業の人事の人や先輩社員に話を聞き、一つ一つ自分の目と足を使って調べ、吟味しました。中には、自分が心配していた労働条件の問題は、それほどクリアにならなかったこともありましたが、大切なことは「自分が調べて納得したうえで決めた」ということでした。

彼女は「この会社だ」と思って一つの企業を選び、入社したのですが、入社した年に景気ががくんと悪くなり、その会社の経営も窮地に立たされ、入社一年目にして多くの同僚が辞めていく事態を目の当たりにしました。

でも彼女は「自分があれだけ調べて考えて選んだのだから頑張ろう。私が選んだ会社なんだから。一年目で辞めたって、どこに行っても使い物になんかならない」と思い、同僚が次々と辞め、不安にさいなまれたり、労働環境も劣化していく中、その会社にとどまり、地道に仕事を続けました。「自分が選んだ」という自己責任の意識が彼女の唯一の支えでした。

やがて、その会社は景気が悪い中でも、業績を回復させ、会社が窮地に立たされた中でも地道に仕事に取り組み続けた彼女は、3年目にして異例の昇進を遂げました。彼女は「あの時辞めなくてよかった、自分が選んだ道を信じて歩み続けて良かった」と私に言ってくれました。自分でしっかりとした意思決定をすることが、いかに人を強くし、苦難を乗り越え、成長させてくれるか教えてくれたケースでした。

あなたは、悔いのない意思決定ができていますか?

—-

後悔しない道の選び方

1. 自分の意思決定スタイルのクセ、偏りを知る
2. 意思決定の時は一度立ち止まり、回避しやすい人であるならば、回避してしまう理由や回避したその先の未来を考えてみる。意思決定を実行する傾向の人であるならば、実行において不足しているもの(比較する情報、検討する時間、自分の軸の明確化等)はないか考えてみる。
3. 最終的にどの意思決定スタイルを選ぶのかも自分の意思決定であるが、「自分で決めた」自覚を持って、物事を決める。


Photo:drinks machine,Stéfan

 


舛廣純子

舛廣純子

ますひろ じゅんこ フリーランスキャリアカウンセラー。1972年、東京都出身。日本女子大学人間社会学部文化学科卒業後、化粧品商社に営業職として入社。会社の民事再生、自身の出産・育児を機に2 回の転職を経験。自らの転職経験からキャリア支援に関心を持つようになり、社会保険労務士、キャリアカウンセラーの資格を取得。2007 年、キャリアカウンセラー・講師として独立。大学生の就職支援・キャリア教育、社会人の転職支援・キャリア形成支援を中心に活動。支援学生の高い就職率とわかりやすいセミナーには定評がある。特技は長所探し。2013年12月に学研教育出版から『就活生に親が言ってはいけない言葉 言ってあげたい言葉』を出版。ブログ:http://ameblo.jp/shuukatsumamanoblog/