「起業=自由な生き方が手に入る」との思い込みから、複数の起業塾にこれまで参加してきました。その度に、「起業は大変です。本当に覚悟はありますか!?」と詰められるような問いかけを受け、挫折を重ねることにところが、昨年、ポートランドの起業家との出会いがキッカケ
ポートランドに学ぶ、等身大起業のはじめかた
伊藤知子 ( キッチン・ダイアローグ/ 起業準備中 )
自由に生きるために
片思いのような勢いから、はじめよう
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起業って、一生続ける覚悟がないと始められないもの、始めるのにはちょっと心理的ハードルが高い…というイメージ、ありませんか。
私自身、「起業=自由な生き方が手に入る」との思い込みから、複数の起業塾にこれまで参加してきました。その度に、「起業は大変です。本当に覚悟はありますか!?」と詰められるような問いかけを受け、挫折を重ねることに…。
ところが、昨年、ポートランドの起業家との出会いがキッカケで起業に対するイメージが大きく変わったのです。スモールビジネスやお一人様起業であれば、誰でも気軽に始められる、挑戦しないのはもったいない! そんな気持ちにさせてくれた、恋するように起業するパム・ウェストラさんの物語を、ご紹介します。
パムさんの話を聴いていると、起業って、片想いに似ているのかもしれない、と感じます。相手を思い、恋する気持ちって止められませんよね。
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ポートランドとタイニーハウスに恋をしたの
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恋をする少女のような目でタイニーハウスホテルについて語ってくれる、オーナーのパム・ウェストラさん。
タイニーハウスとは、アメリカで始まった一つのムーブメント。一言で言うと、「小さな家で無駄のないシンプルな暮らしを!」という価値観に賛同する人たちの暮らしの在り方と言えるでしょうか。家の土台の下に車輪がついていて移動可能なタイニーハウスもあります。ただ、タイニーハウスについての明確な定義はありません。
パムさんが経営するタイニーディグスホテルは全部で7棟。1棟当たりは、ビジネスホテルのシングルルーム位の広さで、2-4人宿泊可能となっています。写真で見るタイニーハウスホテルは、ホテルと言うよりも、少し大き目のミニチュアの世界のよう。
・アジアやオリエンタルをテーマにしたバンブーハウス
・ヴィクトリア調のアンティークがテーマのコテージハウス
・鉄道の車両をイメージしたアーサーハウス…など
とにかく一棟毎の世界観が緻密に表現されたユニークなタイニーハウスばかりです。ヴィクトリア調のアンティークをテーマにしたコテージハウスは、2年間かけてこだわりのインテリアを収集し、漸く完成したそうです。
パムさんのホテルは、ホテルズドットコムで10点中9.6点の評価を得ています。リピーター顧客も多く、リピーターの方たちは、前回とは違うテーマのタイニーハウスに宿泊することを楽しみに再訪される、とのことでした。5つ星のホテルの価格よりリーズナブルな費用で、同等のホスピタリティーを提供することを大切に、5つ星のサービスを提供したいという心意気を持ったスタッフの雇用・育成にも注力しています。
もともと特別支援学校の教師をしていましたが、早期退職。その後、パートナーの経営するウェルネスセンターの事務を担当。パートナーの引退を機に、二人でキャンビングカー1台で暫く旅行を楽しんでいました。息子がポートランドに引っ越したので、何度も息子を訪ねるうちに、すっかりポートランドの街のファンになってしまったそうです。
パートナーとの旅行中に出会ったタイニーハウス。 パムさんと息子さんが、すっかりタイニーハウスの虜になってしまいます。お気に入りのタイニーハウスを見つけて写真を送り合う、アイデアを出し合うなどして、ビジネスのアイディアを温めていました。 すでに、タイニーハウスホテルをやっている人がポートランドにいるから「先達に教えて貰いながらやったほうが速そうだ」とパムさんは引越しを決意します。「タイニーディグスホテル」を開業する間、家探しの時間も惜しんで、キャンピングカー1台で暮らしていたそうです。
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恋は盲目、とにかく前に進み続ける
私自身、「とにかくフットワークが軽い!」と知人から口を揃えて言われるのですが、パムさんのフットワークの軽さにはとても驚かされます。まだ、ホテルの場所が決まる前から、タイニーハウスの建設を始めてしまったのです。しかも、タイニーハウスのデザイン、設計から建設まで、全て自分達でやったと言います。
もちろん、タイニーハウスを建てたことがある経験者はいません。デザインに関しては、知人が0からオンラインでクラスを受講し、習得したと仰っていました。建設担当はパートナーと息子さん。「やったことがないから出来ない」という壁なんてないかのようなパムさんの突貫力・突破力に目を見張るばかりです。
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私の恋は片想いに終ってしまうの…!?
タイニーハウスホテルの経営に漕ぎつけるまでに最も苦労したのは、タイニーハウスを設置するため、土地の利用許可を取ることだそうです。市からは、「舗装してあって、フェンスがあること」という条件を突きつけられます。
加えて、ポートランド市では土地の利用許可を得るための費用が非常に高く、想定していた額を遥かに上回る額であることが分かり、「もう私の夢は叶わないかもしれない…」と落胆したパムさん。資金の問題は、旅行中に出会った仲間で、ポートランドに引っ越した友人がビジネスパートナーとなり、解決の糸口が見えてきました。
一方、土地探しは依然として難航。土地の利用許可や都市計画にまつわるルールが頻繁に変更されるため、8ヶ月かかったそうです。
「すでにタイニーハウスの建設は完成していたから、土地探しは必死でやったわ。毎週末、ポートランド中の目ぼしいエリアを片っ端からリストアップして、車で見学に行って、の繰り返しだった。」
とお話されていました。苦労話すらも愛おしそうに話すパムさんを見ていると、起業するプロセスの一つ一つを心から楽しんでいる様子が伝わってきます。
タイニーハウスとの恋が見事に成就したパムさんですが、私がお会いした時、実は大きな決断をされていました。息子夫婦がポートランドから引っ越すので、「タイニーディグスホテル」の経営を第三者に任せて、息子夫婦の近くに引っ越すことに決めた、とのこと。後継者を探し中という状況で、実際に見つかったかどうかは、分かりません。これから何をする予定なのですか?と尋ねると、
「まだ先のことは明確には決めてないの。ビジネスを継いでくれる人がその人らしさを発揮して、タイニーディグスホテルに新しい風を吹かせてくれたら、と思っている。もしかしたら、一棟だけ、どこにもないユニークなタイニーハウスホテルを建てることは今後やるかもしれないわ。」
と返ってきました。もうパムさんは、既に未来の可能性、新たな恋に想いを馳せているようでした。
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まさかの一目惚れ
パムさんと出会った旅の中で、私も恋に落ちました。それも一目惚れっ!ポートランド郊外で畑を営むミーガンさんの農園で頂いたファームトゥーテーブルランチは、忘れられない食事となりました。
大麦畑の前で、藁で出来た食卓で頂く大麦とキノコのサラダ。畑から採れたての食材で用意された昼食は、ミーガンさんの食材への愛が溢れ、食材のエネルギーを感じる物ばかりでした。ゴワゴワした口当たりと苦味が苦手で避けてきたケール。ミーガンさんの畑で採れたケールサラダのケールは口当たりも柔らかく、全く苦味もありません。
ミーガンさんの作った料理を最初に口に運んだ時、初めて会う見ず知らずの私のために、心を尽くして料理を振る舞ってくれたことに、感謝の気持ちが溢れ出てきました。同時に、ミーガンさんのお料理を通して、自分という存在が、とても大切にされている、と感じました。
テーブルに着いた瞬間、私の頭の中でピカン!と稲妻のような閃きが走りました。このファームトゥテーブルの経験を多くの人と共有している情景が一枚の写真として目の前にパッと現れたのです。私が、ミーガンさんの畑で経験したことを、もっと多くの人と共有したい!そして、まだ形の見えない事業を、「キッチン・ダイアローグ」と名付けました。
まず、YOGAで自分の身体と向き合う。その後、自然の中で、地産地消の食材で作られたご飯を食べる経験を共有しながら、対話する。自分と繋がり他者や地球との繋がりを感じる最高のセルフケアの時間を提供したい。ポートランドで、新しい夢に出会うことができました。
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恋は焦らず
パムさんが「タイニーディグスホテル」の開業に漕ぎつけるまで、5年以上前からタイニーハウスをビジネスにするアイディアについて構想していたそうです。恋も起業もチャンスは突然にやってきます。
だからと言って、焦りは禁物。今、好きなことが分からない、見つからないと焦る必要は全くありません。ただ、恋の波が来たら、波に乗れるよう、自分の心のアンテナは常に張っておきましょう。自分の中の ”小さなやってみたい!” を一つずつ実践して形にしていくことも、恋に備える一つの方法かもしれません。
個人的にオススメなのは、例えば旅行などで「立ち止まる時間」を強制的に創ることです。私自身、次の仕事が決まるまでに少し時間があったので、「今しかない!」と感じ、ポートランドのスタディーツアーに申し込んだことで、パムさん、そしてミーガンさんの畑にも出会うことができました。
その3ヶ月後、ミーガンさんの畑を再訪するため、2度目のポートランドをシルバーウィークに弾丸訪問。「キッチン・ダイアローグの実現にどんな形でも良いから関わりたい。」とミーガンさんから心強いエールを頂きました。
もし、実現したいアイディアがあるなら、今すぐ、動き出しましょう。パムさんも、タイニーハウスのビジネスアイディアを思い付いてから、ピンタレスト上でひたすら家の内装やインテリアのアイディアを膨らませる所から始めたそうです。
お一人様起業、スモールビジネスは、決して手の届かない選択肢ではありません。そして、”挑戦する”というプロセス自体を一緒に楽しみませんか。
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まとめ:身の丈起業をはじめるには?
1. いつでも波に乗れるよう、アンテナを常に張っておく
2. 「立ち止まる時間」を強制的につくる
3. ピンタレストなどでアイディアを膨らませる
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