自分で決められない人たちには4つのタイプがあります。進学、就職、退職
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後悔しない道の選び方(前編)
舛廣純子(フリーランス キャリアカウンセラー)
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自由に生きるために
自分の意思決定スタイル(くせ)を知ろう
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私たちの人生には
いったい何度の岐路が
訪れるのでしょう
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大きな岐路で言うと、進学、就職、退職、再就職、結婚、出産、離婚、再婚、引っ越し、死に方etc…。 人生波乱万丈なんて言う人はきっと人よりも岐路の多い人生を送っている人なのかもしれませんね。人生なんていう大きな視点での岐路でなくても、私たちの日々は毎日岐路、選択の繰り返しです。何を食べるか、何を着るか、どんな道を歩くか、誰と過ごすか・・・意識・無意識かは別として、日々私たちは何かを選択して生きているのです。
数えきれないほどの選択をしている私たちですが、その選択=意思決定の仕方には実は癖があります。あなたも、振り返ると人から「優柔不断ね」とか「考えなしだな~」「人任せなんだから~」とか言われたことはありませんか? 別に何を食べるか、何を着るかといった、日常の些細な選択=意思決定なら、多少くせが強くたって、その後の人生に大きな影響を与えることは多くはないはずですが、就職や結婚といった大きな人生・キャリア上の選択で、くせが強いと、自分の人生に及ぼす影響も結構大きくなっていきます。
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「決められない」でチャンスを逃してしまった
「決めてしまって」失敗した
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意思決定の仕方によって、実は、人生を悔いる瞬間が出てきてしまうこともしばしばあるのです。だからこそ、キャリアカウンセラーである私は、ご相談者の方の意思決定に関わる(見届ける)瞬間を大事にしています。自分の下した意思決定に後悔などしてほしくないから、「意思決定の仕方」を見届けます。
では、その「意思決定の仕方」ってどんなスタイルがあるのでしょうか。キャリアの理論でも、意思決定の理論はいくつかありますが、今回はわかりやすい「ディンクリッジの意思決定スタイル」を(2回に分けて)ご紹介したいな、と思います。
自分の意思決定のスタイル(くせ)を知ることは、きっと悔いのない意思決定ができるようになることにつながっていくはずです。
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意思決定を回避するスタイルと
実行するスタイルがある
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ディンクリッジの意思決定スタイルは全部で8つありますが、大きく分けると意思決定を「回避する」スタイルと「実行する」スタイルの2つに分かれます。つまり「(自分で)決めない」と「(自分で)決める」という2つに分かれるということです。
さて、あなたは、どちらの意思決定が多いタイプでしょうか?
ご相談者に多いのはやはり、「(自分で)決めるのが苦手な人」の方が圧倒的に多いです。決められないから相談するわけで、ある意味当然ですよね。
では、「回避する人=決めない人」「決めるのが苦手な人」って、具体的にどんなスタイルがあるのでしょう。
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意思決定を回避する4つのスタイル
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① 延期
「決めるのや~めた」と決めるのを意識・無意識的にどんどん先送りしていくスタイル。「転職しようかどうしようかな、でも今は考えるの、とりあえずや~め~た」そんな感じでしょうか。忙しい人(時)、辛抱強い人、面倒くさがり屋な人、自信のない人、いろいろです。
時には「年をとって転職するのがこんなに大変になるなら、あの時先延ばしにしないで、もっと早くに転職しておけばよかった」なんてこともありますが、「あの時、転職活動を先延ばしにしたから、その後思いもよらず昇進し、会社に残っていてよかった」と意思決定を延期していたことが功をなすこともあったりします。
ただし、転職においてはこの「回避」が功をなすことはありますが、採用期間が限定される新卒の就職活動に関しては、この「回避」癖が命取りやチャンスロスになることのほうが圧倒的です。また、延期する人に多い「面倒くさい」と言う言葉は、実は自信のなさや、プライドの高さが原因であることも多く、「面倒くさい」と言う言葉を額面通り受け取らないことも大切です。自信を持てたり、勝算をつかめると、急に意思決定や行動促進に至ることもあります。
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② 運命任せ
「なるようにしかならない」的な成り行き任せの発想で、かつ自分からは行動を起こさないスタイルです。
「どんぶらこっこすっこっこ」と川の流れに身をゆだねるような人生なわけですから、ある意味柔軟ではありますが、受け身な意思決定で、自分では決めないので、「自分の意思決定に責任を持つ」、という感覚はあまりなかったり、「自分で自分の道を作っていった」という自負や自信は持ちにくいスタイルです。腹をくくっているとも見えますが、何か状況が悪い方向に傾いたとしても、「自分のせい」と自分を責める必要も、自分が「決めてしまった」ことにより、傷つく必要もないのかもしれません。
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③ 言いなり
私のように学生や若年者支援の仕事をしていると、最もご相談で多いのはこのタイプです。就職や結婚など自分の大事な進路に関しての意思決定を親や先生の意向に沿い、決定して行ってしまうスタイルです。夫の意向に沿って、仕事をするか否かを決定する妻、という状況にもあてはまりますね。
このスタイルの特徴は、言いなりになるのに葛藤がある人とない人がいることです。学生や専業主婦の妻という経済的保護を親や夫にされている人(妻の場合は、家事労働をしているので、本来的には保護ではないはずなのですが、夫が保護していると主張するケースはとても多いです。)の場合は、自分がどんなに自分で道を選びたくても、圧力をかけられたり、猛反対されると言い返せなかったり、葛藤があるケースはとても多いです。経済的な保護という圧力だけでなく、相手の意思を尊重する「優しい」人も葛藤で苦しみます。こういった方には、どうしたら自分の意思や熱意を、相手と軋轢なく伝えられるか、アサーティブな伝え方(上手な自己主張)を一緒に考えることが、その方の自立的な意思決定につながります。
一方、人の意見に従う依存傾向の高い人や自分の意思決定に自信の持てない人が、常に人にご意見伺いをし、人の意向に沿って意思決定をしていく「積極的いいなり」の人も実は確かにいます。こういう人はカウンセリングの場で必ず、意思決定のアドバイスを私に求め、「ならば」と私の意見をあまり深く考えもせず、ほぼ丸ごと採用しようとするので、支援する側としてはそうならないように注意が必要です。学生の「どっちの会社がいいと思いますか?」などは、その最たる例です。
前述の「運命任せ」と同様、自分で決める責や傷を負わなくて済むわけですが、いつも誰かに決めてもらった人生を歩むことは主体的な人生とは言えませんよね。自分で決めたからこそ精力的に頑張れる、責任を持ってやり続けられる、私自身はそれを身を持って実感しています。なので、意思決定の最後の瞬間はアドバイスを求められてアドバイスはするものの、情報収集を自分の足や目を使ってしっかりすることを求め、「あなたが決めた」ことと「決めた理由」をしつこいぐらいに確認します。
それが支援の最後の「お見送り」と言うか、「看取り」というか、お別れの時になります。
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④ 弱気
決定することに対しての不安が強すぎて、なかなか意思決定を下すことができないスタイルです。「決めなきゃ、決めなきゃ」とは思っているにも関わらず、「決めて間違っていたらどうしよう」と思うと不安で決められない。さらに周囲から、「早く決めな」と決断を迫られると決断を下すこと自体が怖くなってしまう。。。就職活動で行動ができないタイプにも多いスタイルで、先の見えないことに対する不安が行動や意思決定を阻害してしまうのです。
弱気のスタイルの方の多くは、頭の中だけで悶々としていて、冷静さを失っている場合が多く、何を不安に思っているのか、その不安は今悩んでどうにかなることなのだろうか、仮に不安に思っていることが起きってしまった場合の対処法などを紙に書き出すと、少し心が落ち着き、そもそもどうしようもない事柄を不安に思っている自分に気づけたり、安心したりするかもしれませんね。
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当てはまるものがありましたか?
どんなスタイルにおいても、意思決定を回避することは、やはりどうしても「主体的な人生を歩む」ことにはつながりづらいため、意思決定を自分でできるように促していくことが私たちキャリアカウンセラーは多くはなりますが、絶対的に回避すること=間違っていること、と言っているのではありません。「延期」のスタイルの人が意思決定を延期しているうちに問題が解決することがあったり、「運命任せ」の人はある意味柔軟なので、世の中の流れに乗っていき、結果多くのものを手にすることもあります。
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(次週は、後編。今回とは逆に、自分で決める=「意思決定を実行する」4つのスタイルについて考えていきます)
Photo: The Hamster Factor