ちいさなお店をはじめたこと。~等身大で、自由な働きかた~【第32話】オリジナル商品ってどう作るの?

ノマディッククラフトヨメのちいさなお店をはじめたこと。いちからオリジナル商品を制作、と言うと難しく感じますが、私たちもできることから始めて、人の手もお借りしながら現在まで至っています。たまたま私たちはチクチクすることも好きですが、もし「作ってみたいけど、自分ではミシンがないし
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第32話  オリジナル商品ってどう作るの?

 

こんにちは、ノマディックラフト ヨメです。

夏になるとイベントが増えて、最近バタバタしております! というのも、嬉しいことに出店の機会が増えるほど、取り扱いアイテムを見ていただく機会が増える。当然売れてゆく物も増えますから、補充をしなければいけません。

以前にも触れましたが、私たちは

① 完成品を輸入して販売する
② 生地やパーツを輸入して、自分たちでオリジナル製品を作る

というふたつの方法でアイテムを展開しています。①はなんとなく想像がつくかと思うのですが、②の場合「どうやって作っているんですか?」と聞かれることもしばしば。

そこで今回は、オリジナル製品をどう形にしているか、について触れてみたいと思います。
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自分たちのアトリエは
リメイクが中心

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東京・西小山にあるノマディックラフトのアトリエショップは、半分がお店で半分が小さな物づくりスペースになっています。私たちのオリジナル製品のうち、1点物として扱っているのが少数民族の布やパーツを使ったリメイク製品。

たとえば、今シーズンの一番人気アイテムは「リメイクTシャツ」。柔らかいけどルーズに見えない生地感にこだわって、タイで探したVネックのTシャツをボディとして、そこに少数民族の布や刺繍パーツでデザインのアクセントを加えています。

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写真のデザインは、モン族の民族衣装に使われる藍染めヘンプと、古着の民族衣装から取り出した赤いテープを使って胸ポケットを作り、やはりモン族の民族衣装の飾りに使われる丸いパッチワークの飾りをアクセントにしました。

上のTシャツのサイズはLなので、男性が着たきたときや、女性がルーズに着たときにステキになるイメージでリメイクをしています。

ちなみに、下のはSサイズ。女性向けの大きさなので、デザインもレディースを意識したものに。正面は無地のままですが、背面に花モン族の民族衣装で使われる花柄の手刺繍パーツをあしらいました。

ノマディクラフト

どのパーツも、ミシンで縫い付けることも可能ですが、温もりのある風合いを出すために、取付けはすべて店主による手縫いで。このシリーズは、あっという間に売れてしまって嬉しい悲鳴をあげたのですが、なにしろすべて1点物。店主がパーツからインスピレーションを受けて、二度と同じ物を作らないようにデザインしているので、(ヨメにどんなにお尻を叩かれても)パッとは作れません。

また、チープなTシャツボディを使うと全体のイメージが安っぽくなってしまうため、ボディ選びも重要です。残念かつ嬉しいことに、タイで買い付けたボディはすべて無くなってしまったので、いま同等のクオリティが出せるボディを探して、今月中に新作をリリースする予定です。

衣類関係は、このクオリティに納得のいくボディを探して、自分たちでパーツを使ってリメイクする、という方法を主に用いています。型紙から布を切り出し、縫製して…… という方法だと、理想の形が作れる反面、時間とコストがかかります。それをできるだけ削減して、可能なかぎり短時間で品質のよいものをお客様にお届けする、という方法論のひとつが、私たちにとって「リメイク」だと思っています。

 

こちらはシャツのリメイク。綿のプルオーバーシャツをベースに、モン族のろうけつ染めでポケットをアレンジ。ソデ部分にはモン族のストライプ柄のヘンプ布をあしらっています。

こちらはシャツのリメイク。綿のプルオーバーシャツをベースに、モン族のろうけつ染めでポケットをアレンジ。ソデ部分にはモン族のストライプ柄のヘンプ布をあしらっています。

 

リメイクの中には、こんなものもあります。写真のトートバッグは、カレン族の人たちが着ているポンチョを使ったもの。もともと長方形の布をつなげただけのシンプルな作りなので、いったんほどいてバックの本体を作り、余った布地で持ち手を作っています。

補強と使いやすさの面で、バッグの内部に裏地や内ポケットを付けているため、こちらは店主がミシンで縫い上げています。

(左)カレン族の生産者のお母さんが着ているのが、民族衣装のポンチョです。(右)古着のポンチョをベースに、トートバッグにリメイク。

(左)カレン族の生産者のお母さんが着ているのが、民族衣装のポンチョです。(右)古着のポンチョをベースに、トートバッグにリメイク。

 

 

 

プロの方にお願いし
外注制作することも

 

オリジナルを作るもうひとつの方法が、「外注制作」。縫製工場など、外部の人にデザインを渡して作ってもらう、というやり方です。

と言いましても、私たちは縫製工場を利用していません。専門の工場に縫ってもらえばクオリティもよく、1枚あたりの単価も下げられる傾向にありますが、ほとんどの場合「最低でも注文は●枚から」のような「最小ロット」が決まっています。なにしろ私たちはちいさなお店ですから、何十枚何百枚と作っても売り切ることができません。そして、少数民族の布は手作りですから、大量に同じ物を用意するのが難しい、という側面もあります。

そこで、私たちは個人で縫製を請け負ってくれる「縫子さん」に、制作を依頼しています。最初に「こんな商品にしたい」というヘタクソなデザイン画を描き、目安となるサイズ、使用予定の布(表地・裏地)、ジッパーやボタンなどのパーツを用意して、型紙とサンプルを作ってもらいます。サンプルが完成したら、それを見ながらサイズやポケット位置などの微調整を加えて、本番の商品を生産する…… という手順です。

そうやって作っているアイテムの代表が、ノマディックラフトのロングセラー商品「ターイ族のビッグクラッチバッグ&ティッシュポーチ」です。

 

これを縫ってくださっている縫い子さんは、九州在住の主婦の方(今はお引越しされました)。いつもすごく丁寧に仕上げてくれて納期も守ってくれるため、とても信頼しています。

「どうやって知り合ったの?」とよく聞かれるのですが、実はネットの「縫製の仕事大募集」という掲示板で募集をしたのがきっかけです。最初は「東京近郊の方のほうが打合せもすぐできてよいかな?」と思って、近くの縫い子さんに頼んでもみたのですが、遠くに住んでいる方でもこちらの意向をキャッチして思う形にしてくれる人がいる、というのは私たちにとってもよい経験になりました。

友人の作家さんの中には「友だちのお母さん」「自分のおばあちゃん」など、身近な人に縫製をお願いしている人が意外にたくさんいます。縫い物が得意な知人がいたら、空き時間でできるアルバイトとしてお願いしてみる、というのも方法かもしれませんね!

スツールを作ったときも、自分たちでは形にできませんのでオリジナル家具製作を手がける「椚山工房」さんに作っていただきました。

スツール

左のピンク色は、モン族の女性が赤ちゃんをおぶるときに使う背負子(しょいこ)の背当てをそのまま利用したもの。右はターイ族の手織り布をパッチワークにしてお渡ししました。

脚に桜の木を使ったのは、「時間を経るほど色が深く変わり、味が出る素材です」とご提案いただいたため。時が経っても味わいを深める少数民族の布との共通点を感じたからです。こういうアイデアがいただけるのは、作家さんとのコラボレーションならではの良さだと思っています。

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いちからオリジナル商品を制作、と言うと難しく感じますが、私たちもできることから始めて、人の手もお借りしながら現在まで至っています。たまたま私たちはチクチクすることも好きですが、もし「作ってみたいけど、自分ではミシンがないし…… 」という人でも、アイデアと素材と、縫える人の協力があれば、きっと思い描いているものを形にすることができますよ!

次回もちいさなお店からのお話をお届けしますね。どうぞお楽しみに!


(月1回 第4土曜日更新です)

 

 

 ノマディックラフトのイベント出店情報

アースセブレーション2017
8月18日(金)~8月20日(日)  10:00~23:00@小木みなと公園(新潟・佐渡市)
佐渡を拠点に世界で活躍する和太鼓集団「鼓童」が主催。舞台、音楽、アート、文化や芸能を通じて学び舎体験を分かち合うクリエイティブなイベントで、今回が30年目! ノマディックラフトは昨年に続き2度目の出店。会期中はハーバーマーケットに出店いたします。クラフト作家のお店をはじめ、世界各地の物産、飲食店が勢ぞろい。目の前に広がる海や青空の下、新しい出会いや交流の場を作ります。

おちあい公園ピースフェス
8月27日(日)10:00~17:00@落合公園(東京・新宿区)
ハンドメイド、ワークショップ、おいしいフードが盛りだくさん集まる、地元の皆さん手作りの音楽祭。昔、店主とヨメがこの近くに住んでいたご縁から、もう何年も出店させていただいています。

 

 

 連載バックナンバー

第1話 家=店。人が思うよりもずっとちいさな投資でお店をはじめてみた(2015.6.13)
第2話 店から出て人に会う、出会いをつくる。〈イベント出展篇〉(2015.6.26)
第3話 1人2役 × 2。兼業夫婦は不安定? 時間も予定も「自由」のメリット・デメリット(2015.7.11)
第4話 なんで「少数民族の手仕事」? それはやっぱり「好き」だからです(2015.7.25)
第5話 暑さに負けず蚊に負けず。探して洗って、よみがえる古布たち 〈 仕入れ旅篇 〉(2015.8.8)
第6話 どうしてそんなに自由なの!? 現地の人たちと商品を作る(2015.8.22)
第7話 モン族の女性に聞いた、美しい刺繍の裏側にある物語(2015.9.5)
第8話
 小商いでも管理は大切。入るお金、出ていくお金何がある?(2015.9.19)
第9話 ショップカードにネームタグ… 地味だけど重要度は大! お店まわりのこまごま小物(2015.10.3)
第10話 大切さは名前と同じ。自分たちのロゴマークはどう作るか<デザイナー編>(2015.10.17).
第11話 大切さは名前と同じ。自分たちのロゴマークはどう作るか<実践編>(2015.10.31)
第12話 どこまでを手作りと呼ぶ? 手仕事を求める楽しさ、難しさ <買い付け編>(2015.11.14)
第13話 お客様との新たなつながり。看板犬レラが教えてくれたこと。(2015.11.28)
第14話 美しいものよ、輝け!お母さんとの約束。(2015.12.12)
第15話 生産者さんを訪ねて <鳥の笛ネックレス編(2016.1.14)
第16話 生産者さんを訪ねて <アカ族の村編(2016.1.30)
第17話 始まった… 年に一度の確定申告(2016.2.13)
第18話 手仕事は同じじゃないから美しい~『ORDINARY』とコラボグッズを作ったこと(2016.3.11)
第19話 生産者さんを訪ねて<カレン族の村編>(2016.5.21)
第20話 生産者さんを訪ねて<ラフ族の村編>(2016.6.18)
第21話 夫婦で働きながら、煮詰まったときにしていること。(2016.7.20)
第22話 おしゃれに見せるって難しい! イベントのディスプレイで四苦八苦。(2016.8.26).
第23話 ちいさなお店がイベントに出ることQ&A ≪前編≫(2016.8.26)
第24話 ちいさなお店がイベントに出ることQ&A ≪後編≫(2016.11.26)
第25話 ちいさなお店がイベントに出た1年を振りかえる(2016.12.24)
第26話 ちいさなお店の海外買い付け① 買い付け方法と情報集め(2017.01.30)
第27話 ちいさなお店の海外買い付け②航空券の準備 (2017.02.28)
第28話 ちいさなお店の海外買い付け③スケジュール決め&宿探しのパズル (2017.03.31)
第29話 ちいさなお店の海外買い付け④アイテム探しと値段交渉 (2017.04.30)

第30話 ちいさなお店の海外買い付け⑤価格はどう設定するか(2017.06.05)
第31話 寝台特急は楽しい出会いの宝庫(2017.06.25)

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オーディナリー編集部がノマディックラフト参加の展示会を観に行った話

【レポート】遠い国の伝統的な手仕事がいっぱい!

 

【関連サイト】
ノマディックラフト ウェブサイト http://nomadicraft.com/
ノマディックラフト 店主ブログ http://blog.shop.nomadicraft.com/
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木内アキ(ライターとしての仕事) ウェブサイト http://take-root.jp/

 


ノマディックラフト ヨメ

ノマディックラフト ヨメ

自然・旅・民族をテーマに、タイ、ベトナム、ラオスの山岳地帯に住む少数民族の手仕事を扱う、西小山のアトリエショップ『nomadicraft』を店主であるダンナとともに運営。母から子へ、脈々と受け継がれてきた素朴で美しい手仕事を紹介しながら、作り手である女性たちに仕事の機会を提供し、貧困の和を断ち切るための支援も行っている。ふだんはフリーランスのライター・木内アキとして「女性にまつわる人・旅・暮らし」をキーワードに、雑誌や書籍を中心に執筆活動中。目標は「キチンとした自由人」。 ノマディックラフト 店主ブログ http://blog.shop.nomadicraft.com/ 木内アキ ウェブサイト http://take-root.jp/