TOOLS 105 初めて個展をひらきたくなった日に読む話 – 起業すれば自由になれるのか? / 若杉アキラ

若杉アキラアートの世界は長い間忘れていた無邪気さや“やんちゃさ”みたいな子供の頃あった遊び心を呼び覚ましてくれるようだった。ちょうどその頃から写真を撮り始め「自分もいつか個展をやってみたい」と漠然と思うようになっていった。それはいつか見た夢のように
初めて個展をひらきたくなった日に読む話
– 起業すれば自由になれるのか? – 

若杉アキラ ( iPhone写真家/不動産会社経営 ) .

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自由に生きるために
“自分にもできるかも” そんな幸せな勘違いを大切にしよう

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内容紹介「起業すれば自由になれるのか?」
6年前、残業地獄から抜け出したい一心で会社を辞めて起業した。しかし、半年後には資金が底をつき廃業ギリギリまで追い込まれてしまった。その後3年程で会社を軌道に乗せたものの「自分のやりたいことが分からない」というモヤモヤした期間を2年程過ごすことになる。今でこそ最愛の妻と幼い娘ふたりと穏やかな日々を過ごし、必要以上を望まなければ週3日の仕事で十分暮らしていける生活の基盤もつくることができた。そんなぼくの小さな起業物語が、自分で何かをやり始めようとしている人にとって少しでも役に立つかもしれない。そう思い、起業してから今日までのありのままを書いていきます。

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いつかと思っていた夢も
意外と今すぐできるのかもしれない

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自分にはできない。自分には無理だろう。少なくとも今はまだ未熟すぎる。
そうなんとなく諦めていることが、誰にも1つや2つあるのではないでしょうか。

ご多分に漏れずぼくもその1人で、決して口にはしないものの「いつか叶えてみたい夢」のようなものがありました。実は先日オーディナリーの企画展内で開催した写真展もその1つでした。

写真展は1階と地下1階、加えて中2階も使い全27作品を展示。初めて広く告知もして、スタッフや関係者も含め多くの人を巻き込んでの開催となりました。

この現実を2年前の自分が見たら、驚き唖然として足がすくみ動くこともできないでしょう。なぜなら当時はこの現実をイメージすることも展示を開催する術も持ち合わせていなかったからです。

しかし、“自分にもできるかも”という体験をきっかけに「いつかやりたい」と思っていた写真展は「今でもできる」に変わり、その時できる小さなことを1つずつ行動に移してきました。

実際に行動を始めると、その前には見えなかった物事を知ることができます。
そうやって少しずつ前に進んで行くことで、動き出す前はイメージすることすらできなかった世界が少しずつ見えてくるようになり、さらにその先をイメージすることもできるようになるのです。

今回は、iPhone写真家として初めて個展をやろうとした時の話です。いま何かやりたい夢が漠然とでもある人の参考になるかもしれないと思い、当時のありのままの出来事と胸の内を書いていきます。

 

モヤモヤしている時期は
心のままに新たな風を浴びてみる

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ぼくには絵描きとして活動をしている妹がいる。

幼い頃から絵を描くことが大好きで、大人になった今も好きなことをやり続けている妹を、ぼくは心から尊敬している。

妹は大学時代から外に出て作家活動を始め、都内のギャラリーや画廊などにも作品を展示している。そんな妹の個展をきっかけに、これまでアートや表現の世界とは全くの無縁だった自分がいつしかギャラリーや画廊に足を踏み入れる機会も多くなっていった。

起業して3年が経ち事業も軌道に乗り始め、自由に使える時間もできたのに「自分のやりたいことが分からない」とモヤモヤするぼくにとって、自由に表現することのできるアートの世界は、長い間ぼくが忘れていた無邪気さや遊び心 “やんちゃさ” みたいな子供の頃あった感覚を少しずつ呼び覚ましてくれるようであった。

ちょうどその頃からぼくは写真を撮り始め「自分もいつか個展をやってみたい」と漠然と思うようになっていった。

それはいつか見た夢のようにぼんやりとしたものであったが、これまで「ビジネスをどう上手くやるか」ばかり考えていた自分にとって、純粋にやってみたいことが浮かんできたのはすごく新鮮で、なんだか嬉しかった。

できるかできないか。 やってみなければ分からないことは案外たくさんある

できるかできないか。 やってみなければ分からないことは案外たくさんある

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“自分にもできるかもしれない”
そんな体験が行動へと導いてくれる

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自分もいつか個展をやってみたい。

そんなことを思ったは良いが、現実は写真を撮り始めてまだ1年ほど、それも独学でiPhoneで撮った写真をSNSに投稿をしているだけ。個展をやるにはあまりにも未熟過ぎると自覚していたし、そもそも誰にでもできるものではない… と半ば諦めていた。

だから「個展をやりたい」なんて決して口にはできなかったし、それはいつか叶えてみたい夢のようなものであった。しかし、1つの体験をきっかけにそれは大きく変わっていくことになる。

2016年3月、妹の展示を観に原宿のギャラリーに行ったときのこと。その建物はいくつもの部屋に分かれていて、多くのアーティストが個展やグループ展を開催していた。

ぼくは妹や他のアーティストの展示を観たり、半日ほどギャラリー内をうろうろしていたのだが、その間訪れる人が途切れることはなかった。

友人・知人に加え、通りすがりの人がこれだけ多く訪れる場所で個展を開催できれば、たくさんの人に作品を観てもらえる。おまけに建物内にいくつかある部屋には四畳半ほどの小さなスペースもあった。

ここでなら自分にも個展ができるかもしれない。

ふとそんな思いが頭をよぎり、妹にさりげなく聞いてみた。

「この場所どうやって借りたの?」

すると妹は…..「ネットで予約した」と…

「えっ、じゃあ誰でも借りられるってことだよね?」

「うん、そうだよ。なんで?」

「あっ、そうなんだ。いや、なんとなく気になってさ」

ぼくはその話を聞いて “自分にもできるかも” と思えた。

しかし、まだ「個展をやりたい」とは言えなかった。人生のほとんど絵を描いて過ごしてきた妹に、ここ1年ほどで写真を撮りはじめた兄が軽々しく「個展をやりたい」とは言うことができなかった。

ただ、この“自分にもできるかも”という体験は、いつかやりたいと思っていた個展に向け、次の行動を起こさせたのであった。

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せっかく芽生えた夢を
検索する前に諦めてはいけない

 

多くのギャラリーや画廊は、誰でも利用することができる。

今なら当たり前のように知っていることも、その内を知るまでは、外からの思い込みにより事実と異なる認識を持ってしまうことがある。

当時ぼくはギャラリーや画廊で個展を開催できるのは、誰かから声をかけられてはじめて実現できるものだと思っていた。

妹の場合も大きなイベントに出展した際に、あるギャラリーのオーナーに声をかけられ個展開催の道が開けていった。だから個展は誰かに選ばれた人や特別な人がやるものだと当たり前のように思い、特にそれ以上考えることもしなかった。

しかし、“自分にもできるかも” という体験をしたことで、具体的に個展をやるにはどうすれば良いのか、ちゃんと調べてみることにした。

まずは興味のままに、ネットで「個展 開催 方法」とキーボードを叩く。

検索してすぐに分かったことは、都内でも1日数千円からギャラリーや画廊を借りられること。多くの場所は特に審査などなくオープンであること。そして写真展を開くために準備することから展示方法まで、知りたい情報の多くはネットで1時間も検索すれば知ることができてしまった。

そうやって少しずつでもやり方が分かってくると、また“自分にもできるかも”と思えてくる。

ただ、心配性なぼくは個展をやることのリスクも考えずにはいられなかった。
いつかと夢見ていた個展を今やることにより、何か失うものはあるのだろうか。

 

     

飲み込めるくらいのリスクなら
今やっておいて損はない

 

いくら個展のやり方が分かってきたとはいえ、初めてのことは怖い。
だから、さまざまな角度から「何か失うものはないか」と考えた。
考えて、調べて、また考えて導き出したリスクは…

いま個展を開催して何か失うものがあるとしたら、場所代と作品を作るための制作費「数万円だけ」ではないかと思えた。なぜなら、それ以外の時間や体験はすべて経験として自分の中に蓄積されていくものだから。

もちろんお金を失うかもしれないのは嫌だけれど、そのお金は自分の未来に繋がる経験という投資になる。いつかと思っていた夢に今この手が届くならば、それは限りある時間の中で欲しい未来の経験を先取りできる「ローリスク・ミドルリターンの投資先」になると思えたのだ。

ただ、いくら頭でローリスクだと分かっても、初めて個展をやる前は正直怖かった。“自分にもできるかも”とやっと芽生えた小さな自信も、誰かに作品をバカにされたり貶されたりしたら、心が折れて立ち直れなくなってしまうのではないか、とウジウジ考えたりもした。

だから個展を開催する前、「個展をやることに決めた」という話は自分にとって大切な人だけに打ち明けることにした。自分にとって大切な人なら必ず自分のことを応援してくれると思えたから。自分のことを応援してくれる人が1人でもいたら、“自分にもできる”と勇気が湧いてくる。

大切な友に「個展をやる」と話した時には、「いいね、やっちゃえ、できるできる」と笑顔で背中を押してくれた。

そんな大切な人たちの存在を胸に、ぼくは初めての個展開催に向け、突き進んでいった。

 

幸せな勘違いは
心が喜ぶ方へ向かっている


 
ぼくは写真を撮り始めて1年半ほどで個展を開催した。
その写真も全部iPhoneで撮ったものである。

個展を開催したのは、誰かに勧められたわけでも、何かの賞を獲ったからというわけでもない。

ただ “自分にもできるかも” という体験をしたことで、どうやれば個展ができるのを調べていくうちに、なんとなく “自分にもできそうだ” という小さな自信とも言える幸せな勘違いが起こり、初めての個展開催に向け突き進んでいった。

もしかしたら“自分にもできるかも”なんとなく“自分にもできそうだ”
そんな根拠のない幸せな勘違いは、いつも心が喜ぶ方へ向かっている。

ぼくは“いつか叶えたい”と思っていた夢に今この手を伸ばしたことにより、いつか訪れるかもしれない未来の経験を先取りすることができたのだ。

もしもまだ、「個展は選ばれた人にしかできない」という思い込みの中で生きていたら、この経験はいつできたのか分からない。5年後かも10年後かも、それともまだ夢のままかもしれない。

いつか叶えたい夢に、いま手を伸ばしてみたら、一体どうなるのだろうか?

具体的な行動を起こせば、次の行動のヒントを得られるかもしれないし、行動して違和感を感じれば軌道修正することもできる。いや、もしかしたら満足して全く別の道に進むきっかけとなるかもしれない。

いつかと思っていた夢に今この手が届くならば、ぼくは挑戦したい。
挑戦して行動することにより、今はまだ見えない景色を見に行きたいと思うから。

動き出せば、新たな景色が見えてくる

動き出せば、新たな景色が見えてくる

 

   
芽生えた夢を行動に変えるコツ

1. “自分にもできるかも”という衝動を見逃してはいけない。その衝動は感覚や本能として『自分にもできる可能性がある』ということを教えてくれている。

2. どうやれば実現できるのか調べていく。興味のままに素早くネット検索から始めて “いま自分にできる” 具体的な行動に移していく。

3. やりたいことがあるのに行動できない理由の多くは、リスクに対しての恐れ。リスクはその正体が分からないと余計に怖い。それならばリスクの正体を突き止める。
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「起業すれば自由になれるのか? 」 バックナンバー 

TOOLS 93   妻子あるぼくが会社を辞めてわかった3つのこと
TOOLS 97   廃業寸前、見栄もプライドも捨て去って見えた景色
TOOLS 100 今だから言える、寂しさの正体  
TOOLS 102 好きなことの本質に気づく方法

 

 


若杉アキラ

若杉アキラ

iPhone写真家/会社経営。1983年生まれ、妻と娘ふたりの4人家族。バイトで始めた料理の世界に魅了され大卒後は飲食店に勤務。しかし、週90時間労働などの激務が続き体調を崩す。その後、結婚を機に家族との時間を確保するため25歳で不動産業界に転職。安定した固定給と定時退社が魅力の会社に入るもののサービス残業の日々が続く。27歳で自由を求め独立起業。不動産会社の経営で週3起業を実践する。しかし、自由な時間が増えても、それだけでは心が満たされることはない現実に虚しさを覚える。31歳、悶々と過ごす日々のなか写真の世界と出会いiPhoneで写真を撮り始める。2016年の夏に初の個展を開催。同年12月にもスポーツジムと共同で写真展を開催する。「週3起業家」として会社を経営する傍ら、iPhone写真家として個展や写真展の開催を精力的に行なっている。ブログ「好きなことをして生きていくために」執筆中。Instagramは@akira_wk