TOOLS 26 子どもがいてもコンサートに行きたい / 金子陽子( 声楽レッスン講師 / みちるとひらく主宰 )

ライブで歌う筆者

声楽講師が語る「諦めないで、楽しみましょう」

TOOLS 26
子どもがいてもコンサートに行きたい
金子陽子 ( 声楽講師  /  みちるとひらく 主宰 )

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自由に生きるために
生の音楽を聴いて細胞をリフレッシュさせよう

 

私は声楽を専門に勉強し、合唱指導やオペラに関わったり、親子で楽しめる音楽会を開催したり、短大保育科で音楽の講座を持ったりと様々な活動をしてきました。生の音楽を聴くのが好きで、これまでに、声楽やバイオリンなどのリサイタルやオーケストラやオペラ、ミュージカル、和太鼓などなど…… 様々な演奏会に足を運んできました。自分の中では、生の音楽を聴く事で細胞がリフレッシュするような感覚があって、子どもが産まれたら一緒に行きたいなとずっと思っていました。

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子どもがいたらコンサートに行けない?

そして今年、我が家に子どもが産まれました。産後3ケ月くらいまでは家の中で子どもに歌を歌っていましたが、段々それだけではストレスが溜まって、外に演奏を聴きに行きたくなりました。しかし、これまで行ってきたような、演奏の大事な場面で会場が静かに耳を澄ますようなものや、無伴奏のリサイタルで息をひそめて聴くようなものには当然行くことができません。それでも、テレビ番組のような子ども向けのものではなくて、子連れで行って大人も満足できるようなものが聴きたい……と思っていました。

Antonio Castagna

子どものためのコンサートがある事も知っていたし自分で企画もしてきたのに、実際には産まれたばかりの赤ちゃんを連れて外出するのは躊躇しました。演奏の途中で泣かれたらどうしようとか、あまり遠くには行けないとか、チケットを買っても当日熱を出して行かれなかったらもったいないとか、授乳やオムツ替えスペースはあるのか、最後まで聴けるのか、狭い会場で風邪をもらったら困る、などなど……。
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子連れでコンサートに行きたい! 探してみると?

それでも「このストレスを打開しなければ」と調べてみると、なんと子連れで行くことができるコンサートが沢山あることを知りました。しかも以前より随分増えています。都内だけでなくあちこちで、また大小関わらず開催されている様子。さらに、大きな施設の中には防音ガラス窓の中で聴ける親子ブース (泣き声などがホールに漏れません)が備えられている施設も増えていました。そこで勇気を出して、気軽に行ける近場のものに足を運び始めました。

 

Leeds College of Music

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潜入、親子コンサート

そこで今回は、私が最近子連れで行ったコンサートの様子をご紹介しながら、行きたいけれど躊躇している方の背中を押せれば嬉しく思います。

まずは横浜市のとある団体が企画している、保育園など近隣の施設にオペラ歌手とピアニストを連れて演奏に来てくれるもの。入場無料で、当日参加もOKでした。これは子どものためというよりは、いつも子育てを頑張っているママパパのための時間、というコンセプトです。会場にはオムツ替え&授乳スペースが作られます。泣いても騒いでも走り回っても構わないコンサート。選曲は子どもが飽きない工夫をしながら大人のための曲がたくさん。聴きながら大笑いしたり、最後には涙する方も。私も、久しぶりに恋の歌や秋のしっとりした歌を聴いて、心が潤いました。

またある子育て支援の場所では、小さなお部屋にヴァイオリニストが1人で来てくれました。入場無料で予約不要でした。そこでも授乳やオムツ替えは自由に行えました。子ども達は手が届く距離で演奏される音楽にびっくりしながらも、目が釘付けで楽しんでいた様子です。最後には大人のリクエストで「情熱大陸」のメインテーマを演奏して下さり、大変盛り上がりました。

更には、某市民ホールで行われた親子コンサート。チケットは当日券のみ販売でした。ホール入り口にオムツ替え&授乳ブースが設置され、中は400席以上のほぼ8割が埋まるほどの大盛況。演奏者が、今日は泣いても走り回ってもいいと話してくれました。10分後には子ども達の集中力が切れてきて、走り出す子も続出。それでも演奏は続きます。突然、舞台の照明が雪の結晶のようになり動き出しました。動いていた子どもたちは静止、私もまるでミュージカルを観ているようでしばし心が奪われました。

これらはほんの一例ですが、このように、様々な工夫を凝らしたコンサートがあります。

 

Geertr

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親子コンサートのメリット

さて、このように色々な親子コンサートがあるのですが、そこにはいくつかのメリットがあると思います。

まず1つは「親も子も楽しめること」。子どもが動けるようになると外遊びが増えますが、親が子どもに付き合う形になりがちですよね。逆に親の買い物や食事に行けば子どもを付き合わせる形になりがちです。その点コンサートは、両者が同じステージを観て楽しめます。テレビ番組のような子ども向けのものだけではなく、大人も楽しめる選曲のコンサートも多いです。

もう1つは「普段見られない子どもの姿を発見できること」。子どもが音楽やその場の状況にどんな反応をするか分かりますし、家では見られない顔を見ることもできるでしょう。我が家の場合は歌やヴァイオリンにとても反応し、意外と周りの子どもたちにも興味を示していたのが印象的でした。

さらに「質の高い演奏である事が多いこと」。子どもの前で演奏するには、演奏家自身も自信がないと子どもの前で演奏できません。子どもは正直なのでつまらなければ聴かない、泣く、立ち上がる、走り回ります。逆にぐっと心を掴まれれば、動かず目を見開いて聴き入ります。だからこどもの前では演奏家自身が問われていて、覚悟の必要な舞台であるからこそ、結果的に良い演奏が聴けることが多いのです。

 

私がコンサートで歌った時の街中のイルミネーション(山梨県身延町にて)

 

これからの時期はクリスマスにちなんだコンサートも増えてきます。インターネットで「子連れ」「親子」「コンサート」などと検索すると沢山出てきますので、是非一度探してみてはいかがでしょうか?

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子どもと楽しむコンサートのすすめ
1. 小さな子どもがいるとコンサートへ行くのを諦めてしまうもの
2. でも、子どもと一緒に楽しめるコンサートが増えています
3. 自分もリフレッシュできるし、子どもの普段見られない顔も見られますよ

Photo: Antonio Castagna,Leeds College of Music,geertr


金子陽子

金子陽子

かねこようこ。声楽レッスン講師。フェリス女学院大学音楽学部声楽学科卒業。中学生頃からコンプレックスが強く、大学時代は精神的に不安定で過食&こもりがちに。しかし、歌うことでそれらが解放されて自己肯定につながった経験から、発声と歌には心を解放して前を向かせる力があると確信する。「人は心身が満ちると解放される」との想いから「みちるとひらく」と名付けた活動を開始。心身を解放させる歌のレッスン、音楽講師、コンサートや音楽ツアー企画。