少数民族の手仕事は不揃いだったり、大きさが違ったり。それはもしかして「不便」「完成度が低い」と思われたりするのかもしれません。しかし店主とヨメはその不揃いなゆらぎの中に、心を和ませる味わいもあるんじゃないかな? なんて思っています。
第6話 どうしてそんなに自由なの!? 現地の人たちと商品を作る
こんにちは。ノマディックラフト ヨメです。
今週まで西武池袋本店の7F、充実の手芸ゾーンにある『サンイデー』にて、『アジアの手仕事展』に出ておりました。 カレン族のシルバーをはじめとするアクセサリーを紹介する、ユメギャラリーさんとの共同出店。店主とヨメで代わりばんこに店頭に立ちました。 さすがは都内有数の充実度を誇る手芸フロアだけあって、お客様も手仕事に目の肥えた方がたくさん。モン族やアカ族の刺繍、リス族のパッチワークやラフ族の手織り布など「これを手作業で、しかも山の中で作っているのね! 」「緻密でキレイね」「色彩が鮮やかでステキ」などなど、人の手が生み出す美を楽しんでいただけたように思います。
会場の様子。入口のボディにはモン族の男性のジャケット × 女性の古いろうけつ染めスカートをコーディネート。
鮮やかな手仕事に、多くの人が足を止めてくださいました。ありがとうございました!
さて、そうやってお客様にお届けする商品を作るため、私たちは現地での買付けのほか、自分たちでもオリジナル商品を企画しています。今回はそんな商品ができるまでの一端を綴ってみようと思います。
アジアの少数民族の手仕事を
日本の人たちに愛される形に
初めて自分たちで作ったオリジナル商品は、タイのラフ族の手織りテープを使ったブックカバーでした。 第4話で少し触れましたが、ノマディックラフトを始めるにあたり、少数民族をサポートする活動をしている現地の日本人の女性、Hさんに出会うことができ、その人が現地で生産者とのやり取りを引き受けてくれたため、オリジナル商品の制作にこぎつけられたのです。
日本で少数民族の作るグッズを販売することに前向きなHさんと「ブックカバーを作ろう! 」と盛り上がり、ヨメは一生懸命「こんな感じ」とイメージをお伝えしました。後日「生産者との打合せ、大変でしたよ! 」とHさん。というのも……
① そもそも、タイに文庫本という存在がない ② 少数民族の人、納得せず ③ 日本人の文化背景を説明 ④ 少数民族の人、納得せず2 |
……てなやり取りを経て(Hさん、ホントすみません! )、らちがあかないので「とにかく作って! 」と型紙を渡し、完成したファーストサンプルがこちら。
ボタンはちゃんとココナツだし、本体が開かないようぐるぐる巻きつける紐の先にビーズもついているし、こちらの意図をしっかりくみ取ってくれたHさんのセンスが感じられます。 「かわいい! いい感じ! 」と喜んだのもつかの間、内側を見てみると、文庫本の厚みに応じて折り返しを押さえるゴムが、なんかパンツのゴムみたい!聞くと、近所の市場ではこのパンツゴムしか買えないのだとか。
方向性はおおむね良いのですが、この白いゴムはやっぱりいただけません。結局、日本で黒いゴムを買って現地に送り、本生産につなげることにしました。そうして出来上がってきた完成版がこちら。
パンツのゴム問題も解消されたほか、改善点としてあげたしおりもついてきました! こちらは足かけ5年ほど販売を続けているロングセラーになりました。
で、こぼれ話もありまして。 ブックカバーのサンプルが入った荷物の中に一緒に入っていたのがこれ。
少数民族のお母さん、頼んでないのに勝手に携帯電話ケースを作って送ってきました! しかも、これからはスマホという時代だったのにバリバリのガラケー仕様(笑)。縫製はキレイですし、内側にはクッション性を持たせてあるなかなかのクオリティ。しかーし、やっぱり携帯ケースはいらなーい! 「勝手に作ってきたので、念のため送っちゃいました! 」とメールをくれたHさんの大笑いが目に浮かぶよう。せっかくのアイデアですが、こちらは丁重にお断わりさせていただきました。今ではこのサンプルを見るたび、笑顔になれるステキな思い出です。
前の商品とぜんぜん違うけど
ホントにOK??
こうやって、頼んでないのに作っちゃうあたりとか、なにごともキチキチっとした日本ではあまりない出来事です(ちゃっかり、携帯電話ケース分のサンプル料金を支払うハメになりましたし… )。それを「約束を守らない! 」という目線で見る方法もあるのかもしれません。でも、私たちがいつの間にか「ルールにがんじがらめになっているのかも」と気づかせてくれる部分も大いにあります。
少数民族のお母さんたちは、ホント自由。ブックカバーを作ってくれている団体からは、鳥の笛オブジェも仕入れています。アカ族のお母さんたちが中心となって、粘土をこねて素焼きで作った鳥笛に、手作業で色を付け、自分たちの住む山々にいる鳥たちを笛のオブジェにしているのです。こちらも静かなロングセラー商品なので定期的に仕入れています。ある日在庫が少なくなったため、追加オーダーをかけた荷物が到着。梱包を解いてみると…… あれ? 1羽だけ、でかいのが混じってる!
同じ商品を頼んだハズなのですが、1羽だけかなり大柄な鳥がやってきました。
右が大柄な鳥笛……。上下左右、どこからどう見ても倍くらいでかい! 左は片手に乗りますが、右は持つとずっしり……。
こんなでか&ちび混在の鳥笛オブジェですが、買っていくお客様のほとんどは、一つひとつ鳥たちを手に取り、顔を眺め、なでるようにして「このコの顔がなんだかかわいい」「ぽってりしたこの体型が気に入った」などと言いながら、楽しそうに選んでくれています。それを見ていると、私たちもなんだかこの鳥たちがかわいく見えてくるのです。
私たちが扱っている少数民族の手仕事は不揃いだったり、大きさが違ったり。それはもしかして「不便」「完成度が低い」と思われたりするのかもしれません。しかし店主とヨメはその不揃いなゆらぎの中に、心を和ませる味わいもあるんじゃないかな? なんて思っています。
次回もまた、仕入れにまつわる小話をお伝えしようと思います。どうぞお楽しみに!
(了)
ノマディックラフトのイベント出店情報
おちあい公園 PEACE FES |
(次回もお楽しみに。隔週土曜更新です)
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連載バックナンバー
第1話 家=店。人が思うよりもずっとちいさな投資でお店をはじめてみた(2015.6.13)
第2話 店から出て人に会う、出会いをつくる。〈イベント出展篇〉(2015.6.26)
第3話 1人2役 × 2。兼業夫婦は不安定? 時間も予定も「自由」のメリット・デメリット(2015.7.11)
第4話 なんで「少数民族の手仕事」? それはやっぱり「好き」だからです(2015.7.25)
第5話 暑さに負けず蚊に負けず。探して洗って、よみがえる古布たち 〈 仕入れ旅篇 〉(2015.8.8)
オーディナリー編集部がノマディックラフト参加の展示会を観に行った話
【レポート】遠い国の伝統的な手仕事がいっぱい!
【関連サイト】 ノマディックラフト ウェブサイト http://nomadicraft.com/ ノマディックラフト 店主ブログ http://blog.shop.nomadicraft.com/ ノマディックラフト Facebook https://www.facebook.com/nomadicraft 木内アキ(ライターとしての仕事) ウェブサイト http://take-root.jp/ |