舛廣純子が聞く「しなキャリ図鑑」 【第13話】 建築家のチカラ / 仲村和泰さんの場合

masuhirojunko_long_banner無限に解答がある中で「建ったらもう壊すことができない」しかし「建てないと本当に正解かどうかわからない」という難しさがあります。誰も見たことのない荒野に、その一歩を踏み出せるか否かが、建築家であるか否かだと思っています。ただ勘違いしてはいけないのは、その挑戦はただ何か奇抜な
連載「しなキャリ図鑑」とは  【毎月2回更新 / 第2第4月曜】
「しなやかに生きる人のためのキャリア図鑑」の略称。キャリアカウンセラー舛廣純子が、イキイキと働く仕事人にインタビューし、その仕事に大切なチカラを中心にキャリア・仕事そのものも掘り下げます。10年後の未来に自分がどんな風に仕事をしているのかも見えづらくなった今の時代。インタビューを読むことで、自分の持っている力にも気づいたり、したことのない仕事に興味を持ったり、これから伸ばしたい自分の力を見つけられたなら、あなたの仕事人生も変化に対してさらに強くてしなやかなものになっていくかもしれません。

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第13話   建築家のチカラ
トレジャーハンターのように、土地の可能性を発見し、その実現に挑戦する

TEXT : 舛廣 純子


仲村和泰(なかむら かずやす) 建築家教えてくれた人
仲村 和泰(なかむら かずやす) 建築家

大学卒業後、建築設計事務所勤務を経て、家業である有限会社仲村建築店を継ぐ。現代建築の設計施工が専門。特に東京特有の狭小変形地で建築理論を基にモダンデザイン住宅を設計から施工まで一貫して行い定評がある。世界中の近代・現代建築を見て歩き調査。依頼される案件の3割はデザインのプロからの住宅設計依頼。有限会社仲村建築店代表取締役。一級建築士。


 

<建築家に大切な能力は何ですか?>

 

1. 誰も見たことのない荒野に踏み出せる勇気   挑戦心 自己信頼

建築には絶対の正解はなく、むしろ無限の解答、可能性があります。そして、無限に解答がある中で、「建ったらもう壊すことができない」しかし「建てないと本当に正解かどうかわからない」という難しさがあります。

「建主が本当に喜んでくれるかどうかわからないのに作る」ということは、「誰も見たことのない荒野に踏み出すこと」に似ていると思うんです。その一歩を踏み出せるか否かが、建築家であるか否かであると僕は思っています。

一歩踏み出さないで、誰かが作ったようなものを「こうすれば安全」と普通に作った場合でも、家が建ったことに建主は感動して下さるわけですが、そういう人は、そもそも建築家ではないと思うんですよね。建築家というのは、その土地や建物に、無限の可能性を感じることができる人であり、その無限の可能性に対して、あれもできるよね、これもできるよね、って挑戦することができる人のことを言うのだと思います。

ただ、勘違いしてはいけないのは、その挑戦はただ何か奇抜なことをするのではないということです。プレゼンで、奇抜なプランを出すことはいくらでもできますし、建主もそれで喜ぶかもしれない。けれども、人の気を引くために奇抜という不自然なものを出すと、本来作りたかったものではないものになってしまいます。他者評価に惑わされず、無限の可能性に挑戦して自信を持って素と呼べる本来自分が作りたかったものを出していくことが重要で、結局はそれがオリジナリティであり、建築家として大事にしなくてはいけないものだと思っています。
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2. 一度決めたらぶれないこと、でもいつでも撤退できる柔軟性とバランス     貫徹力 柔軟性

実際、最初に設計してプレゼンしてから、着工するまでには、1年~1年半かかかることもあるのですが、そうすると、自分自身の考えも変化することもあります。だからと言って、その変化に合わせて、作ろうと思ったものを変えようとすると、一貫性がなく当初のコンセプトがぶれて収集のつかない建築になってしまうんですよ。一方で、施工を始めると、思っていた通りには行かなくなる時があります。そんな時には、やはり柔軟に変えること、時には撤退することも大事なんですよね。そのバランスが重要だと思います。

今まで設計した建物の中で、1つだけ撤退できずに、雨漏りしてしまった建物があるんですよ。もう10年ぐらい前に作ったものですが。デザイン性の高いことや難しいことに挑戦しようとして、でも実際の技術の部分は、職人の腕任せだったところがあって、なんとかなるだろうとやったら、なんともならなかった。サッシが納品されてきて、はめようとしたときにどうしても美しくなくて、妥協できずにそれを分解して組み替えてしまったのです。そうしたら、雨漏りしてしまって。やはりそれはしてはいけなかったと反省しています。美しさを優先させすぎて、撤退することができなかった。ずっと仕事がうまくいっていた中での大きな失敗でしたが、でもその失敗から学んだことも大きかったですし、教訓になりました。

実はけっこう建築家で撤退できない人っているんですよ。デザインを重視しすぎて、建築家の自邸が滝のように雨漏りがするってのも、意外と「建築家あるある」だったりします(笑)

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3. 徳(人をまとめる、そもそも人としての徳) 関係構築能力、気配り、相手の立場になって考える、チームワーク、リーダーシップ

一棟の家を建てるには、建築家以外に様々な職人さんが13人ほど必要です。大工さんだけでなく、板金職人、建具職人、塗装職人などと、家を建てる仕事はチームで行います。

腕の良さに加えて、私がとても重視しているのは、「建主が求めている以上の家を一緒に作ろうという気持ちを持ってくれるか」ということです。建築においては、設計はあくまでスタートライン。建てていく途中で、よりよい家を建てようと思ったら、何度も細かい修正や臨機応変な対応が必要になります。特に自然素材を扱う木造は難易度も高く、微調整が必要なことがたくさんあります。私だけでなく、職人さん自身も「もっと○○したほうが建主のためにいいのではないか」という思いを持ち、提案・実行してくれるかが大事だと考えています。

設計者は図面は引きますけど、作ってくれるのは職人さんなわけで、職人さんが力を発揮してくれなければいいものは作れないんですよね。だから、その職人さんたちが力を発揮できるように、環境を整えることは自分の役目だと考え、心配りをするようにしています。「徳」を大事にした人間関係の作り方とか思いやりとか、そういうことは意識しています。尊重はするけれど、馴れ合いにはならず、お互いに何でも言い合えるような関係性を築くことも大事にしています。

また、僕自身は最初に説明をしっかりした後は、極力信頼してお任せし、口を挟まないよう心がけています。一人一人の職人さんの考え方や進め方でやってもらって、最後終わった時によい形で仕上げてくれればいいと思っているんです。最終的に自分が全ての責任をとればいいわけで、職人さんの方も信頼して任せてもらった方がやりやすいでしょうし、私もそこまで期待と信頼を置いて、お仕事をお願いしています。

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T邸 もともと一棟の住宅が建っていた土地を、建主のお母様+兄家族の家と妹家族の家、2棟に建て替えた案件。 外観は外壁の素材を同じにするなど統一感を出そうとしたものの、中身のプランはまったく異なった住宅に。大切にしたのは、2棟の家の間に路地空間のようなスペースを作り、2棟の家の交流が生まれるような「コト」を生み出す空間にすること。木でできた花台(花段)に子どもが腰かけ遊んだり、子ども用のプールを置けるような広さを確保。窓や玄関も路地空間に面して作ることで、窓やドアをあけた瞬間隣の家が見えたり、隣の家から出てくる人と交流が持てるようにした。 T邸。もともと一棟の住宅が建っていた土地を、建主のお母様+兄家族の家と妹家族の家、2棟に建て替えた案件。 外観は外壁の素材を同じにするなど統一感を出そうとしたものの、中身のプランはまったく異なった住宅に。大切にしたのは、2棟の家の間に路地空間のようなスペースを作り、2棟の家の交流が生まれるような「コト」を生み出す空間にすること。木でできた花台(花段)に子どもが腰かけ遊んだり、子ども用のプールを置けるような広さを確保。窓や玄関も路地空間に面して作ることで、窓やドアをあけた瞬間隣の家が見えたり、隣の家から出てくる人と交流が持てるようにした。

T邸。もともと一棟の住宅が建っていた土地を、建主のお母様+兄家族の家と妹家族の家、2棟に建て替えた案件。 外観は外壁の素材を同じにするなど統一感を出そうとしたものの、中身のプランはまったく異なった住宅に。大切にしたのは、2棟の家の間に路地空間のようなスペースを作り、2棟の家の交流が生まれるような「コト」を生み出す空間にすること。木でできた花台(花段)に子どもが腰かけ遊んだり、子ども用のプールを置けるような広さを確保。窓や玄関も路地空間に面して作ることで、窓やドアをあけた瞬間隣の家が見えたり、隣の家から出てくる人と交流が持てるようにした。

T邸。もともと一棟の住宅が建っていた土地を、建主のお母様+兄家族の家と妹家族の家、2棟に建て替えた案件。 外観は外壁の素材を同じにするなど統一感を出そうとしたものの、中身のプランはまったく異なった住宅に。大切にしたのは、2棟の家の間に路地空間のようなスペースを作り、2棟の家の交流が生まれるような「コト」を生み出す空間にすること。木でできた花台(花段)に子どもが腰かけ遊んだり、子ども用のプールを置けるような広さを確保。窓や玄関も路地空間に面して作ることで、窓やドアをあけた瞬間隣の家が見えたり、隣の家から出てくる人と交流が持てるようにした。

 

 

<なぜ建築家になったのですか?>

 

祖父と父は大工で、幼い頃から現場を訪れていて、物心ついたときから、自分も建築に関わる仕事につくものだと、自然と考えていました。

ただ、「大工になろう」と考えたことは実は一度もなく、小さな時も、作るものが明確で組み立てていくプラモデルより、自分で自分の作りたいと思ったものを作れるレゴブロックのほうが好きでした。設計に基づき家を作る大工の仕事より、自分の作りたいものが作りたかったから、自然と設計の仕事に興味が行くようになり、大学では設計を専攻しました。

自分が設計の道に進むことをより強く確信したのは、大学の授業の課題を通して、安藤忠雄の「大阪茨木春日丘教会」を目の当たりにした時でした。安藤忠雄特有のコンクリート打ちっぱなしの建築スタイル、礼拝堂には大きな十字のスリットが刻まれ、その十字架から差し込む光の荘厳さを見た時に「建築にはこんなに人を感動させる力があるんだ!」と。設計・建築というものに対しての概念が大きく変わりました。

それまで自分は建築を「モノ」としてしか見ていなかった。けれど、自分が感じた荘厳さや感動を生み出したその教会は「モノ」としての建築ではなく、人の心を動かす「コト」でできている建築だということに気付きました。「モノ」ではなく「コト」を提供できる建築家でありたい、自分の建築家としての原点はそこにあるのだと思います。

大学卒業後は、「いろいろな建築物に携わり、経験値をあげたい」と思い、公共機関の建物なども多く手がける設計事務所に就職しました。関わり方の度合いはさまざまでしたが、そこではいろいろな建築にかかわりましたよ。公衆トイレや小学校、公営団地や超高層タワーマンションから火力発電所に至るまで、実に多様な建築物に関わりました。それらは今も自分の発想の引き出しになっていますね。

その後、実家に戻り、家業を継ぎましたが、もともと工務店のため、設計よりも施工管理的な仕事を多くしていました。施工図を描いたり、設計寄りの仕事も時にはありましたが、施工の現場仕事のウエイトが圧倒的に高く、学びは大きかったものの、自分の中では正直やりたかった設計への思いが募り、悶々とした気持ちがだんだんと強くなっていきました。

ちょうどそんなころ、リーマンショックからの不景気が一気に押し寄せ、仕事がまったくなくなり、家業は窮地に立たされました。施工の仕事すらもない、本当に危機的な状況の中で、初めて僕は自分自身に向き合い「今後どうしていくべきなのか」考え抜きました。

そこで出した答えが「自分は建築家としてやっていく」ということでした。以来、建築家としてリスタートし、現在に至ります。
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<建築家とはどんな仕事?>

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一般的な建築家の仕事の範囲としては、「建主からのヒアリング、現地調査、プラン作成、基本設計、実施設計、工事監理」までが、多いです。

ただ、私の場合は一人でやっているので、仕事は多岐にわたりますね。「営業集客から設計、施工」までを行うので、上記以外に「見積書作成、契約書作成、工事、職人さんの手配、段取りを組む、現場監督、役所の検査対応、完成までチェックをし続ける、建物の引渡し説明、ホームページ作成、お問い合わせ対応」なども、すべてやる必要があります。

最初の出会いから設計が完了するまでが、半年から1年ぐらい。着工してから完成するまで半年。1年半から長いときは2年、一人のお客さまと関わる仕事です。その後もリフォームに関わることも、もちろんあります。
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<一日の仕事スケジュールは?>


現場がある日とない日でまったく異なるのですが、現場がある日の場合は、現場は8時から夕方5~6時まで仕事をしているので、それに合わせた生活になります。

8:00-10:00    
日曜日を除く毎日8時には、現場に行ってチェックをするか、現場に行かない時は会社で仕事をします。
10:30-18:00   
現場に行った時は2時間位チェックして会社に戻り、図面を引いたり、モノを発注したり、事務作業をします。午後から現場に行く事もあります。
現場がある時は、職人さんと同じ生活のペースにしています。もちろん同じサイクルなら連絡がとりやすいというのもありますが、職人さんたちの呼吸に合わせるように、同じ時間帯に活動することで、職人さんの気持ちになって考えられる、と思うからです。現場がないときは、生活が一転し、夜中にずっと図面を引いていたり、すごい生活のリズムが乱れる時もありますね(笑)


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<仕事のやりがいや面白みはどんなことですか?>


建築は正解がなく、答えが無限大にあるもので、僕は設計は「コト」というお宝を探し出す行為だと思っているんです。その土地に立って、建主から聴いた話を思い浮かべながら、「あぁ、ここの空間にはこんな素材がある」「こんな建て方もできる」みたいにお宝を発見する感じですかね。

僕にとってはトレジャーハンター的なイメージで、眠っているものをセンスとクリエイティブで発見する、建築家の仕事にはそんなワクワクする面白みがあると思うんです。

そして、その引っ張り出してきた「コト」というお宝を使って家づくりをしたときに、建主が喜んでくれて、建物が完成して引渡しの時に説明もできないくらい、子供が走り回って喜んでくれたりするのを見るのはやっぱり嬉しいですよね。

あとは、一緒に作ってくれている職人さんも、自分の仕事を面白がって、誇らしく思ってくれたりする姿を見るとそれもすごく嬉しいんです。僕がひっぱりだして見つけてきたお宝をみんなが喜んでくれるのが嬉しい。みんなのその喜ぶ笑顔を見た時にやりがいを感じますね。

 

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<もっとも嬉しかった経験はどんなことですか?>

来る人来る人が、「この建物はすごい!」と絶賛して下さった住宅があって、プラン作成から、完成までにはだいぶ時間のかかった案件でした。ご夫婦のご意向が異なって、双方から異なる矛盾したリクエストを個別に頂くので、調整に時間がかかり、なかなか大変でした。ご主人の方からは毎日のように催促の連絡もあったりで、正直集中しきれずに困ったときもありました(笑)

でも、そんな中で設計しながら僕がいつも考えていたのは、その家の奥さんがそこで気持ちよく生活できるにはどうすればいいのかな、ということでした。ハウスメーカーではできない「実家と同じ蹴上げの高さの階段」、予算の中で最大限考慮した「寒がりの奥さんのための断熱方法」、愛犬が走り回れる空間など、ご夫婦の細かな希望をすべて取り入れてプランを作り、完成させました。

来る人来る人が「すごくよくできた家だ」とほめてくれたので、奥さんとしてもすごく嬉しかったようです。建築中、コミュニケーションの部分でなかなかスムーズにいかず苦労した案件でしたが、様々な感情を越えて、ご夫婦が最高に喜ぶことは何なのかを考えて、実践して、やり切った感があって、それで喜んでもらえたことがとても嬉しかったですね。

建主に対する感情を越えて、自分の建築デザイン能力を使って、建主が心から本当に望んでいる「コト」を実現するために奉仕して仕事をする。そんな仕事が僕のしたい仕事だと実感したんですよね。自分にとってこの仕事が天職だと思えた瞬間だったのかもしれません。
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<逆に今まででもっとも大変だった経験や辛かった経験は?>

やっぱり、リーマンショックの後ですかね。地元の工務店で家を建てる人がどんどん減る中で、さらに景気の影響で新築の仕事がほとんどなくなって…。「デザインしたいけれど、仕事がない」っていうときが、正直きつかったですね。ただ、すべてを失った時であったからこそ、ある意味ゼロクリアできるタイミングだとも考え、自分がやりたいことをとことん考えました。

自分が行きたい方向に行くにはどうすればいいか。モノからコトに突き詰めていく中で、今までは「3代目」ということにひきずられてきて、「施工管理とか工務店の仕事」にウエイトがあったのが、「建築家として新築の建築を手掛ける」という方向に思いっきり舵を切ることができました。

ホームページを立ち上げ、「自分はデザイン性の高い新築住宅の設計・施工」「父親はリフォーム中心」という風に、今は同じ工務店の中でまったく別々の仕事をしています。今の状態になるには時間もかかりましたが、崖っぷちに立たされたからこその決断でした。

ホームページを作るのにもけっこう考えて、苦労しましたね。営業手段は実はそれだけで、ホームページに載せている僕の考え方に共感した方が問い合わせしてきて下さっています。広告を大きく打つことや、精力的に自分から営業に行くことに比べれば、お問い合わせの件数は少ないですが、問い合わせて下さった方とはほとんどお会いしていて、受注につながっています。

今僕は1人で職人さんたちと組んでやっているので、1人でお会いできる件数、やれる量には限りがあります。しかし、問い合わせの対応から始まり、プランをお見せできるところまで、トータルではじめて僕の生身の特色もお見せできますから、そのほうがありがたいですね。

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<建築家の仕事の未来はどうなっていくと思いますか?>

まず、新築の着工件数は確実に減っていくと思いますが、デザインにこだわりのある家を作りたいという人は一定数はいると思います。なので、自分のように、デザイン性を重視し、設計から施工まで、年間3〜4棟程度作る人間にはそんなに全体の需要が減ってもあまり関係ないのではないかと考えています。

特に積極的に営業はせずとも、「設計から施工まで行うことが特色」でホームページからお問い合わせをいただいています。「設計から施工までできる新築住宅の建築家」という社会的ニーズは今後も一定量は確実にあると思いますし、むしろ建築家の新しい仕事の仕方だと思っています。

また、建築やデザインをきちんと勉強して精通している人材がまだまだ少なく、海外と比べれば建築家の社会的地位もまだまだ低いので、建築家の職能である社会に対してきちんとデザインした建築を出現させることは、今後もその重要性は変わらず、建築家の活躍の場も今後より一層多くなると思われます。
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<今の仕事と同じように向いていそうな仕事はありますか?>

料理人ですかね。食を人と囲む瞬間って、僕にとって幸せな瞬間なんです。それを提供できるのが料理人。料理人も幸せな瞬間という「コト」を提供する意味で、建築家と似たところはあると思います。
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キャリアカウンセラー舛廣純子の  シゴトのチカラ考察
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今回、掲載したT邸にも一緒に伺い、建物の前でお話をいろいろお伺いしました。2つの棟の間の路地にしかけられた「コト」についてお話する仲村さんは、本当に自分の見つけたお宝を紹介してくれている様子で、とてもワクワクした表情をされていました。

―「トレジャーハンターのようにその土地や建物の可能性を引き出し、誰も見たことのない荒野に向けて勇気を持って踏み出す仕事」― これを最初に聞いたときは、とても意外でした。しかしお話を聴くにつれ、「確かに土地も建物も皆違うから、それぞれに個性はあるし、取り壊せない新しいものを生み出すのは勇気と覚悟が必要な仕事だ」と思うようになりました。トレジャーハンターのように「可能性を引き出す」のは、私も普段相談者の方のお話からその方の可能性を引き出す仕事をしているので、そのワクワク感はなんだかとても共感できるものでもありました。

『徳』を大事にする」建築家 ― 建物は一人でできるものでないからこそ、「一緒に同じ思いで物を作っていく仲間」に対してチームワーク力が大切です。特に仲村さんの場合、施工まで手掛けるため、現場で職人さんとやりとりする機会も多く、よりその環境に心を配る必要もあるのかもしれません。また、仲村さんの場合は建築家なので、設計から施工までですが、こういった「一貫して仕事を仕上げるようなワークスタイル」というのは、独立して仕事をする人には、業務範囲や仕事の間口を広げたり、オリジナリティを出した仕事をしていくのには大事なスタイルのように思います。

建築がそうであるように、プロジェクトベースで様々な人と協働していくことも今の時代はとても増えています。技術やセンスだけでない『徳』―相手の立場に立ち、人をまとめたり、協働して働く力は、今後ますます大切なチカラのように感じました。

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(次回もお楽しみに。毎月2回、第2第4月曜更新です)
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舛廣純子

舛廣純子

ますひろ じゅんこ フリーランスキャリアカウンセラー。1972年、東京都出身。日本女子大学人間社会学部文化学科卒業後、化粧品商社に営業職として入社。会社の民事再生、自身の出産・育児を機に2 回の転職を経験。自らの転職経験からキャリア支援に関心を持つようになり、社会保険労務士、キャリアカウンセラーの資格を取得。2007 年、キャリアカウンセラー・講師として独立。大学生の就職支援・キャリア教育、社会人の転職支援・キャリア形成支援を中心に活動。支援学生の高い就職率とわかりやすいセミナーには定評がある。特技は長所探し。2013年12月に学研教育出版から『就活生に親が言ってはいけない言葉 言ってあげたい言葉』を出版。ブログ:http://ameblo.jp/shuukatsumamanoblog/