ちいさなお店をはじめたこと。~等身大で、自由な働きかた~【第38話】押しつけ? それとも説明不足? ちょうどいい「接客」の距離感とは

ノマディッククラフトヨメのちいさなお店をはじめたこと。「実は接客が苦手で」とご相談をいただくこともしばしば。ヨメはラッキーなことに、育った実家ではお客様が来る商売をしていましたし、以前アパレルでも働いていた経験があるので、初対面の方と話すことにあまり抵抗がありません。しかし作家さんの中には
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第38話  押しつけ? それとも説明不足? ちょうどいい「接客」の距離感とは 

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こんにちは、ノマディックラフト ヨメです。

日々温かくなるにつれイベントシーズンが到来。私たちも大切な商品を持って各地に赴くことが増えてきました。

自分たちがよいと感じるものを作ったり仕入れたりして、お客様にお届けする。販売とは古くから続く、とてもシンプルな仕組みの商いですが、物を並べておくだけで選んでいただけるわけではありません。ノマディックラフトについて、商品についてご説明することで始めて興味を持っていただけることも多く、お客様との会話は店頭でもイベントでも欠かせないものとなっています。

しかし、これまで知り合った作家さんと話していると「実は接客が苦手で……」とご相談をいただくこともしばしば。ヨメはラッキーなことに、育った実家ではお客様が来る商売をしていましたし、以前アパレルでも働いていた経験があるので、初対面の方と話すことにあまり抵抗がありません。しかし作家さんの中にはコツコツと作ることは得意でも、知らない人と気さくに話すのが苦手、というシャイな方も少なくないのです。

そこで今回は、私たちも日々探り探りしている「接客」のちょうどよい距離感について、あらためて考えてみたいと思います。


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 会話のきっかけは
 ちいさなことから始めよう

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「接客が苦手」という方と話していると、いくつかのパターンが見えてきます。それを分類すると、だいたい3つに分けられます。

①  何を話していいか分からない
②  お客様の邪魔をしたくない・話しかけるタイミングが分からない
③  冷たくされたら傷ついてしまう

どれも「分かる!」と思ってしまうことばかりですが、私たちはこのように解消しています。

 

前段:まずはあいさつから!

私たちは商品を眺めてくださるお客様に「いらっしゃいませ」「こんにちは」など声をかけることから始めています。世の中にはお客様が話しかけてくるまで無言を貫く、という接客スタイルもありますが、身のまわりでヒアリングをしてみると、無言はあんまり好印象ではないようです。まずはあいさつのお声がけで、立ち入りすぎない歓迎の意を示すと同時に、コミュニケーションをとる意志表示をしています。

ブースを眺めたり、商品に手を伸ばして下さったりするお客様には、感謝の気持ちを込めてごあいさつから始めます。

ブースを眺めたり、商品に手を伸ばして下さったりするお客様には、感謝の気持ちを込めてごあいさつから始めます。

①「何を話していいか分からない・話しかけるタイミングが分からない」場合にお話しできること

 

→ お手にとってご覧いただけること

ごあいさつをした後は、お客様に自由に商品を見ていただきます。この間に、サッと見て、サッといなくなってしまう方もいらっしゃいますが、少し足を止めたり、何かに興味を持ったりしている様子をひとつのタイミングとして「お気軽にお手にとってご覧くださいね」「お気軽にお試しください」と、自由に触ってお試しいただけることをまずはお伝えしています(触っていいですか?と聞かれることもあるので、先にお伝えしておくほうがお客様も気が楽なのではないか、という考えです)。

→ 自分たちが何者なのか

商品を眺めている=興味を持ってくださっているということなので、ご覧になっているものがどういうものなのか、お伝えしておくのも大事だと思います。私たちで言えば、「東南アジアの少数民族が作る、刺繍や織物などの手仕事を使った雑貨をご紹介しています」とお伝えします。

「そうですか」とそのまま静かに商品を見つづけるお客様には、あまり立ち入らずにお客様の時間を尊重します。一方「東南アジアとはどこの国ですか?」「え? これが刺繍なの?」などお答えいただける場合は、会話のよいきっかけに。

→ 関心を持っているアイテムがどんなものか

お客様が手にとって物を眺める、というのも話しかけるタイミングのひとつです。ただ、持ってすぐ話しかけるとうっとうしいので、少し間を見てから、どんな背景があるのかまずは「短く」ご説明します。

たとえばうちの定番のティッシュポーチであれば、「ベトナム北部に住むターイ族の手織り布を使っているんですよ」とお声がけすると、人によっては「手織り布?」とハンドメイドであることに驚いてくださったり、「織なんですね、刺繍かと思った」と製法に興味を持ってくださったり。

ノマディックラフト

最初に「短く」ご説明するのは、お客様が「商品背景を知りたい」と思っているか、そうでないのかを判断するためです。最初からダラダラ長く説明してしまうと「ちょっと手に取っただけなのに」と重くなってしまい、見る気が失せてしまうこともあります。一方で、もし「これ可愛い」と思って下さっているなら、それがどんな物なのか伝わることでより興味を深めてくださる場合もあります。

最初に「短く」説明したときの様子を見て、さらにお話してもよさそうであれば「小物入れが一体になっているので、リップなど化粧直しの道具もちょっと入れておけるんですよ」など、使用シーンのイメージをお伝えするとか、「色違いもありますよ」などご紹介するのもよいと思います。もちろんここでも、リアクションが少ないお客様にはあまり話しかけすぎないようにしています。

せっかくやる気に満ち満ちているのに天候に恵まれない……という日も。お客様が少ないときは、近くのブースの出店者さんとお話しし、情報交換などをするのも大切です。このときのお隣さんは偶然にも『テラデマルシェ』で何度かご一緒しているハチミツ屋さん。面白いイベント情報などはこういうときに教えてもらえることが多いんですよ!

せっかくやる気に満ち満ちているのに天候に恵まれない……という日も。お客様が少ないときは、近くのブースの出店者さんとお話しし、情報交換などをするのも大切です。このときのお隣さんは偶然にも『テラデマルシェ』で何度かご一緒しているハチミツ屋さん。面白いイベント情報などはこういうときに教えてもらえることが多いんですよ!

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 邪魔になることは怖い。
 でもこちらから近づく気持ちも大切 

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②「お客様の邪魔をしたくない」ときにできること

優しい人や、相手を尊重する気持ちがある人ほど「お客様の邪魔をしたくない」と思ってしまうのではないでしょうか。または、自分自身がひとりの客としてお買い物に行く時に、声をかけられて「邪魔」と感じる経験が多い人も、同様に思うかもしれません。

しかし一方で、お店の人間が不要かと言えばそうではなく、「サイズがあるか聞きたいのに誰もいない」「気になるアイテムなのだけど、決して安くないから買う前に説明を聞きたいな」など、会話を必要とするシチュエーションに対応する人がいないと、それもまた不満の源泉になり得ます。

「邪魔になる可能性があるから話しかけないこと」と「必要になる可能性があるから話しかけること」は、ある意味で裏表の関係です。どちらも同じことなら、私たちは後者のほうをポジティブに感じ、選択することにしています。

植物は、購入後もお世話が必要な「生き物」。育て方や日光の量などキチンとした説明が必要になるアイテムです。

植物は、購入後もお世話が必要な「生き物」。育て方や日光の量などキチンとした説明が必要になるアイテムです。

もちろん、話しかけたお客様に無視されることもありますし、口には出さないものの、あからさまに「うるさい」と分かる対応をされることもあります。でもその一方で、「そのお話が聞けてますます気に入ったので、使ってみます」「そんなに風に作られた物だと知って、見え方が変わりました」など、嬉しい言葉をもらえることも。

この場合は、自分たちが「商品背景を知ってもらいたい」という思いがあるのかないのか、を振り返ってみればよいのかな、と思います。私たちはできれば少数民族の手仕事のことについて、少しでも面白さが伝わるといいな、と思うので、背景について話す機会があることを好みます。でも、あくまでデザインの素晴らしさによって気に入ってもらえないなら意味がない、という考えや、相手の自由な選択をとことんまで尊重する、という考えがあってもいいと思います。

ただ、本当はお話ししたいし、商品のことも伝えたいと思うのに、邪魔になるのが怖いから話さないのであれば、「無視の一回や二回あるある!」と割りきって、話しかけてみることで楽しい会話の記憶も増え、徐々に話しかけることへのハードルも下がっていくのではないでしょうか。

 

      
 冷たくされたからといって
 否定されたわけではない、と気づくこと 

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③ 「 冷たくされたら傷ついてしまう」 場合にできること

無視されたり、冷たくされたりするとショックを受けてしまう、という声もよく聞きます。特にもの作りをするうえでは、自分の作る物を信じる気持ちはとても大切です。それなのに目の前で「これ変ね」「私の好みじゃないわ」と言われるとヘコんでしまう、というのはとてもとても理解できます。

これも「邪魔になるのが怖い」問題と考え方は同じで、「否定される可能性」と「肯定される可能性」は常に裏表です。それを恐れて万人に嫌われないものを作り、誰にも嫌われないようにふるまうことは、結果的に誰の心にも残らない怖さを秘めています。自分の感性にまつわるものを表に出す以上、残念ですが傷つくことは避けられません。思いを込めて作った物が、誰にも見向きされないまま一日を終えることだってあります。

お客様にとって、私たちは初対面の他人。見知らぬ他人に配慮など必要ない、という冷たい態度の方は非常に少ないですが中にはいます。でも私たちがどう生きて、どういう思いでやっているか何も知らない人が勝手にどんな態度をとろうとも、私たちの中に失われるものは何もありません。「何かイヤなことがあったのかもしれないな」とスルーして、それでももし傷ついたら、自分のことをよく知る大切な家族や友人に愚痴を聞いてもらって忘れてしまいましょう!

レラを見つけた犬好きの方が声をかけてくれる、という機会も増えました。「去年も来てましたよね? まだらのわんちゃん覚えてます!」と言ってくださることも。看板犬に感謝です。

レラを見つけた犬好きの方が声をかけてくれる、という機会も増えました。「去年も来てましたよね? まだらのわんちゃん覚えてます!」と言ってくださることも。看板犬に感謝です。

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一生懸命話しかけてみたものの、お客様の態度を見て「あ、なんか私うざかったかも……」と、反省することは、私も未だにしょっちゅうあります。でも「イヤがられるかな」と気にして何もしないより、話しかけてコミュニケーションが取れたときのほうが喜びも大きいので、メゲずに話しかけ続けています。

乱暴なアドバイスかもしれませんが、お客様も大人ですので、必要なければ私たちを上手にあしらってくれます(笑)。あまり考えすぎても先のことは予測できないので、まずは笑顔で声をかけてみましょう!

次回もちいさなお店からのお話をお届けしますね。どうぞお楽しみに!

 

 

(月1回  第4土曜日更新の予定です)    

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 ノマディックラフトのイベント出店情報 

ベジ&フォーク
5月20日(日)@神奈川 川崎市・麻生環境センター
ビオティック、オーガニックを大事にした食生活を大切にする野外マルシェ。100%植物性の飲食店や農産物、スイーツの販売のほか、手作りの雑貨や体を癒すボディワークなどのブースが出店します。キッズが伸び伸び遊べるエリアや、アーティストによるミニライブも。自然あふれる魅力的な環境で、休日を気持ちよくお過ごしいただけるイベントです。 ※イベント自体は5月19日(土)・20日(日)の二日間開催しています。
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 連載バックナンバー

第1話 家=店。人が思うよりもずっとちいさな投資でお店をはじめてみた(2015.6.13)
第2話 店から出て人に会う、出会いをつくる。〈イベント出展篇〉(2015.6.26)
第3話 1人2役 × 2。兼業夫婦は不安定? 時間も予定も「自由」のメリット・デメリット(2015.7.11)
第4話 なんで「少数民族の手仕事」? それはやっぱり「好き」だからです(2015.7.25)
第5話 暑さに負けず蚊に負けず。探して洗って、よみがえる古布たち 〈 仕入れ旅篇 〉(2015.8.8)
第6話 どうしてそんなに自由なの!? 現地の人たちと商品を作る(2015.8.22)
第7話 モン族の女性に聞いた、美しい刺繍の裏側にある物語(2015.9.5)
第8話
 小商いでも管理は大切。入るお金、出ていくお金何がある?(2015.9.19)
第9話 ショップカードにネームタグ… 地味だけど重要度は大! お店まわりのこまごま小物(2015.10.3)
第10話 大切さは名前と同じ。自分たちのロゴマークはどう作るか<デザイナー編>(2015.10.17).
第11話 大切さは名前と同じ。自分たちのロゴマークはどう作るか<実践編>(2015.10.31)
第12話 どこまでを手作りと呼ぶ? 手仕事を求める楽しさ、難しさ <買い付け編>(2015.11.14)
第13話 お客様との新たなつながり。看板犬レラが教えてくれたこと。(2015.11.28)
第14話 美しいものよ、輝け!お母さんとの約束。(2015.12.12)
第15話 生産者さんを訪ねて <鳥の笛ネックレス編(2016.1.14)
第16話 生産者さんを訪ねて <アカ族の村編(2016.1.30)
第17話 始まった… 年に一度の確定申告(2016.2.13)
第18話 手仕事は同じじゃないから美しい~『ORDINARY』とコラボグッズを作ったこと(2016.3.11)
第19話 生産者さんを訪ねて<カレン族の村編>(2016.5.21)
第20話 生産者さんを訪ねて<ラフ族の村編>(2016.6.18)
第21話 夫婦で働きながら、煮詰まったときにしていること。(2016.7.20)
第22話 おしゃれに見せるって難しい! イベントのディスプレイで四苦八苦。(2016.8.26).
第23話 ちいさなお店がイベントに出ることQ&A ≪前編≫(2016.8.26)
第24話 ちいさなお店がイベントに出ることQ&A ≪後編≫(2016.11.26)
第25話 ちいさなお店がイベントに出た1年を振りかえる(2016.12.24)
第26話 ちいさなお店の海外買い付け① 買い付け方法と情報集め(2017.01.30)
第27話 ちいさなお店の海外買い付け②航空券の準備 (2017.02.28)
第28話 ちいさなお店の海外買い付け③スケジュール決め&宿探しのパズル (2017.03.31)
第29話 ちいさなお店の海外買い付け④アイテム探しと値段交渉 (2017.04.30)
第30話 ちいさなお店の海外買い付け⑤価格はどう設定するか(2017.06.05)
第31話 寝台特急は楽しい出会いの宝庫(2017.06.25)
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第32話 オリジナル商品ってどう作るの?(2017.07.29)
第33話 成長し続けていくために考えること(2017.09.30)
第34話 ちいさなお店の意見の違い、どう乗越える?(2017.11.04) . 
第35話 安定している時期だからこそ、未来に種をまくこと(2018.1.09)
第36
 イベント成功のカギは、出店前後の「イメージトレーニング」にあり?(2018.1.27) 
第37 迷ったら、手を動かすこと(2018.4.3) 
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オーディナリー編集部がノマディックラフト参加の展示会を観に行った話

【レポート】遠い国の伝統的な手仕事がいっぱい!  

【関連サイト】
ノマディックラフト ウェブサイト http://nomadicraft.com/
ノマディックラフト 店主ブログ http://blog.shop.nomadicraft.com/
ノマディックラフト Facebook https://www.facebook.com/nomadicraft
木内アキ(ライターとしての仕事) ウェブサイト http://take-root.jp/

 


ノマディックラフト ヨメ

ノマディックラフト ヨメ

自然・旅・民族をテーマに、タイ、ベトナム、ラオスの山岳地帯に住む少数民族の手仕事を扱う、西小山のアトリエショップ『nomadicraft』を店主であるダンナとともに運営。母から子へ、脈々と受け継がれてきた素朴で美しい手仕事を紹介しながら、作り手である女性たちに仕事の機会を提供し、貧困の和を断ち切るための支援も行っている。ふだんはフリーランスのライター・木内アキとして「女性にまつわる人・旅・暮らし」をキーワードに、雑誌や書籍を中心に執筆活動中。目標は「キチンとした自由人」。 ノマディックラフト 店主ブログ http://blog.shop.nomadicraft.com/ 木内アキ ウェブサイト http://take-root.jp/