ちいさなお店をはじめたこと。~等身大で、自由な働きかた~【第36話】イベント成功のカギは、出店前後の「イメージトレーニング」にあり?

ノマディッククラフトヨメのちいさなお店をはじめたこと。どんなお店でもそうですが、売り買いが成り立つ瞬間とは「人」「もの」「場所」がタイミングよく出会ったときだけ。仮にたくさんの「人」が集まる人気のイベントに出たとしても、すべてのピースがパチリとハマらなければアイテムに動きはありません。
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第36話  イベント成功のカギは、出店前後の「イメージトレーニング」にあり?   

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こんにちは、ノマディックラフト ヨメです。

自分たちのペースでオリジナル雑貨&輸入雑貨の販売をはじめて8年目になりました。正直、大成長を遂げた! という感じではないですが、マイペースに継続していけるリズムでやっていけることに、ありがたみを感じています。

さて、今回触れたいのは出店前の「イメージトレーニング」について。

ちいさなお店をはじめて間もなくのときは、扱いたいものはあるけれど、それが売れるかどうかは分からない、という手探りでのスタート。最初のうちはとにかく並べてみて、一生懸命接客をするだけでした。振り返ると数百円の雑貨から数万円の衣装や織り布まで販売することができましたが、私たちの提案する中からお客様がどんなものを選んでくださるか「予測を立てる」のはいまだに難しいものです。しかし「売上げ」をつくることを考えると、ある程度予測を立てて準備する努力が欠かせません。ここで「イメトレ」が必要になるのです。
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どんな場所に誰が来るのか、
あらかじめ想像をふくらませてみる

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どんなお店でもそうですが、売り買いが成り立つ瞬間とは「人」「もの」「場所」がタイミングよく出会ったときだけだと感じます。仮にたくさんの「人」が集まる人気のイベント(「場所」)に出たとしても、来場する方々が求める「もの」と私たちが紹介したい「もの」、すべてのピースがパチリとハマらなければアイテムに動きはありません。しかしたった数人のお客様しか来なかったのに、それぞれがまとめ買いをしてくださって、いつもよりもたくさんの商品が動いた!なんてこともあります。

じゃあ「人」「もの」「場所」のタイミングを合わせるために私たちができる努力は、というと何があるのか。そのひとつが事前に「イメトレ」をしていくこと。現在、私たちの売上げの中心は住宅街の中にあるアトリエショップよりもイベントによるものが大きいので、イベントを例にあげて考えてみます。
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1.  イベント出店前に どんな人が来るのかイメージする

「開催場所の立地」や「イベントのコンセプト」から、どんなお客様が来るのか想像してみます。たとえば「郊外にある緑豊かな公園で」開催する「オーガニックな食品を中心にしたマルシェ」であれば、その中に含まれたキーワードからお客様の人物像をふくらませていきます。
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「会場となる郊外の公園周辺は、新しい一軒家やテラスハウスが多い。ということは、まだ子どもが小さい30-40代くらいの家族が多いかも?」

「オーガニックを気にしている人が来るのだから、天然素材や草木染めによい印象を持ってくれそう」

「大きな駐車場があって車で来る人も多いので、インテリアなど大きなアイテムは電車移動が中心になる都心より動きやすいかも」

「前回、開催時の写真を見ているとすこしアウトドアっぽいおしゃれをしたご家族が多いから、グランピングに似合いそうなカラフルなアイテムもウケそう」

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……などなど、過去の開催時の写真なども参照しながら「どのような人たちが」「何を求めて」来るか、イメージをふくらませます。

川崎市にある緑豊かな公園で開催される『ベジ&フォーク』と、都会の真ん中、六本木のアークヒルズで開催される『赤坂蚤の市』では、訪れる人のタイプも求めるものも異なります。どう作戦を立てるかがイメージのポイントです。

川崎市にある緑豊かな公園で開催される『ベジ&フォーク』と、都会の真ん中、六本木のアークヒルズで開催される『赤坂蚤の市』では、訪れる人のタイプも求めるものも異なります。どう作戦を立てるかがイメージのポイントです。

 

2. 持って行くアイテムと、その見せ方を考える

1.で考えた仮説のイメージをもとにしながら、レイアウトを考えます。

たとえば

「最もたくさんの人目につきやすい通路に面したテーブルには草木染めのテキスタイルを中心に、ナチュラルカラーの雑貨をまとめてみよう」

「都心のイベントではスペースが足りなくて広げられない、椅子やクッションカバー、テキスタイルなどのインテリア関連をずらっと目立つように置いてみてはどうか」

「小さい子どもがたくさん来そう。子どもさんが伸び伸び見てもらえるよう、植物や陶器など壊れやすいものは落ちにくい場所に置いたほうがいいな」

……などなど、当日のブースの広さを加味しながら何をどこに置くかイメージ。持っていく物を決めます。

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3. 仮説を検証しつつ、変えたり動かしたりする

2.で決めたレイアウトを会場で再現していきます。イベントによっては「開場直後から人が来る」場合と、「昼くらいからジワジワと人が来る」場合、両方がありますが、だいたい午前中を終えたくらいで朝作ったレイアウトの反応がなんとなく分かってきます。

「想像していたよりも、ぜんぜん草木染めに反応がない!」

「クッションカバーがもう2枚動いた。いつもより反応がよいかも」

「まだ買ってくださった方はいないけど、カラフルなポーチをいろんな人が手に取っているから、帰りにもう一度戻ってこられるかも?」

……などなど、1.2.の仮説をふりかえり、外れたっぽいなと思うところはまたレイアウトを変えて反応を見ます。

 

     
 イメトレの結果はどうだった?
 検証するのも次回に向けた財産に 

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私たちの行ったイメージは果たして役に立ったか立たなかったのか。イベントを終えたら、立てた仮説に対して結果がどうだったか振り返ってみます。たとえば先の2つを例に、どうなったか検証するとこうなります。

◆仮説その1

① 仮説:オーガニック志向の人が来るため、草木染めが売れるのではないか。人目につきやすい通路に面したテーブルに目立つように置いてみよう。

② 結果:正面に置いていたときは全く動かなかったが、午後から少し奥まった場所に移動させたら手に取る人が増えた。

③ 検証:天然染めを好むお客様は、目立つ場所よりも、少し落ち着いた場所でゆっくり商品を見たいのかもしれない。

◆仮説その2

① 仮説:車で来る人が多く、近くに住んでいる人も多そうなので、インテリア関連が動くのではないか。

② 結果:クッションカバーがいつもよりも倍の枚数動いた!

③ 検証:クッションの中身を用意するのが面倒、という理由で買うのをやめた人が2人いた。中身を用意してセット販売すればお客様も買いやすくなりそう。しかしクッションの中身をお店にストックしておくのは場所をとるため検討が必要。

電車での来客が多い代官山では、小物を中心にディスプレイ。クルマで来るお客様が中心の野外イベントでは椅子やクッションカバーなど大きいものも前に出してアピール。

電車での来客が多い代官山では、小物を中心にディスプレイ。クルマで来るお客様が中心の野外イベントでは椅子やクッションカバーなど大きいものも前に出してアピール。

 

仮説というと小難しいのですが、だいたいは前日の準備のときや、行きの車の中で店主と「今日はこんな人たちが来そうだから、こういうふうにしてみない?」とすり合わせをします。検証も同様で帰り道に「ここが意外だったね」「あの予想は当たった!」などとふり返りをします。

いい意味でも悪い意味でも、予想を裏切られることはしょっちゅうです。でも、それにめげずにイメトレでトライアンドエラーをして、振り返ることを続けていくと、少しずつですが予想の精度も高まってきますし、それがうまくハマること=「人」「もの」「場所」のタイミングが合う、ということなのかもしれません。

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イメトレ&検証をしていくなかで、日々発見がたくさんあります。

世の中には手仕事=スローなイメージがありますし、ナチュラルなライフスタイルを好む人たちが選ぶものと思われがちですが、接客をしていると「看護士」や「教師」など、スローというよりも忙しいお仕事のお客様によくお買い求めいただきます。お話を聞いていると、「日々バタバタしているから空き時間に買い物をするのがよい気分転換」「誰かの手で作られた手仕事のものを使うとホッとして癒される」とおっしゃいます。お仕事柄、ザ・エスニック!という感じの派手なものはあまり相性がよくないようで、衣類やバッグは手に取りませんが、「自分でよく使う小物くらい、かわいいもので気分を上げたい」とカラフルなピンクやグリーンのポーチを「コスメを入れる」「スマホの充電器を入れる」などと選んでいかれます。お仕事に使うバッグのなかで、ちょっとカラフルな癒しになる。そんな用途で選んでもらえるとは嬉しい発見です。

自分たちの発信したいものを扱う大切さと共に、喜んでいただけるものを届けることをバランス良く。そんなことを考えながら、手仕事の魅力を伝えていけたらと思います。

次回もちいさなお店からのお話をお届けしますね。どうぞお楽しみに!

 

(月1回 第4土曜日更新です)    

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 連載バックナンバー

第1話 家=店。人が思うよりもずっとちいさな投資でお店をはじめてみた(2015.6.13)
第2話 店から出て人に会う、出会いをつくる。〈イベント出展篇〉(2015.6.26)
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第13話 お客様との新たなつながり。看板犬レラが教えてくれたこと。(2015.11.28)
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第19話 生産者さんを訪ねて<カレン族の村編>(2016.5.21)
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第21話 夫婦で働きながら、煮詰まったときにしていること。(2016.7.20)
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第26話 ちいさなお店の海外買い付け① 買い付け方法と情報集め(2017.01.30)
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第32話 オリジナル商品ってどう作るの?(2017.07.29)
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第35話 安定している時期だからこそ、未来に種をまくこと(2018.1.09) . 

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オーディナリー編集部がノマディックラフト参加の展示会を観に行った話

【レポート】遠い国の伝統的な手仕事がいっぱい!  

【関連サイト】
ノマディックラフト ウェブサイト http://nomadicraft.com/
ノマディックラフト 店主ブログ http://blog.shop.nomadicraft.com/
ノマディックラフト Facebook https://www.facebook.com/nomadicraft
木内アキ(ライターとしての仕事) ウェブサイト http://take-root.jp/

 


ノマディックラフト ヨメ

ノマディックラフト ヨメ

自然・旅・民族をテーマに、タイ、ベトナム、ラオスの山岳地帯に住む少数民族の手仕事を扱う、西小山のアトリエショップ『nomadicraft』を店主であるダンナとともに運営。母から子へ、脈々と受け継がれてきた素朴で美しい手仕事を紹介しながら、作り手である女性たちに仕事の機会を提供し、貧困の和を断ち切るための支援も行っている。ふだんはフリーランスのライター・木内アキとして「女性にまつわる人・旅・暮らし」をキーワードに、雑誌や書籍を中心に執筆活動中。目標は「キチンとした自由人」。 ノマディックラフト 店主ブログ http://blog.shop.nomadicraft.com/ 木内アキ ウェブサイト http://take-root.jp/