特定の知識や技術は次々と古くなる。それでも「新しいことを上達させるスキル」があれば、時代に対応していけます。これからは働きかたがより多様化し、会社や正社員という枠組みが拡張して「総フリーランス」な様相を呈してくることになります。そんな変化の時代において
停滞を抜けるために、仕事のやり方を見直そう
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「上達するには、とにかく量をこなせ」
「いや、やみくもにやっても意味がない。質こそ大事だ」
こういう「量か質かの議論」は、どの分野でも聞かれます。スポーツやビジネスはもちろん、ぼくらが身を置く表現の分野(特に書く、描く、撮る、つくる)などでも、同じです。
今回は、「量か質か」の観点で、上達の方法、あるいは停滞の抜けかたについてお話しします。さまざまな作家たちを見てきた今のところのぼくの考えを、まとめてみようと思います。
きっかけは、読者さんからのこんなお便りでした。ヒントになれば幸いです。
この1年ほどブログを書いているのですが、このところ上達している気がしません。慣れてはきましたが、自分なりに「なかなか良いものが書けたなぁ」と思えるのは10記事中1記事あればいい方です。前進しているのかわからず、むしろ後退しているような気さえします。上達のコツなどありますか?
執筆に限らず、どのジャンルでもそうですね。1年続いたのであれば、基本的には向いているのだと思います。ただ、始めたものの、1年ほどで上達が停滞すると、つまらなくなってやめてしまう人も多く出てくる時期です。
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上達を実感できると、楽しく続けられる
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文章を書き始めて、最初の一年は最も伸びる時期です。半年もすると見違えるほどに良くなっていきます。その一方で、何年も書いていてもなかなか進歩を感じられず、つまらなくなったり、「才能がない」と早とちりして、ついに歩みを止めてしまう人もいます。
その違いはいくつかありますが、ひとつは「上達の方法がわかっているかどうか」だと感じています。 複数の分野で、どれもある程度うまくこなせてしまう「器用な人」はいますよね。文武両道、勉強もスポーツも芸術もできる、文系も理系も料理もデザインも日曜大工もプログラニングもできる、など。分野が違っても、上達のプロセスは共通しているものです。何かひとつを会得して、上達のプロセスをマスターした人は、それを横展開して他ジャンルでも最短である程度通用するレベルまで持っていくことができるようです。
「何かに集中して打ち込んだ経験はありますか?」
これは就活の面接でよく聞かれる代表的な質問ですが、つまり「上達の方法を知っている人かな?」というのを見ています。
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変化の時代に役に立つのは、「上達のスキル」
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技術には寿命があります。昭和の時代までは重宝されたそろばんのスキルも、今の時代は、その地位を下げてしまっています。ぼくが会社員時代に全精力をかけてそのスキルを磨いた「飛び込み営業」も、その後のたった15年間で、古くて迷惑な手法となり、今はほとんど使い道がありません。
このように特定のスキルは次々と古くなる可能性が高いです。それでも「新しいことを上達させるスキル」があれば、時代に対応していけます。
これからは働きかたがより多様化し、会社や正社員という枠組みが拡張して、「総フリーランス」な様相を呈してくることになります。フリーランスは、「ひとり企業」ですから、一人である程度、「営業、制作、ウェブサイトの更新、税務会計、事務仕事などなど」自分で何とかするのです。それぞれのスキルをプロとして最低限通用するレベルまで、すぐに身につけなければなりません。
そんな変化の時代においても、いつも悠然としていて、焦りを見せない人たちがいます。
「健康でさえいれば、何があってもやっていけるよね」
自信があるのは、彼らが上達の方法を知っていて、「どの分野であっても一定期間学べば会得できる」ことを理解しているからです。
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伸びが止まる原因は、2つ
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なぜ停滞は起きるのでしょう。
原因のひとつ目は、「誰にも停滞期がある」ということです。(原因、というのとは違うかな)
停滞は、どんなに才能があっても、どんなに正しいトレーニングをしていても、誰にとっても訪れます。右肩上がりに同じペースで永遠に伸び続けることはありえません。 上達のプロセスについては、この連載でもたびたび触れていますが、こういう階段の形で伸びていきます。 ※名著『達人のサイエンス』をお読みください
階段の踊り場で停滞しているからといって、「才能がない、向いてないから諦めよう」などと早まらないようにしてくださいね。まず、基本知識として「停滞期は必ずある」と知ること。そうすれば、焦ることがありません。大丈夫。停滞していても、正しい道を歩んでいるのです。
原因の2つ目は、「理想とのズレ」です。
一年も経つと、初心者の頃から比べて知識も増えてくる。上級者の技術も目の当たりにして「早くあんなに上手くなれたらいいなぁ」と夢を描きます。上級者の作品をたくさん見たり、コミュニティーに参加したりしていくと、目が肥えてきます。自分の技術の上達よりも、目の方が先に肥えていくので、理想と現実のズレが大きくなっていくのです。「このくらい書けて普通」のレベルが知らぬ間に上がってくる。自分がいかに下手か、成長が遅いどころか、後退しているのではないか、と不安になってくるのです。でもなんのことはない、理想の方が先に高くなっているだけです。トレーニングを記録をしておき、客観的に見ることができれば、成長した差がわかるものです。
本の世界だと、出版社の編集者から作家に転向しようとしてつまづいてしまうケースがこれに当てはまります。先に編集者の仕事をしてしまうと、一流の作家たちの原稿や技術に多く触れているうちに、当然目が肥えます。原稿について作家たちが担当編集者である自分の意見をよく聞いてくれるので、「自分もひとかどの能力だ」と勘違いしてしまうのです。「自分だってこのくらいは書けるだろう」と思って書き始めたら、愕然。「なんと稚拙な…ひどすぎる」と己の作品がどうしようもないものに見えてしまうのです。ああ、才能ないんだと早々に打ちのめされてしまうことがある。案外、編集者出身の作家が少ないのはこういうこともあるようです。
100m走のような競技と違って、表現の分野は「タイムが伸びた」の数字で測れるものでもありません。なので、どうしても自分では上達がわかりにくい。客観的に成長度合いが見えないのです。ブログのアクセス数や「いいね!」数が伸びないから、執筆スキルが成長していないか、と言ったら別問題です。
対策としては、目利きの他人、できればトレーナーに客観的に見てもらうといいでしょう。ぼくも書き始めた24歳当初から、共同経営者のパートナーがいて彼が編集担当をしてくれていました。
「まったく伸びてる気がしない…」
うなだれているぼくに、
「いや、ずいぶん良くなってるよ。例えばこの辺とかさ、こういう表現、前はできなかったじゃん?」
などと指摘してもらえたので、成長に気づくことができました。
少しでも成長してる。これはやっぱり嬉しいものです。書くトレーニングは、楽ではないけど、上達が感じられると、どんな仕事でも楽しくなってくるのではないでしょうか。
ただ、初級者はやみくもに努力していても、伸び代があるのでぐんぐん伸びますが、中級者になるあたりで、大きな停滞がやってきます。「中級者の停滞」を抜けて、上級者になるには効果的なトレーニング方法を学んでいないとなかなか難しいようです。
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大切なのは、質か量か
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さて、お待たせしました、本日の本題です。量と質、あなたはどちらだと思いますか?
こういう「どちらが大切か」という2択問題は、「両方大切」になることが多いですよね。宇宙は陰と陽の両方でできていて、そのバランスの中で動いているからです。宇宙の一部であるぼくらの肉体や精神も、同じ宇宙の法則に包括されています。
質と量は、どちらも「ある程度」必要です。質だけで量がないのはダメ。量だけで質がないのもダメ。では「ある程度」とは、何を基準にすればいいのでしょうか。
そこで有効な概念が、「ボリューム」です。
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「質 × 量 = ボリューム」
このボリュームを増やすのが鍵
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結論から言うと、「質か量か」ではなく、「ボリュームを増やす練習を続けることが、上達の近道なのではないか」と思っています。
100%の質とは、限界MAXまで力を出し切った状態のこととします。終わった後、バタリと倒れこむくらいの全力です。
例えば、 この表を見てください。
質(強度)× 量 = ボリューム
30% 40本 1200 質が低すぎて成長はない。疲労ばかり溜まる。飽きる
65% 15本 975 バランスがいい 上達が見込める
80% 10本 800 バランスがいい 上達が見込める
90% 3本 270 ボリュームが出せない
100% 1本 100 ボリュームが出せない
質(強度)が65%以上で回数を多くこなした方がいいことがわかると思います。そうすると、65-85くらいの強度で、限界まで回数を多くしていくのがボリュームを稼げて、成長が早くなります。
完璧主義の人は、妥協できずに質を100にしようとしてしまうので、そうなるとなかなか完成しないし、何本も書けません。密かに注目している天才ブロガーさんがいるのですが、彼女は年に1本しか書きません。ブログをかれこれ10年続けていますが、年に1本ペース。ただ、その1本は腹がよじれるほどに笑えて泣けるのです。彼女は書くことで生計は立てていないようですが、まぎれもない才能です。ちゃんとしたトレーナーがついてボリュームを増やせば、さらに急成長して世界も狙える逸材なのに…と歯がゆい気持ちがあります。
書き手にとって「質」とは「考える強度」
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ツイッターで軽くつぶやくのと、憧れの雑誌に寄稿する場合を比べたら、力の入れ具合は変わりますよね。
質とは、「考える強度」のことです。高い低いはこのようなイメージでしょうか。
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考える強度 高い
アイデア型(新しいアイデアを考えだす) 完成できるか不安
Aランク 「自分でも答えがわからない問い」を研究、熟考しながら言語化する
Bランク 「ぼんやり感じているイメージ」を言語化する
Cランク 「すでに知っている知識」を書く
Dランク 「何度も書いてる話」を書く
考える強度 低い
レポート型(すでに知っていることを伝える) 完成できる自信がある
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一番簡単に書けるのは、レポート型です。例えば報告書。起きた出来事を正確にそのまま思い出して書けばいいだけです。何時ごろ、何を食べて、値段はいくらだった。事実を書けばいい。必要なのは記憶力くらいで、考える力はほとんど使いません。
一番難しいのは、わからない問いに答えを出そうと考えることです。アイデア型の内容は、書き始めてみたものの、ゴールにたどり着けるか不安で仕方ありません。強度が高くなればなるほど、不安や恐れが大きくなるものです。先人によるさまざまな文献も調べますし、必要なら取材やインタビューもする。考える時間がかかりますので、1日でさらっと書くことなどできません。挑戦し、書き終えた時には達成感もあり、疲労感も尋常ではありません。格闘した末にうまく着地できなくても、強いオチが見つからなくても、一本完成させて全力を出したわけなので、いいトレーニングになっています。
「1本書くのに、どのくらいの時間がかかりますか?」
よく聞かれる定番の質問があります。それはレポート型であれば、15分でさらっと2千字書けるかもしれませんが、アイデア型で高強度のお題であれば、一週間かかることもありますし、極端な話、10年かかることもあります。だから正確には「強度による」というのが本当のところです。でも、現実には〆切があるので、その期限内で可能な強度のお題にチャレンジすることになります。
ゴーストライターを使うと上達しにくい
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著者の中には、書くのが苦手だったり忙しかったりすると、「聞き書き」をするケースも多くいます。ゴーストライターとかブックライターなどと呼ばれますが、ライターさんに向けてしゃべり、それをまとめてもらい本にする方法です。別に悪いことではなく、有名人本、経営者本などではよくあるやり方です。
ただ、この手法で、読み応えのある本にできる著者は多くありません。やはり「聞き書き」という性質上、どうしてもCかDランクの話ばかりになります。書きながら考えを深めるプロセスをスキップしてしまうのです。すでに答えを知っていることしか書かない。これを続けていくと、強度が低いので著者としての上達はあまり見込めません。
読者としても「聞き書きした本」に熱量を感じないことが多いのは、著者が高強度の限界に挑戦していないから、という理由もありそうです。
書き手にとって「量」とは「文字数」
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停滞を感じたら、まずは、自分のブログで「量のトレーニング」をするのがいいと思います。本数をできるだけたくさん書く。他媒体への寄稿ではなく、自分のブログであれば、気も楽です。完璧主義者でも「100でなくても65−85くらいの強度でいい」と割りきりやすいと思います。自分の部屋ですから、プレッシャーも制約も少ないですよね。読者も、だいたいが常連さんたちなので優しいですし。
連載するエッセイは、毎回「最高におもしろくしなければ」と気負いすぎる必要はありません。おもしろくない回があるからこそ、読者はおもしろい回の価値に気づくのです。自分の中で「65点以上であれば合格」として、「ボリュームを稼ぐこと」を意識して公開していきたいところです。
逆に、ゆるめの書き手が気をつける点としては、自分の部屋だからと、だらけすぎないこと。ブログでは編集者のようなトレーナーがいないので、「気づいたら65以下で軽く流してばかりいた」というケースも見られます。「すでに簡単にできること」をくり返しているだけでは、いくらボリュームをこなしても上達はありません。維持だけです。これでは「トレーニング」ではなく、ただ動かしているだけの「運動」になってしまいます。
実践よりも「反復」が大切
今どこを鍛えているかを意識して
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執筆に限らず、「地味な練習や基礎トレーニングが好き」という人は少ないのではないでしょうか。
バスケでもパス練習やフットワークより、試合形式の紅白戦の方が楽しいです。
「試合で強くなるためには、実践あるのみ」
試合をたくさんこなすのが効果的だと、ぼくも思っていましたが、そうではないようです。 もし練習時間のすべてを試合にして、毎回試合ばかりをしていれば強くなるかというと違います。がむしゃらに試合ばかりしていても、すぐに停滞にぶつかります。
「実践」は大事なのですが、各スキルを上達するには「ボリューム」がなければいけません。得意を伸ばすか、弱点を克服するか、狙いを明確にして取り組む。「実践」ではなく「反復」したほうが効率よくボリュームを稼ぐことができるのです。
例えば、バスケでは1試合の中で3Pシュートはせいぜい10本くらいしか打つチャンスはありません。この時間を3Pに絞ったシュート練習にあてれば、同じ時間で200本打つことができます。あなたがもし「得意な3Pシュートをもっと伸ばしたい」もしくは「苦手な3Pシュートを克服したい」と思ったら、試合だけしていてはボリュームが圧倒的に足りないことがわかります。これでは3Pシュートがこれ以上うまくなることはありませんね。
同じように、書くスキルも、毎回狙いを明確にしてトレーニングするといいです。
企画の面白さ
アイデアの新しさ
言葉選びのユニークさ
わかりやすい事例
感動の要素
読後感の良さ
レイアウトの美しさ
写真、イラストの良さ
書くスピード …などなど
スピードを身につけたかったら、「スピード練習」を反復するのがいいです。タイトルを考える力を強化したければ、今週は「タイトル出し」を集中して反復するとか。千本ノックみたいな反復練習は地味できついですが、有効なのです。
書く頻度はどのくらいがいいのか
「毎日」「 週一」「月一」 ?
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「ブログは、どのくらいの頻度で書くのがいいですか? 」
この質問もよくあります。できれば「週一以上」がいいと思います。
「忘却曲線」というグラフを見たことがあるかと思います。覚えたスキルや知識も、次の練習までに週一以上空いてしまうと急激に忘れるようです。週一更新だとしたら、最低でも週一以上は書く機会があるわけで、忘れないでスキルは蓄積していくことができます。
もちろん「強度100で毎日」が一番ボリュームが出るのですが、MAXは毎日できません。回復が追いつかない。疲労困憊でそのうちオーバーワークになります。毎日やるなら強度は65でしょうか。
たしか武井壮さんが言ってましたが、100m走だと「7日間に1本しかMAXは出せない」のだそうです。予選のレースでよくみる光景ですが、スタートして勝利を確信すると1位の選手がレースの後半で流すことがありますよね。あれは余裕をアピールしてカッコつけているわけでも、さぼったりしているわけでもありません。翌日の決勝戦にMAXを持ってこれるように、意図的に抑えているのです。勝てるギリギリの強度で調整してるのです。
「どんなときも全力で走るのが、スポーツマンシップじゃないですか?」
相手に失礼じゃないかと言う人もたまにいるけど、選手は自己新記録を出すために工夫をしているのです。勝負は7日に1回しかないので、貴重です。
肉体だけでなく、精神も同じです。誰でも初めて大きな舞台で全力を出しきった後は、一週間くらい「もぬけの殻」になりますよね。もう何もやりたくない…誰とも話したくない…みたいな疲労感もある。強度100とは、生きる死ぬかのギリギリで戦い抜いた後の疲労感です。とても毎日できるものではないのです。毎日できるくらいであれば、それは強度100ではなく65くらいです。
週一更新というペースは、読者にとっても前回の内容を忘れないのでありがたいですね。だから、学校の授業も週一回以上空けないようにしています。間が空いて月一になってしまうと、前回何をやったかを冒頭におさらいしないとといけないので、効率が良くないのです。
とにかく、無理なく続けられる頻度がいいです。続けられないことには上達も何もありませんので。
宇宙にも、生物にもホメオスタシス(恒常性)があって、一定の状態に保ちつづけようとする力が働いています。短期間で急激に大きくしたものは、下がるのも早いのです。ダイエットのリバウンドがそうですね。体も頭も同じで、一夜漬けで暗記したものはテストの次の日にはすっかり忘れてしまう。そんな経験はあなたにもあるのではないでしょうか。
反対に、10年かけて築いてきた能力は、1年くらいブランクがあってもすぐに取り戻せる。10年選手の料理人が1年ぶりに料理をしたら、どうなるでしょう。もちろん勘も鈍っているし「ああ、全然下手になってる」とがっかりしますが、基礎が身についているので何回か練習して勘を取り戻せば、前と同じくらいのレベルまで1ヶ月もあれば戻せるものです。
初心者は、「強度65で、頻度は週一」から始めるのが、無理なく続けるために良いと思います。それでキャパシティーが上がって余裕ができてきたら、徐々に強度と頻度を上げていきましょう。
「こんなに努力してるのになぜ?」
中級者の停滞4パターン
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努力はしているつもりなのに上達が見えない。それを「スランプだー」と落ち込んでしまうこともあります。必ず来る「中級者の停滞」に直面したら、このパターンではないかと確認してください。
1. 質ばかりにこだわって量(頻度)が落ちてくる
目に見える成長を追うばかりに、強度をギリギリまで上げていくことを目指しがちです。すると必然的に、頻度が落ちてくる。高強度低頻度ではボリュームが稼げません。強度を落として、頻度をあげましょう。
2. 量ばかりこなして、質にチャレンジしなくなってしまう
逆に、強度が65以下に弱くなってしまっているのに気づかない場合もあります。ルーティンになっているクライアント仕事でありがちですが、「この程度でいいだろう。相手も満足してるし、同業者と比較しても悪くないクオリティーだし」と強度を下げてしまうのです。 数は多くこなしていて忙しいので、自分なりには「努力しているつもり」なのです。でも、「簡単にできること」を繰り返しているだけでは、成長はありません。 強度とは、他人ではなく、自分との勝負です。相手が「現状で十分」と言っても、自分の上達のために強度を上げてみましょう。上達することが、生きる喜びなのですから。要求レベルが高いクライアントをつくるいうのも、強度を上げるいい機会になります。
3. 刺激に慣れてしまう
ボリュームが適切でも、ずっと同じ練習メニューだと、体は刺激に慣れてしまいます。たまには、体をびっくりさせることが大切です。いつも使わない筋肉を使うように意識してみるといいです。 いつも短編ばかり書いてる人は、長編を書くとか。いつも4時間で書いてる人は、2時間で書けるか勝負してみる。写真だったら「シャッターを1回しか切らない」訓練をして集中力を鍛える。他の作家と共作で何かをつくる。などなど。
4. 得意なことばかりで、弱点を放置
全体を底上げしないと、伸びが止まることがあります。 バスケではどんなにドリブルスキルがあっても、足が遅ければ相手を抜けないので、シュートチャンスをつくれません。「スピード練習はきついから」「ダッシュは苦手だから」と避けていては、今のレベルで停滞します。試合で勝ち進むことはできません。 まあ、どうしても苦手を克服したくないのであれば、長所のドリブルだけをひたすら磨いて、ドリブルのパフォーマーになってしまうという手もありますが。どちらにしても、今後の身の振り方を考える必要があります。苦手を克服するか、苦手は捨て長所だけの道に転向するか。「勝つバスケ」から、「魅せるバスケ」に転向すればいいかもしれません。 同じように「書くのが遅い」という人は、どこかでそれを克服しないと仕事として次のレベルに行けなくなるケースがあります。
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まとめ: どんとこい停滞!
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上達する方法をまとめると…
・「ボリューム」を稼ぐことが大事である
・具体的には、65-85%の質(強度)で、できる限り量(本数)をこなす
・得意を伸ばすか、弱点の克服か、狙いを明確にして「反復練習 」
・ホメオスタシスを理解して、急激にではなく、時間をかける
停滞は必ずくるので、焦ることはありません。ただ、「もうかれこれ5年もまったく進歩を感じられない」などあまりに長期にわたる場合は、トレーニング方法を見直すことが必要です。「書く才能がない、向いてない」と自分の可能性を切り捨ててしまうのではなく、努力の方法が間違っているだけのことがほとんどです。
書くことは、スポーツと違って、勝ち負けがありません。他人との比較がない世界です。自分なりの上達を目指して、楽しみながら続けていきましょう。
今回の「量と質の議論」を参考に、正しい努力をしていれば、必ず停滞を抜ける日がきます。今はどんなに亀の歩みに思えても、この先、必ずブレイクスルーすることをあなたは知っています。階段の踊り場が長いほど、その後の飛躍は大きいです。楽しみではないではないですか?
他人がどんどん先へ行こうが関係ありません。 大丈夫。上達しようと願い、今日このエッセイを読み、考え、一文字でも書いたあなたは前進しています。成長することが、生きる喜びであり、人生の目的なのです。
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. . 「好きなことで生きていくために」
ヒントになりそうな他の深井次郎エッセイもありますので、一緒にどうぞ。
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【第261話】失うものを背負った大人の起業法「3つの経験値」
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【第213話】世界を変えた新人たちはどこが違ったのか?
【第202話】自分がやらなきゃ誰がやる。使命感をどのように持つのか
お便り、感想、ご相談お待ちしています。 「好きを活かした自分らしい働き方」 「クリエイティブと身の丈に合った起業」 「表現で社会貢献」 …などのテーマが、深井次郎が得意とする分野です。全員に返信はできないかもしれませんが、エッセイを通してメッセージを贈ることができます。こちらのフォームからお待ちしています。(オーディナリー編集部) |
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