【第260話】やりたいことが1つに絞れないあなたへ / 深井次郎エッセイ

「ゼネラリストはカレーで勝負すればいいよ」夕飯の買い出しに向かう深井「ゼネラリストはカレーで勝負すればいい」夕飯の買い出しに向かう深井。カレーの美味しさはどこにあるか。それは「複雑さ」です。ゼネラリストの武器は「複雑さ」なのだから、すべての特技を混ぜて、あなただけのオリジナルカレーをつくるのです。にんじん単体の美味しさを比べたら、スペシャリストには劣るかもしれないけど

 

好きを仕事にするときのよくある質問
「絞らない生き方も可能なのか」

 

 

「やりたいことがたくさんあって、1つに絞れません」という方に多く会います。絞ったほうがいいよ、というアドバイスを受けて高校生からぼくらは文系理系を絞ったし、どこの大学のどこの学部に進学するか絞ってきました。2つ以上選ぶことは基本的にはしません。

ですが、仕事となったら、あなたはもう大人ですし、自己責任で自由です。「もし1つに絞りたくなければ絞らなくてもいいのでは」というのが基本的なぼくの回答です。

こういう多才な人がいたとします。

「私は、着物の着付けを好きでやっています。あと、ジュエリーづくり、ギターを弾くし、最新ガジェットも好き、物書きやインタビューも好き、旅もよくするし、写真も撮ります。おうちパーティーもよくしてて料理のテーブルコーディネートやハーブティーにこだわっていますし、ダイエットや美容にも力を入れていて割と詳しいです。友人や後輩の人生相談にのるのも好きだし、占いも勉強してて手相なら見れます」

「いやー、すごいですね! ぼくにはそんなにいろいろできないです」

と驚くと

「でも、どれも趣味レベルで、私はこれのプロです!と胸を張って言えるレベルではなくて、どうしたものか…」

トーンダウンして、しゅん… となってしまうのです。

「その中で、どれが一番好きなんですか?」

と聞いても

「それぞれ良いところがあり、とても一番なんて決められません」

そうすると、やはり仕事としていくのではあれば立ち上げ時は1個に絞るのが一般的でしょうか。立ち上げは労力かかるので絞り、それが軌道に乗ったら2つ目や3つ目を、という風にです。

選び方としては

・ 継続できそうか (飽きないで鍛錬を積めるか、誇りを持てそうか、自分がやる意味があるか、向上し続けたいか)
・ 仕事にできそうか (需要と供給のバランス、それにお金を払う価値と文化があるか)

という2つの視点で確認します。絞ったほうが、自分のエネルギー効率もいいし、他人から見ても「何屋さん」かわかりやすので仕事を頼みやすい。ということで「絞れるなら絞ったほうが立ち上げやすいのでは」と基本的には勧めます。

でも今日の話題は、「どうしても絞れない人」についてです。 「わかっちゃいるけど、どうしても絞れない、全部しかも同時に仕事にしたい」 そういう方もいるのです。
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絞りたい「スペシャリスト」
絞りたくない「ゼネラリスト」

 

仕事のスタイルはわかりやすく大きく分けると、この2タイプに分けられます。

①スペシャリスト型:テーマを狭く深く掘り下げるのが好き。1つの分野や能力を研ぎ澄ます人。こだわりと探究心がある技術職人、プレイヤー、専門家など。

②ゼネラリスト型:テーマを広く浅く横断するのが好き。広範囲の知識や能力を持つ人。好奇心、器用で多才、アイデアが次々出る企画編集プロデューサー

ぼく自身は①スペシャリスト型だと思っています。やりたいことはあるけど数自体そんなに多くないし簡単に絞れるし、むしろ積極的に絞りたいし、絞ってる職人的生き方に憧れるタイプです。「頑固一徹、その道一筋60年」みたいな仕事人になりたいと小さな頃から思っていました。前回書いた「俺は豆腐屋だから豆腐しかつくらない」という小津安二郎タイプです。もともと惚れっぽくないというか、あれもこれもと興味を持つタイプでもありません。

「たくさんありすぎてやりたいことが絞れない」と悩んだ記憶はなく、「特にやりたいことがない… 」「どれもそこまで好きじゃないから選べない…」ならありました。でも何か「これ!」というものに出会えれば、ハマったり深掘りしています。気づけば生活に支障をきたしてしまったり、まわりから「やりすぎじゃないの、大丈夫?」と心配されることもたまにあります。

自分がそんなだから、人はみんなそういうものだと思ってしまいがちです。だからゼネラリストの行動がよく理解できないで来ました。「なんで絞れないのかなぁ」「全部が同列1位とか本当にあるのかなぁ」と。でも、「どうしても全部やりたい!」ということがあるようだ、とたくさんの著者やクリエイター、小さな起業家たちから相談を受けるようになってから、わかってきました。

どうしても絞りたくないゼネラリストは、それが強み。ですから強みを活かす方向に考えましょう。

例えば、facebookのプロフィールを見たら、こんな肩書きの方がいたとします。

あるゼネラリスト
システムエンジニア、ねこ研究家、醤油研究家、植物療法家、鉄道研究家、占い師、イスラム文化研究家、社会学者、心理カウンセラー、野菜マイスター、パンコーディネーター、釣り師

これは極端ですが、似たような方に会ったことがある人もいるのではないでしょうか。ぼくはあります。

 

 

他者からはどう見られているか
「いろいろやっているけど、どれも中途半端で浅そうだな」

 

多くの肩書きを持つ人を見たとき、あなたはどう感じますか?

「どれも中途半端そう… 」

そんな第一印象を持つ人も多いのではと思います。 なにやら雑学はたくさんありそうで、一緒にご飯を共にするなら会話は弾みそうではあります。でも、例えばぼくが真剣に占い師を探している場合はどうか。人生の岐路に立たされ大事な相談をしたい。ウェブサイトで占い師を探して、その人物のプロフィールにこんなに肩書きが乱立してたら、ちょっと選ばないだろうな、という気がします。「な、なんかすごい… 」どんな人か気になりますが、最終的にはきっと選ばない。信頼できる友人が、どうしても「この人最高」と勧めるのでない限り、通り過ぎると思います。

1つのことを極めるのは、それなりの時間と労力がかかる。それを多くの人が身にしみています。特にスペシャリストは、「12分野もやるなんて一生かかっても無理!」とにわかには信じられません。

プロスポーツの世界を見ても、2つの競技でプロで通用している人はいますか? ちょっとパッとは思いつきません。身体能力のある子どもは、陸上も、サッカーも、体操も、水泳も、複数の競技でどれも高いレベルのパフォーマンスを見せます。でも、中学生か高校生か、どこかの段階で、「この種目の専門家になる」と絞ります。

どのスポーツを選ぶか。「どうせ時間をかけるならプロになって大きく稼げるスポーツじゃないと嫌だ」という理由でゴルフを選んだと言う女子プロゴルファーのインタビュー記事を読んだことがあります。彼女は、他にも向いていた競技はいくつもあったけど、自分の価値観で絞った。2つの山の頂上に同時に立つことはできない、と決断したのです。

バスケのマイケル・ジョーダン、NBAで世界一になり、最も稼ぐ伝説となった100年に1人の天才でさえ、無理でした。あの身体能力を持ってしても野球やゴルフに転向したらプロでは通用しませんでした。今はネイト・ロビンソンがバスケからアメフトに転向を目指している話を聞きますが、かなり難関です。転向でも無理なのに、「同時に掛け持ち」なんて考えられません。絞るのが当たり前なのがプロスポーツ、スペシャリストの世界です。

「プロフェッショナル仕事の流儀」や「情熱大陸」などでもそういう絞ってる事例を目にしているので、「1つを極めるだけでも大変なのに、ましてや2つ以上なんて… 」と感じてしまうのも無理もありません。草野球や地区大会レベルなら5つも6つもできると思いますが、オリンピックに出ようと思ったら1つに絞らねば、ということです。

 

 

では、ゼネラリストはどうすればいいのか
「カレーを作ればいいと思う」

 

スポーツの話から、いきなりカレーの話になります。今日の夕飯はカレーでした。カレーの美味しさはどこにあるか。ひと言で言えばそれは「複雑さ」(当社オーディナリー調べ)です。

ゼネラリストの武器は「複雑さ」なのだから、複雑さを武器にカレーを目指せばいいというわけです。これだけじゃ何のこっちゃわかりませんね、説明します。

スペシャリストは、例えるなら、高品質のにんじんを育てます。最高の種から、最高の土、手間暇かけて農薬を使わず。その手塩にかけたにんじんは甘くて、畑から抜いて土を払ってポリッと、かじっただけで何もつけずに美味い。「近所のスーパーで売ってるのとこんなに違うのか」と驚いたことがあります。聞くと、にんじん一筋50年みたいな農家です。

ゼネラリストは、にんじんも、たまねぎも、ジャガイモも、ナスも育てるし、米も、お皿まで陶芸でつくります。スパイスにも興味があって、クミン、カルダモン、シナモン、クローブ、ローレルも持っています。隠し味にりんごと蜂蜜(バーモントカレーじゃないか!)も入れる。当然福神漬けは必要だし、でも別にらっきょうはなくてもいいかな。

にんじん自体の美味しさを比べたら、スペシャリストには劣るかもしれないけど、こちらはジャガイモもあるし、多様な種類のスパイスもあるので、カレーにしようか。そっちのシンプルなにんじんもいいけど、こっちの複雑な味のカレーも美味しいよ。というわけです。

すべての特技を混ぜて、あなただけのオリジナルカレーをつくるのです。

・にんじん単体で勝負するのか
・オリジナルカレーで勝負するのか

カレーも、牛乳やチョコを隠し味に入れる人もいたり、旅したインドでは白いヨーグルトっぽい酸っぱいカレーも食べました。その複雑な味がいいのよ、ありえない組み合わせがいいのよ、というお客さんはきっといるはずです。

ですから前にエッセイ「ヤンキーと優等生、20年後どちらが幸せになっているか 」で書いたように、現在心惹かれるものに全力投球してみては、と思います。

それが後々、どうつながってくるかはわからなくても、いつかあなただけのオリジナルカレーができるでしょう。そして、たくさんのスパイスや隠し味の意味を知るのです。ああ、どれも無駄じゃなったなと。そしてやっぱり、福神漬けは必要だし、どんな具でもカレーは成り立つなと。魚介も肉も野菜も入れてはいけないものはありません。ご飯にもどんな麺にも合うし、カレーは万能です。だからインド人は毎食カレーでも飽きません。

ぼくらは何でも自分でコントロールしようとしてしまうけど、すべては思い通り、は不可能です。職業を選んでいるつもりでいるけど、本当は職業の方に選ばれているだけなのかもしれない。そう感じることも多々あります。縁や運やタイミング、その人の変えようもない資質。やるべきことをやったら、あとは天におまかせ、成るように成るさ、という姿勢も大事なのでしょう。

 

 

ゼネラリストの弱点 「エネルギーが分散して燃やせない」

 

イメージとしては、虫眼鏡で紙を焼くときの、光量とフォーカスですね。ゼネラリスト型の特徴としては、フォーカスがゆるいために「火がつきにくい」ことです。

少ない光量(エネルギー量)でも、フォーカスが集中していれば紙は焼けます。だからスペシャリスト型の方が、比較的上達が早く、仕事にはしやすい。

虫眼鏡

ゼネラリストの虫眼鏡のレンズはフォーカスがぼやけているというか、ほとんどただのガラスですから、相当な光量がないと紙は燃えません。基本的なエネルギー量が高い人でないと、多くの種類の仕事をトッププロレベルでは並行できないのです。

「集中力が高く、活動時間も長い」そういうエネルギーが溢れ出る火炎放射器みたいな人なら、虫眼鏡でフォーカスなんてしなくても広範囲をボーボーと焼き尽くすことができますが。

そういうエネルギー量の高いゼネラリストは、存在します。

『宇宙船地球号操縦マニュアル』のバックミンスター・フラー。彼の肩書きは、「思想家、デザイナー、構造家、建築家、発明家、詩人」です。

レオナルド・ダ・ヴィンチは、「音楽家、植物学者、地図製作者、建築士、著作家、数学者、彫刻家、地質学者、軍事技術者、画家、解剖学者、発明家」。

こんなにも広範囲、同時進行、どれも一流、みたいな天才たちは存在します。 現代にも、ぼくらのまわりにもフラーやダ・ヴィンチがいるかもしれません。そういう芽を、「1つに絞りなさい」という圧力で潰してしまったらもったいないと思います。(でもダ・ヴィンチ並みのエネルギー量だとしたら誰にも潰すことなどできないかな)

なので、ここであなたのエネルギー量について、自問自答してみてほしいのです。

エネルギー量×フォーカス=5以上がプロレベルだとして

あるゼネラリスト
エネルギー量5×フォーカス1=5 仕事になる
絞りがゆるい分、光量を増やさねば。

あるスペシャリスト
エネルギー量1×フォーカス5=5 仕事になる
光量が少なくても絞りのおかげで燃えやすくなる

ぼく深井次郎
エネルギー量2×フォーカス3=6 仕事になる
光量が少ないですが、絞りを効かせてなんとかプスプスと火をつけることができているのではないかなぁ。これ以上フォーカスを緩めたら、うっすら暖かくなる程度で終わるから注意。

あるダヴィンチ
エネルギー量5×フォーカス5=25 世界トップレベル
こういう超人もいる

悲しいスペシャリスト
エネルギー量1×フォーカス4=4 仕事にならない
エネルギー量は大きなポイントで、これが1の場合、スペシャリストなのに合計4という人もいる。火がつかない、どうしよう…と。その場合は、さらにフォーカスを絞る。それができないなら、火がつきやすい紙やワラを見つけるしかありません。エネルギー量が低くてもやっていけるお客さんがいる環境へ、移動する。

悲しいゼネラリスト
エネルギー量4×フォーカス1=4 仕事にならない
エネルギー量が4以下のゼネラリストは、無理にでもフォーカス効かせるのが現実的かと思われます。 ざっくりとこういう虫眼鏡のイメージで、火をつける塩梅を見直しながらいくといいと思います。

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無節操に見えるのは、軸が見えてないから

 

「自分はあれこれ手を出して無節操なんです…」 悩むゼネラリストも、よくよく眺めてみると、軸が見えてくるものです。同じ人間の選ぶもので「まったくの無節操、無関連」とケースはよほどでないとありません。

例えば、こんなジャンルが好きな方が実際にいます。

あるゼネラリスト
音楽制作、照明、映像制作、インテリア、DIY、学び、社交、大家さん

ここにある共通項は何か、どこに串が刺さっているのかを探します。すると、「感度の高い大人を良い気分にする」という串(ワクワクの核と呼んでいます)が見えてきます。

「感度の高い大人を良い気分にする」のが好きだから、楽器も弾くし、インテリアにもこだわるし、自分でDIYリノベーションもします。

やっているジャンルだけを見ると、一見バラバラに見えますが、串の存在が見えたら、スペシャリストにさえ見えてきませんか。「感度の高い大人を良い気分にする」スペシャリストです。

スペシャリスト型かゼネラリスト型かは、肩書きの数で決めるものではありません。ゼネラリストだと思ってた人も、実は共通項や活かしている能力を見るとスペシャリストなことも多いです。

ぼくは、たいていゼネラリストに見られます。「エッセイスト、教授、WEBマガジン、学校づくり、写真やたまに絵も描きます」こういう肩書きが複数見えると「本業は何ですか?」と質問をされるわけです。

職業名で人は判断するので、「何でも屋」ゼネラリストに思われるけど、ぼくに通ってる串はどんなものか。何屋かと聞かれたら「発見したコツを分かち合うことで相手に自分らしく生きて元気でいて欲しい屋さん」です。ちょっと長いけど、やってることは小学校の頃からずーっとそれだけ。

同じエッセイストという肩書きでも、「世界に衝撃を与えたい屋さん」もいます。一見ぼくと同業者に見えますが、ちょっと違います。こういう方は、衝撃を与えるために、ポジティブなメッセージで注意を引けなければ、今度は恐怖心を煽ります。どうしたら注目が集まるか、ということが最優先であり、注目こそが喜びです。「世界に衝撃を与えたい屋さん」なので。

ぼくは「発見したコツを分かち合うことで相手に自分らしく生きて元気でいて欲しい屋さん」ですから、異業種です。相手に元気になって欲しいので、恐怖心は煽りません。萎縮させたくはない。肩書きだけで同業者と思っても、実は異業種ということはあります。もちろん逆もしかりです。

ゼネラリスト(に見える人)の串。あなたの串は、もしかしたらこういうものかもしれません。

「新しい分野を最短で習得する知的生産術屋さん」
「異業種の人とでも深くつながれるコミュニケーション術屋さん」
「若さを保つ好奇心と行動力屋さん」
「人の心をつかむパフォーマンス屋さん」
「多分野のかわいいを収集し紹介する屋さん」

1つだけでは見えにくいけど、複数の興味があることで、串が見えてきます。そういう意味でも、何度も言いますが、わけもなく強く惹かれたものは、必ず意味があるのでやってみたほうがいい。「やっておいたほうが将来メリットがありそう」という計算ではなく。

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「どれも中途半端そう」
「むしろ魅力的!」  
その境界線はどこにあるのか

 

ゼネラリストでも、うまく両立できるし、むしろ相乗効果が出る組み合わせもあります。

あるゼネラリスト
冒険家 + エッセイスト

この組み合わせは、どちらも中途半端な印象を与えますか? 大丈夫だと思います。一年中冒険してるわけではないでしょうし、冒険中も紙とペンがあれば寝る前に書けるだろうと想像します。冒険してれば発見の日々だろうし、さぞかしエッセイもはかどることでしょう。

あるゼネラリスト
マラソン選手(オリンピック出場経験)+ デザイナー 

あるゼネラリスト
外科医 + フラワーアーティスト

この組み合わせは、どうでしょう、なぜか上の方はデザイン力が低そうになんとなく見えます。下の方も、お花のスキルは低く見えます。こういう方、もしいたらすみません。いや、実際は低くないかもしれないんですよ。でも、「オリンピックレベルのスポーツ選手がデザイン勉強してる余裕なさそう」と凡人は勝手に想像してしまいます。

とはいえ、デザイナーの良いところは作品を見せれば実力は一目瞭然、一発で納得させることができます。これがフラワーアーティストでも、ジュエリーデザイナーでも、モノを見せれば「ああ、プロでした。疑って申し訳ございませんでした!」となるわけです。

モノを見せたり、結果を数字で示せる人はいいですね。重量挙げでも、スナッチ135キロ挙げると知れば、相手は「ああ、プロでした、すみません」となる。

ただ、中にはモノや数字をすぐに見せられない人もいるわけですね。それが多くの「研究家」たちです。こういう肩書きの人がいたら、どうでしょうか。

あるゼネラリスト
ねこ研究家、醤油研究家、植物療法家、鉄道研究家、占い師、イスラム文化研究家、社会学者、心理カウンセラー

これも第一印象、「どれも浅そうだな」と感じる方が多いのではないでしょうか。実際、どれもハイレベルのダヴィンチさんもいると思うんですよ。でも、それは信じられずに、浅そうに見えてしまう。 じゃあ、と実力を見せてあげようにも、すぐには見せにくい。「論文を読んで」「ブログを読んで」と言っても、時間がかかります。 多くの人が自分のエネルギー量を基準に考えてしまいます。大体の方はエネルギー量2、3あたりなので、それを8個も分散させたら、それぞれ入門編だけ習得するのでいっぱいいっぱいだろうと想像する。なので肩書きに載せる研究分野はせいぜい3つくらいまでが安全なのでしょうかねぇ。

ただし、この人がそれぞれの「機能」ではなく、「人柄」を前面に出してきた場合、状況は変わってきます。機能だけを求めて買うのであれば、切れ味が鋭いのがポイントになりますが、「切れ味うんぬんではなく、この人から買いたい」という状態になってもらえれば強い。肩書きの数は関係なくなります。その人のことが好きになり、愛着を持つようになれば、この人にぼくも占いをお願いするでしょう。なので、ゼネラリストこそ、作品だけでなく自分自身のキャラクターに興味を持ってもらえる努力をする必要がありそうです。

エネルギー量10を超えているような凄まじいダヴィンチさんも世の中にはいて、でも、そういう人を多くの人が見たことがないからわからないんですね。

 

深井次郎 音楽家、植物学者、地図製作者、建築士、著作家、数学者、彫刻家、地質学者、軍事技術者、画家、解剖学者、発明家

深井次郎(音楽家、植物学者、地図製作者、建築士、著作家、数学者、彫刻家、地質学者、軍事技術者、画家、解剖学者、発明家)

 

もし、ぼくがこんなプロフィールだったらあなた、どう思います?  嘘つけ!って思いませんか。でもダヴィンチはこれなんです。なんでもできてしまう人はいるよ、という。 そういう時に、各分野ごとに「自著」というカタチがあると、「本当に専門家なのですね!」と理解してもらいやすいことはあるかなと思います。本はゼネラリストこそ出版してると、営業面で役立つのでしょう。
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潰し合わない組み合わせの条件とは?

 

浅そうに見られない、潰し合わない組み合わせには何があるか。もう少し考えてみましょう。先ほどのシナジーのある例です。

あるゼネラリスト
冒険家 + エッセイスト 

「違う筋肉を使っているのだろう」という組み合わせ、という要素が見えてきます。この組み合わせなら、心と体、違う場所を使ってそうです。同じ脳でも、違う場所を使ってそう。だからできそう、と思うのはないか。でも上の「複数の研究家」の例は、だいたい同じような筋肉を使いそうです。

あるゼネラリスト
建築家 + ワイン講師  

これも浅そうに見えません。できそう。使う筋肉が違いそうですし、あとは、ワインは「食」。衣食住、暮らしに必要な分野は、建築家の仕事をしてようがしてまいが時間を使いますよね。仕事を終えての気分転換がてら取り組めそうですし。

想像するに、この建築家は、毎日の夕食でワインを飲んでいて、好きだから誰よりもこだわって選んで生きてきた。どうせ食事をとるならワインに合うメニューは何かな、と探求しています。「そういう生活を、お酒が飲めるようになった20歳から、もう20年続けてきました」こう言われたら、「お、詳しそう。教わりたい」と思いませんか。

あとは、ワイン講師は「専業でやってる人が少ない」というイメージもあります。みんな他で生計を立てながら、複業としてワイン講師もやっているのだろう、と全然詳しくないぼくは想像します。もともと専業のプロが少ない分野(例:旅人、釣り師、俳句など)であれば、専業じゃなくても十分実力がありそうに感じるのかもしれません。

あるゼネラリスト
建築家 + ワイン講師 + 詩人

今度はそれに、詩人が加わったらどうでしょう。これも、ぼくの中では大丈夫ですね。浅そうには見えない。なんだか髭を生やして白シャツのおじさんが浮かびます。ちなみに詩人は生き方の態度なので、「詩集を出版してなければ詩人じゃない」ということはありません。「あ、いまの気持ちを言葉にしたい」と思ったら詩人です。作家も同じ、生き方の態度。何かを作っている人なら誰もが作家を名乗っていいのです。

潰し合わない組み合わせ、おさらいすると、この辺りがポイントなのかなぁ。

・違う筋肉を使ってそうか
・暮らしの基本分野(衣食住と健康)か
・休日などに気分転換でできそうか
・生き方の態度の問題か

いや、まだあるなぁ、でも、長くなりましたのでこの辺で。「やりたいことがたくさんあって、1つに絞れません」そんなゼネラリストの生きる道について考えてみました。
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さいごに、今日の要点を6つにまとめます

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1.  好きを仕事にしている人には2種類いる
「スペシャリト」と「ゼネラリスト」

2.  ゼネラリストは、1つに絞りたくなければ絞らなくてもいい
ただし、エネルギー量の低いゼネラリストは絞ったほうがいい

3.  ゼネラリストは「浅そう」に見られないよう対策せねば

4.  その対策とは複雑さを武器にカレーを作ること
 にんじん単体で勝負しない
スペシャリストににんじんでの勝負に持ち込まれても、カレーを出すこと

5.  ゼネラリストもよく見ると串が刺さっている、その串のスペシャリストである
 それを自覚して磨こう。

6.  両立できる職業の組み合わせ。そのポイントとは
・違う筋肉を使ってそうか
・暮らしの基本分野(衣食住と健康)か
・休日などに気分転換でできそうか
・生き方の態度の問題か

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以上、今回も読んでいただいてありがとうございました。
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「やりたいことを絞る絞らない問題」について、ヒントになりそうな他の深井次郎エッセイもありますので、一緒にどうぞ。

【第027話】異分野へ遊びにいこう

【第257話】ヤンキーと優等生、20年後どちらが幸せになっているか

【第259話】「君には飽きた」と言われた僕は、波の数だけ抱きしめた

【第185話】固い壁に反射させると好きが見つかる

【第210話】理想の働き方が見えてくる質問  – どんな飲食店をつくりたい?

【第200話】曲がった松のままで生きていく。どん底のクリスマスの夜に出会った植木屋のおじさんとの話

 

 

ピッタリだ!

お便り、感想、ご相談お待ちしています。

「好きを活かした自分らしい働き方」
「クリエイティブと身の丈に合った起業」
「表現で社会貢献」

…などのテーマが、深井次郎が得意とする分野です。全員に返信はできないかもしれませんが、エッセイを通してメッセージを贈ることができます。こちらのフォームからお待ちしています。(オーディナリー編集部)

(約8539字)


深井次郎

深井次郎

ORDINARY 発行人 / エッセイスト 1979年生。3年間の会社員生活を経て2005年独立。「自由の探求」がテーマのエッセイ本『ハッピーリセット』(大和書房)など著作は4冊、累計10万部。2009年自由大学創立に教授、ディレクターとして参画。法政大学dクラス創立者。文科省、観光庁の新規事業に携わる。2013年ORDINARY(オーディナリー)スタート。講義「自分の本をつくる方法」定期的に開講しています。