【第185話】固い壁に反射させると好きが見つかる / 深井次郎エッセイ

「遊びってレベルじゃないぞ」

「遊びってレベルじゃないぞ」

オールラウンドサークルに入らないこと
ぼやけたものの表面を舐めても
好きは見つからないから

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好きなことを見つけていくにはどうしたらいいのでしょう。そう質問をいただきました。この読者は大学生とのことなので、ちょっと学生生活に関して言うと、「好きなことを見つけるならオールラウンドサークルには入らないこと」をおすすめしようと思います。わからない大人に向けて解説すると、いわゆるオールラウンドサークルとは、つまり遊びサークル、飲み会サークルです。(くくり方が乱暴ですみません) テニスをする日もあれば、バーベキューやカラオケ、ボーリング、旅行、クラブイベントなど、とにかく楽しそうで学生っぽいことをひと通りやるサークルのようです。いろいろやりますが、どれも本気には突き詰めない。そのように学生さんたちから聞いております。(もし違ったら、違うぞとご意見ください)

若いうちは、ぼやけたものより、はっきりしたものを経験するといいです。本気のダンス部に入れば、毎日のようにダンスに明け暮れます。ダンス漬けになると、「もううんざり」と思ったり、「向いてない」と気づく機会にめぐり会えます。もちろん、「これだけ過剰に摂取しているにもかかわらず、私はぜんぜん飽きないな」という人もいるでしょう。いずれにしても、一定期間のめりこむことで、合う合わないが白黒わかる。そうやって好き嫌いをはっきりさせていくのです。

料理屋でたとえると、ラーメンもカレーもパスタもハンバーグもなんでもあるお店があります。こういうなんでも揃ってるけど、どれも突出した料理のないファミレスよりは、こだわりのカレーパン専門店のような尖ったお店に通い詰めたい。3ヶ月も通えば、とりあえずあなたがカレーパンが好きか嫌いか、わかるからです。

好きを自覚していくのは、自分を反射させる作業です。相手が硬い壁なら、ボールも跳ね返ってきます。カレーパンというはっきりした壁にボールをぶつければ、好き、嫌い、まあまあ、という判断がつく。しかし、これがぼやけたやわらかい壁が相手では、ボールが跳ね返ってこないので、あいまいなままで大切な日々が過ぎ去っていくのです。

はっきりした世界には、目的と意志のある人たちが集まってきます。そのパッションのない人は、わざわざ来ません。カレーパン専門店には、それが好きで、それぞれに哲学をもっていて、「毎日でも飽きないんですよね」という人が集まっています。そこで彼らの「好きのエネルギー」に触れること。おおいに触発されてください。すると自分も突き詰める何かを見つけたいと思うし、好きを感じるセンサーもビンビンに反応するようになる。

「趣味なら本気で」というキャノンのカメラのCMコピーがありました。遊びだからこそ、本気でやってみる。仲間うちでゆるくカラオケもいいけど、ライブで演奏するくらいバンドにのめり込んでみるといいです。映像だって気軽にスマホで撮影しているのもいいけど、一眼レフで撮って編集して作品をつくってコンテストに応募してみるとか。手軽に表面をなめているだけじゃ、いつまでも好きは見つからないのです。

 

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(約1181字)
Photo: Chris Ford


深井次郎

深井次郎

ORDINARY 発行人 / エッセイスト 1979年生。3年間の会社員生活を経て2005年独立。「自由の探求」がテーマのエッセイ本『ハッピーリセット』(大和書房)など著作は4冊、累計10万部。2009年自由大学創立に教授、ディレクターとして参画。法政大学dクラス創立者。文科省、観光庁の新規事業に携わる。2013年ORDINARY(オーディナリー)スタート。講義「自分の本をつくる方法」定期的に開講しています。