ちいさなお店をはじめたこと。~等身大で、自由な働きかた~【第34話】ちいさなお店の意見の違い、どう乗越える?

ノマディッククラフトヨメのちいさなお店をはじめたこと。もともと店主とヨメは性格がけっこう違います。店主は慎重派ですし、ヨメはまずやってみて考えよう、というタイプ。うまくまわっていけば、お互いにない部分を補い合って非常にスムーズなのですが、かみ合わなくなった時はガタガタ。この場合
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第34話  ちいさなお店の意見の違い、どう乗越える?   

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こんにちは、ノマディックラフト ヨメです。

私たちのちいさなお店を営んでいるのは、店主とヨメのたったふたりだけ。「ひとり」にたった1人加わっただけというホントの最小単位なのに、それでもいろんな意見の違いは起こるのだから人間は面白いものです。

それでもちいさいお店というのは、ふたりしかいない「ふたり」の意見が合わないと、なかなか物事がスムーズに進みません。お互いしか頼れないからこそ放置できない、そんな意見の違いがなぜ起こり、どう解消できるのか考えてみました。
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意外と多い
「よかれと思って」トラブル

意見が違い、ときに言い合いやケンカになることの原因の多くは、とっても些細なことです。しかも「ムカつく」「傷つけてやろう」という類いの悪意によるものではありません。その中でも非常によくあるのが「よかれと思って〇〇したのに」のような、せっかく前向きな気持ちでやっていることに対して、相手が異を唱えた場合です。

先日の例で言えば、店主が一生懸命商品のタグ付けをやっているところに、ふらりとヨメがやって来て「同じ物を継続して売るのも大事だけど、そろそろ新商品を企画しないとね」とぽろっと言いました。店主はそれにカチンときて「そんなこと急に言われてもさ。それよりまず準備を終わらせないとダメじゃないか」と返し、ヨメはヨメでそれにカチンときて「だって、前から新商品の企画について相談してるのに、返事くれないから今聞いただけじゃん」と返し、両方とも嫌な気分になる、という流れです。

書いていても子どものケンカのようで恥ずかしいのですが、お互いが不機嫌になってしまう原因は意外とこういう小さなやり取りにあるもので、しかも小さいからこそお互いキチンと謝ることもなく、何となく嫌なムードが漂い続ける。珍しくもないすれ違いですが、こういうことが重なると、前に向かうパワーをジワジワとそいでしまうように思います。

ポイントは、お互いに「よかれと思ってやっている」ことだ、という点です。たいていこういう場合、どちらの言っている内容も間違っていません。店主の言うとおり、週末のイベントの準備をしないと当日困るのは私たちです。一方、ヨメの言うとおり、新商品はすぐに完成するものではないだけに、先に先に動いていかなければ形になりません。それぞれ自分が信じる「いいこと」を自分のタイミングでやったり言ったりする、それが相手のリズムと違った場合に「なんでいま?」「せっかくやってるのに」とカチンときてしまいがちです。

机の上いっぱいに物を広げて作業する店主。ヨメは「やりづらくない? 少し場所を作ってからやれば?」などと言いがちでしたが、今はお客様が来るときにちゃんと片づけてくれていれば「集中できるやりたいやり方でいいかな」と思っています。

机の上いっぱいに物を広げて作業する店主。ヨメは「やりづらくない? 少し場所を作ってからやれば?」などと言いがちでしたが、今はお客様が来るときにちゃんと片づけてくれていれば「集中できるやりたいやり方でいいかな」と思っています。

 

     
「自分のやり方が一番!」 ……ではないのに……。
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他には、それぞれのやり方に口を挟む、という問題もあります。

たとえば、店主はスーツケースやボックスなど限られた空間に物を詰めるのが非常に上手です。そのため、イベントの準備で、在庫をボックスに移し替えるとき、ヨメが箱詰めしたボックスの中身を全部出し、自分のやり方で詰め直すことがあります。当然、ヨメとしては面白くありません。「ふたが閉まらないわけでも、物が壊れそうなわけでもないのに、わざわざ入れ替えまでしなくたっていいじゃん?」と感じます。店主は店主で「出すときに使いづらくなるなら、今直しておいたほうがいい」という考えです。「それなら全部あなたのやり方で詰めないといけない、ってことになるでしょ」とヨメが思い、それでまたムードが悪くなります。

これも先と同じ、どちらの言っている内容も間違っていない問題。そりゃあ出したときに使いやすいほうがいいし、一方で困るほどの入れ方じゃないなら人に任せれば、という考え、両方あるでしょう。もともと店主とヨメは性格がけっこう違います。店主は慎重派ですし、ヨメはまずやってみて考えよう、というタイプ。将来ああしたい、こうしたいという話が好きなのはヨメで、店主はそれよりも日々のことをきちんとやるのが先と発想します。

うまくまわっていけば、お互いにない部分を補い合って非常にスムーズなのですが、かみ合わなくなった時はガタガタ。ヨメが「チャレンジしていかないと」と的なことを投げかける。すると店主は「それもそうだけど、すぐにはできないでしょ。それよりも今できていないことを片づけなきゃ」と応じる。そこに対してヨメが「すぐにはできないから、今からやらないともっと時間かかるんじゃない?」と応じる……と結論に行きつくこともなく、ムードだけが悪くなる現象に陥ります。この場合、解決策は「日々のことをきちんとやりながらも、先のことも進めていく」というシンプルな話なのですが、限られた時間のなかの優先順位を考えると、「さて、最初にやるべきは?」という点でぶつかってしまうのですよね。

もしどちらかが間違っているのなら答えはかんたん。店主もヨメも自分が悪いと思えば謝り、受入れ、先に進むことができると思います。しかしたいていの場合、見ているところが違うだけでどちらも正解だったりして、どちらも「間違っていない」というところが意見のあつれきが生まれる最大のポイント。じゃあ、片方が常に折れて「ハイハイ」と言うことで丸く収めればいいのか、というとそうでもなく、いずれは我慢しているほうのモチベーションが落ち、お店も活動もジワジワと活力を失っていくでしょう。かといって双方主張だけ続けていては永遠に平行線です。

入荷した商品の整理の仕方、なども「やり方の違い」でトラブルになりがち。この場合は「ルールを決める」ことで解消できることが多いです。

入荷した商品の整理の仕方、なども「やり方の違い」でトラブルになりがち。この場合は「ルールを決める」ことで解消できることが多いです。

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夫婦でも意見が違って当たりまえ
離れる・近づくを繰り返し、
少しずつ見えてくる「いい加減」

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振り返ると、私たちはこんな方法で、乗越えてきました。

A. いったんその話から離れて、日常生活に戻る

店主もヨメもこだわりが強いところがあるので、「このやり方!」と思ったら、お互い変えない面があります。そういうときは起こった意見の違いにはそれ以上触れず(たとえお互い心のなかはムカついていたとしても!)、まずは日常のリズムを取り戻すことに集中するほうが、結果的によいことが往々にしてあります。少し時間をおいて、お互い不機嫌ながらもゆっくり一緒にごはんを食べ、お風呂でも入ってひと息つく。意見の相違が起こって感情が泡立っているときに話すより、ちょっと間を置いた後のほうが冷静な気持ちになって「別にあのときに言わなくてもよかったかな」と自分を顧みられるような気がします。

このとき大事なのが、スルーしていいこととダメなことの見極め。なんとなく「機嫌も直ったし、まあいいか」と終わらせてしまいがちなのですが、問題を放置することがクセになるのは怖いこと。前の例で言えば、「荷物の詰め方」程度であれば、以後ヨメができるだけ気をつける、という解決法でよいのですが、「新商品の開発を進める」というのはお店の今後に関わる大切な問題です。タイミングを改めていつ話し合うか、という段取りを組み直すことを忘れないようにしなくてはいけません。

B. 話し合うときは、とことん話し合う

夫婦とはいえ他人同士。一緒に働くうえで、気持ちをキチンと言葉にして問題をテーブルにあげることは欠かせないことだと感じています。ポイントはできるだけ目先の感情に流されず「何のためにこの話をしているのか」「この問題が解決されると、どういう前向きな状態になるのか」というゴールを共有することに時間を惜しまないこと。もうひとつ、話すペース、考えるペースも人それぞれ違います。ライターの仕事をしているヨメはポンポンと言葉が出てきますが、じっくりと考えてから言葉にするタイプの店主はそのペースに押されて無言……となってしまうことがよくあります。片方だけ言いたいことを言って終わり、ではなく、双方の意見が出揃うまでじっくり時間をかけるのが大切だと感じています。

C. 第三者に意見を仰ぐ

3人いれば多数決がとれるのに「ふたり」だと結論が割れる、というのも難しさ。どうしても意見が平行線になるときは、信頼できる友人や作家さんに話を聞いてもらい、率直な意見を聞かせてもらうことで「なるほど」という発見がたくさんあります。そういう意味で、店主だけ、ヨメだけ、の知り合いでなく、夫婦ともども心を開いて話せる友人を持つ、というのも大切なことかもしれません。

買いつけ出張中は24時間一緒にいるにも関わらず、楽しいからか意外にケンカはしません。しかし恥ずかしながら、ヨメはお腹が減るとイライラしがち。美味しいものをしっかり食べるのも前向きな意見交換をするコツです。

買いつけ出張中は24時間一緒にいるにも関わらず、楽しいからか意外にケンカはしません。しかし恥ずかしながら、ヨメはお腹が減るとイライラしがち。美味しいものをしっかり食べるのも前向きな意見交換をするコツです。

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「ちゃんと予定を共有してくれないと困る!」「そこはもっと丁寧にやってくれ!」など、ちいさな日々の不満は次々と湧いてきます。でもその反面、「お客さんにこうやって喜んでもらったよ!」「去年お買い物してくれた人が再訪してくれた!」などちいさな日々の嬉しさもたくさんあります。

不満も嬉しさも共有できることはありがたいのだ、と忘れないようにして、これからもお互いの「カチン」を乗越えながらお店での活動を楽しんで続けていきたいと考えています。

次回もちいさなお店からのお話をお届けしますね。どうぞお楽しみに!

(月1回 第4土曜日更新です)    

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 ノマディックラフトのイベント出店情報

テラデマルシェ
9月30日(土)・10月1日(日)10:30~17:00@宋雲院(東京・台東区上野)
上野駅からすぐのお寺「宋雲院」さんで開催される手作り市。作家のクラフトや雑貨、カフェやお菓子など様々な手づくりのものが集まります。小さな子や赤ちゃんもウェルカムの、ベビーフレンドリーなイベントです。バッグに入れればワンちゃんも室内まで同行OK!
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 連載バックナンバー

第1話 家=店。人が思うよりもずっとちいさな投資でお店をはじめてみた(2015.6.13)
第2話 店から出て人に会う、出会いをつくる。〈イベント出展篇〉(2015.6.26)
第3話 1人2役 × 2。兼業夫婦は不安定? 時間も予定も「自由」のメリット・デメリット(2015.7.11)
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第7話 モン族の女性に聞いた、美しい刺繍の裏側にある物語(2015.9.5)
第8話
 小商いでも管理は大切。入るお金、出ていくお金何がある?(2015.9.19)
第9話 ショップカードにネームタグ… 地味だけど重要度は大! お店まわりのこまごま小物(2015.10.3)
第10話 大切さは名前と同じ。自分たちのロゴマークはどう作るか<デザイナー編>(2015.10.17).
第11話 大切さは名前と同じ。自分たちのロゴマークはどう作るか<実践編>(2015.10.31)
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第13話 お客様との新たなつながり。看板犬レラが教えてくれたこと。(2015.11.28)
第14話 美しいものよ、輝け!お母さんとの約束。(2015.12.12)
第15話 生産者さんを訪ねて <鳥の笛ネックレス編(2016.1.14)
第16話 生産者さんを訪ねて <アカ族の村編(2016.1.30)
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第18話 手仕事は同じじゃないから美しい~『ORDINARY』とコラボグッズを作ったこと(2016.3.11)
第19話 生産者さんを訪ねて<カレン族の村編>(2016.5.21)
第20話 生産者さんを訪ねて<ラフ族の村編>(2016.6.18)
第21話 夫婦で働きながら、煮詰まったときにしていること。(2016.7.20)
第22話 おしゃれに見せるって難しい! イベントのディスプレイで四苦八苦。(2016.8.26).
第23話 ちいさなお店がイベントに出ることQ&A ≪前編≫(2016.8.26)
第24話 ちいさなお店がイベントに出ることQ&A ≪後編≫(2016.11.26)
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第26話 ちいさなお店の海外買い付け① 買い付け方法と情報集め(2017.01.30)
第27話 ちいさなお店の海外買い付け②航空券の準備 (2017.02.28)
第28話 ちいさなお店の海外買い付け③スケジュール決め&宿探しのパズル (2017.03.31) 第29話 ちいさなお店の海外買い付け④アイテム探しと値段交渉 (2017.04.30)
第30話 ちいさなお店の海外買い付け⑤価格はどう設定するか(2017.06.05)
第31話 寝台特急は楽しい出会いの宝庫(2017.06.25)
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第32話 オリジナル商品ってどう作るの?(2017.07.29)
第33話 成長し続けていくために考えること(2017.09.30)
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オーディナリー編集部がノマディックラフト参加の展示会を観に行った話

【レポート】遠い国の伝統的な手仕事がいっぱい!  

【関連サイト】
ノマディックラフト ウェブサイト http://nomadicraft.com/
ノマディックラフト 店主ブログ http://blog.shop.nomadicraft.com/
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木内アキ(ライターとしての仕事) ウェブサイト http://take-root.jp/

 


ノマディックラフト ヨメ

ノマディックラフト ヨメ

自然・旅・民族をテーマに、タイ、ベトナム、ラオスの山岳地帯に住む少数民族の手仕事を扱う、西小山のアトリエショップ『nomadicraft』を店主であるダンナとともに運営。母から子へ、脈々と受け継がれてきた素朴で美しい手仕事を紹介しながら、作り手である女性たちに仕事の機会を提供し、貧困の和を断ち切るための支援も行っている。ふだんはフリーランスのライター・木内アキとして「女性にまつわる人・旅・暮らし」をキーワードに、雑誌や書籍を中心に執筆活動中。目標は「キチンとした自由人」。 ノマディックラフト 店主ブログ http://blog.shop.nomadicraft.com/ 木内アキ ウェブサイト http://take-root.jp/