ちいさなお店をはじめたこと。【第26話】ちいさなお店の海外買い付け ①買い付け方法と情報集め / ノマディックラフト ヨメ

ノマディッククラフトヨメのちいさなお店をはじめたこと。経験豊富なバイヤーの先輩が、惜しみなく情報やノウハウを教えてくださったことがありました。ここまで教えていただいていいのか、と恐縮してしまうほどでしたが「働いているお店の方針が変わって買い付けに行く機会が減ってしまったから、せっかくの情報を活用してくれたら嬉しい」sasamoto_s
第26話
 ちいさなお店の海外買い付け
① 買い付け方法と情報集め

 

 

こんにちは、ノマディックラフト ヨメです。
すっかり1月末になってしまいましたが、今回が2017年最初の回です。本年もどうぞよろしくお願いします。

さて、私たちのようなちいさいお店でも、海外で見つけたものを置いているとよく「買い付け、楽しそうですね!」と言っていただけます。たしかに、行くたびに失敗や発見を繰り返している最中でありながら、買い付けは私たちの大きな楽しみのひとつです。

「海外買い付け」という響きはハードルが高く聞こえますが、実際のところ、ちいさいお店規模だとそんなに難しくありません。私たちの身のまわりを見渡しても、ふだん別なお仕事をしながら海外旅行に行くたびに雑貨を買い付けて、ネットショップやイベントで販売している…… など、等身大の規模で買い付け&販売をしている人がたくさんいます。手作りで何かを作るのが苦手な人でも、自身でセレクトした商品を販売する方法なら、自分のペースでお店を始めることができるのではないでしょうか。

というわけで、私たちがしている「海外買い付け」の方法について、数回にわたり触れてみたいと思います。

 

現地に行くほか、
パートナーのサポートも活用

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私たちがしている、海外仕入れの方法は主に3つになります。
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① 現地に行き、直接買い付ける

自分の目で選ぶので、納得のいくものを探すにはこの方法が一番。ノマディックラフトで言えば、タイやベトナム、ラオスが主な渡航先になります。コンセプトに合ったものを探せるほか、実際のアイテムを見て触ってクオリティをチェックでき、時には生産者とも直接会えるなど、メリットには事欠きません。私たちの場合は、バッグやポーチなど完成品を仕入れるケース、日本に戻ってから自分たちで製品を作るための布やパーツなど材料を仕入れるケース、さらには現地の生産者さんに依頼するオリジナル商品のオーダーと、主に3つの方法で仕入れを行っています。

デメリットといえば、いつもだいたい7日~10日前後の旅になるので、それに伴う渡航費と滞在費がかかること。その一方で、現地で確実にいいものが見つかる補償はありません。商品や材料の価格も国によって違い、為替レートの変動による影響も受けます。買い付ける量が多くなるほど、事前に計画を立てておかないと、かけた経費に対して採算が合わなくなるので注意が必要です。

 

現地の空気を感じながらマーケットを歩くのは、疲れもしますがとても楽しい時間です。

現地の空気を感じながらマーケットを歩くのは、疲れもしますがとても楽しい時間です。

 

② 現地のショップや生産者、NPO・NGO団体から仕入れる

少数民族の手仕事を扱っているショップや作家さん、また、少数民族の生活をサポートするフェアトレード製品を作っているNPOやNGO団体とコネクションを作り、オーダーを行う方法です。

この方法のメリットは、継続して作っている定番アイテムや、過去にオーダーしたことのある商品のリピートであればほとんどの場合、現地に行かなくてもメール注文が可能になること。しょっちゅう海外に行く時間や予算のない私たちにとって、日本にいながら追加注文ができるのは大変助けになっています。

デメリットは、お金のやり取りの難しさ。ネット経由でカード決済ができる取引先もありますが、郵便局などの海外送金を利用する場合は、一度の決済で数千円レベルの高い手数料を取られてしまいます。こういうコストも商品の販売価格に影響を及ぼすため、継続した追加オーダーが発生する得意先には、手数料無料でカード決済ができるオンラインサービス「PayPal」を利用してもらえるよう働きかける、などの工夫をしています。

 

マーケットの帰り道に立ち寄った、ベトナム・モン族の村にて牛が泥遊び中。実際に村を歩き、生活の様子を生で見ることで少しずつ理解が深まります。

マーケットの帰り道に立ち寄った、ベトナム・モン族の村にて牛が泥遊び中。実際に村を歩き、生活の様子を生で見ることで少しずつ理解が深まります。

 

③ 現地の知人に依頼する

②の方法でお取引するうち、仲が良くなった現地のショップオーナーや団体の担当者さんに「もし〇〇が手に入るなら、先日の注文と一緒に送ってもらうことはできますか」と買い付けの代行をお願いすることがあります。

現地に精通している人にお願いするため、自分たちで探すよりも単価が安くなりやすい点、注文した荷物とまとめて送ってもらうため、送料が圧縮できる点などのメリットがある方法ですが、あくまで相手のご好意があってこその方法。負担をかける面も否めないので、お願いするときは、手数料を取ってもらったり、先方に「1個いくらならOK」と中間マージン込みの単価を提示してもらったりしています。

上記、②や③の方法を最初から行うのは難しい面もありますが、まずは①の現地買い付けで、実際の商品をチェックするほか、ショップオーナーや団体の担当者さんと直接お話をして人柄や方針に触れ、連絡先を交換することで、日本に戻ってからのやり取りがスムーズになるのではないでしょうか。

余談ですが、私たちの行くタイやベトナムだと、現地在住の日本人による「買い付け代行サービス」の情報を目にします。雑貨や衣料品の買い付けは「これがステキ」「ここが可愛い」というセンスや感覚が共有できないと言葉で説明するのが難しい部分があるうえ、お金のやり取りが発生するため信頼関係も必要、と私たちはまだ利用したことがありません。しかし、もしセンスと金銭管理、両方の面をクリアできる人が見つかれば、日本にいながら仕入れをサポートしてくれる、便利さがあると思います。

 

いざゆかん!…と決めたら
情報集めを始めよう

 

さて、ここまで仕入れの方法を書きましたが、あまり難しく考えすぎると動けなくなるもの。「習うより慣れろ」の精神で、海外買い付けに興味のある人は、一度旅行がてら現地に行ってみるのが一番ではないでしょうか。「買い付けするぞ!」という気持ちを持ってマーケットやショップを見ることで、必ず学びや発見があるはずです。
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◎ 渡航先を決める!

まずは、目当てのものが見つかるであろう国の目星をつけて、どのエリアをどういうスケジュールでまわるとよいのか、仮の計画を作ってみましょう。直行便と乗り継ぎ、それぞれの飛行機の移動時間を調べてみるだけでも、1週間でどのくらい自由時間があるのか見えてきます。

◎ インターネットで情報収集

とはいえ、具体的にどこを巡ればいいのやら…… という場合も多いかと思うので、最初はネットを駆使して目当てのアイテムがどこで見つかるのか、エリアや店、マーケットを探すところからスタートしましょう。情報を検索しているうち「私のほしいものを探していると、よくこのエリアの名前が出てくるな」など、チェックすべき場所が絞り込めるようになってきます。日本語で検索すると、日本人が発信する情報しか見つけられないので、キーワードを英語に変えて検索するのも情報を見つける方法です。

情報を調べるときは、土日しかやっていないマーケットなど曜日が決まっているイベント、必ず寄りたいショップの定休日を確認するのも忘れずに。いついかないとダメ、というタイミングが事前に分かると、現地での移動計画に無駄なく反映することができます。

◎ 口コミの収集も怠りなく

ネットでもかなりの情報が見つかる時代ですが、経験を振り返ると、本当に面白いものが見つかる場所はあまりネットに載っていません。この場合、生きた情報を持っているのは「人」です。目当ての国やエリアに「旅行に行ったことのある人」や「仕事で行き来している人」など情報を知っていそうな人に、どんどん聞き込みをしてみましょう。

以前、雑貨とはあまり縁のない現地駐在のビジネスマンの友人に情報を聞いたところ「俺は詳しくないけど、よく現地の女性社員が『〇〇に行けば可愛いものがある』と話しているよ」など、思わぬ角度から情報をもらえて素敵なショップを見つけたケースも。「たぶん興味ないかも」と勝手に判断せず、ダメでもともと精神で地道に聞いてみるのが大切です!

食品も衣料品もあちらこちらに点在する、タイのマーケット。食材は、現地の人たちの生活を垣間見られるようで、見ていても楽しい!

食品も衣料品もあちらこちらに点在する、タイのマーケット。食材は、現地の人たちの生活を垣間見られるようで、見ていても楽しい!


◎ プロに聞けると強い!

「蛇の道は蛇」と言いますが、センスが信頼できる作家さんやバイヤーさんが持つ情報は宝の山です。とはいえ、誰もが苦労して仕入れ先を見つけていることを考えると「私も同じ物を仕入れたいんですけど、どこで買えますか? 」と聞くのは重大なマナー違反。聞くなら「取り扱うアイテムが別」であり、相手のご商売を邪魔しない場合に限ります。たとえば私たちなら「アクセサリーの材料を買い付けている人」や「現地でオーダーの婦人服を制作している人」など、同じエリアに出かけながらも取扱品の違う方に聞いてみたりします。

 

現地の生きた情報は
何ものにも代えがたい財産

 

プロに聞く情報、と言えば忘れられない思い出がひとつ。

初めてタイのチェンマイに買い付けに行くのが決まったとき、エスニック雑貨の買い付け経験が豊富なバイヤーの先輩が、惜しみなく情報やノウハウを教えてくださったことがありました。一緒に地図を見ながら、レートのよい両替所の場所から買い付けに便利な宿泊エリア、面白いものが見つかる場所に信頼できる配送業者……まさに至れり尽くせりの内容です。

ここまで教えていただいていいのか、と恐縮してしまうほどでしたが「働いているお店の方針が変わって買い付けに行く機会が減ってしまったから、せっかくの情報を活用してくれたら嬉しい」と温かいひと言。店主も私も本当に感激しました。

 

チェンマイ初訪問の旅も、数々の助言をいただいたおかげで、とても充実した買い付けとなりました。

チェンマイ初訪問の旅も、数々の助言をいただいたおかげで、とても充実した買い付けとなりました。

 

実際にチェンマイに着いて買い付けに動き出すと、彼女の教えがどれだけ理にかなった役立つものであるか、あらためて実感しました。泊まる場所が少し変わるだけで移動がどれだけ楽か、現地でのフットワークがどれだけよくなるか。また物価が安い国こそ、レートよく両替することで購入できる商品も増えます。もちろん配送の手配もスムーズ。生きた情報の価値と重みを肌で感じた瞬間です。

先輩のように価値ある情報を自分のものにするには、まだまだ時間と経験が必要な私たち。しかし何度か行き来するうちに、少しずつ知識や経験のストックができているのを感じます。先輩にお返しできるほどの情報が得られるかは分かりませんが、もしかすると滞在中に見たり、聞いたりしたことが思わぬ所で役に立つかもしれません。ついつい目先の買い付けで余裕がなくなりがちですが、現地ではキチンと周囲を見わたす余裕を持って、しっかりアンテナを張ろう!と胸に刻んでいます。

さて、長くなりましたので、いったんこの辺で。次回は具体的な渡航準備のポイントについて触れたいと思います。どうぞお楽しみに!



(月一第四週土曜日更新です)

 

 連載バックナンバー

第1話 家=店。人が思うよりもずっとちいさな投資でお店をはじめてみた(2015.6.13)
第2話 店から出て人に会う、出会いをつくる。〈イベント出展篇〉(2015.6.26)
第3話 1人2役 × 2。兼業夫婦は不安定? 時間も予定も「自由」のメリット・デメリット(2015.7.11)
第4話 なんで「少数民族の手仕事」? それはやっぱり「好き」だからです(2015.7.25)
第5話 暑さに負けず蚊に負けず。探して洗って、よみがえる古布たち 〈 仕入れ旅篇 〉(2015.8.8)
第6話 どうしてそんなに自由なの!? 現地の人たちと商品を作る(2015.8.22)
第7話 モン族の女性に聞いた、美しい刺繍の裏側にある物語(2015.9.5)
第8話
 小商いでも管理は大切。入るお金、出ていくお金何がある?(2015.9.19)
第9話 ショップカードにネームタグ… 地味だけど重要度は大! お店まわりのこまごま小物(2015.10.3)
第10話 大切さは名前と同じ。自分たちのロゴマークはどう作るか<デザイナー編>(2015.10.17).
第11話 大切さは名前と同じ。自分たちのロゴマークはどう作るか<実践編>(2015.10.31)
第12話 どこまでを手作りと呼ぶ? 手仕事を求める楽しさ、難しさ <買い付け編>(2015.11.14)
第13話 お客様との新たなつながり。看板犬レラが教えてくれたこと。(2015.11.28)
第14話 美しいものよ、輝け!お母さんとの約束。(2015.12.12)
第15話 生産者さんを訪ねて <鳥の笛ネックレス編(2016.1.14)
第16話 生産者さんを訪ねて <アカ族の村編(2016.1.30)
第17話 始まった… 年に一度の確定申告(2016.2.13)
第18話 手仕事は同じじゃないから美しい~『ORDINARY』とコラボグッズを作ったこと(2016.3.11)
第19話 生産者さんを訪ねて<カレン族の村編>(2016.5.21)
第20話 生産者さんを訪ねて<ラフ族の村編>(2016.6.18)
第21話 夫婦で働きながら、煮詰まったときにしていること。(2016.7.20)
第22話 おしゃれに見せるって難しい! イベントのディスプレイで四苦八苦。(2016.8.26).
第23話 ちいさなお店がイベントに出ることQ&A ≪前編≫(2016.8.26)
第24話 ちいさなお店がイベントに出ることQ&A ≪後編≫(2016.11.26)
第25話 ちいさなお店がイベントに出た1年を振りかえる(2016.12.24)

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オーディナリー編集部がノマディックラフト参加の展示会を観に行った話

【レポート】遠い国の伝統的な手仕事がいっぱい!

 

【関連サイト】
ノマディックラフト ウェブサイト http://nomadicraft.com/
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木内アキ(ライターとしての仕事) ウェブサイト http://take-root.jp/

 


ノマディックラフト ヨメ

ノマディックラフト ヨメ

自然・旅・民族をテーマに、タイ、ベトナム、ラオスの山岳地帯に住む少数民族の手仕事を扱う、西小山のアトリエショップ『nomadicraft』を店主であるダンナとともに運営。母から子へ、脈々と受け継がれてきた素朴で美しい手仕事を紹介しながら、作り手である女性たちに仕事の機会を提供し、貧困の和を断ち切るための支援も行っている。ふだんはフリーランスのライター・木内アキとして「女性にまつわる人・旅・暮らし」をキーワードに、雑誌や書籍を中心に執筆活動中。目標は「キチンとした自由人」。 ノマディックラフト 店主ブログ http://blog.shop.nomadicraft.com/ 木内アキ ウェブサイト http://take-root.jp/