入社して2ヶ月足らずで「辞めようと思います」と上司に直談判。すると自分の採用を担当した人事の方と面談する機会を頂きました。事情を説明すると「小山の本気でやっているところをまだ見ていない気がしている」そう言われてはじめて
戦略的無職のススメ
– ながら作業で人生の決断できますか –
小山 将平( フリーランス Webディレクター )
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自由に生きるために
ながら作業を辞めて、心の赴くままに真剣に考えよう
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25歳で早くも2回会社を辞めてわかったことは
「真剣に人生を考えたいなら、無職になって考えるべき」
「25歳、無職」
これが今の僕の現状です。
ただおそらく、世間一般のイメージする「25歳、無職」から相当かけ離れて、今の僕は幸せで、充実した日々を送っています。
学生の頃は勉強の傍ら、アメリカへ留学したり、学生向けのシェアハウスを立ち上げたり、中小企業のWebサイトを作ったりしていました。大学を卒業後、ITベンチャーへ就職。そこには、自分より遥かに優秀だと感じる同期がたくさんいました。けれども新卒で入ったその会社を半年程度で辞めてしまいます。これが1度目の無職体験。
その半年後、友人に誘われる形でベンチャー企業に就職。拠点開設や、新規事業リリースを担当した後、2016年の12月末、その職を離れて、個人での仕事を探すことも一旦辞め、僕はまた無職になりました。
実際に働いて、さまざまな経験を重ねていく中で、
「本当に自分はこの仕事がしたいのだろうか?」
「果たしてこの仕事は、自分が幸せにしたい人のためになっているのだろうか?」
そんな悩みが仕事の合間や帰り道で浮かぶようになり、やがて僕は再び無職になりました。
一度目も二度目も、無職になるまでに様々な葛藤がありました。特に一度目の経験は、今でも鮮明に覚えています。
当時の僕は、新卒で入社したものの、その仕事や、そこでの自分の人生に対しての悩みが絶えず、入社して2ヶ月足らずで「辞めようと思います」と上司に直談判しました。
すると、自分の採用を担当した人事の方と面談する機会を頂きました。そこでその方に事情を説明すると、
「小山の本気でやっているところをまだ見ていない気がしている」
と言われました。
そう言われてはじめて、自分が仕事に対して上手く力を抜きながら今まで過ごしてきていたことに気付きました。
仕事中は、評価に支障が出ない程度に上手く身体を休め、仕事後は夜遅くまで、毎日のように、当時運営していたシェアハウスに訪れる学生達の相談にのる。そして翌朝は出社時刻ギリギリに出社。そしてまた仕事中は上手く手を抜く。そんな日々でした。
その人事の方の言葉により、
「仕事を辞めるのは、仕事を全力でやってから考えよう」
そう僕の中で考えがシフトしました。
そして実際に、文字通りすべての物事に対して全力で取り組みました。毎日帰宅前に、翌日使用するための自分専用のPDCA表を作成しておき、翌朝出社時に確認し、日中はそれを完璧にこなす。そして仕事後は以前と同じように朝方まで学生と話す。
そうして自分なりに仕事も全力で行った結果、数ヶ月が立った頃、「やはりこの仕事、このライフスタイルは違うな」と強く体感し、会社を正式に辞することを決意しました。
仕事にも自分の活動にも全力を注いだという実感があったので、自分の決定に納得感はありました。しかしながら、その時の僕は「じゃあ何をしたいのか」と言われても、人が納得するような説明はできなかったように思います。そもそも自分の人生や仕事、生き方を考える時間も余裕もなかった。
そんな僕でも「小山ならどこでいっても大丈夫だ」と送り出してくれた人事の方や、背中を押してくれた親友や両親には、本当に感謝しています。
そうした経験も経て、結果として2度の無職期間を経験し、その度自分の人生や生き方について考え、自分に対して素直に行動していくうちに
「今の時期に無職になって正解だったこれは…!」
と強く思うようになりました。
表題にもある通り、今の僕には、以前の僕と同じような悩みを持つ、主に20代社会人の方々に言いたいこと伝えたいことが山のようにあります。そんな原稿たちを飛び越えて、結論から言ってしまうと
「真剣に自分の人生を考えたいなら、仕事を辞めて無職になって考えるべき」
というのが僕の主張です。
もちろんこれだけでは「なんで?」と思う人がほとんどだと思います。
人生が変わるような決断を、帰りの電車と土日を費やした程度ですることに違和感
ここまで僕を突き動かしている、「戦略的無職」なる提案。今回はそんな提案をするに至る発端となった単純な疑問からお話しようと思います。
「果たして、人生が変わるような決断を、帰りの電車と土日を費やした程度でしていいのだろうか?」
これがその疑問です。
大半の社会人は平日に仕事をする。土日はお休み。かつての僕もそうでした。しかしアクティブで意欲的な人であればあるほど、忙しいものです。平日の仕事終わりには何かしらの予定がある。飲み会だったりデートだったり趣味の時間だったり。そしてそれは土日もしかり。
そんな人が、周りの影響か、はたまた年齢か、僕のように日々の仕事をしている中から疑問が湧いて、「今の職場を変えようか」と考え始めたとします。そこで転職するにしても起業するにしても、大抵の人はキャリアに間をあまり空けたがらない。転職エージェントの人たちも、キャリアに間があかないほうが良いと言うし、転職本にはその方がベターと必ずと言って良いほど書いてある。そういうわけで、多くの人が仕事をしながら自分の考えを進めていくことになります。
さあでは、かつての僕含め一般的な社会人は、仕事の傍らで新たに湧いた大事な疑問を、一体どうやって解決しようとするのだろう。
その答えが、「帰りの電車の中」や「土日の予定がない時」です。
ここに、そんなかつての僕のような若手社会人の方々に対して、戦略的に無職になることを勧める第一の理由があります。
大事な仕事の準備では「まとまった時間」をとるのに…
ここで、大抵の人が想像しやすい例をあげてみます。
仕事上で大事な企画を練る時や、大事な営業の準備をする時のことを考えてみてください。大抵の人はまとまった時間を費やして、何度も上司や同僚にフィードバックをもらい、またまとまった時間を取って… を短い期間で何度も繰り返すのではないでしょうか。自分もそうでした。そうやって重要な決定をしたり決断を下すに至ります。
ここで是非、考えてみて頂きたい。仕事上で大事なことはそうするのに、自分の進路に関してはその正反対を大抵の人がしているように見えないでしょうか。
仕事の場合は、
・一定期間内に
・まとまった時間で何度も考えて
・なるべく広い視野でフィードバックを何度ももらう
それに対して、一般的な社会人の進路決定は、
・期間なし、もしくは大体
・まとまった時間は基本週一であるかないか。なんとなく考える時間が細切れで存在
・フィードバックは主に友人や同僚、転職エージェント
「仕事の方が自分の進路、ひいては生活よりも大事」という人ならわからなくもありませんが、そうでないなら一般的な社会人のこの意思決定の仕方は、仕事の場合に比べてとんでもなく適当ではないでしょうか?
・期限がないからいつまでも引き伸ばせるし、誰もそれを本気で注意してもくれない
・まとまった時間を連続的に取れない、もしくは仕事の忙しさによって変動するから考えが進展しづらい
・フィードバックをもらう友人や同僚はどこまでいっても結局は他人事なので、話は聞くが結論を出す決定打はなかなか与えてくれない。しかも同質の環境で育ったり、学歴やキャリア、環境が似ている点が多いので、広い視野での意見を得づらい
・転職エージェントに関しては当たり前だが転職以外の選択肢を与えてくれないし、本当に根が良い人でない限り転職を勧める(仕事だし営業目標あるから当たり前)
“ながら作業” では、誰だって中途半端な決断しかできないのでは
そして何より、仕事しながら進路を考えてる人に気づいて欲しいのですが、それは、“ながら作業” と同じではないでしょうか?
しかも仕事と人生の “ながら作業”。
なおかつ、一つの環境に物凄く影響を受けている状態での “ながら作業”。
仕事をしながら自分の人生を考える。
しかもある一定の環境に依存した状態で。
そんな大事なこと2つを、ながら作業でこなしてしまったら、両方中途半端になってしまうのが容易に想像できます。しかも結果や結論は今の環境に染まった視点に大きく依っている可能性大。
「果たして、人生が変わるような決断を、帰りの電車と土日を費やした程度でしていいのだろうか?」
仕事を辞める前の僕では答えられなかったこの疑問。けれど今の僕はそれに対して、上記のことを踏まえて絶対に「NO」だと答えます。僕自身、会社に勤めていた頃は自分の人生について本気で考える時間も余裕もありませんでした。
だからこそ自分の人生をしっかりと再定義するためにも、中途半端に考え、結論付けてしまわないためにも、「NO」なのです。
人生を左右する決断の質を、最大限高めるための方法論
それが「戦略的無職」
そして、「じゃあどうすればいいんだろう?」という問いに対する僕の提案が、無職になって考えることです。無職、というとネガティブな印象を持ちがちですが、僕がここで提案するのは、あくまで自分の人生をより豊かにするための戦略的な無職です。キャリアアップをするために、自分にとってより豊かな人生を歩むために、戦略的に無職を選択するということなのです。
申し訳ないですが、仕事したくない人や社会に貢献したくない人、だらだらニートを続けていたい人は僕の提案するものとは違う書籍なり記事なりを探したほうがいいでしょう。
戦略的に無職になり、しっかりとその期間を有効活用することによって、より良い人生の選択をする。
仕事終わりと土日だけではなく、毎日起きてから寝るまで心の赴くままに自由に、真剣に考える。
働いていた時よりも遥かに広い視野で情報を収集し、さまざまな生き方、働き方を知り、さまざまな人にフィードバック(意見)を求め、考え、行動し、決めていく。
そして、しっかりと自立して生きていきたい多くの人にとっては、自身の貯蓄や家庭の事情、そして何よりより良い人生を歩みたいという純粋な欲求によって、無職期間は期限付になります。
「戦略的に無職になる」ということは要するに、大事な仕事をする場合と似た状況を、自分にとって大事な決断をするために作り出すことなのです。
言い換えれば、戦略的無職とは、「人生を左右する決断の質を最大限高めるための方法論」。そして20代こそが、その自由度やポテンシャルゆえに、この方法論で最も大きな効果を発揮する絶好のタイミングだと私は思うのです。

人生を左右する大仕事だから、片手間には取り組めません。ご心配おかけして、ごめんなさい!
本当に何もしなくていいからこそ「誰から頼まれるでもなくやりたいと思えること」に気づける
さて、そんなこんなで僕自身、その方法論を今まさに実践している最中です。
次の決断をするためにさまざまなな人に話を聞きに行ったり、大好きな海を眺めてのんびりしたり、本を読んだりしながら、起業についてのイベントへ行ってみたり、ハッカソンに参加してみたり、友人とアプリやソフトウェアを作ってみたり、こうして文章を書いて思考を整理したりと、本当に日々有意義な時間を過ごしています。
自分の人生が、自分以外の物事や環境に依存していない状態で、自由に行動し、さまざまなな角度からのインプットを沢山自分にしてみる。そうすることで、自分はどういうニュアンスのものが好きで、どういうものが嫌いなのか。どういうことが得意で、どういうことが苦手なのかを、フラットな視点で捉え、考え、次の選択につなげることができるようになる。
収入や生活を、ある特定の企業や仕事、スキルに依存している状態では、なかなかフラットな視点で物事を捉えるのは難しいことのように感じます。だからこそ、自分の人生を自分で決める自由を、この期間はとても強く感じます。それと共に、貯金などの現実的な制約や期限による、自分の人生に対する責任もしっかりと感じます。
僕のこの、戦略的無職期間の期限は、本当にこのまま収入を得ない状態を続けた場合、最長でもあと5ヶ月。けれどおそらく、その期日を待つことなく、僕は何かを見つけて走り出すんだろうなと思っています。口では「のんびり考えたい」と言いながらも、気付いたらPCを開いて友人知人と何か作ろうとしたり、こうして文章を書き出してしまうような僕ですから。
そう考えると、戦略的無職というのは、人生を左右する決断の質を高める手段である一方で、自分の「誰から頼まれるでもなくやりたいと思えること」に気付ける良い手段でもあるのかもしれません。
悩める20代社会人が、真剣に自分の人生を考えるには 1. 今の仕事に全力で取り組み、それで違和感が消えないのなら潔く辞める 2. “ながら作業”から解放された状態で、フラットな視点で自由に、真剣に考える 3. 自分の人生に対する自由と責任をしっかりと受け止め、日々を生きる |
PHOTO:著者本人