ちいさなお店をはじめたこと。~等身大で、自由な働きかた~【第24話】ちいさなお店がイベントに出ることQ&A ≪後編≫

ノマディッククラフトヨメのちいさなお店をはじめたこと。しかも晴れた翌日よりザーザー降りの初日のほうが売れた…という驚きの結果に。事前にいくら想像しても、ふたを開けてみないと分からないものだな、というのがこの1年の実感です。自分たちが大切に選んだものを、目の前の方が気に入ってくださる
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第24話 ちいさなお店がイベントに出ることQ&A ≪後編≫.

 

こんにちは、ノマディックラフト ヨメです。

イベント出店を1年間がんばったことで「こんなとき、どうしてますか?」と質問を受けるようになった……そんないきさつから、よく聞かれる質問に対しQ&A形式で自分たちなりの経験や体験をお伝えした前回。後編となる今回は、出店当日~後のことについて寄せられた質問をシェアさせていただきます。

 

Q. イベントに初出店します。必携グッズを教えてください!
A. 出店証、テント・什器、釣り銭、紙袋などです!

 

イベント開始前に準備を終えなければいけないため、出店当日の朝は早いもの。前の日に準備を終えたつもりでも、現地に着いて「あ!しまった忘れ物~!」という場合も恥ずかしながらあります。それでも、忘れてはいけないものがこちら。

◇ 出店証・駐車証

事前に出店料を払うと、出店証が送られてくることがあります。これを忘れると出店できないことはないですが、本人確認に時間がかかるため、ただでさえ慌ただしい実行委員の方たちに迷惑をかけてしまうので注意が必要。また、車で出店する場合は駐車証が発行されて、それを掲示することで駐車場が利用できるケースが多いようです。これを忘れたために併設駐車場に車が置けず、荷物を遠くから運ばなければいけないハメに陥ることもあるようなので、どちらも早めにバッグに入れましょう。

◇ テント・什器

屋外イベントでレンタルを利用しない場合は、テントやテーブルなどの什器は必須アイテム。しょっちゅう使うものではないので、久々にケースを開けて初めて「あれ…… パーツが足りない!」という事件もある、と出店仲間から聞いたことがあります。当日になってから急に借りるのは難しいため、部品も含めて揃っているか目を通しておくと安心です。

テントが入っている黒いケースと、荷物を広げるときに使うシートです。ケースを開けたときに「足りない!」と気づいては遅いので、イベントの終わりにテントを収納するときに入れ忘れがないかキチンとチェックしておくと安心。

テントが入っている黒いケースと、荷物を広げるときに使うシートです。ケースを開けたときに「足りない!」と気づいては遅いので、イベントの終わりにテントを収納するときに入れ忘れがないかキチンとチェックしておくと安心。

◇ 釣り銭

朝イチで1万円を使うお客様が意外に多い、というのは前回もお伝えしましたが、お釣りがなくてはお買い上げいただけないことが。私たちは店のレジで使っている小さな手提げ金庫を丸ごと持っていきますが、イベント用ポーチを準備して釣り銭を管理するのでも十分だと思います。急場をしのぐために自分のお財布から……というのもアリですが、個人のお金と仕事のお金が混ざると経理が難しくなるので、その場合は分かるようにメモしておくなど工夫が必要です。

◇ 紙袋・手提げ袋

お買い上げアイテムを入れる袋も用意しましょう。私たちは浅草橋の文具卸店「シモジマ」で無地のクラフト袋をまとめ買いし、袋の口を止めるマスキングテープとセットで持っていきます。エコロジーの観点から、袋に入れない主義のイベントもあるので、出店申込みのときに必ず確認を。

その他、私たちが用意しているものは…

◆ 何が売れたのか明細を控えておくノートやメモ帳
◆ 筆記用具(当日、実行委員会などに書類を提出することがあります)
◆ お金を受け渡しするトレイ(手でもよいですが、あるとスマートだしこぼれにくい)
◆ 計算機(スマホだと電源が切れたときに大変!)

これらは「イベント用品」的な位置付けのポーチにひとまとめにしておくと、当日パッと出せて便利です。

 

布をかけた大きなテーブル(写真上)の裏側はこんな感じにイベント用品を置いています(写真下)。青い金庫の手前に、計算機と販売したアイテムを控える伝票。金庫の右横にはマスキングテープとボールペン、手前にお金の受け渡しに使うトレイを収納しています。(雑多な写真でごめんなさい!)

布をかけた大きなテーブル(写真上)の裏側はこんな感じにイベント用品を置いています(写真下)。青い金庫の手前に、計算機と販売したアイテムを控える伝票。金庫の右横にはマスキングテープとボールペン、手前にお金の受け渡しに使うトレイを収納しています。(雑多な写真でごめんなさい!)

布をかけた大きなテーブル(写真上)の裏側はこんな感じにイベント用品を置いています(写真下)。青い金庫の手前に、計算機と販売したアイテムを控える伝票。金庫の右横にはマスキングテープとボールペン、手前にお金の受け渡しに使うトレイを収納しています。(雑多な写真でごめんなさい!)

 

Q. 会場入りしてからオープンまでの間は余裕があるものですか?
A. ほとんどの場合、忙しいです。準備の時間は余裕をみるのがオススメ

ブース設営の準備として1~2時間を設定しているイベントが多い印象です。会場に入って受付を済ませ、自分たちのブースがどこにあるか教えていただいた後の一般的な流れとしては、

① 車からブースまで荷物を運ぶ(何往復かします)

② テントを立てる

③ テーブルなどの什器をセットする

④ 商品を並べる(出すだけでなく、キレイにするのに時間が…)

※ この①~④、2時間あればそんなに問題ないものの、1時間だと正直バタバタです。

また、イベントによっては、準備時間の最後のほうに出店者が集まり、注意事項などを共有する朝ミーティングがある場合もありますし、さらに人気のイベントだと、オープンより少し前にやってくるお客様もいるので、なにかと気が急いてしまいがち。慣れないうちは、時間をフルに使って準備がスタートできるように、余裕を持って到着したほうが気持ちにゆとりができてよいのかな、と思います。

 

Q. イベントでの販売は未経験です。接客はやはり必要でしょうか?
A. 人それぞれ考え方は違いますが、私たちは必要だと考えています

意外に多いのが、「接客は必要ですか?」と聞かれるこの質問。出店者友だちに、どう思うか聞いてみても「ぜったい必要でしょ!」と言う人もいれば、「自由に見てもらいたいから、向こうから声をかけられるまではそっとしておくようにしている」と言う人もいるなど考え方は様々。ひと口に「これがベスト」とは言えません。ちなみに私たちは接客は大切だと思う派。その理由は、やはり見た目だけで分からない物作りのバックストーリーを伝えたいと思っていること。それにより少数民族の手仕事の世界が豊かに感じられるのではないか?と思っているからです。

たとえば、モン族の古布を使ったロースツール。こちらは古い布なので、座面の刺繍が少しほつれています。それに対し「もともとは赤ちゃんを背負うおんぶ紐として、背当ての部分に使われていた布なんですよ」とお伝えすると、古さや糸のほつれの感じ方、受け止め方が違ってくるのではないか、と思うのです。しかし実際はどうなのでしょう、自分たちが好きだから話したいだけで、きっと「静かに見たいのにうるさいな」と思っている方もいるかもしれませんよね(笑)。

ポロポロと糸が飛び出したり、ほつれがあるのも、実際に使われてきた布であるという理由が。そこをちゃんとお伝えして、納得のうえでお買い求めいただくのも、販売者の責任ではないかと思っています。

ポロポロと糸が飛び出したり、ほつれがあるのも、実際に使われてきた布であるという理由が。そこをちゃんとお伝えして、納得のうえでお買い求めいただくのも、販売者の責任ではないかと思っています。

 

私自身、あまり話しかけてこず、静かに商品を見させてくれるお店も好きです。一方で、「こういうふうに作られているんですよ」と聞かせていただけるのも好き。その時の気分や時間の有無によっても、受け止め方が変わるように感じます。気持ちのいい距離感は人により違うので、接客の気持ちを持ちつつ前のめりになりすぎよう、お客様が静かに見たいのか、会話も楽しみたいのか、できるだけご様子を見て判断するようにしています。どんな状況、心境であれ、同じ空間にいるのにこちらを見もせず、話しかけもしないのは、さすがに無愛想に感じるのではないでしょうか。接客が苦手であれば「こんにちは」「いらっしゃいませ」とお声がけするところから始めるとよいですよね!

 

Q. お客様とのトラブルってありますか?
A. 大きなものは未経験ですが、小さなトラブルは起こります

幸運なことに、まだ大きなトラブルには遭遇していませんが、小さなものならいくつかありました。たとえば私たちは植物を扱っているのですが、お客様が荷物をひっかけて鉢を倒してしまったことが。土がこぼれて、その植物は販売できなくなってしまったため、お客様は申し訳なさそうに「弁償します」と言ってくれましたが、植え替えをすれば元に戻りますから、弁償は遠慮しました。

あとは、テーブルに出してある鳥の笛ネックレスを口にくわえて鳴らしてしまう方が時々いらっしゃいます(笑)。誰かの口がついてしまうと、他の人に販売できなくなるので、その場合は「購入を決めた後に、吹いていただけると助かります」とお伝えし、口がついた物は下げてしまうことにしています。これも特に「吹いたんだから買ってください!」とは言わない方針です。

今のところ滅多にそういうケースはなく、あっても悪質ではないと感じるので、こちらで処理しようというのが私たちの判断です。ただ、起こってしまうと一瞬「どうしよう??」とアワアワするので、事前にもしもの時は弁償してもらうのか、自分たちで巻き取るのか、対処方針だけ決めておくとよいかもしれませんね。

 

Q. 自分の作品がぜんぜん売れなかったら…と思うと出店する勇気が出ません。そういうこともありますか?
A. あります(笑)。でも時間の無駄だと思ったことは一度もありません

さすがに売上げ0円という経験はまだありませんが、午前中に3000円くらいの小物がひとつ動いたっきり、そのまま天気が悪くなって人もいなくなって終了時間、ということはありました(笑)。出店料や自分たちの拘束時間、交通費などを考えると完全なる赤字です……。あと、人がたくさん来ていてもっと反応がよくても良さそうなのに、今ひとつ手に取ってくれる人が少なく、売上げも芳しくないまま一日を終え「うちのセレクトってイマイチなのかな……」と悩むような日もありました。

そういう寂しい日がある一方で、驚くほどたくさんのお客様に選んでいただける嬉しい日もちゃんとあります。たとえば昨年、初めて『ベジ&フォーク』というイベントに出たときは、二日間の出店中、初日はどしゃ降りの雨。しかし二日間を通じて非常によい反応をいただき、しかも晴れた翌日よりザーザー降りの初日のほうが売れた… という驚きの結果に。事前にいくら想像しても、ふたを開けてみないと分からないものだな、というのがこの1年の実感です。

どしゃ降りの『ベジ&フォーク』。商品が雨で濡れないよう、手持ちの布やシートであわてて雨よけを作りました。足もとが悪い中にも関わらず、ブースを見てまわるお客様がたくさん。

どしゃ降りの『ベジ&フォーク』。商品が雨で濡れないよう、手持ちの布やシートであわてて雨よけを作りました。足もとが悪い中にも関わらず、ブースを見てまわるお客様がたくさん。

どしゃ降りの『ベジ&フォーク』。商品が雨で濡れないよう、手持ちの布やシートであわてて雨よけを作りました。足もとが悪い中にも関わらず、ブースを見てまわるお客様がたくさん。

イベントにいらっしゃるお客様の好みと、私たちの取り扱う品がマッチするかどうか、という意味でイベントとの相性というものはあると感じます。が、それも何回か出てみて分かったことで、最初から判断できたか、と言えば難しかったはず。「売れなかったらショック!」と「お買い上げいただけて嬉しい!」は表裏一体の関係です。自分たちが大切に選んだものを、目の前の方が気に入ってくださるのはすごく幸せな体験ですし、「ここがもっとこうだったらな」「ここが気に入りました!」などの意見を聞けることも収穫なので、ぜひ一歩を踏み出していただけたらいいな、と思います!

*****

イベント会場に到着し、初めて出会う出店者さんに囲まれると毎回ドキドキするものです。まずは両隣のブースに「ノマディックラフトと申します、今日はお世話になります!」と挨拶に行って、言葉を交わすと少し緊張がほぐれて「さあ、今日もがんばろう!」とやる気が湧いてきます。

思いもしない突風でテントが飛びそうになるとか、人がぶつかってテーブルが傾き商品が落ちるとか、開催中は予期せぬアクシデントが起こることも。そんなとき、近隣のブースの方がさっとやってきて手を貸していただけることも少なからずあり、困っているときほど大変ありがたく思います。また、お客様が多くない時間帯に「どうですか?」と話しかけるうち、雑談に花が咲いてお友だちになった……など嬉しい出会いも。ノマディックラフトの活動を知っていただく以外に、人との出会いや優しさに触れるのもイベントのだいご味。出てみようかな?と迷っている人がいたら、ぜひ「面白いから出てみたら?」とお伝えしたいです!

次回もちいさなお店からお話をお届けしますね! どうぞお楽しみに!


(月一第四週土曜日更新です)

ノマディックラフトのイベント出店情報

安穏朝市
12月18日(日)9:00~15:00 @東京中央区・築地本願寺前広場
毎月1度、本願寺さんの広場で開かれる暮らしの温もりや匂いを感じる素朴な朝市です。採れたての産直野菜から暮らしの雑貨までが揃います。私たちも看板犬レラと一緒に、ゆるゆると出店中。築地の場外市場からも歩いてすぐ。気持ちいい休日の朝、ぜひ足をお運びください。

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 連載バックナンバー

第1話 家=店。人が思うよりもずっとちいさな投資でお店をはじめてみた(2015.6.13)
第2話 店から出て人に会う、出会いをつくる。〈イベント出展篇〉(2015.6.26)
第3話 1人2役 × 2。兼業夫婦は不安定? 時間も予定も「自由」のメリット・デメリット(2015.7.11)
第4話 なんで「少数民族の手仕事」? それはやっぱり「好き」だからです(2015.7.25)
第5話 暑さに負けず蚊に負けず。探して洗って、よみがえる古布たち 〈 仕入れ旅篇 〉(2015.8.8)
第6話 どうしてそんなに自由なの!? 現地の人たちと商品を作る(2015.8.22)
第7話 モン族の女性に聞いた、美しい刺繍の裏側にある物語(2015.9.5)
第8話
 小商いでも管理は大切。入るお金、出ていくお金何がある?(2015.9.19)
第9話 ショップカードにネームタグ… 地味だけど重要度は大! お店まわりのこまごま小物(2015.10.3)
第10話 大切さは名前と同じ。自分たちのロゴマークはどう作るか<デザイナー編>(2015.10.17).
第11話 大切さは名前と同じ。自分たちのロゴマークはどう作るか<実践編>(2015.10.31)
第12話 どこまでを手作りと呼ぶ? 手仕事を求める楽しさ、難しさ <買い付け編>(2015.11.14)
第13話 お客様との新たなつながり。看板犬レラが教えてくれたこと。(2015.11.28)
第14話 美しいものよ、輝け!お母さんとの約束。(2015.12.12)
第15話 生産者さんを訪ねて <鳥の笛ネックレス編(2016.1.14)
第16話 生産者さんを訪ねて <アカ族の村編(2016.1.30)
第17話 始まった… 年に一度の確定申告(2016.2.13)
第18話 手仕事は同じじゃないから美しい~『ORDINARY』とコラボグッズを作ったこと(2016.3.11)
第19話 生産者さんを訪ねて<カレン族の村編>(2016.5.21)
第20話 生産者さんを訪ねて<ラフ族の村編>(2016.6.18)
第21話 夫婦で働きながら、煮詰まったときにしていること。(2016.7.20)
第22話 おしゃれに見せるって難しい! イベントのディスプレイで四苦八苦。(2016.8.26).
第23話 ちいさなお店がイベントに出ることQ&A ≪前編≫(2016.8.26)
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オーディナリー編集部がノマディックラフト参加の展示会を観に行った話

【レポート】遠い国の伝統的な手仕事がいっぱい!

 

【関連サイト】
ノマディックラフト ウェブサイト http://nomadicraft.com/
ノマディックラフト 店主ブログ http://blog.shop.nomadicraft.com/
ノマディックラフト Facebook https://www.facebook.com/nomadicraft
木内アキ(ライターとしての仕事) ウェブサイト http://take-root.jp/

 


ノマディックラフト ヨメ

ノマディックラフト ヨメ

自然・旅・民族をテーマに、タイ、ベトナム、ラオスの山岳地帯に住む少数民族の手仕事を扱う、西小山のアトリエショップ『nomadicraft』を店主であるダンナとともに運営。母から子へ、脈々と受け継がれてきた素朴で美しい手仕事を紹介しながら、作り手である女性たちに仕事の機会を提供し、貧困の和を断ち切るための支援も行っている。ふだんはフリーランスのライター・木内アキとして「女性にまつわる人・旅・暮らし」をキーワードに、雑誌や書籍を中心に執筆活動中。目標は「キチンとした自由人」。 ノマディックラフト 店主ブログ http://blog.shop.nomadicraft.com/ 木内アキ ウェブサイト http://take-root.jp/