ちいさなお店をはじめたこと。~等身大で、自由な働きかた~【第16話】生産者さんを訪ねて<アカ族の村編>

ノマディッククラフトヨメのちいさなお店をはじめたこと。

じゃあ上手な人のだけ扱えばいいのに、と思う方もいるかもしれません。しかしもう一つの団体さんは、育成に力を入れており、まだ刺繍がそんなに上手じゃない人たちにも仕事を頼み、雇用を生み出しながら技術の向上を手伝っているのです。sasamoto_s

 

第16話 生産者さんを訪ねて <アカ族の村編>

 

こんにちは、ノマディックラフト ヨメです。
少数民族の手仕事を扱う私たちですが、なかなか日本にいると少数民族の人たちがどのような暮らしをしているのか、触れる機会が少ないものです。そこで、前回に続き生産者さんたちを訪ねたときの様子をお届けいたします。

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タイの山岳部
アカ族の村を訪ねて

前回、鳥の笛ネックレス&オブジェを作ってくれていたのもアカ族のお母さんたちでしたが、今回ご紹介するのは刺繍製品の制作をしているお母さんのところにお邪魔したときの様子です。アカ族の村はこんな感じ。

山の中に、家が密集した集落になっています。決して大きくはないですが、緑に囲まれたとても素敵な村。

山の中に、家が密集した集落になっています。決して大きくはないですが、緑に囲まれたとても素敵な村。

DSCN2671少数民族をサポートしているミラー財団(The Mirror Foundation)の方の案内で、店主はこの日、アカ族のお母さんの家に泊めてもらうことになりました。村の中に入ると、子どもたちが駆け寄ってきます。明るくて人見知りしない子どもたちはとっても元気いっぱい! あっという間に店主を囲み、ニコニコと話しかけてくれます。

 

彼女が刺繍製品の生産者であるアカ族のお母さん。私たちが輸入しているアカ族の刺繍製品のほとんどは、彼女がチクチクと作っています。輸出はしていませんが、自分でバナナの木を育て、バナナチップスを作って販売もしています。

彼女が刺繍製品の生産者であるアカ族のお母さん。

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私たちが輸入しているアカ族の刺繍製品のほとんどは、彼女がチクチクと作っています。輸出はしていませんが、自分でバナナの木を育て、バナナチップスを作って販売もしています。

 

とにかくゴージャス
1度見たら忘れないアカ族の衣装

ミラー財団のみなさんによると、タイで暮らしているアカ族の人口は10万人ほど。主に農業で生計を立てており、稲やトウモロコシなどを育てています。ふだんはTシャツやジャージなど、私たちと変わらないカジュアルな服装で過ごしていますが、アカ族の人たちの民族衣装は装飾がたくさんついた大変豪華なもの。

下の写真は滞在中、とあるアカ族の村でお祭りが行われたときの様子。伝統の民族衣装に身を包んだ女性たちを見てください。エキゾチックな雰囲気で、ため息の出るような美しさです。

アカ族の衣装は大きな丸い金具が連なったヘッドドレスが特徴で、ジャケットの背中や袖、足に付けた脚絆には先ほどお母さんが作っていたのと同様の刺繍があしらわれています。

アカ族の衣装は大きな丸い金具が連なったヘッドドレスが特徴で、ジャケットの背中や袖、足に付けた脚絆(きゃはん)には先ほどお母さんが作っていたのと同様の刺繍があしらわれています。

 

お祭りでは、火を囲んで伝統的なダンスを踊ります。美しい刺繍の装飾がふんだんに使われているのがよく見えます。間近で見ると本当にキレイです。

お祭りでは、火を囲んで伝統的なダンスを踊ります。美しい刺繍の装飾がふんだんに使われているのがよく見えます。間近で見ると本当にキレイです。

 

村にいたお母さんに、ヘッドドレスを見せてもらいました。丸い金具はアルミのような、軽い金属で作られており、カラフルなビーズやポンポン、モールの飾りを取りつけています。ひと昔前は、右側のモールの部分はにわとりの羽を染めて作っていたそうです。ちなみに、左上にちらりと「お金」がついているのが見えるでしょうか?もともとミャンマーに住んでいたアカ族も多く、その名残でミャンマーの古銭を装飾に使うことがあるそうです。

村にいたお母さんに、ヘッドドレスを見せてもらいました。丸い金具はアルミのような、軽い金属で作られており、カラフルなビーズやポンポン、モールの飾りを取りつけています。ひと昔前は、右側のモールの部分はにわとりの羽を染めて作っていたそうです。ちなみに、左上にちらりと「お金」がついているのが見えるでしょうか? もともとミャンマーに住んでいたアカ族も多く、その名残でミャンマーの古銭を装飾に使うことがあるそうです。

 

生産者のお母さん(左)と店主(中)、そして右でお孫さんを抱えているのがおばあちゃん。この山岳地帯はミャンマーやラオスとつながっています。このおばあちゃんも、若い頃にミャンマーから山を越えてタイまでやって来て、現在の場所に住み始めたのだそう。

生産者のお母さん(左)と店主(中)、そして右でお孫さんを抱えているのがおばあちゃん。この山岳地帯はミャンマーやラオスとつながっています。このおばあちゃんも、若い頃にミャンマーから山を越えてタイまでやって来て、現在の場所に住み始めたのだそう。

 

減ってゆく作り手
それでも受け継ぎ、守り継ぐ

 

素朴なお料理の数々この日はお母さんの家にステイ。ご迷惑をかけないよう、食材はすべて自分たちで持ち込み、料理を作っていただきます。空心菜の炒め物やナッツ、スープ…… 店主曰わく「日本でイメージするタイ料理よりも味付けはあっさりしていて、とても美味しかった」とのこと。主食は私たちと同じ、お米です。

 

お母さんの美しい衣装

お母さんの衣装を見せてもらいました。これは背中に当たる部分。ものすごく細かい装飾でずっしりと重く、しっかりとしています。これだけの手仕事を完成させるには、本当に時間がかかります。しかも日中は畑仕事や家事もあり、小さいお子さんの面倒もみなくてはいけません。コツコツと縫い進め、完成までに数か月、時には年単位の時間がかかることも。財団の方が言うには、ここまで細かい刺繍ができる人は年々少なくなっているそうです。

たしかに、私たちがタイにある他の団体から輸入しているアカ族の刺繍は、正直なところこんなにキレイではありません。こちらが違う団体さんが作った物。↓

 

他の団体の作品

手仕事の素朴さには満ちていますが、ステッチがざっくりと大きくて粗く、不揃いな仕上がりです。
で、これがお母さんの作った物。↓

 

より芸術的な差し手によるアカ族の伝統刺繍

クロスステッチや、下の菱形の刺繍が同じ大きさでキッチリと均一に連なっているのが分かるでしょうか。

じゃあ上手な人のだけ扱えばいいのに、と思う方もいるかもしれません。しかしもう一つの団体さんは、育成に力を入れており、まだ刺繍がそんなに上手じゃない人たちにも仕事を頼み、雇用を生み出しながら技術の向上を手伝っているのです。そういう団体さんもいなければ、将来お母さんのような上手な刺繍の刺し手になる人も生まれてきません。

私たちも店頭やイベントでは、その刺繍のクオリティや背景の違いを説明させていただいています。もちろんお値段も、上手な人のほうが高く、練習中の人たちのほうがリーズナブルに設定しています。面白いものでこのお話しをすると「キレイなほうがいいわ」という方もいれば「じゃあ練習中のほうをいただきます」というお客様もいて、刺繍の後ろにあるそれぞれの背景に、それぞれが魅力を見出してくださっているように思います。

上手には上手なりの、練習中には練習中なりの思いと物語があり、精巧でも素朴でもそれぞれ違う美しさがある。そんな多様な美のあり方をも、教えてもらっている気がします。

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次回は、ラフ族やカレン族の生産者さんを訪ねた時のお話をお届けしますね。どうぞお楽しみに!

 

ノマディックラフトのイベント出店情報

寒い冬ももうすぐ終わり、春の訪れとともにイベントシーズンがスタートします。私たちも西小山のアトリエショップを飛び出して、各地に出かける予定ですので、どうぞお気軽に遊びにいらしてくださいね。

安穏朝市
@東京中央区・築地本願寺前広場
2月21日(日)  9~15時
詳細は http://annon-asaichi.blogspot.jp
毎月1度、本願寺さんの広場で開かれる暮らしの温もりや匂いを感じる素朴な朝市です。採れたての産直野菜から暮らしの雑貨までが揃います。私たちも看板犬レラと一緒に、ゆるゆると出店中。築地の場外市場からも歩いてすぐ。気持ちいい休日の朝、ぜひ足をお運びください。

 

よこはま大さん橋フェスタ
@横浜市中区・横浜港大さん橋国際客船ターミナル
2月27日(土)・28日 11~16時
詳細は http://pierfes.com
横浜港のシンボルである大さん橋にある、客船ターミナルで行われるイベント。食品を売るマルシェや雑貨などの販売ブースのほか、ライブなども開催される賑やかなフェスティバルです。今回は連載第2話に登場した『樂BAZAR』さんと共同出店予定!

 

ほか、詳細は随時お知らせします。

テラデマルシェ 3月26日(土)・3月27日(日)
小野路やまいち 4月23日(土)


(次回もお楽しみに。隔週土曜更新です)

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 連載バックナンバー

第1話 家=店。人が思うよりもずっとちいさな投資でお店をはじめてみた(2015.6.13)
第2話 店から出て人に会う、出会いをつくる。〈イベント出展篇〉(2015.6.26)
第3話 1人2役 × 2。兼業夫婦は不安定? 時間も予定も「自由」のメリット・デメリット(2015.7.11)
第4話 なんで「少数民族の手仕事」? それはやっぱり「好き」だからです(2015.7.25)
第5話 暑さに負けず蚊に負けず。探して洗って、よみがえる古布たち 〈 仕入れ旅篇 〉(2015.8.8)
第6話 どうしてそんなに自由なの!? 現地の人たちと商品を作る(2015.8.22)
第7話 モン族の女性に聞いた、美しい刺繍の裏側にある物語(2015.9.5)
第8話
 小商いでも管理は大切。入るお金、出ていくお金何がある?(2015.9.19)
第9話 ショップカードにネームタグ… 地味だけど重要度は大! お店まわりのこまごま小物(2015.10.3)
第10話 大切さは名前と同じ。自分たちのロゴマークはどう作るか<デザイナー編>(2015.10.17).
第11話 大切さは名前と同じ。自分たちのロゴマークはどう作るか<実践編>(2015.10.31)
第12話 どこまでを手作りと呼ぶ? 手仕事を求める楽しさ、難しさ <買い付け編>(2015.11.14)
第13話 お客様との新たなつながり。看板犬レラが教えてくれたこと。(2015.11.28)
第14話 美しいものよ、輝け!お母さんとの約束。(2015.12.12)
第15話 生産者さんを訪ねて <鳥の笛ネックレス編(2016.1.14)

 


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オーディナリー編集部がノマディックラフト参加の展示会を観に行った話

【レポート】遠い国の伝統的な手仕事がいっぱい!

 

【関連サイト】
ノマディックラフト ウェブサイト http://nomadicraft.com/
ノマディックラフト 店主ブログ http://blog.shop.nomadicraft.com/
ノマディックラフト Facebook https://www.facebook.com/nomadicraft
木内アキ(ライターとしての仕事) ウェブサイト http://take-root.jp/

 

 


ノマディックラフト ヨメ

ノマディックラフト ヨメ

自然・旅・民族をテーマに、タイ、ベトナム、ラオスの山岳地帯に住む少数民族の手仕事を扱う、西小山のアトリエショップ『nomadicraft』を店主であるダンナとともに運営。母から子へ、脈々と受け継がれてきた素朴で美しい手仕事を紹介しながら、作り手である女性たちに仕事の機会を提供し、貧困の和を断ち切るための支援も行っている。ふだんはフリーランスのライター・木内アキとして「女性にまつわる人・旅・暮らし」をキーワードに、雑誌や書籍を中心に執筆活動中。目標は「キチンとした自由人」。 ノマディックラフト 店主ブログ http://blog.shop.nomadicraft.com/ 木内アキ ウェブサイト http://take-root.jp/