苦手にもかかわらず共存していかなくてはならない。フリーランスの場合は「この仕事は絶対にやりたい。でもどうしても苦手な人がいるケース」です。あなたはせっかく掴んだチャンスを諦めきれないわけですよね。うじうじ考えるとエネルギー
逆境を越えるフリーランスはこう考える
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「そんなに仕事量が多いわけでもないのに、いつも疲れてる…」
フリーランスとして長く活動していくときに、気をつけることは、「心のエネルギー管理」です。これは、25歳で独立起業してから13年以上になるぼくが、何度でも伝えたいアドバイス。なので、今までもことあるごとにエッセイで触れてきました。
独立すると、お金の収支は、だれもが気にしますが、心のエネルギー収支はおろそかにしがちです。実は、お金がなくても仕事はできますが、心のエネルギーがなくなったらフリーランスは致命的です。いくら報酬が良くても、必要以上に精神消耗する仕事は、特にクリエイティブ職の人は、なんとしても避けたほうが良い。ぼくはそこを一番に気をつけています。
仕事で消耗する原因は、主にこの2点ですね。
・仕事内容が自分に合わない
・苦手な人がいる
報酬が良いと、つい我慢して続けてしまいがちですが、エネルギー収支で見るとぜんぜん割に合わない、ということはよくあるのです。
「嫌だ、嫌だ」と鼻をつまみながら、息を止めながらする仕事は、ぐったりとしますね。エネルギーがとられて、他の仕事が手につかなくなりますし、新しい発想も出なくなります。もし我慢し続けて、枯渇して廃人のようになってしまったら、失うものの方が大きいです。フリーランスはいつも、自分が元気でいられるかどうか。これを会社員よりも、丁寧に気にかけたほうがいい。
よくハマってしまうのは、「苦手なのに請け負ってしまうケース」です。仕事がない時期だと、焦って何でも飛びついてしまうのです。本当は、事務仕事が死ぬほど苦手で、吐き気がするほど嫌いなのに、
「いま人足りないからごめん、できる?」
知り合いに頼まれて、
「うれしい! 事務できます、頑張ります」
いやいや、よく考えてね。焦って飛びつくのは、歯を食いしばっても我慢してください。「自分が欠けている」という意識エネルギーで行動しても、欠けている現実がつくられるだけです。お金がどうしても必要なのであれば、消耗の少ないアルバイトを選んで「食費と家賃のため」と割り切って最低限稼ぐ。そうやってフリーランス活動を続けられる体制をひとまず整えるほうが良いかもしれません。
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いやなお客さんには売らなくていい
離れる選択肢はいつもあるよ
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仕事内容の次に、エネルギーを消耗させられるのは、ぎくしゃくした人間関係ですね。
まず基本的な姿勢として、「なんか嫌な感じ」がする人は徹底的に避けることです。もし苦手な人に出会っても、角を立てずに、無言で離れればいい。フリーランスなのだから、会社員よりは、つきあう人を選べるはずです。自分を大切にしてください。仕事が始まってから相性の悪さに気づいたなら、今からでもゴメンなさいして返金して、しかるべき後始末をして離れればいいのです。
例えば、電車の中で、変な行動している危ない人がいたら、あなたはどうしますか? さっさと離れればいいですよね。それなのに、嫌な顔しながらも、ずっと同じ車両から離れない人がけっこういるんです。それで移動時間30分ずっとストレス抱えて消耗してる。友人に「いま電車にやばい人いて、ありえないんだけど」ってLINE送ったり、「昨日ね、電車に酷い人いてさー」と飲み屋で発散したり、いつまでダメージ受けちゃってるんだ、という話です。
ぼくらには離れる選択肢があるのだから、となりの車両に自分が移ればいいのです。たった30秒で済む話が、3日間もダメージを引きずってしまう。相手に変わることを要求するのではなく、相手を責めるのではなく、ただ静かに自分が離れればいいのです。さっと車両を移って気持ちを切り替えて、楽しい未来の予定を考えたり、好きなサイトを見たりしてれば、ごきげんは保たれます。
人生には、限りがあります。基本的には、苦手な人にわざわざ耐える必要はありません。もし買い物だったら、イオンとかのショッピングモールに行って、置いてある商品をすべて買うことはありませんよね。目に入るものすべて買っていたら、お金がいくらあっても足りないし、家に置く場所もない。普通は、財布と相談したり、これ本当に欲しいのかな、必要かな、サイズは合うかな、と吟味するじゃないですか。
つきあう人も同じです。渋谷のスクランブル交差点で、通り過ぎる人、全員に挨拶して、全員とお話しなくていいのです。仕事でも、これは同じです。相性が合わない人は必ずいますから、スルーするのは悪いことではありません。
いやなお客さんには、売らなくていい。
苦手なメンバーとは、組まなくていい。
フリーランスなのですから、つきあう人を選ぶことができます。相思相愛のお客さんとだけつきあえば、エネルギー収支はいつもごきげん。傑作といえる仕事はいつも、エネルギーが高い状態の時に生まれるのです。
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逆境で身につけるべきは「愛する技術」
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ただ、難しいのは、苦手なメンバーから離れる選択肢がないケース。 仕事自体は、好きでどうしてもやりたいのに、
・クライアント側の担当者と合わない
・チーム内に苦手な人がいる
ということはあります。これが困ったものなのですよね。
「苦手な人とはつきあうな」このルールだけで全編クリアできるのであれば、この人生ゲームは楽勝なのですが、ステージが上がってくると、そうはいかない場面がどうしても出てきます。でも、葛藤するから、この世の人生ゲームは難易度が高くて面白いんですよね。

自分を知るためには 自分ではないものと 対峙しなければならない
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さあ、今日の本題は、ここから。
「苦手な人を避けられない場合に、どうするか」です。
ぼくらがいまプレイしている人生ゲームでは、そういう難題がいくつか用意されています。
・飛行機に乗ったら、隣が迷惑な人。13時間のフライトで席を代わろうにも代われない。
という短時間のものから、
・念願のマイホームを手に入れたら、隣に苦手な人が引っ越してきた
・結婚相手は大好きなのに、その親が苦手すぎた
・この世に生まれてみたら、親や兄弟が苦手なタイプだった
などという、長期間かかる重い問題まで…。
苦手にもかかわらず、共存していかなくてはならない。この難しさがあるから、ぼくたちは魂を成長させられるのですね。
フリーランス仕事の場合は、
・この仕事は絶対にやりたい。でもどうしても苦手な人がいる
このケースですね。
「なんて運が悪いんだ…」「彼さえいなければ…」うじうじ考えていると、エネルギー収支は減る一方です。この時点で、この仕事を辞められるなら、辞めるほうがいいです。でも、どうしてもやりたい。あなたは、せっかく掴んだチャンスを諦めきれないわけですよね。
どうしてもその仕事をやりたいのであれば、もう避けられません。避けられないのなら、やることはひとつ。立ち向かうしかありません。
逆境に立ち向かうときに大事な前提は、
「起きることすべて、自分にとって何か大切な意味がある」
と捉えること。
そして、行動ステップは
①彼に「向き合い」→ ②メッセージを「解釈し」→ ③運命を「引き受ける」
この3ステップです。向き合い、解釈し、引き受ける。
状況としては、
・避けれない度
・苦手度
ぞれぞれが高い方が、乗り越えたときにより大きな成長が見込める。そういうゲーム設定なのです、この世は。
どうしても避けられない苦手な人には、まずステップ1から。
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逆境克服のステップ
① 向き合う
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あの人からどうしても逃げられないと観念したら、覚悟を決めて正面から向き合います。「できるだけ接しないように…」とかこわごわ半身になってよけるのではなく、目を合わせて正対します。
宇宙は完璧ですし、この世の人生ゲームはよく考えられてつくられています。意味のない人とは、深い関わり合いにはなりません。映画に意味のない登場人物が1人もいないように、人生でも意味のない人はいないのです。
「苦手なこの人と関わることで、必ず自分は成長する」
信じて、向き合うのです。
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逆境克服のステップ
② メッセージを解釈する
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向きあったら、次は、出会った意味を解釈します。必ず何かの意味があるのですから、そのメッセージとは何か、謎解きのように解釈してみましょう。
「この人との出会いには、何の意味があるんだろう?」
「神さまは、この人物を通して何のメッセージをぼくに伝えようとしているんだろう?」
そのメッセージは自分にとって大切な物なのです。自分で探すことが、人生ゲームの楽しみではありますが、いくつかのメッセージの定番パターンABCDEを知っておくと、この「解釈」のフェーズを早くクリアできます。
【定番メッセージの例 】
A「同じだぞ、気づきなさいよ」
これはよくあります。ぼくもある仕事で苦手な人がいて、その人は「多様性を認めず、弱い人間をすぐに切る人」でした。ぼくは「弱さや違いを認めるべきだ。誰しも必ず長所があるから、長所をほめて伸ばすべきだ。役割はきっとあるよ」と主張してよくぶつかりました。「会社は学校じゃないんだよ」「いや、学校でもあるはずです」とぶつかってましたが、いよいよヘトヘトになった。あの人はなんて頑固なんだ、これだけ言っても変わらんのか!と。疲れ果てたその時に「あのさ、お前も同じくらい頑固だからね」という心の声が聞こえたのです。「他人を自分好みに変えようとコントロールしてるよね。お前も同じだよ、気づけよ」というメッセージだったのです。「違いを認めるべきだ!」と言いながら、相手の主張をまったく聞き入れなかったのですから、笑えますよね。
B「同族嫌悪だよ」
コンプレックスがある人は、同じ嫌な部分を持つ人を見ると、過剰反応してしまいます。自分のだらしなさが許せない人は、だらしない人を見ると、無性に腹が立ちます。嫌いな人は、実は自分の分身なのですね。「なぜこの人のことを嫌いなんだろう」「どの部分が嫌いなんだろう」と分析していくと、同じ自分の古傷に気づくことができます。その傷を許し受け入れ愛しなさいよ、だらしなくてもいいよ、あなたは十分素晴らしいからね、というメッセージです。自分を不必要に責めないで、大切にしてあげてね。
C「本当はやりたいんでしょ?」
羨ましいと思う人が鼻につくことは、ありますね。つまり嫉妬です。「あの人は自己中で、マイペースすぎる!」と腹が立つ時は、「自分ももっとマイペースに生きられたらいいのに、羨ましい」と本当は思っているのかもしれません。「あなたももっと自分を大切にして、マイペースに生きたらいいんだよ」それがメッセージです。
D「反面教師にしなさいね」
自分がやられたらどれだけ辛いか、身にしみたでしょう? これも将来、自分が同じ過ちをしないように、大切な経験だったりします。ぼくも昔、「権力を笠に着て、意地悪をする人」に出会いました。人間は誰でも権力を持つと、知らず知らずその力を乱用したくなります。例えば「どこでもドア」の魔法を持っているのに、使わずにいられる人はいますか? それくらい、持っているのに使わないのは難しいことなのです。だからこそ、釘を刺しているのです。「あなたはいま下の苦しみを痛いほど味わっているからわかるでしょ? 将来上に立った時にそうなってはいけないよ。忘れないようにね」というメッセージです。
E「譲れない条件を自覚しなさいね」
好きなものがわからない、という人は多い。でもそれは無理もないことです。人間、「好き」よりも「嫌いなもの」の方が直接生死に関わるので、本能的に分かりやすくできているのです。危険を察知するディフェンス能力の方が強化されている。もし「あの人は、弱い立場の人を雑に扱うから嫌いだ!」と強く思ったとしたら、あなたはその逆の人が好きということです。「どんな立場の人もリスペクトを持って接する人が好き」ということがわかりました。嫌いな人に出会ったおかげで、自分の「譲れない条件」に気づけたのです。プールで溺れてはじめて、酸素の大切さに気づくように。酸素がない状態に追い込まれて、「そうか自分には酸素が必要だったんだ!」とわかるのです。いくら美人でも面白くても、「リスペクトのない人は無理」と軸ができるのです。
他にもありますが、まずはこれらABCDEの代表的なメッセージを参考にしながら、今の状況を謎解きのように解釈してください。すぐにわかる場合もあれば、何年も何十年もわからないこともあるかもしれません。もし、いまわかったのならば、氷が溶けるのはもう間もなくです。
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逆境克服のステップ
③ 運命を引き受ける
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「苦手なあの人との関わりから、神さまが自分に伝えたいのは、こんなメッセージかもしれない」
意味を解釈できたら、この運命を引き受けやすくなるはずです。「どうして自分ばかりがこんな目に…」と意味のわからない不運に耐えることは難しいですが、意味を感じることなら積極的に耐えられます。無理やり苦いものを食べさせられたらストレスでしかありませんが、「健康に良いから」という意味を理解していれば、食べるストレスもだいぶ減ると思います。人によっては、むしろすすんで食べるかもしれません。
出会った意味を謎解きして解釈できたら、「ならば、限界までこの人に向き合っていくぞ」と決めるのです。これが、運命を引き受けるフェーズです。
お互いにどんなに理解し合えなくても、相手の存在は認めます。
「あなたのやり方に賛成することは到底できません。ただ、あなたが意見する権利はあるし、あなたの存在は尊重します」
そうやって、心の中で握手するイメージを作り続ければ、その問題は不思議と消えていくのです。相手の態度が柔らかくなったり、相手が異動になったり。こうして氷が溶けた時が、あなたがメッセージを受け取って、魂を成長させ、この試練をクリアした合図です。
① 向き合い→ ②意味を解釈して→ ③運命を引き受ける
実は、これは「愛する技術」なのです。愛は、勝手に溢れてくるものではなく、訓練で上達していくたぐいの技術です。
恋ならば、努力なしに、だれでもできます。本能的に勝手に落ちるのが恋ですから。幼稚園児でも、「誰々ちゃん、好き!」と言っていますね。好き嫌いを言っているのは、まだまだ子供の段階です。
・楽しい 「だから」 好き
・かっこいい 「だから」 好き
・仕事ができる 「だから」 好き
「だから」は、子供の恋です。
大人がより大きな仕事をしていく上では、深い愛、人間愛が必要です。くりかえしますが、愛は「感情」ではなく「技術」です。理性を持って、意識して努力で鍛えて、後天的に身につけるものです。
「にもかかわらず」が、大人の愛です。
・どんくさい 「にもかかわらず」 愛するぞ
・いつも自己中 「にもかかわらず」 愛するぞ
・無愛想で冷たい 「にもかかわらず」 愛するぞ
にもかかわらず、この人と一緒にやっていくんだと覚悟するのです。
にもかかわらず、許して、受け入れる。
にもかかわらず、感謝する。
「にもかかわらず」の度合いが大きければ大きいほど、愛する技術が求められます。この愛する技術が高い人のことを、「優しい」「器が大きい」「包容力がある」と形容するんです。
ぼくのような未熟者には難しいですが、究極レベルの達人たちは
家族や仲間の命を奪われた「にもかかわらず」許そう
このレベルにまで、愛の技術を高めている人たちもいます。おそらく人生の辛さランキングでいうと極致ではありますが、戦争が続く世界では直面する人も多くいます。「なぜこんな目に!」と怒りが爆発しますが、許そうが許すまいが、家族は帰ってこない。どんなに暴れても相手を攻撃しても、どうにもならないのであれば、選択肢はひとつ。現実を受け入れるしかない、「これも何か意味のあること」という悟りの境地です。
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今回のまとめ
① 苦手な人は、避けられる限り、避けること (自分を大切にしてね)
② どうしても避けられない場合。向き合い→意味を解釈し→運命を引き受ける
③ 相手を変えようとしないこと。コントロール合戦をしないこと
戦ってしまうと、この緊迫した氷の状況は、より頑なになります。受け入れ、存在を認め、愛すること。心の中のイメージで握手し、相手の幸せを祈れるようになったら、現実世界の氷も溶けていきます。
これが愛する技術。このスキルを上げていけば、人間関係をおそれなくなります。無敵とは、最強になることではなく、だれとも戦わない人のことなのです。
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「好きなことで生きていくために」
ヒントになりそうな他の深井次郎エッセイもありますので、一緒にどうぞ。
【第262話】お金への抵抗。なぜ好きなことでお金をもらうのは気がひけるのか
【第261話】失うものを背負った大人の起業法「3つの経験値」
【第260話】やりたいことが1つに絞れないあなたへ
【第259話】「君には飽きた」と言われた僕は、波の数だけ抱きしめた
【第257話】ヤンキーと優等生、20年後どちらが幸せになっているか
【第254話】飛んでから根を張る
【第251話】持つ者、持たざる者
【第247話】異なる楽器で同じ曲を奏でる
【第233話】未知なる感覚を求めて – 日本一のバンジーを飛んでみた話
【第214話】激変の時代にも残る仕事のキーワードは「あなたにもできる」
【第213話】世界を変えた新人たちはどこが違ったのか?
【第202話】自分がやらなきゃ誰がやる。使命感をどのように持つのか
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