TOOLS 62 子どもの情緒を安定させるアイテム <音楽編> / 諸星 久美( 小説家 / エッセイスト )

はなうたが出る時の心の状態は、安定して満たされている状態だと思っています。家の中で誰かがはなうたを歌っているときに部屋を満たす空気は幸せなものですし、家の中がピリピリ、ギスギスしている時には、はなうたなど出てくることも許されないようなムードが漂っています
TOOLS 62
子どもの情緒を安定させるアイテム(音楽編 )
諸星 久美  ( 小説家  /  エッセイスト )

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自由に生きるために
好きなものを増やしていこう

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好きなものや好きな人、好きな場所が多い人生は、単純に充実した人生のように思えますよね。今回のエッセイでは、子どものうちから様々なことに触れて、好きなものを見つけ、好きなものと寄り添うことで情緒を安定させ、人生を充実させていけるようなアイテムの1つとして、諸星家の中に流れる「音楽」というものの関わり方についてお話ししたいと思います。

前にも書いていますが、私は12年お付き合いしていた人と別れて、つき合って2週間の主人と結婚しました。その劇的スピードの背景には、音楽の力が大きく影響していたと思っています。

当時私は、インディーズでデビューしていた keison (ケイソン)という歌手が好きでしたが、周囲には、彼の曲はもちろん、存在すら知らないという人が多い中、主人だけが keison のCDを持っていて、一緒にliveに出かけたのが、仕事の同僚から恋人へと発展していくきっかけとなりました。

そして同じ月に、お互いが好きな EARTH WIND&FIRE のliveに出かけ、「Boogie Wonderland」 や 「September」 で盛り上がり、着座して 「Reasons」 を聴いている時に、「あ、たぶん彼とはずっとこうして一緒にいるのだろう」と、とても冷静に、けれど熱のある強い確信を抱いたものでした。

本物に触れて「やられた」という嬉しい驚きと、自分の中を流れていく熱い衝撃が重なった瞬間は、今でも思い出すと胸が疼くほどに幸せな時間であり、その幸せな瞬間の背景に流れていた 「Reasons」 は、私にとって、とても大切な一曲になりました。

夫婦で音楽を愛し、日常の中でも常に流れているような環境で育ったことで、子どもたちも音楽の好きな子になったと感じています。また、幼少期よりliveにも連れて出かけていたことで、アーティストの熱量や、それに感化される大人たちのムードや、私たち(親)が楽しんでいるという姿を見るという機会に触れることができたと思っています。

またliveを体験して、ノリのいい曲では思い切り弾け、バラードなどの曲の間は静かに耳を傾けるなどの抑揚や、大勢で何かを楽しむ時間のマナーや、素晴らしい表現に対する賞賛の拍手など、多くのことを学ぶことができたのではと思います。

こと、keisonに関しては、私たちの結婚前から現在に至るまで、何度もliveに出かけていることで、変わらないものの良さや、本物のアーティストとは何なのか? ということを考えたり、彼のライフスタイルに触れてきたことで、大人でも、様々な生き方があるのだな~ということを知るきっかけの1つになったのではと思います。

まだ、3人のかけらもない頃からファンのKeison

まだ、3人のかけらもない頃からファンのKeison

 

はなうたで感じる、精神の安定

 

みなさんは最近、はなうたを歌ったことがありますか?

私の個人的見解では、はなうたが出る時の心の状態は、安定して満たされている状態だと思っています。家の中で誰かがはなうたを歌っているときに部屋を満たす空気は幸せなものですし、家の中がピリピリ、ギスギスしている時には、はなうたなど出てくることも許されないようなムードが漂っています。

私は、体調が悪い時に本を開くことができなくなります。音楽もまた然りなので、それらを拒否するような状態の時は、とにかく体を休め、長く睡眠をとるようにしています。それは私のパターンでしかないかもしれませんが、朝の支度をしながら子どもがはなうたを歌っている日や、お風呂から歌が聞こえてくるときは、心が安定しているのだな、というバロメーターとしてみることができると考えています。また、知っている曲がテレビやラジオなどから流れてきた時に、

「あ、この曲知ってる~!」

と言う時の子どもたちの表情はいつも明るいのですから、やはり、様々な音楽に触れ、反応する曲やはなうたのレパートリーをふやしてあげることは大切なのかもしれないな、と思うのです。

3番目の長女(8歳)は、いまだ世界的に影響力を持つアーティストと同じ名前であると小さい頃より伝えてきていることや、音という字が名の中に入っていることも多少影響しているのか、本当に音楽の好きな女の子です。

ある日、

「ママ、私変なの……。音楽が聞こえるとね、どこにいても、何をしてても体が自然に動いちゃうの」

と言う彼女の真剣な告白に笑わせてもらいながら、

「ちっとも変ではなく、それは貴女の素敵な長所なのよ」と伝えました。

そんな彼女と、11月に東京ドームで開催されたBIGBANGのLiveに出かけてきました。始めのうちは会場のムードに圧倒されていた様子でしたが、徐々に持ち前の歌好きが出てきて、大きな声で歌を歌い、

「楽しすぎる、帰りたくないよ」

と何度も口にし、帰りの電車の中では

「ママ、ありがとう。早く日本語のCDでないかな~」

と言いながら眠ってしまいました。

そして次の朝、

「ママ、どうしよう、頭の中から音楽がはなれないよ」

とはなうたを歌いながら登校準備をしている様子に、また笑わせてもらいながら、彼女の情緒が安定している様子が見えたことに、私自身も嬉しくなりました。

長男、次男、主人がバスケ三昧の我が家において、彼女のやりたいことに時間を割いてあげることがなかなかできない状況ですが、知り合いのアーティストの路上ライブに出かけたり、主人のギターに合わせて家で歌を歌う時間を重ねたり、私とカラオケに出かけたりと、今後も音楽に触れる時間や、表現を楽しむ機会作りをしていこうと思っています。

長男のDJプレイ(左)六本木ヒルズでのlive、大人に混ざってノリノリ(右)

長男のDJプレイ(左)六本木ヒルズでのlive、大人に混ざってノリノリ(右)

 

子どもたちの成長のために、親である私たちが良きモデルでいる。という理想

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実家の両親の援助もあって、私たち夫婦は時折子どもたちを預けて2人でliveに出かけています。昨年夏のレディー・ガガのLiveでは、スペシャルな彼女の歌声にノックアウトされながら、小雨が空から降ってきた時の素晴らしさを2人で共感できました。

「心が震える時間をあとどれだけ彼と共有できるだろう」
「この感動を、今度は子どもたちにも教えてあげたいな」

そんなことを考える中で、いろいろ不安なことも多い世の中だけど、素晴らしい力を、惜しみなく発信し続けるパワフルな大人もたくさんいるのだということを、子どもたちに知って欲しいと、強く思ったものでした。

一番身近にいる大人(親)が、いつも愚痴を言っていたり、不満の多い表情を浮かべているよりも、好きなことを自由に楽しみ、活き活きとしている姿を見せる方が、子どもの情緒安定に必要なことだということは、容易に想像がつくことです。

そして、大人が大人の時間を楽しんでいる姿は、子どもたちの中に、「僕も大きくなったらあんな風になりたい」「私も大人になったら、あそこへ出かけてみたい」などという、大人に近づいていくことへの期待心を育てることにもなることでしょう。

日々活き活きと満ち足りた生活を送る、ということはなかなか難しいことでもありますが、ちょっぴり愚痴っぽくなりがちな時や、よくない空気が家を包んでいる時などは、敢えてお気に入りの曲を流し、フラットな自分を取り戻すためのアイテムとして音楽の力を借りていくことを、私たちはこれからもしていくのだと思います。

そして、そのようにして生きる術を、私たちと過ごす時間の中で、子どもたちが自ら選びとっていってくれたら、嬉しい限りです。

 

ギターが大きすぎるのでウクレレで

ギターが大きすぎるのでウクレレで

 

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子どもの情緒安定に必要なアイテムを手に入れるために(音楽編)
1.  日常生活の中に音楽を取り込もう
2.  liveを体感し、更なる音楽の楽しみに触れよう
3.  親自身が音楽に親しみを持とう


PHOTO : Eva Rinaldi(一枚目),その他、筆者本人


諸星久美

諸星久美

(もろほし くみ)小説家、エッセイスト。1975年8月11日 東京生まれ。東京家政大学短期大学部保育科卒業後、幼稚園勤務を経て結婚。自費出版著書『Snowdome』を執筆し、IID世田谷ものづくり学校内「スノードーム美術館」に置いてもらうなど自ら営業活動も行う。またインディーズ文芸創作誌『Witchenkare』に寄稿したり、東京国際文芸フェスティバルで選書イベントを企画するなど「書くことが出会いを生み、人生を豊かにしてくれている!」という想いを抱いて日々を生きる、3児の母。2017年8月25日、センジュ出版より『千住クレイジーボーイズ』ノベライズ本出版。オーディナリー編集部所属。