誰かのために時間を使って生きていくような感覚が、耐えられなくなってしまったのです。自分の力でお金が稼げるのか、勝算なんてないけれど、ただ自分が源で生きていきたくなったのです。フリーランスは名乗ればなれる。けれど名乗っただけでは仕事は来ません。
営業経験なしフリーランス1年生が自分の仕事をつくった方法
映画『花戦さ』イベントをお寺とコラボ
小山嶺子 ( フードクリエイター / フリーランス ) .
自由に生きるために
好きなイベントを主催し、価値観の合う人と出会おう
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フリーランスは名乗ればなれる
けれど、名乗っただけでは仕事はこない
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「フードクリエイター」と仰々しく名乗る以前のこと、フリーランスってそもそもどうやってなるのだろう? 周りにいる仲間たちに聞いてみました。私の周りの人に限ってなのかもしれませんが、みんな同じことを言いました。
「名乗ったらなれるよ。社会的に実感したいのなら、確定申告した時だね。」
名乗ったらなれる。そんなぁ、ちゃんと答えてよ!と思いながら誰に聞いても答えは同じでした。
何かを始める時に、原動力になるのは好奇心です。
フリーになって何がやりたいの? と言うと、料理も作りたいしコラムやエッセイも書いてみたい、イベントプロデュースもしたいし、いつか自分の講義を持ちたい! とにかくやりたいことばかりがたくさんありました。その思いから、これまでのようにどこかに属し、誰かのために時間を使って生きていくような感覚が、もはや耐えられなくなってしまったのです。本当に自分の力でお金が稼げるのか、勝算なんて何もないけれど、ただ自分が源で生きていきたくなったのです。
当初やりたい事と既存の職業とが結びつかず、なんと名乗っていいのかも分からなかった私は、自分のこれまでの人生を振り返ることから始めました。今まで一番時間を費やしたのはなんだろうか? それは飲食業界で過ごした時間です。つまり、他の分野と比べて、その分野ならばやれることが多いということです。想いが溢れて抑えきれなくなった時には「フードクリエイター」と名乗るようになっていました。
そうして私はフリーランスになりました。ですが、ただ名乗ったからといって仕事が入ってくるかというと、勿論そんなはずはありません。ようやくスタートラインに立てたというだけです。
今回は、スタートラインに立ったばかりの私が、営業という言葉に頭を悩ませながら気づいた事を綴っていきます。
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人前で好きなことを話し体験してもらう
イベント自体が営業活動になっていた
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これまでの飲食店経験で、お客様とのお話や「接客」というものは慣れたものですが、いわゆる顧客を増やす「営業」は全くの未経験。一体どうやってみんな仕事を依頼されているのか、右も左もわかりません。
何もわからない私は今、自分ができることを考えて行動に移すしかありません。活動を知ってもらうために人を集める何か…… 。今の私にできることは、イベントを主催してお客様を集めることでした。知名度もコネクションもない私には、SNSや知人を頼ってイベントを開催する以外に思いつくアイデアはありませんでした。と言うよりも「何かやってみたい」という好奇心の方が怖さよりも先行して、行動に移していました。
そんな風にイベントを主催するようになったのが約1年前。それから不定期ですが時々自分が主催のイベントを発信し、ようやく最近になって映画から連想する料理の cinemanma!(シネマンマ)という名前を知ってもらえるようになってきました。

イベントでの様子。料理の説明や自身の活動内容、ゲストのお仕事のお話も伺います。

ゲスト同士の繋がりも大切。一緒に食事を囲むことで新しい仕事が生まれることもありました。
とはいえ、宣伝活動はほとんどSNSや口コミだけです。今でもまだ友人、知人、その周りの人達に知ってもらえたというレベルでしょうか。本当は自ら主催するばかりでなく、人から依頼されて料理やイベントを作っていきたいというのが本音です。営業活動ってどうしたらいいんだろう。チラシを配ったりすることなのだろうか。好きで始めた事であれど、悩みは尽きることがありません。

悩んでいる時、考え事をしている時はいつもこんな感じ。体の力は全部抜いて頭だけにエネルギーを。何かいいアイディアは湧いてこないだろうか…。
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そんな考えに頭を悩ませているある日、なんと前回のエッセイで題材にした「ショコラから連想する一夜限定レストラン」にご参加いただいたお客様から依頼を頂きました。
彼女はお寺の奥様です。cinemanma!(シネマンマ)のイベントに参加して以来、自分でもイベントやパーティーを主催してみたいと好奇心を持ってくださったと言います。とても嬉しいお話。私が活動を始めたのも、これまで出会った方々のエネルギーに触発されて好奇心を抱いたからです。私も外に発信することで、誰かにその好奇心を連鎖することができていたのかと思うと、一つの目標を達成できたような気分にもなりました。
そうか、人前で好きなことを話したり体験してもらうこと自体が営業活動になっていたのか、そう気づいた瞬間でした。
チラシを配ったり、形式的に名刺交換をしたり、確かにそれも営業活動。営業という言葉に惑わされてしまいますが、言い換えれば「自分を知ってもらう」ということ。それは友達づくりや仲間づくりと同じようなものです。
小学生の時、友達をつくるのに何をしたか。楽しそうにドッジボールをやる姿を見て、仲間に入れて欲しいと思った。すいすいと一輪車に乗る姿をかっこいいと思って、どうやって乗るんだろう? 素直にそう思ったはず。その好奇心が、「ねぇねぇ、仲間に入れて!」とか「わたしにもやらせて!」とかアクションに繋がったはずです。
そしてクラスが違う子だったら、「そういえば今まで話したことなかったよね、よろしく!」そんな風に友達はできていったはずです。やりたいことを仕事にした大人にとって、営業活動もそれと同じなのです。自らが楽しむ、そしてそこに集まってくださった方々にも楽しみを提供する、実はとてもシンプルなことでした。
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伝統あるお寺との新しいコラボレーション
映画『花戦さ』から連想するイベントのお話
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こうしてお寺の奥様と一緒に、フラワーアレンジメントの作品展を開催することになりました。私が主に依頼を受けたのは、作品展終了後の懇親会の料理でした。せっかくお寺での開催ということもあり、料理は映画「花戦さ」から連想するメニューで行きましょうと決まり。となれば、せっかくだから作品展自体のテーマを映画「花戦さ」にしてしまおうという流れでした。
あとは「花」を仕事にしている知人を集めて一緒にイベントを作りませんか?と声をかけてみる。そこがまた私たちの営業活動の場になっていました。これまでイベントをやるようなお寺ではなく、奥様自身もパーティーを仕切るというのは初めてのことのようでした。ですが、人を集めたり、会場の準備も、新鮮な気持ちで臨まれているように見えました。

作品展の様子。生徒さんたちも「映画から連想して」作品を作ってくれました。

お皿やカトラリー選びも奥様自ら楽しんで揃えてくださいました。
映画「花戦さ」についてはこちらを。
メニューリストはこちらをご覧ください。
今回のイベントの背景には、近頃のお寺は檀家さんが減っていて、何か新鮮なことをして若い人にも親しみやすさを感じてほしいという奥様の想いがありました。「営業」とは違いますが、昔からある厳格なお寺でさえも、自分を知ってもらうために試行錯誤しているのです。それを知ると、始めたばかりの自分なんて悩んで当然と思えてきました。
確かに、長くその道を追求していると、知名度はあるのかもしれません。ですが、知名度と需要は必ずしも比例しているとは限りません。私たちフリーランスが職を通して世の中に存在価値を見つけるには、やっぱり好きなことで誰かを幸せにする努力をしファンを増やしていく、それが一番近道なのかもしれません。営業未経験のフリーランスが仕事を得るには、自ら発信し、自分を知ってもらうことから始める。これが一つの答えです。
笑顔を生む場所は、いつの時も求められます。自分の仕事が誰かに楽しみを与えられているか、鏡を見て自分の顔が楽しそうか、確認してみてください。もしも、疲れた顔をしていたら一度休息し、エネルギーを再燃させた方がいい。もしも、生き生きして見えたなら、フリーランスの仲間同士、あなたもそのまま自分を信じてやってみましょうよ。
営業経験なしフリーランス1年生が仕事を得る方法
1. 料理人は、名刺交換よりも、体験してもらうこと自体が営業になる
2. 仕事も遊びも、好奇心が人を動かす
3. 誰かに楽しみを伝えたいのなら、まず自分が楽しむ
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小山嶺子さんの過去のエッセイ
TOOLS 106 お店を持たずにレストランをひらく方法