【第262話】お金への抵抗。なぜ好きなことでお金をもらうのは気がひけるのか / 深井次郎エッセイ

深井次郎好きなこと自体が喜び。だからと言ってお金をいただかなかったら、いつまでも「好きなことで食べていく」ことができません。上手に受け取れるかが重要です。お金の抵抗には大きく2つあり、それを解決するために7つのアドバイスがあります。

「いえいえ、お金をもらうなんて、とんでもないです」

 

 

好きなことをしていると、それ自体が喜びです。でも、だからと言って、お代をいただかなかったら、いつまでも「好きなことで食べていく」ことができません。ナリワイにならない。ですから、好きなことをできる現状に感謝をしながらも「ありがたくちょうだいします」と上手に受け取れるか。これが重要なステップです。

「お金をもらうことに抵抗がある」という声はよく聞きますし、ぼく自身もこの抵抗がよく顔を出します。この「お金への抵抗」とはどんな感情なのか。その正体と対策を、今回は一緒に考えてみましょう。

大きく分けて、2つの抵抗があり、それを解決するために7つのアドバイスがあります。
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<目次>

抵抗1.  お金をもらえるほど価値があるとは思えない
抵抗2.  いい人に思われたい
アドバイス1.  お金は「価値」を交換するのであって、「苦労」を交換するわけではない
アドバイス2.  お金の価値は、一人一人ちがう
アドバイス3.  お金をもらうことが、相手のため、社会のためになる
アドバイス4.  誰もお金を払いたくないわけではない
アドバイス5.  お金をもらうからこそ、相手の夢を叶えてあげることができる
アドバイス6.  自分が豊かになることが、誰かを貧しくしているわけではない
アドバイス7.  お金をボールだと考えると、気楽に回せる

ではまず2つの抵抗から。

 

 

抵抗1.  お金をもらえるほど価値があるとは思えない 

 

好きなこと、というのは自分にとっては簡単なことです。お金を受け取るだけの苦労はしていないし、こんなこと誰でもできるはずだし、たいそうなことじゃないです。 だから「悪いよー」と思ってしまいます。「こちらが楽しい上に、お金までもらうなんて申し訳ない」というわけです。

 

 

抵抗2.  いい人に思われたい  

 

「お金を要求するなんて、気前のよくない人だな」
「金の亡者か!」

と嫌われたらどうしよう、という感情です。嫌われる勇気、を持てればいいのでしょうが、なかなかそうも割り切れませんね。
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複業や小商いをはじめたいという相談者の多くもこの2つの抵抗でつまずいているようです。ちょうど昨日も同じ相談を受けていたので、その女性(仮にミヨちゃんとします)を例に話しますね。

好きで写真を撮っているミヨちゃんは、ポートレート(人物写真)を撮るのがとても上手なのです。今は会社勤めをしながらなので、生活費は心配いりません。なので、無料で友人や「友人の友人」などのプロフィール写真を撮ってあげていました。

「SNSやブログのプロフィール用に、いい写真欲しいんですよね。あと実は、婚活やお見合い用にも使いたい」

こんな風に一般の方にもプロフィール写真は多くのニーズがあり、喜ばれていました。ミヨちゃんにとっても、撮ることは喜びだし、モデルを探す手間が省けるし、いい練習というかスキルが上がるということで、お互い様。「ぜんぜん無料でやりますよー」でここ2年ほどやってきました。

「けれど、そろそろ好きな写真一本で食べていけたらいいな…」

とミヨちゃんは言います。

「深井さん、どうしたら写真で生活費が稼げるようになりますかね」
「そうねぇ、どうしたらいいかねー」

会社を辞めて写真をナリワイにしていくならば、どこかの段階で、お金を受け取っていけるようにしたい。(もちろん、物々交換で暮らせるのであればそれでもいいですが、今回は「対価の象徴」としてお金を考えていきたいので、お金に限定します)

無料から有料にするタイミングは、1つの指標として、「行列ができたら」だとぼくは考えています。

ミヨちゃんの毎回の休日は、ほぼ撮影の予約で埋まるようになってきています。現実的に「頼みたくても頼めない」友人が出てくるようになりました。

「ミヨちゃん、今月内に撮影してもらえたら嬉しいだけど」
「ごめん、月内はもういっぱいなんだ。来月でもいい?」
「お見合い写真で必要になっちゃって、なるべく早いと助かるんだけど…」

これが行列ができた瞬間です。このくらいの時期になると、おそらく 「こんなにしてもらって無料じゃ悪いから、お金を受け取ってください」 と言われたり、お返しに価値あるものを物々交換されたりしてくると思います。ミヨちゃんも高級なお肉もらったりという経験があるようです。

このタイミングになったら、有料メニュー表をつくりブログで貼り出すのがいいのではないでしょうか。お金を渡されるくらいになったら、「受けとってもいい品質になったのだ」と判断して、感謝して受け取ればいいのです。

値付けをしてメニュー表を貼り出し、お金を受け取ればいい。たったそれだけなのですが、ここで冒頭の2つの抵抗が現れるわけです。

「こんな簡単なことでお金をもらうなんて申し訳ない…」
「金の亡者と思われたくない…」

これが原価のかかる品物ならまだ抵抗は減るのです。例えば手づくりアクセサリーとか、アレンジしたお花、手づくりお菓子とかなら。

「材料費もかかるし、それくらいはもらってもいいよな」

と自分に言い聞かせて抵抗をやわらげることができます。

しかし、これが原価なしでも可能なサービスの場合、抵抗は大きい。行列ができてからも無料を続けてしまう人が多い傾向があります。

写真、文章、企画(アイデア出し)、相談(占い、コーチングなど)、人の紹介、講演… こういうサービスは原価が交通費くらいだったりするので、「無料で大丈夫ですよー」と続けてしまう。

ミヨちゃんも、本当はカメラも高い機材だし、カメラはシャッター回数など寿命が決まってるので、例えば1日300枚撮影したら、200日でシャッターを交換しないといけなかったり、このように計算すると、1シャッター切るごとに原価はかかっているのです。

機材の面だけでなく、技術やセンスを身につけるために、多くのインプットや経験をし投資をしてきたわけですし、今後も続けないといけません。勉強代や本代、道具代がないと仕事として持続できない。人間がかかわる以上、原価ゼロなんて仕事は、本当は世の中に存在しないのです。

こんなに大切なお金なのですが、気持ちよく受け取って、また次に回していくのは知識とセンスが必要です。コミュニケーション上手にならないと使いこなせません。

ミヨちゃんからの相談にのりながら、さまざまな思い込みが見えてきました。これを一つ一つほどいていくとずいぶんラクになるはずです。

 

 

アドバイス1.  お金は「価値」を交換するのであって、「苦労」を交換するわけではない

 

まず、大きな思い込みとしてあったのは、これです。

「苦労しないとお金をもらっては悪いのではないか」

という思考の癖。 これ、小さい子どもの頃から植えつけられるんですよね。

「宿題をやったら、お小遣いあげるよ」
「買い物してきてくれたら、お駄賃あげる」

苦労したことへのねぎらいのお金。つまり「我慢料」なのです。

ミヨちゃんの学生時代のアルバイトも「我慢料」でした。さまざまなバイトを経験しましたが、時給が高いバイトはもれなく厳しかったそうです。お金のために我慢しましたが、とても続けることができなかった。「時給が高くて楽な仕事ないかなぁ」と転々としましたが、ついにたどり着けず学生時代が終わりました。

こういうお金にまつわる経験をしてくると、「苦労の度合い=金額」になるので 「痛みを伴わなければお金をもらってはいけないのではないか」と洗脳されていきます。

冷静に考えれば、かなりおかしいことを言っていることに気づきます。お客さんは、価値にお金を払うのであって、店員が我慢したから慰謝料を払うわけではないのです。

「私こんなにボロボロなので、10万円はいただかないと」

こんなこと店員に言われたらお客さんとしては、キョトンとします。

「誰も我慢など頼んでません。私はただ、良いものが欲しいだけなんです!」

働いていても「こんなに大変な思いしても給料が上がらない」とついついぼやいてしまいますが、辛いかどうかは給料に関係ないですよね。

「楽しくやっても、イヤイヤやっても、それは本人の自由だけど、とにかく求められた成果は出してね」

というのが仕事です。社内で笑ってたら、「キミ楽しそうだね」なんて給料下げられたらおかしな話ですよね。

お金をもらうということは、価値の交換であって、苦労の交換ではない。これを心の底から理解しないと、まちがった方にいってしまいます。もし苦労の交換だったら、お金持ちはみんな瀕死でしょう。多くの我慢をして心身に相当なダメージが蓄積しているはず。でも実際はそんなことありません。逆に元気そうですよね。

だから、お金をもらうのに苦労する必要はないのです。金額と苦労は別問題。たとえ、あなたにとっては簡単に写真を撮れたとしても、他の人にはどうやったって難しいのだから。だから頼まれるのです。楽しく笑いながら、しかもあなたにとって簡単なことで、お金をいただいてもいいのです。良いものさえ提供できれば、相手はうれしい。自分にとっては簡単なことでも欲しい人にとっては喉から手が出るほど欲しいということはあるのです。そのギャップを見つけるのが仕事をつくるということ。

あと、よくあるケースが自分の時給で値段を決める人です。これも不健康な方向に行きがちです。

「写真の撮影に60分。移動と自宅での選別作業含めて何時間かかるから、私の時給2000円だとしていくら」

みたいな値付けの仕方。これも「苦労の交換」と似たような発想ではないでしょうか。

「時間」にではなく、「効果」に対して値段を決めていいと思います。 効果とは「お客さんの人生がどのくらい変わったか」ということです。

大きな人生の岐路に立っていて、その占い師に相談したおかげで決断ができた。だとしたら、1時間2万円はぜんぜん安いと思います。なのに、「私の時給は2000円が妥当」と思い込んで2000円で続けている。

写真だって、一生を左右するかもしれない婚活の勝負写真を撮るのだとしたら、何万かかっても「奇跡の一枚」を求める人はいるでしょう。第一印象で未来のパートナーと出会えなかったとしたらもったいない。

「30分で撮り終えられたので、お代は1000円で大丈夫です」

じゃなくて。時給という発想から自由になることです。

 

 

アドバイス2.  お金の価値は、一人一人ちがう

 

撮影1時間で2万円、と聞いて「高い!」という人もいれば「ぜんぜん安い」という人もいます。あなたはどちらですか。大事なのは、世の中全員が自分自身と同じ金銭感覚だと考えない方がいいです。

特に、ミヨちゃんは写真を簡単に撮れるものだから、シャッター押すだけで2万円なんて申し訳ない気持ちになるのはわかります。でも、相手はそれが欲しいのだし、しかも2万円を「よろこんで払いますよ」と言っている。質の高いプロフィール写真のおかげで、そのブロガーさんは信用を得られて新しい仕事につながるかもしれない。ありがたく受けとればいいのです。そしてそのお金で自分の勉強に投資して、より相手の期待を超えるレベルに精進していきましょう。

 

 

アドバイス3.  お金をもらうことが、相手のため、社会のためになる

 

無料であげてしまうと相手のためにならないこともあります。もちろんすべてではありませんが、簡単に手に入れてしまったものは、大切にしよう、ちゃんと有効活用しようという気持ちが起こらないのが人間だったりします。無料セミナーに来るお客さんが行動につながらない傾向にあるのは、あなたも実感あると思います。「プロフィール写真にお金を払ったんだから、ちゃんと活用しなきゃ、多くの人に見てもらわなきゃ」そうやって、相手の人生も開けていくのです。

行動につながるので相手の商売もきっと繁盛し、翌年「また撮影お願いしたい」とリピートが来るでしょう。嬉しいことです。でも、その時にミヨちゃんが疲弊してしまって、写真の質が下がってしまったり、活動を継続できなくなっていたら、お互い悲しいです。

きちんと継続するためのお金をいただくことで、より良い機材を揃えられるとか、スタジオを借りれるとか、品質向上ができます。そして必要としているもっと多くの人に貢献できる体制に投資できるわけです。

健康に長く活動するためには質の良い食事も休息も必要です。好きなことを持続可能にするために。誰かが我慢してたら続きません。

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アドバイス4.  誰もお金を払いたくないわけではない

 

「みんな無料が嬉しいはずだ」この思い込みも多いですね。感謝をカタチで示したい人もいるのです。エネルギーの交換をしたいのです。もらったら返したい。返さないと気持ち悪い。

そもそも交換は楽しいんです。人間の基本欲求の中に、「交換したい」というものがあると思います。もともと貿易が始まったのは、「必要だから」ではなく「楽しいから」だったと言われます。キャッチボールが楽しいのに、投げた球を受け取ってもらえなかったり、投げ返してこなかったら欲求不満になります。

一方的に贈与され続けるのも負担だし、つまらないのです。

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アドバイス5.  お金をもらうからこそ、相手の夢を叶えてあげることができる

 

(そうか、お金を払いたい人もいるんだ!)

ぼくが心から理解したのは、障害者向けのボランティア活動をしていた時です。

「実は、ボランティアでやってもらうのも辛い時があるんだ… 」

そう車椅子の方が告白してくれたことがありました。彼は、もっとこうしてほしい、という気持ちがあっても遠慮してしまうそうです。

「こっちはお世話してもらってる身だから、要望をしては悪い」
「ここまで求めたら失礼かな」

そうやって気持ちを飲み込んでしまう。やっぱり、人生一度きり。やりたいことを叶えたいし、旅行にだって行ってみたい。遠慮して夢を諦めるくらいだったら、プロにお金を払いたい。気がねなく要望を伝えて100%の満足を得たほうがモヤモヤが残らない、という思いがあったのです。

本当は、車椅子でもアメリカのセドナに行きたかった。でもボランティアさんにそれを頼むのは迷惑だろう。そうやってずっと気持ちを押し殺してきたのです。

しかし、そんな彼もついに旅行に行くことができました。そういうニーズに対応できる障害者専門ツアー会社が誕生したのです。ぼくもお会いしたことがありますが、社長は、彼のやりたかった夢を叶えました。症状を把握して医療に詳しい専門スタッフも同行します。もちろん、健常者がひとり旅する金額の何倍も費用はかかります。

「それでも、この体で海外に行けるなんて、夢みたい。社長には感謝してもしきれない!」

彼の夢が叶ったのです。

「ボランティアだからこのくらいでいいだろう… 」
「ボランテイアにこれ以上求めたら迷惑だろう… 」

そんな逃げ道をなくして、お互い全力で同じ目標に挑む。そうやって完全オーダーメイドの旅が実現したのです。 重度の障害者もいるので、健常者よりは断然リスクもあります。でも一生モノの夢については、お金もリスクもいとわない。夢のエベレスト登頂を目指す登山家がシェルパ(その山に詳しい同行サポートメンバー)を雇う感覚でしょうか。リスクがあることを、さすがにボランティアでは頼む方も頼みづらい。高いお金を払うその代わりに全力で質にコミットしてやってほしいのです。

(お金なんて介さなくても、善意のボランティアだけで世の中まわせるんじゃないかな)

そんな理想郷をなんとなく考えていたぼくの価値観が大きく変わった出会いでした。

「有料サービスがあったほうが嬉しい人がいるんだ!」

お金を払ったんだ、全力で楽しもう、と気合が入るし、旅のプランを立てる方も、どうやって相手の夢を叶えるか、車椅子では難しい場所も、どうにかクリアする方法はないか、全力で向き合い、知恵を絞ります。すると、熱意と工夫で方法は見つかるもので、どんどん不可能を可能にし、夢を叶えるノウハウがたまってきて、今ではより多くの障害者に貢献できるようになっています。

お互い「だいたいこんなもんだろう」の生ぬるさでは、セドナ旅行は叶わないままでした。お金を介して全力で向き合う方がお互い幸せになることもあるのです。

プロフィール写真撮影も同じです。ミヨちゃんにボランティアでやってもらってたら相手は「本当はこうしたい」を飲み込んでしまっているかもしれませんよね。
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アドバイス6.  自分が豊かになることが、 誰かを貧しくしているわけではない

 

なぜお金をもらったら嫌われる、と思ってしまうのか。原因の一つは、「自分が相手からお金をいただくと、その分相手のお金は減る」と考えてしまうからではないでしょうか。

もちろん手持ちのお金の増減だけ見れば、その一瞬は確かにそうです。でも、相手は「その金額より大きな価値がある」と感じて、そのサービスを受けるのですから人生の幸せ度は大きくなっています。より豊かになっている。

自分は、お金を頂いて豊かになり、相手はお金以上のサービスを受け豊かになっていく。両方とも豊かになっているという図式ですね。そのくりかえしで、世界はどんどん豊かになりました。100年前から見たら、現代のぼくらは王様か富豪かというくらい、夢のような暮らしをしています。

世界一周なんて億単位のお金が必要だった時代に比べれば、普通の人でも世界一周にも行ける時代になった。100年前の世界一周は今でいうとどのくらいでしょう、宇宙旅行くらいの難易度だったかもしれません。(言い過ぎ?)

国際電話で何十万円という請求がきた時代に比べれば、今は無料で何時間でもビデオ通話ができる。移動だけではない、ものづくりだって、オリジナルTシャツなんて大企業が大きな予算かけないと発注できなかったのに、今や個人でも1枚から手軽につくれる。

一事が万事、こういう具合いに、「どこの富豪だ!」という生活をこの時代に生きるぼくたちはさせてもらえています。この先もっと豊かになります。誰か弱者から一方的に搾取するモデルでさえなければ、世界中の全員が同時に豊かになることは可能なのです。

ミヨちゃんは、プロフィール写真撮影サービスを始めると、同業者からパイを奪ってしまうのではないか。「それなら自分がちょっと我慢すれば、みんな幸せなんだ」ということまで、余計な心配をしています。 志望校に合格したら、もちろん嬉しいんだけど、手放しでは喜べない感覚です。

「自分のせいで一人、夢破れた人が出てしまったな。かわいそうに」

などと考えてしまう。ぼくもこの傾向ありますが、これもやり方次第です。

・パイを分ける仕事
・パイを増やす仕事

世界にはこの2つの仕事があって、後者であれば、誰かの仕事を奪うことにはなりません。ミヨちゃんだったら、すでに写真をプロに撮ってもらっている人を対象にするのではなく、そういう選択肢を考えたこともなかったような初心者の需要を喚起するのです。 パイを増やすのですね。

この例で思いつくのは、新島という離島にSAROという宿がありました。そこのオーナーは島の人ではなく、東京から島にやってきた新規参入者です。

はじめ、島の同業者からは、歓迎されなかったそうです。宿が増えたら、自分のお客さんが減る、という危機感があるのは当然です。でも、「そうではありませんよ、大丈夫ですよ」と話して回って、現実にその心配は無用でした。SAROのオーナーは、「今まで新島という選択肢を考えたこともなかったお客さんたち」を開拓し連れてきたのです。

具体的には、オーナーは新しい客層、休日をゆったり過ごしたい東京のクリエイターたちを呼びこみました。今までの新島はサーフィンを目的としたお客さんがほとんど。ですが、今までと違う層が来ることによって、島に訪れる人自体が増えたのです。宿に泊まれば、レンタカーも借りてくれるし、食堂でご飯も食べるし、ということで島全体にお金を落としていってくれました。新規参入者でも島のみんなから感謝されるし、関わる全員が幸せになるという状況です。

新しい需要を喚起することができるか。これが「パイを増やす仕事」の肝だと思います。「パイを増やす仕事」をすれば、同業者の心配は要りませんね。むしろ市場を大きくしてくれたということで喜ばれます。SAROで一度、新島の魅力を知った人は、「じゃあ次は別の宿に泊まろうか」「友人も連れてこようか」となるのです。

 

アドバイス7.  お金をボールだと考えると、気楽に回せる

 

交換は楽しいはず。それなのになぜ、もっとお金を気軽に動かせないのか。「損するかもしれない」という心配はやはりありますよね。だからもし「絶対に損することはない」と信じられれば、もっと気軽に出入りさせられるようになるはずです。

お金はゲームだと考えてみてはどうでしょう。バスケもサッカーもパスを回すから楽しいのです。手離れの悪い、いちいちボールを持ちすぎるプレイヤーには、そのうち味方からパスが回ってこなくなります。

「あの人に持たせると、ゲームが止まるんだよね」

これじゃ、参加してるみんなが楽しめません。テンポよく、どんどん回すことが自分も味方も活かすことになるのです。

「手放したら、戻ってこないかも」

その心配はいらないです。ボールはコートの中にさえあれば、またすぐに回ってきます。自分の財布から味方の財布にお金が移動しただけで、チームの資産は減ってません。そしてゲームが続いてる限り、パスは回ってくる。だからできれば味方にパスしたい。敵に取られてキープされたら、ゲームが止まって楽しくないですし、コート外に出してしまったら、ゲーム再開までに少し時間がかかります。

パスし合うからゲームは楽しい。楽しさは豊かさです。 お金をいただくのは、ただ「味方からパスをもらった」というだけなので、そんなに重たく考えなくていい。一緒にゲームを楽しんでいるのです。なので、じゃあ次はどの味方にパスしたらいいか。判断してすぐにパスすればいい。そういう気持ちでポンポンと回して、みんなで豊かになっていきましょう。

今回も、ずいぶん長くなってしまいましたね。お金への抵抗が少しはなくなってきたでしょうか、ミヨちゃん。


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好きなことで食べていくためにヒントになりそうな他の深井次郎エッセイもありますので、一緒にどうぞ。

 

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ピッタリだ!

お便り、感想、ご相談お待ちしています。

「好きを活かした自分らしい働き方」
「クリエイティブと身の丈に合った起業」
「表現で社会貢献」

…などのテーマが、深井次郎が得意とする分野です。全員に返信はできないかもしれませんが、エッセイを通してメッセージを贈ることができます。こちらのフォームからお待ちしています。(オーディナリー編集部)

(約8915字)


深井次郎

深井次郎

ORDINARY 発行人 / エッセイスト 1979年生。3年間の会社員生活を経て2005年独立。「自由の探求」がテーマのエッセイ本『ハッピーリセット』(大和書房)など著作は4冊、累計10万部。2009年自由大学創立に教授、ディレクターとして参画。法政大学dクラス創立者。文科省、観光庁の新規事業に携わる。2013年ORDINARY(オーディナリー)スタート。講義「自分の本をつくる方法」定期的に開講しています。