【第117話】甘さを活かすわずかな苦み / 深井次郎エッセイ

追われれば、本気で走る

追われれば、本気で走る

スイーツな自分でも
続くしくみを
編みだしていく

 

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やっぱりランニングは続きません。今年の正月に、「毎日10分でもランニングする」と宣言しましたが、1月中にはやくも断念。4月後半の今は、決意したことすら忘れているありさまです。これは続く仕組みがないと、続きませんね。ひとりで自由に黙々と走るというのは、初心者ランナーには難しい苦行です。

ランニングは続きませんが、バスケなら続いています。やってて楽しいというのが一番ですが、「相手がいる」というのがポイントです。まず、ぼくが行かなかったら、人数が足りなくて試合ができない。チームメイトに迷惑をかけてしまいます。こうやって自分をゆるく縛っていく仕組みは効果的です。ぼくのような元来なまけものの人種にとっては。

ひとりランニングは、ペースが難しい。つい手抜きの楽なペースで流してしまいます。つかれたからこのくらいでいいか、と簡単に自分を褒めてしまったりする。挙げ句の果てには、頑張った自分にご褒美まであげてしまう。コンビニでアイスを買ってしまう。モナカが好きです。ああ、この甘いスイーツな性格をなんとかしたい。(本当はなんとかしたくない)でも、これで34年やってきてますから、なかなかすぐには変われません。最近は、スイーツはスイーツのままで生きていけないかと模索しています。

スイーツは、ひとりだとすぐに自分にご褒美をあげてしまいます。なので、ここで相手が必要なのです。バスケは対戦相手がいますから、相手の動きについていかなくてはなりません。疲れても歯を食いしばって、ディフェンスに戻る。走らないと仲間に迷惑をかけてしまいます。これがいいんですね。手を抜けない環境に追い込むのです。相手の動きを読む楽しみもあって飽きません。ぼくにとっては、今この仕組みがうまく機能しているので、次は格闘技に挑戦してみたいなぁと考えています。ボクシングだったら、相手も本気で来るし、かなり追い込めるのではないか。そうやって自分に合った成長の方法をみつけていくのです。

フリーランスのようなひとり自営業は、ひとりランニングに近いものがあります。スイーツな人は向いてないかもしれません。ちゃんと続く仕組みをつくったほうがいいです。

 

(約876字)

Photo:  piotr


深井次郎

深井次郎

ORDINARY 発行人 / エッセイスト 1979年生。3年間の会社員生活を経て2005年独立。「自由の探求」がテーマのエッセイ本『ハッピーリセット』(大和書房)など著作は4冊、累計10万部。2009年自由大学創立に教授、ディレクターとして参画。法政大学dクラス創立者。文科省、観光庁の新規事業に携わる。2013年ORDINARY(オーディナリー)スタート。講義「自分の本をつくる方法」定期的に開講しています。