第3話 ダメでもともと、初めての協賛。1社目モンベルから翌日さっそく返信がきたが

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心臓をバクバク言わせ、送信をクリックした直後は、あー! 本当に送ってしまった!

連載「旅って面白いの?」とは  【隔週水曜更新】
世界一周中の小林圭子さんの旅を通じて生き方を考える、現在進行形の体験エッセイ。大企業「楽天」を辞め、憧れの世界一周に飛び出した。しかし、待っていたのは「あれ? 意外に楽しくない…」期待はずれな現実。アラサー新米バックパッカーの2年間ひとり世界一周。がんばれ、小林けいちゃん! はたして彼女は世界の人々との出会いを通して、旅や人生の楽しみ方に気づいていくことができるのか。

 

第3話  ダメでもともと、初めての協賛

TEXT & PHOTO 小林圭子

 

1社目のモンベルからは
書類をメールで送った翌日
さっそく返信がきた
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「早っ!」と思いつつもメールを開くと、なんと「今回の募集としましては6月以降の出発が条件となり、小林様は4月ご出発ということですので、選考結果が出るタイミングに間に合いません」とのこと。「な、な、な、なんですと!? 」とビックリしたのは実は少しだけで、そのことは応募時点からわかっており、「もしかしたらギリギリ結果が出るのに間に合うかも…」という淡い期待と、「もし選考がうまく進んでいったら、あとは時期の問題だけだから、なんとか説得を試みよう!」というまたまた楽観的思考の上での行動だったのだ。

潮干狩り。タイのコースコーンでボランティアに参加。ここでは自給自足の暮らしが当たり前。島民みんなが支え合い、農業・漁業で島の生活が成り立っていた。現地の子どもたちと海に行き、その日の夜に食べる貝を一生懸命穫った

潮干狩り。タイのコースコーンでボランティアに参加。ここでは自給自足の暮らしが当たり前。島民みんなが支え合い、農業・漁業で島の生活が成り立っていた。現地の子どもたちと海に行き、その日の夜に食べる貝を一生懸命穫った

しかしそんな淡い期待空しく、どうやら間に合わないらしい。そしてメールには続きがあり、「資金援助と商品の無償提供は難しいですが、商品の割引購入でよろしければ、ご協力させていただきます」とのことだった。担当者の方からこんなに早く返事がもらえて、さらに商品を割引購入できるなんて、それだけでも大変ありがたいお話であることはわかっていた。

けれど、できるだけ出発前の出費を抑えたい身としては、「もしかしたらアウトレットに行った方がもっと安く買えるんじゃないかな」と失礼ながら思ってしまったのと、初っ端のモンベルへの応募がなかなか感触良く進んだこともあり、「他の企業にコンタクトすれば商品の無償提供が勝ち取れるんじゃないか」なんて考え、モンベルとは引き続きやり取りを続けると同時に、他の企業にも片っ端からコンタクトしていく作戦に切り替えることにした。

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プレゼン資料はどのように作ったか
モンベルの応募書類を雛型に
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そのため、まずはモンベルの応募書類をベースに、自分でパワーポイントで資料をイチから作成することに。私は事務系の仕事だったにも関わらず、ワードやエクセル、パワーポイントで資料を作成するのが得意ではない。もちろん圧倒的に経験値が足りないということもあると思うけど、それ以上にアタマの構造がどうも右脳よりなことが大きな原因なのではないかと個人的には思っている。(そう言うと世の中の右脳人間の皆さんから反感を買ってしまうかもしれないけど。)

自分の考え方の特徴として、感覚的だったり感情的だったりすることが多く、それを言語化するとか、論理的に説明するとかが、どうにもうまくない。このエッセイについても、「論理的に書けてないけど大丈夫かなぁ…。ちゃんと伝わってるかなぁ…」と思いながらいつも書いている。そんなこんなでパワポの資料作成も思うとおりに仕上げるのになかなか手間取ったのだけれど、前出の頼りになる元上司に仕事よりもこっち優先でまたまたアドバイスを請い、なんとかカタチにしたのだった。(いや…、仕事もちゃんとしてましたよ…、たぶん…)

朝7時頃出発してイルカを観に行った。なかなかイルカが現れず、待っている間に黒人の少女と仲良くなり、イルカそっちのけで、少女とカメラで遊んでいた

朝7時頃出発してイルカを観に行った。なかなかイルカが現れず、待っている間に黒人の少女と仲良くなり、イルカそっちのけで、少女とカメラで遊んでいた

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企業アプローチの心がまえは
「ダメでもともと」

 

資料を作成した後は、いよいよコンタクトする企業を探す作業。大企業になればなるほど社内稟議を通すのに時間がかかったり、現場レベルでは決定権が無いため、だいぶ上の役職まで話をしていく必要がある、なんてことは容易に想像ができた。あまり出発まで時間的余裕も無かったし、ここは資金提供は思い切って諦め、商品の無償提供に絞って話を進めることにした。

「企業としては、よくわからない一個人に対してお金を出すのは相当難しいだろうけど、もしかしたら在庫として余ってる商品や型落ちしてもう売れなさそうな商品であれば、タダで譲ってくれるかもしれない。それを私が旅ブログの中で紹介したりFacebookに投稿すれば、先方にとって少しは宣伝になるかもしれないし…」などと、全て自分に都合良く考えた。

こんなふうに書いていると、よほどうまくいく自信があったのかと思われるかもしれないけど、そういうわけでもない。逆に「ハッキリ言ってダメでもともと。うまくいけばラッキー」くらいに割り切って考えていた。スポーツ選手でもあるまいし、企業が協賛してくれるなんて可能性としては限りなくゼロに近いかもしれない。

協賛について相談した友人も、「頑張れ」って言いながらも心の中では無理だと思っていたかもしれない。親ですら電話口で話したときには、「よくそんなことができるなぁ」と呆れて苦笑いされた。みんなのそんな反応は百も承知だったけど、何だってやってみることに価値があるわけで、仮に協賛はしてくれなくても、もしかしたら私の企画について意見をくれる担当者がいるかもしれない。企業としては難しくても個人的に応援してくれる人がいるかもしれない。いろんな可能性が考えられる以上、どうしてもやるだけやってみたかった。

 

ダンス練習風景。コースコーンでお世話になった島民の皆さんに、日本の文化を紹介。その中でAKB48の「恋するフォーチュンクッキー」を披露。連日練習した。目が虚ろに見えるけど、そうではありません! 若者に混じって32歳、一生懸命振り付けを覚えました(笑)

ダンス練習風景。コースコーンでお世話になった島民の皆さんに、日本の文化を紹介。その中でAKB48の「恋するフォーチュンクッキー」を披露。連日練習した。目が虚ろに見えるけど、そうではありません! 若者に混じって32歳、一生懸命振り付けを覚えました(笑)

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その数なんと62社!

アプローチしたい企業をリストアップ

 

そんなわけで、金額の大きさなどは特に考えず、自分が今後揃えていく必要のあるものを思いつくまま全部挙げていった。カメラ、バックパック、寝袋、メガネ、コンタクトレンズ、靴、アウトドア系洋服、などなど。そこから『カメラメーカー 一覧』とか、『アウトドアメーカー 一覧』みたいな感じで、インターネットで検索をかけ、企業をどんどんピックアップしていった。その数なんと62社!

ひとつひとつインターネットで会社のホームページなどをチェックして最終的に35社に対してコンタクトを取ることにした。コンタクトを取らなかった27社に対しては、外資系企業でホームページが全て英語のためよくわからなかったり、日本の会社でも地方企業などは訪問が難しいという理由で外した。35社の内訳としては、カメラメーカー8社、アウトドアメーカー15社、メガネメーカー8社、コンタクトレンズメーカー4社。(めんどくさがりで普段は適当すぎる私が、こんなに細かくデータを残しているのは、正直言って奇跡に近いです……笑)
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企業へコンタクトする方法は
心臓バクバク言わせながらメールを送る
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特にどこもコネがある訳ではなかったので、企業のホームページに記載されている連絡先を利用した。その中で、「初めに対応してくれる相手がどういう人か」は話をスムーズに進めていくためには結構大事だと思った。なので、よくわからないながらも、自分の感覚として、第一候補は広報部。第二候補はCSR(企業の社会的責任を担う部署)。どちらも無ければ仕方ないのでお客様窓口、という感じでコンタクト先を選んだ。

また、連絡するうえで、メールアドレスが記載されているのが一番ありがたく、直接メールで依頼内容の詳細を書いて作成した企画書を添付して送った。でも直接メールを送ったのは数としては少なく、たった7社。残り28社は先方の問い合わせフォーマットみたいなものが用意されてあり、そこに依頼内容を打ち込んでまずは送信するパターンだった。

その後すぐにメールで「依頼を受け取りました。後日担当者から連絡いたしますので、しばらくお待ちください」みたいな自動返信メールが来たところが5社あったので、さらにそのメールに返信する形で、自分の企画書を添付して、「こちらの資料も担当者の方に転送してください」と送ってみた。

そんな一見地味で無意味に思えるやり取りを繰り返していたのだが、こんな大胆な行動をしつつも実は小心者なので、毎回メールを送るときには心臓をバクバク言わせ、送信をクリックした直後は「あー! 本当に送ってしまった! どうしよう、どうしよう」と一人で騒いでいた。とは言え、地道な作業が苦手な私にしては、この過程もわりと楽しみながら進められていた気がする。

 

バリの宿の少年。子どもが好きなので、宿を探すときに子どもがいるかどうかを基準に選んでいた時期があった。この少年、とてもチャーミング! カメラを向けるといろんなポーズをとってくれて、次から次に写真撮影をせがまれた(笑)

バリの宿の少年。子どもが好きなので、宿を探すときに子どもがいるかどうかを基準に選んでいた時期があった。この少年、とてもチャーミング! カメラを向けるといろんなポーズをとってくれて、次から次に写真撮影をせがまれた(笑)

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(次回もお楽しみに。隔週水曜 更新予定です)
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連載バックナンバー

第1話 世界一周、ふたを開けたらため息ばかり(2014.10.8)
第2話 旅は準備が一番楽しい。出発までの10ヶ月なにをしたか(2014.10.22)

小林圭子さんが世界一周に出るまでの話

『一身上の都合』 小林圭子さんの場合「次なるステージへ挑戦するため(2014.5.19)

 


小林圭子

小林圭子

1982年、大阪生まれ。米国公認会計士の資格取得後、ベンチャー企業および楽天にて約5年半、会計業務に従事。同時に会計士の専門学校では学習カウンセラーを、自由大学でキュレーターをするなど、パラレルキャリア志向が強い。2014年3月末で楽天を退社し、同4月より約2年間かけての世界一周の旅に挑戦。世界中の多様な働き方やライフスタイルに、刺激を受ける日々を送っている。 「一身上の都合」小林圭子さんの場合 http://ordinary.co.jp/series/4491/ https://instagram.com/k_co_ba_326/