寂しさは募ります。仕事が思うように掴めないと、時間がありすぎて脳内では延々と続くひとり会議が。社会的存在価値は自分の仕事における需要と比例しているのではないかと、無性に不安に襲われたり。放っておいてほしいけれど、人の気配は感じたい。わがままな発想
さみしがり屋フリーランスが孤独と向き合う方法
石川県の友人とコラボイベントを主宰してみた話
小山嶺子 ( フードクリエイター / cinemanma! 主宰 / お店を持たないフリーランスの料理人 ) .
自由に生きるために
ひとりでできる仕事も、あえて誰かとやってみよう
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「もっと自分のやりたいことのために時間を使いたい!」
それまで片手間で夢を追ってきた少し前の私。そんなモヤモヤした感情に耐えられなくなって勢いよく仕事を辞めて、フリーランスになってみました。名乗るのは簡単です。仕事のオファーがどの程度だろうと求められてお金を頂く以上、その道のプロと言えます。
まずは名乗ることがその道の始まりであるとも言えます。ですがこれまでの雇われ生活と比べると全てが自分主体。24時間365日をどんな風に過ごすも自分次第です。すると気付いたのです。
「あれ、なんだかひとりの時間が随分と増えている気がする…」
そう、当たり前のことですが、お店を持たないフリーランスの料理人はひとりでモノづくりに励んだり、作戦会議をする時間が多いことを実感したのです。
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末っ子フリーランス、孤独感でひとり言が増える増える
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中学生から数年前までの「お店を持つこと」が夢だった私。その理由も “さみしがり屋なひとり好き” ならではの理由がありました。
「自分のテリトリーにたくさんの人がいて、楽しそうにしてくれているのが心地良い。私はそれをカウンター越しに見て満足していたい」
そんな自分の心理に気づくと、余計に寂しさは募ります。ネガティブな例を挙げれば、仕事が思うように掴めないと、時間がありすぎて脳内では延々と続くひとり会議が繰り広げられます。そんな時、社会的存在価値は自分の仕事における需要と比例しているのではないかと、なんだか無性に不安に襲われたり。
「次の作戦は…あの時はああだった…こうしたらもっと良くなる…どうすればもっと…etc.」
そんなネガティブ思考迷路に陥った時には、自宅でエッセイブログを書こうとすると、もっとモヤモヤした内容になってしまいます。だからできるだけ、コワーキングスペースやwifi完備のカフェに出向いて、人の流れや気配を感じながら作業がしたくなります。放っておいてほしいけれど、人の気配は感じたい。これまた、わがままな発想です。
ポジティブな時にも、さみしがり屋が発動することはあります。嬉しいことにイベントの企画やレシピ掲載のお仕事が同時期に入ってきた時、頭の中は大忙し。あれもこれも考えたいけれど、器用じゃないからアイディアの出し入れがうまくできない、なんてこともよくあります。
そんな時、思うのは
「ああ、ひとり会議ではなくて、誰かと切磋琢磨したい」
フリーになってみると、ひとりでもできることを誰かとやりたくなりました。
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ひとりでもできる仕事を、あえて誰かとやってみた
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そんな私に声をかけてくれたのが、石川県鶴来という静かな町でカフェ開業をして同じくひとりで店を切り盛りしている親友。年齢は違えど、専門学校で共に食の世界を学んだ大事な仲間です。彼女とはいつかお互いが独立したらコラボイベントをやろうと昔から話していました。
そんな彼女に最近の寂しさを話してみると、楽しい営業ではあるけれど一人営業の苦労はやはり感じていると、意気投合。そうして、「では二人で何かやってみよう」と叶ったのが「石川県に 出張 cinemanma!(シネマンマ)」という企画でした。
静岡と石川ですから直接企画の打ち合わせはできませんが、電話やラインでのやり取りだけでも、フラットな立場で誰かと一緒に企画を考え、意見をぶつけ合えるというのは、爽快なものでした。依頼を受けて自分だけで進行していくのではなく、同じ立場だからこその、意見の食い違いやセンスの譲り合いが、楽しく感じられました。
もちろんゴールはいつもと変わらず、「ゲストに喜んでもらいたい」ただそれだけです。約一ヶ月間のそうした遠距離会議を経て、イベント前日にいよいよ実際に現地、石川県鶴来に行きました。
このイベントのタイトルは「映画『Little Forest』から連想する料理 〜石川県Cafeハッカ編〜」というもの。
実はこのイベントの「静岡編」は約1年前まだフリーランスなどと一丁前に名乗る前に地元で開催した企画で、今回はその続編です。前回は、その時の自分にできる最大限のことをしようと一人で企画考案、初めてのZINE製作、調理やPR動画まで作成しました。この経験から比べても、誰かとチームを組んで挑戦することの違いを実感しました。
手分けして作業が進められることや集客方法が増えるという業務的なこと以外にも、気持ちの上でやはり心強い。相手の頑張っている姿が見えるというだけでも、こちらの意欲に繋がります。そして、相手の周りの人と新たな繋がりが生まれることもあります。「フィーリングが合う」と感じる人の周りには、同じく感覚の合う仲間が集まっていることが多いです。今回であれば、来ていただいたゲストの方や食材を届けてくれた業者さんたちとも意気投合。とても温かく迎え入れていただきました。
当日のメニューリストやイベント時のZINEはこちらをご覧ください。
(C) 「リトル・フォレスト」製作委員会
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コラボ仲間を見つけるために、まず自分を知ってもらう
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こんな風に今までの人間関係を振り返った時、実は周りには仲間や応援してくれる人たちがたくさんいるものです。ですが、動き始めたばかりであれば特に、「周りにそんな仲間はいない」と思い込んでいる人は多いと思います。実際に私もそう思っていました。
だから、できるだけ質の良い発信をします。それはガツガツ営業目的で発信をするということではなくて、例えばSNSや自分のホームページ、ブログやこうしたエッセイで、自分が今どんなことをしているのか、どんなものを作っているのかをできるだけ赤裸々に発信をします。
SNSでのリアクションが薄いと、さみしがり屋タイプは特に自信をなくして発信を止めてしまう人も多いですが、「いいね」の数と仲間の数は比例しません。実はずっと気になってくれていて、ふとした時に思い出して連絡をしてきてくれる場合もあれば、実は投稿を楽しみにしてくれていることもあります。その発信は、綺麗に繕ったものではなく、できるだけ素直に、いつもの自分らしい方が無理なく続けられます。もう一人の自分に伝えるような感覚でやっていくと、自分と似た感覚の人に届きます。
今現在、数字として目に見えていることばかりが全てではない、ということです。フィーリングの合う人とはオンライン上でも繋がることができる時代です。今はまだ見えていなくても、個人の主張を受け取ってくれている誰かが必ずいて、その誰かが未来の仲間やファンになってくれます。まずは自分を知ってもらう、それは仲間づくりの大事な一歩です。
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さみしがり屋は、チームをつくりやすいのが強み
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フリーランスという働き方の人にも色んなタイプがいますが、まず自分はどんなタイプなのかを知る必要があります。それは動き出す前にはなかなか判断できませんし、始めてすぐに判断できるとも限りません。しばらくの期間やってみて、何か違和感を感じたらその時に理由を紐解いていけばいい。
私の場合はすぐに「さみしがり屋タイプである」と認識しましたが、「一人のほうがはかどって快適だ」という自立した人ももちろんいます。ついついその頼もしさを羨ましく思ってしまいますが、「さみしがり屋ではフリーランスに向いていない」ということでは決してありません。それどころか仲間を作りやすいので、ひょっとしたら長く続けていけるのかもしれません。
価値観はきっとみんな違うし、モットーみたいなものも各々持っているはずです。ですが、タイミングやフィーリングが合うと、不思議とひとりの時よりも良いものが生まれます。その成功体験が、ひとりで過ごす時の自信や次への楽しみに繋げるのではないかな。
「ひとりでもできることを、ひとりでやらない」というのはキーポイントです。フリーランスならなおさら、住んでいるエリアだけでなくいろんな地域にそんな仲間を作っていけます。そしたらもっと、自由な働き方が見えるかもしれませんね。そんな私も、まだまだフリーランス1年生。右も左も分からないながら、けっこう楽しく暮らせています。
さて、皆さんは何タイプですか?
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フリーランスならではの孤独に向き合う方法
1. 自分はさみしがり屋だと気付いたら、ひとりでもできることに、敢えて仲間を募る
2. 仲間を見つけるために、まず自分を知ってもらう
3. 自分が何タイプかを知ると、自分に合った作戦が見つけられる
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小山嶺子さんの過去のエッセイ
TOOLS 106 お店を持たずにレストランをひらく方法
TOOLS 107 営業経験なしフリーランス1年生が自分の仕事をつくった方法