【第240話】ズボラなぼくの健康遍歴 – つよい意志ではなく – / 深井次郎エッセイ

ノルウェーにあるという世界最大のサウナ。120人も入れて、中には音楽が流れててバーがある。行ってみたい。

ノルウェーにある世界最大のサウナ。120人も入れて、中には音楽が流れててバーがある。行ってみたい

 

 

楽しく続けられる
心身のメンテナンス法を紹介しよう

 

だれしも人生のどこかのタイミングで、己の健康を意識する。ぼくが意識し始めたのは社会人になりたての23歳のころ。朝から晩まで仕事で、一日が終わるとへたりこみ動けなくなるということが続き、「仕事は体力がないと始まらん… 」と悟った時でした。一日にセミナーで何本もしゃべり通し、エネルギーも消耗するし、立ちっぱなしで、腰が痛くなっていました。なんとか強くしなきゃ、ということでスポーツジムに通い始めたのです。

遍歴1: スポーツクラブ(きれい系)

週2、3回ペースで通ってはいましたが、仕事で疲れすぎて、その上で運動する気力がおきず。ランニングマシンをたらたら走り、お風呂とサウナで疲れを癒すというパターンでした。リラックスするための使い方でした。体力がついたか、健康になったか、というと効果は出せませんでした。(自分のせいです)【終了】

遍歴2: 断食デトックス

おなかのまわりに脂肪がのってきたのと、なんだか体が重く、精神的にも気力がわかないので、断食に興味を持ちました。当時、ブッダの研究をしていたこともあります。水と一日一杯の野菜ジュースのみで40日間の断食実験をしました。結果、体重が13キロ落ちましたが、すぐにリバウンドしました。悟りもひらけず、健康になったとも思えませんでした。ときどき半日くらいのプチ断食は、いいデトックスになるかとは思います。 【終了】

遍歴3: マクロビ食

デトックスをするくらいなら、そもそも体に悪い物を極力入れないようにしよう、ということで始めたのが、オーガニック食品をたべるマクロビ。野菜中心に、毎日食べるパンも、焼きたての全粒粉のパン(これが高いのよね)をわざわざ買ってきて食べてました。菓子パンなどは、ショートニングなど良くない物が入っているのでNGとしていました。化学調味料や動物性の物を食べないと、イライラがなくなって、心が穏やかになった気がします。「ま、いっかー」とすべてを受け流せるように。ついでに闘争心みたいなものまでなくなったので、仕事上、これは良くないかも、と心配になりました。20代でガツガツしなくていつするんだ、と。半年くらいは続きましたが、忙しくなってしまいなかなかマクロビ食事にこだわる余裕もなくなり、しだいに普通な感じに。 【終了】

遍歴4: バランスチェア

執筆など、一日中座りっぱなし仕事環境で、腰が弱くなりました。危機感を感じ、姿勢を矯正しようとバランスチェアを購入。6万円くらいして高かったのですが、つかってみると机の高さとなんだか合わせづらく、即、押し入れに眠ることに。運動して腰に筋肉つければ、こんな椅子必要ないのよ。ふたたび運動しようと思い直す。 【終了】

遍歴5: バスケ

運動も、今までのようにマイペースでたらたら走ってるだけでは効果がありませんでした。それを見直して、負荷を上げようと。限界に達するくらいの負荷をかけないといかんなーと。しかし、ひとりで己にムチ打つのは、ズボラなぼくにはできません。 なので、気合いや根性の「がまん路線」ではなく、「エンジョイ路線」。楽しいことをやってたら自然と健康になっちゃった、というアプローチにしようと。 バスケは部活でやってたし、一番好きなスポーツだし、楽しく続けられました。1人で走るのとは違い、バスケは相手がいるものなので、相手についていくために全力を出さざるをえません。そこがいいんですね。追い込めるので、いい運動になります。体力はつきました。ただし、週1くらいペースでは、痩せるまではいかず、体重はゆるやかに増量していました。バスケ後のラーメンがまたうまいんだ! 【継続中 9年】

遍歴6: 糖質制限食 

定期的に運動(バスケ)をしているのに、いっこうに体重が減らず。むしろ年々増加し、もうこれ以上は太れない、という数値まで行ってしまいました。バスケで動くにも、体重が重いとひざや腰を壊してしまいます。 まじめに痩せようと決意し、体の仕組みについて勉強しなおし、糖質制限に挑戦しました。甘いもの大好きで、毎日アイスやクッキーを食べまくっているぼくにとってできるか不安でしたが、これが相性があったのです。思ったより簡単に努力も苦痛もなく、適性体重まですっと落ちました。運動してたのに太っていった原因は、炭水化物の食べ過ぎ、ということがわかりました。 それまで、脳のためにたくさんの糖分が必要だと思い込んでいました。作家の荒俣宏さんも原稿を書く時は「アイスをかじりながら書いている」とおっしゃっていて、ぼくもそうしていました。特にうまく書けなくてイライラしてるとき、甘いものがガソリンになっていました。でも、本当はぼくに糖は必要ありませんでした。糖による急激な血糖値の上下がなくなったおかげで、前よりも集中力が持続するようになりました。長年の悩みが一気に解決した出来事でした。もっと早く知っときゃよかった! 【継続中 9ヶ月】 

遍歴7: 筋力トレーニング(フリーウェイト)

スポーツジムを変えました。以前は、マダムたちがエアロビしてたり、夜景の見えるプールとジャクジーがあって、という民間の優雅なスポーツクラブを選んでいました。リラックス優先で。 いまは、バスケをやっている公営の体育館に併設されているトレーニングジムにしています。 設備は古いし、汗クサい感じだけど、そこがハングリー精神を沸き立たせて鍛えるにはいい感じです。いろんな層の人たちがいて、タトゥーばりばりのやくざから、ガテン系、消防団員、劇団員、スポーツ選手まで、そういうワイルドな筋肉マンたちに混じって、競争しながらやるのは刺激になります。今まで追い込んでこなかった重さへの挑戦をするようになりました。フリーウェイトゾーンで、ベンチプレス、デッドリフト、バーベルスクワットを中心に前回よりも1キロでも重い物を、とゲーム感覚で取り組んでいます。すると、確実に記録が伸びていって、楽しくなりました。筋力が上がると、バスケのパフォーマンスも上がりました。スピードとシュートの精度が上がります。体幹が安定するので、ブレが減り、シュートの確率が入るのです。

30歳も過ぎると、肉体的に衰えるものはあっても、成長するものは減ってきます。また、仕事でも、書く力は、上達しているのかしていないのか、時にわからなくなる仕事です。後退しているかもしれない不安とも戦います。その点、筋トレは、30歳を超えても、やったらやったぶんだけ確実に重量が上げられるように成長する。

ジムの長老(ひげ、筋肉、70歳)がよく言っています。

「女は裏切る。部下だって息子だって裏切るよ。でもな、筋トレだけは裏切らないからな… 」

長老の過去を深堀しようとする人はいませんが、古いジムには、さまざまな人間模様が交錯しています。そういうところも面白い。 昨日できなかったことが今日できるようになる。成長すること。これ以上に楽しいことってないですよね。 【継続中 9ヶ月】

 

万人に当てはまる正解はない
自分に合うやりかたを見つけよう

 

次に取り入れたいものも、いくつかあります。

1.  ベアフット・ランニング(裸足ランニング)
2.  インターバル・トレーニング(ダッシュを混ぜるラン)
3.  スタンディング・デスク(立ちながら仕事できる机)

など、焦らず試してみて、自分に合うものを取り入れていこうと思います。

こういう健康法の話は、何が正しいかはわかりません。水を多く飲んだほうが良いという説もあれば、少ないほうが良い説もある。結局、自分で試して自分に合う物を探すしかありません。

神さまをみても、東洋と西洋では体つきがちがいます。東洋の仏像や七福神などは、ふくよかですよね。ぷよぷよしてて、筋肉を感じさせません。逆に西洋は、ダビデ像みたいに筋骨粒々なイメージがあります。よくみるキリストの絵も腹筋が割れています。神さまはおそらく理想の健康体なのではないか、ということを考えると、東洋人はふくよかなほうが健康なのかもしれませんし、よくわかりません。

ぼくらみたいに独立して働いている、守ってくれるものがない人たちは、野生動物のごとく、自分で自分を健康に保たないとね。体を動かすこと、でも無理はしないこと、がんばりすぎないこと。 ぼくに合うメンテナンス方法は、意志が弱くても持続できるものでした。

・やること自体が楽しいこと
・効果が(できればすぐに)実感できること

この2つがあれば、がんばらずに続けることができます。続けなきゃ、ではなく、続けたい、と自然に思える物しか続きませんね。

 

 

おまけの番外編
他に続いている健康法を紹介します

遍歴8: 堅い床で寝る

もともとは当時経営していた会社が上手くいっていなかったとき事務所兼シェアハウスで、「臥薪嘗胆、この悔しさを忘れるな」と言って床にヨガマットひいて寝てた(冬は寝袋)のがきっかけです。最初は違和感ありますが、続けてみると堅いところで寝るほうがぼくには合うようです。400万年の人類の長い歴史を遡れば、柔らかいベッドに寝るようになったのはほんの一瞬ですし、体をあまり過保護にするのはよくないだろうなぁと。ふかふかすぎる椅子とかも。  【継続中 9年】

遍歴9: 自転車

移動手段を自転車に。ロードバイクなどスポーツ自転車の世界に興味を持ち、ママチャリじゃない自転車なら乗ってて楽しいのか! と思うように。休日、遠くへ行こうかな、トレーニングも兼ねた趣味になるかなと思っていたが、ひとりだとなかなか行かないよね。移動手段のみで使ってます。 【いちおう継続中 7年】

遍歴10: サウナと水風呂

汗をかくと心身ともにデトックスになって気持ちがいいです。汗が目に見えるので、「出たなー」という達成感があるのもいい。水風呂の刺激を入れることで自律神経が整い、うつうつとした気分のときに効きます。  【継続中 12年】

遍歴11: にんにく

自律神経を整えます。眠くなったらバシッと眠れるし、バシッと起きれる。オンオフのメリハリがつけられるようになるすばらしい食材。ただ、相当くさいので、人に会う予定のない休日に限られますが。 【継続中 12年】

遍歴12: にんじんジュース

野菜が足りてないなーと思っていたときに、「にんじんジュースを飲むとがんになりにくい」という本を読み試しにやってみることに。生のにんじん2、3本をジューサーで絞ります。まずいだろうと思ったら、これが甘くて美味しくてびっくり。効果としては、精神が穏やかになったのと、便通が良いのと、乾燥しにくくなりました。冬になると乾燥でカサカサと肌がかゆくなったり、手にあかぎれやひびが出たりしていたのですがそれがなくなりました。飲まなくなると、また乾燥が出てくるので、効果があるのだと思います。飲み過ぎると、手がうっすらにんじん色になってきます。 【継続中 6年】

 

(約3800字)
PHOTO: Trond Kristiansen

 

 


深井次郎

深井次郎

ORDINARY 発行人 / エッセイスト 1979年生。3年間の会社員生活を経て2005年独立。「自由の探求」がテーマのエッセイ本『ハッピーリセット』(大和書房)など著作は4冊、累計10万部。2009年自由大学創立に教授、ディレクターとして参画。法政大学dクラス創立者。文科省、観光庁の新規事業に携わる。2013年ORDINARY(オーディナリー)スタート。講義「自分の本をつくる方法」定期的に開講しています。