TOOLS 99 自分だけの味わいを楽しむ「スケッチジャーナル」術 / ハヤテノコウジ(スケッチトラベラー)

スケッチジャーナル ハヤテノコウジあなたが最後にスケッチしたのはいつでしょう。小学校のころまでは、誰もが図工の時間に絵を描いていました。自宅でラクガキをして遊んだ記憶もあるでしょう。いま女性を中心に、あるスケッチ活動が盛り上がっています。そのキャンバスは手帳やノートです
自分だけの味わいを楽しむ「スケッチジャーナル」術
ハヤテノコウジ( スケッチトラベラー/イラストレーター )

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自由に生きるために
自分の内面を描いて情熱の源を見つけよう


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突然ですが、質問です。

あなたが最後にスケッチしたのはいつでしょうか?

最近は描いていますか?

小学校のころまでは、誰もが図工の時間に絵を描いていました。自宅でラクガキをして遊んだ記憶もあるでしょう。

いま女性を中心に、あるスケッチ活動が盛り上がっています。そのキャンバスは、スケッチブックではなく手帳やノートです。

「絵日記」
「手帳スケッチ」
「手帳イラスト」

など、さまざまな呼び方をされています。私も夢中になっているひとりで、自分の作品を

「スケッチジャーナル」

と名付け、創作のコツを教えるワークショップを開くまでになっています。

今回は、そのワークショップでよくある質問に答える形で、スケッチジャーナルのはじめ方をご紹介しますね。

※以降このエッセイでは、絵日記や手帳スケッチなどを「スケッチジャーナル」と総称して紹介していきます。
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Q:スケッチジャーナルってどんなもの?
A:最近人気が高まっている、大人の絵日記です。

 

大人が手帳やノートに絵日記を描くという趣味が広がっています。私はこれをスケッチジャーナルと呼んでいます。スケッチジャーナルのキャンバスとして特に人気なのが、「ほぼ日手帳」です。コピーライターの糸井重里さんが率いる「株式会社ほぼ日」が発売しています。1日1ページ、週刊タイプなどのフォーマットがあります。

女性に人気の画像共有SNS、Instagramでハッシュタグ「#ほぼ日手帳」と検索してみると、82万7千件以上の画像がヒットします。ハッシュタグとは投稿に付ける識別のためのキーワードのようなものです。

検索結果に出てくるのは、楽しさが伝わってくる、日常の出来事をスケッチした手帳やノート。投稿ユーザーごとの多彩な使い方、スケッチの描き方を見ていると、自分でもやってみたくなるのではないでしょうか?

 

Q:みんなは何を描いているの?
A:日常の出来事や趣味、気づきなどを描いています。

 

スケッチジャーナルが流行してきた2014年に、私は毎日の出来事をスケッチして、手帳に描くチャレンジをしました。1日1スケッチ、それをSNSで公開し、4ヶ月ごとにZINEにまとめて販売しました。

スケッチジャーナル ハヤテノコウジ

夏の到来の喜びを描いた作品(ハヤテノコウジ作)

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描きはじめて1年経ってプロジェクトを終えた後、365日それぞれのテーマを振り返りますと、以下のような割合になりました。

① 食べ物ネタ:49%
② 文房具ネタ:23%
③ 散策・旅行ネタ:24%
④ 気づきネタ:16%

ほぼ半分の①は、毎日発生するのでネタになりやすく、②と③は趣味なので書きやすいということでしょう。④は、実はどうしてもネタがないときにページを埋める手段として使いました。

自分の日常を描く場合は、他の方でもこのようなバランスになるのではないかと思います。
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Q:なにが楽しくて描いているの?
A:気分転換になったり、SNSでの反応が嬉しかったりするからです。

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私が365日の絵日記で気づいた、スケッチジャーナルのいい点はこのような感じです。

・いい気分を繰り返しスケッチすることが、またいい気分を生む
・スケッチが振り返りと改善意欲につながり、新しい行動を促した
・理屈より気分、意識よりひらめきを優先するようになった
・面倒だなと思うことが、ネタ化した段階でポジティブになった
・ネタになると思えば、行動することが増えた

毎日続けることはとても大変です。それでもスケッチジャーナルを毎日描いている愛好家は、たくさんいます。すごいことです。彼らは生活の一部になっているのでしょう。

なぜこのような趣味が広がり、続けられているのでしょうか?

まず考えられるのは、「気分転換したい」という心情があるのではないでしょうか。現代社会はあらゆる面でスピードが速すぎる。デジタル技術についていけない。ギスギスした社会になっている気がする。そのような中、手帳やノートに、筆記具を持って今日の出来事を書いてる。スケッチを添えて見る。心の中を描くと落ち着いてくるのかもしれません。

またSNS時代の利点として同じ趣味の人、好みが合う人をビジュアルで見つけることができます。上手な絵でなくても、誰かが気に入ってくれる可能性があります。SNSに投稿されていた作品を、オフ会で見せていただく。そうしてささやかな反応を感じることでモチベーションや刺激を受けるので、また創作を続けていきます。

このような理由はほんの一部で、皆さん自由にやっていると思います。

 


Q:日記って続いたことがないのですが…
A:自分のメディアだと思って編集を楽しみましょう。

 

スケッチジャーナルが暮らしの一部になっている人たちは、スケッチを描くことを帰宅後や休日に行う、気分転換の手段としています。うまいへたは気にしない、下書きをしない、間違えてもいいや、といった感じです。それほど気楽な趣味と位置付けているので、たとえ中断しても気にしないようです。たのしい趣味なので義務感などありません。

もうひとつの特徴としては、スケッチジャーナルが小さなマイメディアになっているので、取材のような情報収集を積極的にやっています。たとえば同じ趣味の人たちの集まりに参加して情報交換したり、憧れの人の作品から影響を受けたりする。いいアイデアやコツはどんどん取り入れています。

また、軽い編集方針のようなテーマを持つと良いでしょう。自分のペット、毎日のお弁当、食べたフード、自分のこども、街で見かけた人、散策記録など、自分が気になっているテーマを設定すると、とても描きやすくなります。経験したことを全部スケッチする雑記帳に、積極的に季節ネタを盛り込むユーザーもいます。

自分らしい絵を自分がまず楽しむ。すると自分らしい画力がどんどん上がっていきます。この絵はあの人の絵だ、とわかるようになってきます。

友人たちと鎌倉の人気カフェに行った時の作品

友人たちと鎌倉の人気カフェに行った時の作品

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Q:そもそも私には絵心がないから、自信がないです…
A:大丈夫、正確に描く必要は全くありません。

 

上手に描けなくても、その出来事の思いが伝わればいいのです。

絵と呼ばれる要素は、じつは

絵画(芸術作品)
デッサン(正確性重視)
スケッチ(イメージの伝達)
イラスト(個性の再現)

など多岐に渡ります。実際はデッサンの技術ではなく、状況のスケッチができれば十分です。楽しかった思い出、嬉しかった記憶が、他の誰かに伝えるささやかな交流が大切です。

このように、「絵が描けない」は認識の転換と条件の準備で解決できます。

 

 

Q:下手でもいいなら出来るかも。何から始めたら?
A:まずは好きな画風を探しましょう。

 

スケッチジャーナルを実践したくなってしまったあなたに、始めるためのステップをご紹介します。
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第1ステップは、自分の好きな画風に「感化」されること。
自分の好きなイラストレーターや画家、アーティスト、漫画家などの画風をとことん見て、そんな絵を描いてみたいと思うことが大切。特に憧れがない場合のオススメはPinterest(世界中のおしゃれアイデアが詰まった画像SNS)を使ってみましょう。気になっているキーワードで検索すれば、好みの画風がきっと見つかります。
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第2ステップは「モチーフの発見」です。
何か描きたいではなく、これを描きたいと思うモチーフを取り入れる。食べたもの、ペット、文房具、観葉植物、友達、こども、なんでもいいので描いてみたいモチーフを見つける。モチーフが見つかるまでは、無理に始めないで大丈夫です。
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第3ステップは、いよいよ「描いてみる」。
下書きしないでまずはやってみましょう。間違ってしまったり線が曲がってしまったりして、がっかりすることもあります。それでも最後まで描いてみる、間違ったらそこからどうやって修正するか考えてください。まずは小さく描くのがいいので、マンスリーカレンダーの「1日1スケッチ」がオススメです。
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第4ステップは「見せ合う」。
SNSにあるスケッチ関連コミュニティーをフォローして、情報収集や交換を行う。自分の絵の感想を聞いてみる。オフ会に参加して作品を見せ合いながら、コツを交換し吸収するのが効果的です。
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第5ステップは「環境作り」。
どの時間帯に、どこで、何を使って描けばいいのかを考える。これを決めないと継続が難しいです。ノートや手帳、スケッチブックなどなど、それぞれに合う筆記具を選んでいく。家で描くのか、カフェで描くのか。音楽を聴きながら? 静かに?といった感じです。
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このステップは順番通りにやってみてください。モチーフとは、簡単に言えば題材のこと。ネタとも言います。描きたいモチーフが見つかるまでは、好きなタイプの画風にたくさん触れてください。
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さいごに:「自分でテーマを決める面白さ」

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スケッチジャーナルのスタイルは、自由です。

日常観察や趣味、育児の記録や美味しかったグルメなど、テーマを1つに決めて作る「テーマ統一型」、なんでもありの「テーマ複合型」、絵に限らず色々なものを貼っていく「コレクション型」など、SNSを見ればいろいろと発見できます。

手帳やノートに、身近にある文房具や画材で作るスケッチジャーナル。この手軽で楽しい趣味を通じて、「自分らしい味のある絵」を表現する楽しさを、ぜひ満喫してください。

私はスケッチジャーナル実践者として、ワークショップやTIPSなどの情報発信を続けます。これからもやってみたいという皆さんを支援していきたいと思っています。

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味わいのある自分らしいスケッチジャーナルを描くには?

1. 好きな画風を探してみよう。なんども見てエッセンスを真似てみよう
2. 下書きしないで描いてみよう。間違えたらアレンジしてみよう
3. テーマやモチーフを考えて、マイメディアをたのしもう

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ハヤテノコウジ

ハヤテノコウジ

スケッチトラベラー / イラストレーター。会社員とイラストレーターのパラレルキャリア時代を経て、スケッチトラベラー(旅日記作家)として本格スタート。独自のスケッチジャーナル手法で、ワークショップや作品展示(渋谷・有楽町ロフト、銀座・伊東屋、うめだ阪急など)を行う。「手帳で楽しむスケッチイラスト」シリーズ、「イラストノート」「モレスキンのある素敵な毎日」「TRUNK」「毎日、文房具。」等に登場。旅好き、文房具好きとして知られる。Blog : http://sync-ideas.net / Instagram: @koujihayateno