PUBLISHERS 03  ソーヤー海 「すべての生命が活かされる世界を育むため」

ソーヤー海

食べ物の森を育てながら暮らす、祝福の多い暮らしなんだ

PUBLISHERS(パブリッシャーズ)| 深井次郎がゲストと語る “本をつくる理由”
第3話|ソーヤー海 (共生革命家 / 東京アーバンパーマカルチャー主宰)

 

 

「好きを活かして自分らしく生きる」をテーマに掲げるオーディナリー。「自分らしく」というのは、「自分の頭で考える」ということです。大量消費社会がいきづまりをみせている現在、わたしたちに必要な考え方とはなんでしょう。「豊かに楽しく暮らすためには、経済成長が必須」そう思い込み、歯を食いしばってビジネスしてきた時代もあったけど、新しい時代はそうではないように感じます。深井次郎がソーヤー海さんの存在を知ったのは、3年前。カナダの伝説の雑誌「アドバスターズ」について調べている時、海さんのブログにあたり、とてもインスピレーションを受け共感したのです。今回は、いよいよ海さんチームが本を出版するということで、いろいろお聞きすることになりました。

 

ソーヤー海(かいソーヤ海
共生革命家 / 東京アーバンパーマカルチャー主宰
東京生まれ。米・カリフォルニア大学サンタクルーズ校に通い、パーマカルチャーに出会う。アメリカや中米で自給自足生活を学び、日本へ帰国。「共生」に関わる活動をメインにしながら、東京大学大学院新領域創成科学研究科サステイナビリティ学教育プログラムへ参加し、現在「東京アーバンパーマカルチャー」を主宰。日本各地でワークショップなどを通じて精力的に活動を拡げている。
WEBサイト
東京アーバンパーマカルチャー
パーマカルチャー生活 

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※「PUBLISHERS(パブリッシャーズ)」とは、
理想をもって出版に関わる人、メディアをつくる人たちのこと。彼らのクリエイティブアクションを紹介し、あなたの「自分らしい本づくり」を探求する読み物コーナーです。

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世の中を変えようとする姿勢に憧れた
911で社会運動に目覚める

 

深井次郎 海さんは、いまもっとも注目されるパーマカルチャー(持続可能な農的暮らし)の伝道師のひとりだと思うんです。それだけ熱くなれること、打ち込める「人生のテーマ」にどのようにして出会ったのか。今日はその辺のいきさつから、今回本をつくることにした理由についてお聞きしたいんです。
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ソーヤー海 はい、何でも聞いてください。
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深井 まず、どうしてパーマカルチャーに行きついたんだろう?

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 どこまでさかのぼるかだけど、大きなきっかけは(2001年に起きた)911だった。カルフォルニアの大学に入った瞬間、アメリカ全土が戦争状態に入ったんだよ。日本で育って、戦争なんて遠い存在だったのに、平和ボケから現実に突き落とされた気がした。全米メディアはどんどん「中東の人は恐ろしい」みたいなプロパガンダに変わっていくし、学内でもヘイトスピーチや暴力事件が起こったりして。肌の色だけでインド系の人が殴られたり、みんなメディアに煽られて、怒りに囚われている感じだった
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深井 ああ、ひどい状態……。
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 そんな中で、反戦運動をしている学生たちがいた。自分と同じ大学生が、戦争をしかけるアメリカ政府に抗議するために、アフガニスタンとイラク爆撃の初日に授業から抜け出て、教授や一般市民を含む数百人で大学を閉鎖した。これに一番衝撃を受けた。大学って、勉強して卒業していい仕事に就くためのシステムでしょう? それなのに、彼らは受け身じゃなく、おかしいと感じたことをリスクを負いながら、素直に行動にうつした。そこから始まった「虐殺を止めたい」って思いを社会に訴えた。歪んだ世の中を変えようとするその姿勢に感動してしまったんだね。自分も参加して、こんな世の中おかしいんだってはっきり見えるようになって、そこから新しい冒険が始まった!って感じだったな。

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深井  なるほど。ただ、冒険には危険はつきもの。

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  そう。反戦運動って当局に睨まれるし、シビアな面があって。特にオレたち、かなりイイ線行っちゃったから、すごいプレッシャーがかかってしまった。当局は都合の悪い活動を壊すためには内部分裂を仕組むんだけど、それをやられて。あえなく内部分裂。仲間のはずが、「もしかしておまえ本当はCIAじゃないのか!」とお互いに不信と怒りをぶつけあうようになって。これじゃあ、自分が求めている未来は築けない、戦争のない平和な社会は目指せないなって思い始めた。何かが違うって違和感があった。

ソーヤ海

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新しい世界、パーマカルチャーとの出会い
第一線の先生たちから薫陶を受ける

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深井 たしかに。平和を目指す人同士が争ってしまうのは、いびつな構図だなぁ。いたるところで良く見るけど。

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 その壁に当たっているときに、有機農法の活動に出会ったんだ。こっちは超平和だった。シビアで対立的なの反戦運動よりも、こっちのほうが心地よいし、みんなで農業やれば様々な問題が解決するんじゃないかな。大学って理論ばかりで実践が少ない。戦争中に箱の中でマクロ経済云々とかレクチャーされても、大学と現実の温度差に違和感を感じるだけ。だったら、リアルに役立つことを学んだ方がいいなって思ったんだ。持続可能な社会をつくるために活動したいなって。それがESLP( Education for Sustinable Living Program 持続可能な社会のための教育プログラム)との出会いだった。

 

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深井 それはどんな学びの場だった?

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 学生が勉強したいプログラムを企画して、自分たちで先生をつれてくる教育システムで、その先生たちが本当に素晴らしかった。哲学者で環境活動家のヴァンダナ・シヴァ( Vandana Shiva ) や思想家で平和活動家のサティシュ・クマール( Satish Kumar )というような、社会運動の世界のセレブから直接教えてもらっていたんだ。彼らから学ぶことは革命的だったし、ワクワクするし、課題もデカくてやりがいがあるし、説明もわかりやすい。問題だけじゃなくて、解決策についてもしっかりした理論が整っていてとても勉強になった。革命っていうと、理想ばかりで実現しないイメージがあるけど、オレたちはここで超ハイレベルな教育を創作していたから、かなりの実践力がついた。自分の考えで動く訓練ができているし、目的のために、具体的にどうしたらいいのかを戦略的に考える力を身につけていったんだ。リアリティをもって、世の中は変えることができると信じている。このプログラムの影響は大きかったな、彼らのような社会活動家と同じ生き方をしたいと、今でも思っているんだ。
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深井 その世界の第一人者に直接触れられたのは貴重な機会。
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 うん。最初は生徒だったけれど、そのうちにプログラムの運営に関わるようになって、具体的にプロジェクトを実行するメンバーになった。例えば、学生が大学の支援を受けて学内のエネルギーを100%自然エネルギーにするとか。カフェテリアのコーヒーの調達も、フェアトレードよりもっとダイレクトな、農家と直接取引する方法にするとか。ラディカルな考えをもつ学生たちとみんなで大学を変えていったんだ。このプログラムを通して、自分は大きく変わったと思う。

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深井  知識だけじゃなくて、実践。アクションがともなうと人は変わっていく。

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海  そう。ただね、そのまま順調に、とはいかなくて……。新しい世界と出会ったら、可能性は無限大だし、やること満載で、あまりにも活動が面白くて夢中になる。新入生の教育とか、自然エネルギー化もしなきゃとか。でも、なんでもかんでも抱え過ぎちゃってさ、ついに燃え尽きて、ゾンビ化しちゃった。

ソーヤ海

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深井 忙しくしすぎたんだ。

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 あまりにもひどい状態だったから、友達が誘ってくれて、大学を離れてコスタリカのジャングル生活をすることにした。だってさ、オレは持続可能な生き方を教えてるのに、今の自分自身の生活がまったく持続可能じゃないよね。ヤバイよねって。

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深井 倒れちゃったら、持続可能ではない(笑)

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  これを変えるには、思い切った変化がないと無理だった。一旦流れをストップして、都会を離れることにしたわけです。

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「食べものの森」でパラダイスな暮らし
コスタリカ → ニカラグア → ワシントン州ブロックス

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深井  新しいコスタリカのジャングル生活は?
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海  最高だったよ! 自分で薪を割って、ジャングルでバナナやココナッツや、マンゴーを収穫して暮らすんだ。自然の中の農的生活というと、不自由で貧しくてストイックなイメージがあると思うけれど、オレの体験したジャングルの生活はそうじゃなかった。オレたちは abundance  (豊富さ) って言うんだけど、食べる物も時間も豊富にあって、豊かで幸福な暮らし、まさにパラダイスなんだよ。デザインと倫理をうまく使えば、田舎暮らしもものすごく豊かで華やかなんだ。その後ニカラグアのパーマカルチャー農場でも暮らしたけれど、そこは「食べものの森」になっていて、何千坪もの土地に世界一おいしいマンゴーやバナナ、ベリー類がなっていて、歩きまわると両手いっぱいになるくらい、お腹がすくってことはなかった。仕事も果樹の手入れくらいで、あとは時間がたっぷりあって、集まって食事したり、騒いだり、シンプルで楽しい暮らし。パーマカルチャーの豊かさ、楽しさを味わって、もっといろんな人に知ってもらいたいと思うようになったんだ。
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深井 清貧ではない。清くしかも豊かに、清富(せいふ)ともいえる状態。

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ソーヤ海

海 そう、我慢してるんじゃなくて、楽しいからやってる状態。実際に、楽しくてしかたなかった。そして森での暮らしを経験してから、今度はワシントン州にあるブロックス・パーマカルチャー・ホームステッドの3週間集中デザインコースを受けた。彼らは30年以上パーマカルチャーを実践していて、世界中から人が集まってくるパーマカルチャー・コミュニティーなんだけど、食べ物には困らないし、仕事は楽しいし、仲間とワイワイやりながら暮らしていられる。自然にやさしい技術を上手に使って、Wifiも飛んでて都会にいるような便利さもあって、口に入るものは他人に依存せずに、自分たちの手で確実に作る。すごくいい生き方だって実感した。マニアックな人じゃなくても、超都会人の普通の感覚でも豊かさが実感できるような演出もすごい。洗練されているし、開かれてるよね、本当に。しっかり働いて、たっぷり遊んで、食べ物の森を育てながら暮らす、祝福の多い暮らしなんだ。できればこのままずっといたいと思っていた、森にいるときが一番幸せだったかもね。
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普通の人を巻き込むための
東京アーバンパーマカルチャー

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深井 その楽しい、祝福のノリを日本に持って帰ろうと思ったのかな、「東京アーバンパーマカルチャー」と名付けて。
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海 いずれは日本で生活したいとは思っていたんだけど、311(東日本大震災)から、日本のことも真剣に考えるようになった。原発はカンタンには止められないっていう巨大な現実もある。もしみんなが果樹を植えて生活をしても、エネルギー企業が破壊的なことをしたらサステナブルな生活はできない。活動家として何かしないといけないって思った。それで、日本でパーマカルチャーを実践しようってことになった。
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深井 しかし、なぜ東京なのだろう? 農的な暮らしなら地方のほうがやりやすそうに思うけど。
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海 都会を変えないと、田舎がつぶれてしまうから。311以前の福島は、有機農業の中心地だったって聞いているし、オルタナティブな生活を目指している人たちがたくさんいた。でも311で大きな打撃を受けてしまった。それは元はといえば、東京のエネルギー問題なんだよね。だったら東京全体を変えなくちゃだめだと。パーマカルチャーはデザイン次第で砂漠でも実現できる。だったら大都会でも、東京でも可能なはず。というのが日本でのアーバンパーマカルチャー活動のスタートだった。UPCは、自然と持続的に共生する豊かで楽しい生き方。それを、マニアックな人だけじゃなく普通の人たちに伝えて、盛り上げようっていう実験なんだ。

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深井 あくまで「普通の人」を巻き込まないと、大きなうねりにはならない。

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海 社会を変えたい、変えるエネルギーを集めようと思ったらね、「変えよう」って叫んでいてもだめでさ、東京に住んでる普通の人が「やりたい!」って思うように仕向けることが大事なんだよね。それを魅力的にデザインして表現するのが革命家、アーティストとしてのオレの役割。思想って浸透させるには対象者のために通訳する必要があるんだ。この前、原宿の駅前でやった「ストリート座禅」もそう。
ソーヤ海
瞑想も特別な場所で特殊な人がやるんじゃなくて、道端で通りがかりに参加してみる。新鮮だよね、やってみると面白い。都会の文化の中でも実践する手段ってあるんだ。それをどう通訳していくか。先端的なパーマカルチャーの考え方を普通の人にわかりやすく伝える、オレの活動はいわば通訳活動なんだ。
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深井 「わかりやすく伝える」のが海さんの役割であり、強みなんでしょうね。海さんが実現したい社会とは、どんなものなんだろうか。
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海 どういう思想かっていうと、カンタンに言えば、みんなが大事にされる世界を目指そうってこと。「99%のための政治」という動きがあるよね。あれも99%(大多数の弱者)の人格が尊重されていても、1%(利権を握っている強者)が疎外されていれば、社会不安はなくならない。だからオレは100%がいい。みんなが自由に生きて、大事にされる、みんなの命が活かされる社会をつくりたい、それを実践するのがオレのミッションだと信じているんだ。

 

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ドネーションだけで
本を出せるかという実験 

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深井 最後に、今回のクラウドファンディングで本をつくろうというプロジェクトについて。そのアイディアはどうやって生まれたんだろう。

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海 東京へ来る前に、京都で10日間ひたすら座るヴィパッサナー瞑想に参加していた。ずっと座っているとつぎつぎと雑念が出てくるんだよ。オレは頭の中のエクセルシートで生活費の計算ばかり、これから東京でどうやって食っていくのか、家賃はいくらで、新しいワークショップは1回いくらでやろうか? とか、瞑想しながら考えていたんだ。くだらないなオレ、って気づいたよ! その瞑想WSは全部ボランティアとドネーション(寄付)で回っているんだけど、瞑想を終えた人が好きな金額を寄付して帰る方式で、自分のための経費は前の人が払ってくれているシステムだった。そんなペイ・イット・フォワードのシステムで経済的に回っていて、世界中に広まっていることに感動した。だったら、自分もお金はドネーションで回してしまおう、そうすれば執着から解放されるし、本質をついた活動ができるだろうと思った。みんなが大事にされる社会をつくる活動、オレのビジョンに共感する人に支援してもらう。活動はワークショップも本もほとんどドネーションで運営する、そういう贈与経済(ギフトエコノミー)の実験をすることにしたんだ。

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深井 贈与経済。世の中のためになる活動であれば、 きっと支援してくれる人が現れるはずだと。
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海 実際、東京で活動してみると、ありがたいことにWSの会場を無料で提供してくれる人も現れた。これも贈与経済だよね。そこでやったWSに参加してくれた人たちも活動に共感してくれて、まわりに人がだんだん集まってきた。その中にはプログラマーやデザイナー、フォトグラファーや編集者もいるんだ。そんな中、WSでやっている内容を書き上げて、簡単なZINEにまとめようという話から、超クオリティーの高いUPCのバイブルをつくろうよ、ということになっていった。どうせならパーマカルチャー的なコミュニティプロジェクトにしようということになって、出版社は通さないで、お金も流通も自分たちで全部やろうっていうことになっていって、クラウドファンディングでやってみることにしたんだよ。

ソーヤ海
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深井 本の制作チームはどうやって生まれたのですか?
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海 300人ほどいるオレのメーリングリストで「みんなで本をつくらない?」って声をかけた。素晴らしい人たちが手を上げてくれて、チームができた。今150万円を目指して出版資金を募集しているんだけどね、もう2/3集まって目標を達成できそうな勢いなんだよ。実際は200万を目指しているんだけど。2014年の12月か2015年の1月頃に出版する予定で、書籍のチームは変化し続ける生態系のように、仕事がすすんでいる。

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深井 はじめての試みなのに、順調そう。さすが!

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海 とはいっても、勢いがなくなっちゃうこともあるんだけどね。そんな時は顔合わせパーティーをしたり、共感することでまたつながり直すことができるんだ。これまで学んできた共感コミュニケーションが役に立つ。何かハプニングがおきて、活動が止まっても、とことん共感することで解決の方向が自然に現れてくる。人間関係もデザインできるんだよ。ワークショップも出版プロジェクトも、日々の生活でも、人をモノのように扱わない、商品のように考えない、それぞれを活かそうと大事にする気持ちがあれば、上手につながって、物事もうまく回るようになる。いま世の中では評価と批判の文化が主流だけれど、共感的なコミュニケーションがもっと実践されれば、変わっていくはずなんだ。

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深井 この進行自体が共感のワークショップなんだね。

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海 そうなんだ。 さっきの贈与経済の話もそうだよね。なんでもそうだけど、思想だけで実践しなければ妄想と同じ。でも実践すれば現実になる。実際にやってみて、その理論が現実に落とし込める、これは大事なこと。いいと思ったらやってみればいい、そうすれば思い込みか、そうじゃないか見分けられるから。

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深井 自ら実践して背中をみせる、と。

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海 現実にオレの生活は今ほぼドネーションで成立しているんだけど、これは自分でもすごいことだなと思う。オレが特別だからとか、田舎なら可能だけど東京じゃ無理、とかいう人もいた。でも実験してみたら、東京でも可能だった。お金は必要じゃないとは言わないけれど、無理してどこかに就職しなくても、生活する方法はいろいろある、選択肢はたくさんあるんだ。ドネーション生活でどこまでやれるかっていえば、今年はアメリカの活動家合宿に3回も行けたし、かなり華やかな生き方していると思うよ。一文なしでも志さえあれば、本だって出せる。お金に縛られずに自由に生きることはできるんじゃないかな。贈与経済の冒険はすごく面白い。しかも可能なんだ。みんなやってみようよ、っていろんな人を誘いたいね。

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深井 うん。いま知識だけの人、言うだけの人はたくさんいるけど、行動するアクティヴィストが足りない。本の内容も大事だけど、本をつくる過程からして自分たちの思想(贈与経済)を体現していたんですね。ぼくたちオーディナリーも、「好きなことをやって生きよう」というメッセージを発信していますが、「そうは言っても家賃を払わないと…」という反論もある。そういう人には、贈与経済の考え方が大きなヒントになるはず。海さんのクラウドファンディング、ぼくもポチッとドネーションしますね。今日は撮影と取材、長時間ありがとうございました!

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ソーヤ海

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(ここでインタビューは終了しましたが、まだまだ熱い話が途切れない・・・のでおまけのお話も収録)
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行動する人を育てる教育とは

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深井 TED の動画も観たけど、あの時(2013年)は東大の学生だった?

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海 東京に来て最初の挫折が実は東大時代で。TEDの時は精神的にどん底でした、実は。

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深井 そうだったんだ、堂々としてて、元気そうに見えたのに。

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海 本質的にオレは人前でしゃべるのが苦手な方でさ、「止まろう」がテーマで話をしたから、演出でわざと話を止めたりもしたけど、本当に話せなくなって止まっていたのもあった(笑)話の中身も、都会で燃え尽きて、コスタリカの森で生き返ったって話だったけどね。あの時もちょっとそういう状態だった。

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深井 日本の大学が合わなかったとかもあったのかな。

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海 そう、大学の教育方針と自分の考えていることが合わなかったことが大きかったんだね。教育というものの考え方が違っていた。大学の教育は、評価と批判で成り立っていて、学生が自分で考える力を育てない、文献主義、一方通行の教育で、今までオレが受けてきたものとあまりにも違っていた。オレがやりたいのはそういう教育じゃなかった。

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深井 ぼくも大学で教えたりするけど、教育に正解はないから難しいね。評価も批判もしない教育ってどういうもの?

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海 すべての人を活かす社会をつくるには、人の気持ちをくむことが一番大事。教育も共感ベースにならないと、世の中はよくならない。愛から動く人間をもっと増やさなくちゃいけない。共感ワークっていうのは、まず自分自身に共感して、考える土台をしっかり満たして、それから理想と思う生き方を選ぶこと。古い価値観をモデルに評価や批判してしまっては、それができなくなる。

ソーヤ海

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深井 単に過去を教えるのが教育じゃないってことか。自分で考える方法を学ぶにはどうしたらいいと思う?

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海 それが、カンタンじゃないんだ。まず観察して、それから考えて導き出したことを元に、実際に行動できる人間になるのは難しい。想像以上に訓練がいるんだよ。その訓練こそが教育で、オレは ESLP でそういう教育を受けることができた。日本で活動家を育てるなら、算数とか国語よりそういう訓練が必要なんだと思う。世の中ってまるで映画の『マトリックス』みたいに何層にもなっていて、マスメディアで見せられている現実は操作されている部分がある。そこから抜けだして現実をちゃんと見る能力は、訓練がないと身につかない。日本だってこのまま放っておいたら、気がついたら戦争、なんてことにだってなりかねないよ。見せかけの豊かさに安穏としているんじゃなくて、もっと世界を広く知って、本当に起こっていることを理解しないと、考え方を変えないと未来がヤバイ、そういうメッセージを伝えたいって思うんだ。思い込みと現実の区別がつく人間を増やさないと、だから若者の教育に力を入れて活動家を増やしたいんだ。

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深井 政治家になっちゃいそうな勢い。それはある?

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海 うーん、将来のことはわからないなぁ。でも政治なんて始めたら、畑をやる時間がなくなる。今はガーデンにいるのが一番ハッピーだからね。まあ、やりたいことをやるだけ。あくまで忙しくなくね。

 

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ソーヤ海 ーー

 

構成と文 :  モトカワマリコ(ORDINARY)
取材日 : 2014.10.3

 


編集部

編集部

オーディナリー編集部の中の人。わたしたちオーディナリーは「自由に生きるための道具箱」がコンセプトのエッセイマガジンであり、小さな出版社。個の時代を自分らしくサヴァイブするための日々のヒント、ほんとうのストーリーをお届け。国内外の市井に暮らすクリエイター、専門家、表現者など30名以上の書き手がつづる、それぞれの実体験からつむぎだした発見のことばの数々は、どれもささやかだけど役に立つことばかりです。