どうやら昨夜まで海が荒れていたようで、船が出せるか心配していたとのこと。田中さんは、船内で寝泊まりしたようです。初めて帆船に乗るということで、酔わないか、冬なので寒くないか、トイレはあるのか、いろいろ心配なこともあった。
EVENT REPORT
帆船魂プロジェクト – Spirit of Sailors – 「渡れ! 内浦湾大航海」 . .
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よく晴れた冬の休日。オーディナリー編集部は、田中稔彦さんにお声をかけていただき、取材にきました。以前から「やります」と聞いていた帆船の魅力を広める活動がいよいよ始動するというのです。 名付けて、帆船魂(はんせんだましい)プロジェクト。今回は、本格的にお客さんに提供する前のテストです。本番さながらにやってみて、意見を聞き、修正をするのが目的です。
帆船魂プロジェクト(スピリット・オブ・セイラーズ) とは 帆船での冒険プログラムを通して、感動や発見、さまざまな成長体験を提供する。帆船を愛する専門家3名を中心に立ち上がったチームです。これから自分たちの帆船を手にいれて活動を続け、それがロールモデルとなって日本のたくさんの港に帆船がいる、そんな未来を実現していく。 |
静岡県沼津市の港に到着しました。朝が苦手な深井次郎さん(オーディナリー発行人)も早起きをして、集合時間前にしっかりスタンバイ。
「沼津は富士山がこんなに近いぞ!」後ろの船が今回乗船するAmi号です。
「おはようございます! 深井さん、今日は晴れてよかったですよ」と田中稔彦さん。どうやら昨夜まで海が荒れていたようで、船が出せるか心配していたとのこと。田中さんは、船内で寝泊まりしたようです。
田中稔彦さん とは 「帆船魂」の立ち上げメンバー。オーディナリーでもおなじみ「海図を背負った旅人」として帆船での冒険エッセイを執筆。大西洋レースの航海記「帆船の森にたどりつくまで」で第五回海洋文学大賞を受賞した筆力の持ち主であり、船上でのニックネームとして「ぶんごー(文豪)」と呼ばれるように。陸上ではフリーの舞台照明家としても活躍している。 http://ordinary.co.jp/author/tanakatoshihiko/ |
初めて帆船を動かした1日
それでは、写真を中心にレポートしますね。朝10時。参加者が集合しました。初めてAmi号を見た深井さんは「お、けっこう小さいですね」前に「みらいへ」号を見ていたせいか、ずいぶん小さく感じたようです。小さいので揺れが大きく、穏やかな波でしたがぐらんぐらんと帆の棒が揺れています。
帆船魂スピリット・オブ・セイラーズの3名。左からカイさん、エリさん、田中(ぶんごー)さんが挨拶。
本日の航海日誌が全員に配られ、冒険に出る前に説明があります。オレンジの救命ジャケットをつけ、みんな真剣に話をききます。レジャーではなく、冒険なので危険もある。心してかからないと、揺れて船から落ちてしまったら、ということもありえるのです。
自己紹介を全員がして、海でのニックネームを名札に書きます。「陸の名前は捨てても良いです」 海では呼びやすい名をつかいます。初対面の人ともスムーズに共同作業をしないといけません。さまざまな職業の方が参加されました。地元の魚屋さん、結婚式のプロデューサー、ワークショップのファシリテーター、旅行社の方、などなど。
海図の使い方、コミュニケーションの取り方など、基本的なレクチャーがあります。参加者は、ただ乗っていればよいわけではないのです。自分たちで船を動かすんだという意識でいないといけません。海が荒れているときは、声でのコミュニケーションができないことがあります。そんなときでも大丈夫なように、非言語、身振り手振りでコミュニケーションをする訓練をします。
三角定規、コンパス、鉛筆、消しゴムというツールを使って、今日の航海のルートを決めます。
さあ、いよいよ港を離れます。「畳んである、この帆を張りましょう」
1人では難しいので、みんなで協力して張ります。
どこのロープをひっぱるとどこが動くのか。初めての人にはさっぱりわかりません。
手際よくスタンバイする田中さん。
「出発です!」海の男カイさんは、冬なのに半袖。日が当たっていると暖かいです。
他の漁船などもいるので、港から出るまではモーターをつかって船を動かします。そうこのAmi号には緊急時のためにエンジンがついているのです。文明の利器、やっぱり便利!(笑)だって、風の力だけだったら、今日みたいな風がないときはなかなか動かないのです。港を出るだけで時間がとられてしまいます。
沖に出て行きます。エンジンが止まると、とても静か。風の音しか聞こえません。
「おお、けっこう揺れますね。やっぱり小さい船の方が面白い!」と深井さん。すぐそこに水面があるし、揺れもあるし、臨場感があります。大きなフェリーに乗ったことはありますが、海との一体感は感じにくいですから。
舵をとる田中さんに、操縦の仕方をおそわる深井さん。
田中さんの正面にあるのが、船内への入口。はしごを降りて入ります。中にはキッチンやテーブルやトイレなど、6人くらいが寝泊まり生活できる空間があります。写真は… 撮り忘れました。
操縦席から前をみるとこんな感じ。
富士山と日の丸。これぞニッポン!という景色。めでたい感じがします。揺れに注意しながら写真を撮る参加者たち。
カイさんによる船で使うロープの結び方レクチャー。
結び方を応用して、ミッキーマウスになってみたり、笑いも混ぜてます。
ゴールの半分くらいにさしかかりました。穏やかでなにも問題がないので、ここで一休み。ランチタイムです。地元のお弁当屋さんにつくってもらったものです。紙コップには、温かいみそ汁。カイさんのおばあちゃんの手作り味噌だそうです。
海の真ん中で富士山を眺めながらいただくごはんは最高です。
「うまい!」帆船さえあればごはん何杯でもいけちゃう人たち。
「ごちそうさま」 帆船は、波と風と一体になる不思議な感覚がありました。エンジンがついている船は、ゴゴゴゴッーと進む感じですが、帆船はスーッと滑る感じ。静かなのです。ゆだねる感じ。それゆえ、陸から離れると「自力で戻れるのか?」というちょっとした恐怖感がありました。
水面までが近い。手に届きそう。キラキラしてきれい。
冒険は穏やかに終わる… はずがない!
「風が強くなってきたぞ」
「風が強くなってきましたね」Ami号の船長。日の丸が勢い良く、はためきだしました。映画のワンシーンのようでしょう? さすが船長は、絵になる。
帽子が飛ばされないよう気をつけて。
ルートがそれないよう、風を読んで進みます。
真剣です。
海図を見直します。
力を合わせて、帆の向きを調整します。
てっぺんにはためく、帆船魂プロジェクト「冒険中」の旗。風が強いです。
「あそこを目印に進むんだ」
冒険も後半戦に突入
「では、ここからは皆さんで帰ってもらいます」
「ここからゴールまでは皆さんで帰ってもらいます」え…. なんですと。参加者全員、耳を疑いました。帆船に乗るのもはじめてなのに、操縦なんてできるのか。「聞いてないよー」「できるのか自分たちに… 」という緊張した面持ち。深井さんはワクワク、テンション上がってました。「そうこなくっちゃ!」
ここまで来たからにはやるしかない。ちょうど富士山のふもとの白い点のような東洋大学が目印になりました。そこに船の先を向けるようにしてまっすぐ進みます。
深井さんも舵を握らせてもらいました。集中力が切れないよう、全員で順番に交代しながらいきます。風の向き、潮の流れは常に変わるので、ただまっすぐ進むのにも神経をつかいます。
ロープをひき、帆の向きを変えます。
「皆さん、いいですよ、順調です!」
「これでいいんですかね… 」始めはおそるおそるだけど、慣れてくると楽しい。舵は思ったよりも軽かった。ちょっと回しただけで大きく曲がる。微妙な力加減がポイントです。
「もうひとつ帆を張りましょう」
「TWO – SIX – HEAVE ! (2、6、引け)というのがロープのかけ声。全員で息を合わせないと動きません。
「ゴールまでもう少しですよ。目標の15時に到着できそうです」
釣り人が見えます。陸に着きました。
ついにゴール!力を合わせてたどり着く感動
「ゴールです! 」無事に帰って来れました。みんなで拍手。
登って上から記念撮影。深井さんは怖がって登れず。「いやいや、だってこの揺れだよ、無理でしょう! 」
港に到着し、今日の航海を振り返る時間です。一人一人、感想や改善点などをフィードバックします。参加者の満足度は高かったです。今後これをどんな価格帯でどのように広めていくか、意見を出し合います。
GPSで記録していた今日進んだルートをiPadで。海の上は、陸と違って目印がないから、どのくらいの距離すすんで、どこを通っているのか、わからないんですよね。
「それでは解散!」冬の日は短い。15時を過ぎるともう夕日になります。沼津で降りる人、そのまま船に乗って別の港に行く人に分かれます。
われわれ編集部は沼津駅から電車で帰りますので、陸から見送りです。
夕日に照らされ船がすすむ姿は神秘的。「そうか、あの船にさっきまで乗ってたんだよなぁ」外側から見るのは、また違う感動がありました。
「またねー!」 みんなずっと手を振っていました。主催した、帆船魂のみなさま、参加者のみなさま、貴重な体験をご一緒できてよかったです。(了)
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【参考:帆船をもっと知るために】
帆船とは、帆を広げ風の力で進む船です。この動画で、帆船がすすむ美しい姿が観られます。(すみません、お使いのデバイスによっては観れない場合もあります)
Classic is beautiful.Classic is beautiful! Klasik güzeldir!…
Posted by Deniz Kokusu on 2015年12月26日