【第109話】小さき者たちの怯えと勇気 / 深井次郎エッセイ

「みんなでサボっちゃおうぜ」

「もう限界。みんなでサボっちゃおうぜ」

少数派にこそ必要なのは
まとまる力です

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ぼくは政治の話題は苦手ですが、このまま経済が暴走し続けて地球が壊れてしまってはいけません。弱者の立場がますます厳しくなり、自殺してしまう人が増えるなどという、そんな愚行だけは阻止しないといけないと思っています。最近は、政治に興味ない、などとも言ってられないかなと少し考えが変わってきています。

弱者だって、まとまることで、立場を守ることができるようになります。企業だったら、経営者がいちばん困るのは、全社員に一気にサボられることです。「全員で、せーので休もうぜ」と団結されたら、要求を飲まざるを得ません。経営者じゃなくても何かのリーダーの経験がある人は誰もが経験あるのではないでしょうか。リーダーは「もし明日、自分以外のメンバーがだれも来なかったらどうしよう」と不安になるものなのです。誰ひとりついて来なかったら、回りません。

ブラック企業のあまりにひどい仕打ちを受けているのなら、みんなでボイコットすればいいのです。「さすがにもう我慢できん。馬鹿らしいから、みんなサボろうぜ」と休んでしまえばいいのです。そしたら会社は回りません。誰のおかげで会社が回ってるかと言えば、最前線で体を動かしている多くの社員たちのおかげです。正社員だって、非正規社員だって、アルバイトだって、横のつながりをもって行動を起こせば良いのです。

権力者は、団結をされるのが怖いから、民衆をバラバラにしようとします。民衆同士に階層を無理矢理つくって、それぞれをケンカさせるようにしむけます。正社員が、非正規社員をバカにしたりさせるのです。同じ仕事をしているのに、給料や待遇に微妙な差をつけたりする。わざとです。うまく乗せられてはいけません。だれが何のために断絶をつくろうとしているのかを考えるのです。マスコミは、中国や韓国の人たちが日本を嫌っているというニュースをわざわざ流したりします。でもそんなどうでもいいことをわざわざ誰がなぜ流すのか。仲たがいさせて、団結させないようにして、だれが得をするのか。そういうことを俯瞰して考えることができなければ、いつも痛い目をみるのはぼくら弱者です。

弱者にこそ必要なのは、まとまる力です。ネットとデジタルツールのおかげで、格段に団結がやりやすくなりました。たとえば、ネットカフェ難民の問題も、1泊1500円のマンガ喫茶に泊まっているなら、「みんなでシェアハウスしない?」と呼びかけることもできます。1泊1500円だと月に45000円かかってるわけです。それだけ払える人が2人でも3人でも集まれば、風呂トイレ付きの部屋が借りられます。自殺も、孤立してしまった人がやってしまいます。死にたい人同士が集まれたら、どんなに救われるでしょう。「あなたはどんな理由で死にたいのですか」「なるほど。その気持ちわかります。わたしも同じなんです」みたいな会話がところどころで生まれます。きっとそのうち何割かの人は自殺をする気が薄らいで踏みとどまるはずです。LINEでもfacebookでもいいのですが、次世代の若者たちの「まとまる力」に、ぼくは明るい未来を見ずにはいられないのです。

 

(約1284字)

Photo:  mary bailey


深井次郎

深井次郎

ORDINARY 発行人 / エッセイスト 1979年生。3年間の会社員生活を経て2005年独立。「自由の探求」がテーマのエッセイ本『ハッピーリセット』(大和書房)など著作は4冊、累計10万部。2009年自由大学創立に教授、ディレクターとして参画。法政大学dクラス創立者。文科省、観光庁の新規事業に携わる。2013年ORDINARY(オーディナリー)スタート。講義「自分の本をつくる方法」定期的に開講しています。