【第108話】友よ、どこにいるか? / 深井次郎エッセイ

「集まれ」

「烏合の衆? 言わせとけばいいよ」

入学式前に集まる新入生に
つながる力をみる

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入学式の緊張感の話を昨日したのですが、近年はそうでもないようなのです。高校の入学式がずいぶんとにぎやかなのだと、教えてもらいました。入学式というと、新入生はそれぞれが初対面なので、緊張した面持ちでシーンとしているものでした。ところが今は、入学式の前に友達ができてしまっているのです。聞くと、LINEで同じ高校の新入生を探して呼びかけて、春休みの間に集まって仲良くなっているのだそうです。中学3年生が、初対面の人たちに向けてそんなイベントを催してしまうのです。すごい行動力です。企画して、呼びかけて、開催する。「ひとりイベント会社」みたいな子がいるんですね。

デジタルツールの進化で、どんどんまとまることがやりやすくなっています。ぼくらの親世代くらいから、日本は断絶の時代になっていきました。家のつながりも薄くなりました。家制度の廃止(1947年)とともに、本家と分家のつながりも面倒だといって、どんどん核家族化していきました。その家族すらつながりが薄くなり、若者はひとり暮らしが普通になってきています。

会社も終身雇用時代の「社員は家族」のつきあいは消え、よりドライな関係になってきています。1人ひとりがバラバラなのです。横のつながりがない。実は、この状態は権力者にとっては、いちばん民衆をコントロールしやすい状況なのです。政治は数の論理で、今は年寄りに有利なように動いています。少数派の若者はどうしたらいいのでしょう。若者の強みは、つながりです。人数は少なくても、まとまることで無視されない影響力をつくることができるのです。

新しい制度をつくるとき、経団連などの権力者の意向が通っています。弱者はますますひもじくなっていく。個人の時代と言われて久しいですが、それはバラバラに生きようと言うことではありません。自分の足で立つ個人たちが、再びまとまりオーガナイズし、影響力をつくっていくのです。 明日につづく】

 

(約794字)

 

Photo:  Jeff Kubina


深井次郎

深井次郎

ORDINARY 発行人 / エッセイスト 1979年生。3年間の会社員生活を経て2005年独立。「自由の探求」がテーマのエッセイ本『ハッピーリセット』(大和書房)など著作は4冊、累計10万部。2009年自由大学創立に教授、ディレクターとして参画。法政大学dクラス創立者。文科省、観光庁の新規事業に携わる。2013年ORDINARY(オーディナリー)スタート。講義「自分の本をつくる方法」定期的に開講しています。