創作に出会う旅「陶器のまち、益子篇」 うつわ好きの中村真美さんがGWに益子にうつわを観に行くという。そんな情報が、オーディナリー編集部に届きました。「せっかくなら、みんなで」と、うつわ好きの建築家、仲村和泰さんを誘ってみると、「ちょうど仕事が休み」だという。うつわ好きとめぐる益子。うつわ好きはどんな行動をとるのか、深井さんも興味津々。というわけで、急遽みんなで行くことになりました。深井さんが動くということは、当然オーディナリーの読みものコンテンツにするということです。買っても、買わなくても、手づくりの人とモノに出会えるのは刺激があるものです。創作意欲を高めるには、つくり手たちの情熱に触れることが一番。さあ、でかけますよ。 |
ストーリーのあるうつわと暮らしたい 〈 栃木県 益子町 〉
TEXT & PHOTO オーディナリー編集部
「着いた、ここが益子駅だ!」
朝5時出発で東京を出た一行は、9時に益子駅に到着。今日は、うつわ好きのお2人と編集部がうつわのまち益子をぶらぶらするというゴールデンウィーク旅企画です。5時出発という気合いの入れようから、うつわへの情熱を感じます。深井さんは、うつわについては今のところ「気を使えていないけど…」のよう。はたして、お2人とともに旅することで、何かが目覚めるなんてことがあるでしょうか?
本日の登場人物 左から 中村真美 さん(雑貨販売職) 深井次郎(オーディナリー発行人) 仲村和泰 さん(建築家) |
益子(ましこ)は、焼き物で有名な栃木県のまち。このGWの期間は、「益子 春の陶器市」を開催していて、500名以上の作家さんの作品を一挙に観ることができるのです。
グーグル地図でみると、益子はココ ↑
「さて、今日は歩きますよ」
一行の足元はもちろんスニーカー。まち全体が益子陶器市という感じ。いたるところに陶器のお店やテントが並べられています。休日の朝9時なのに、すでに多くの人。うつわ好きたちは、ぐんぐんと進んで、深井さんは離されていきます。はたして、ご一行、お気に入りのうつわは見つかるのか。この日、深井さんはうつわに興味を持つのか、何かを買うのか。気になるところです。
この日のデータ うつわを探した時間:9時間30分 歩いた距離:15キロ超え 買ったモノ:26点 |
それでは、充実の一日の様子を、写真を中心にお送りします。
午前の部「まずはお目当ての作家さんのところへ」
お目当ての作家さんのブースへ行く道すがら、ふむふむと1つのテントあたり10秒ほどで、見て回ります。
「なるほど、ひとつ1000円くらいの価格帯なんですね」
目の飛び出る価格でなくて、安心する深井さん。
「あ、ここです!」
真美さんのお目当ての作家さんたちが出店しているエリアへ。
「さて、今年はどんな作品が見られるかな」
益子陶器市というと、ご年配のお客さんが多いのかと思っていたけど、20代30代女性も多かったです。作家の方も若い。
「これいいかもしれない… 」
手にとって感触を確かめる真美さん。真剣な表情。
近づいてみたり、離れてみたり、眼光がするどい仲村さん。職人の表情に。
「急須、この質感は美しい。16000円かぁ」
普段、お茶を飲まない深井さん。
「使わないものを、買っちゃだめだよね… 」
「この小皿ですか。さすが、いいですね、これ」
良いものは、佇まいが違う。買わないけど、「これはいいね」というのは満場一致のことが多かったです。
「そうそう、ここの作家さんも好きなんです」
真美さんは去年、この作家さんの作品を買ったという。
帽子を被った作家さん本人も登場し、自ら作品を解説してくれました。
「これ指輪型のグラスなの。ウーロン茶をね、こうストロー挿して飲めるんですよ」
「す、すごーい… 」(… けど、実用的か? いいんです、アートですから)
「スターネットは絶対にチェックです」
良いものが一同に集められているお店へ。
「小皿が欲しいんですよ。薄いのが」
手触りをチェックする仲村さん
どんぐりみたい。作家は、額賀章夫さん。
「食器というか、アートですね。エネルギーを感じる」
深井さんもこのシリーズには反応しました。
「極力、モノは増やさないようにしているので」
シンプルライフな深井さん。可愛いだけじゃ買えません。
「普段使いの、ちょういい大きさのお皿があれば欲しいけど… あと電子レンジOKじゃないと不便かな」
美しさ + 必要 を満たすモノにはなかなか出会えず。
あ、真美さんが何かに反応してる。と、思ったらサツマイモだ! なんと、うつわじゃなくて、芋を買った。
「おなか減りましたね」
11時半ですが、早起きしたのでおなかペコペコ。そろそろどこかランチできるお店にいきましょうか。ネットで調べると、徒歩10分の距離に、いいお店が。念のため予約してから向かいます。
お昼休憩「天気が良い日は外で」
予約したカフェに到着。外のテラス席に。お昼時で混んでたので、予約しておいて助かった。
「はぁ、どれもおいしそう。何にしよう!」
迷う真美さん。
午前中の戦利品。小皿を確認し、にんまりする仲村さん。
「やっぱりいいですね。これより良いものは見当たらなかったな。今のところ」
この小皿を超えられるかどうかが、次に買う時の基準になるのです。
仲村さん「うつわが増えちゃって、食器棚から溢れて、増設するかどうにかしないといけないんです」
深井さん「えー、ぼくは毎日同じうつわばっかり使ってますよ。シンプルなの数枚でオーケーな人なんです」
午後の部「まちの全体像をざっと把握したので、細かいところを攻める」
仲村さん「料理も好きだし、今日はどのうつわに盛ろうかなという楽しみもあるんですよ」
深井さん「ほほう。ぼくはまだ料理をつくるだけで精一杯。うつわにまで関心がまわってないな」
真美さん「同じ料理でも、うつわとの組み合わせで全然変わりますものね」
「観れるのかな」
「鍵かかってますね」
道すがら、物置のような古美術屋など、いろいろある。
外国のアンティークのお皿。一枚5000円くらいする。可愛いけど、高いなー。
小さい花瓶は数百円くらい。コロンと可愛くて、買いそうになる。危ない。
「ここ、良さげですね」
買わないけど、嗅覚だけはある深井さん。
やはり小皿に反応してる仲村さん。
「これは買いですね。2つペアで」
食器棚からはみ出るというのに買う(笑)
ガラスものに反応するが、いまひとつ決め手に欠けるのか。悩む真美さん。
深井さんは怪しい犬のロボット(6万円)に反応。
「これつくりたい! 」
急須に反応する傾向のある深井さん。
「丸いフォルムが好きなんです」
夕方になってきたが、まだ芋しか買ってない真美さん。おメガネに適ううつわと出会えていないようだ。お店のガラス越しにパチリ。
ミニ花瓶648円。途中、深井さんが iPhone を紛失。ここのお店の店員さんに拾われ、危機を脱するというハプニングも。
作家さんの個性と向き合う。
「このうつわ、色が気に入った」
作家さんが自ら手売りしているブースが多い。外で8日間も立ち続ける。売るほうも体力がいる。
「この赤っぽい色、うつくしいですね」
作家は、平松裕子さん。あいにく作家さん本人は席を外していて、お会いできず。
じっくり検討した結果、ついにお気に入りのお皿と出会いました。真美さん、お買い上げ。
ここまでお買い上げゼロの深井さん。さすがはミニマリスト。
「買わないけど、展覧会観てる感じ。勉強になるし、楽しいよ! 」
うしろから真美さんがひょっこり。
駅までの帰り道、最後の最後でいい感じの古本屋に遭遇。古家具をあつかう「内町工場」さん。見応えのあるセレクトで、本好きの一同、
「これは、要チェックですね!」
そして、ここでタイムオーバー。
成果発表「本日の戦利品を披露してください」
続いて真美さん。使えば使うほどアンティークのような味わいがでてくるという可愛いお皿。こちらも照れながらも満足げな表情。
編集部ふじたゆきは、野菜と生そば、桜餅、本。うつわの街で食べ物を買うあたり、いつものペース。
最後は、深井さん。うつわはゼロ。古本を5冊。やっぱり、本なんですね。
「相場より安く入手!」
「本当はもっと買いたかったのだけど、重いので断念した」のだそう。
おわりに「つくり手の情熱は人を動かす」
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朝5時に東京を出て、益子陶器市でぐるぐる15キロ歩き、東京に着いたのは22時。さすがに帰りの電車ではウトウトしましたが、元気。やはり、うつわ好きの情熱は、すごかった。深井さんも、お2人に触発されて、好きな作品をつくる作家さんを2人ほど見つけたようで、うつわが必要になったら、きっと彼らの作品をまたチェックすることでしょう。
好きなものがあるって素敵ですね。オーディナリー的、ぶらり旅でした。中村真美さん、仲村和泰さん、ありがとうございました。またどこか行きましょうね。
ランチ時や帰り道にもみんなで話してましたが、「やっぱり、買うんじゃなくて、自分でつくりたくなるね」。つくり手の情熱に触れると、自分も何かつくりたくなります。陶器を観て、陶器をつくりたくなることもあるし、陶器を観て、エッセイを書きたくなるかもしれない。どちらにせよ、つくり手の情熱は、観る人を行動に駆り立てる力があるということなのでしょうか。
忙しい大人が丸一日つぶして一枚のお皿のために15キロを歩く。そうやって出会った一枚には、今日という日のストーリーも含めて記憶されます。適当に買ったものとはまたひと味違う。小さいけどひとつひとつにストーリーがある。大切にしたくなる。そんなモノたちに囲まれて暮らしたいものです。(了)