今回はきっとどなたにでもできるであろう動物たちのつくり方をお伝えします。動物に惹かれるのは顔やかたちがユニークなところ。連れて歩きたくなるような、心惹かれるどうぶつを探してみよう。ヘンテコなかたちでも、ぶさいくでも大丈夫!
手でつくる可愛いどうぶつたちの世界
畑山 葉子( ものづくり / アトリエショップ「葉っぱ小屋」オーナー )
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自由に生きるために
好奇心のままに、まずはやってみよう
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鎌倉で、ものづくりをしながら、手しごとのものや手芸素材を扱うお店を営んでいる畑山葉子です。
針金や布、流木、いろいろな素材をつかってモビールやオーナメントをつくっています。自分でつくった作品もお店で販売しているのですが、その中でも好きなのは動物のモチーフのものです。布で手縫いした動物たちを針金などで繋げてオブジェにする表現が、今一番楽しいです。
今回は、「私も何かつくれたら… 」という声におこたえして、きっとどなたにでもできるであろう可愛い動物たちのつくり方をお伝えします。
その前に、まず「なぜ動物をつくるようになったか」というお話をさせてください。
わたしは、もともと小さな頃から図画工作や美術は好きでしたが、特に仕事にしよう、とまでは思っていませんでした。進路も普通の短大に通い、一度は銀行に就職しました。趣味で針金細工をはじめたのは、短大の頃からで、ブランドをつくり本格的にものづくりをはじめたのは、卒業してから7年後でした。
はじめの頃は、友人をきっかけに針金という素材に出会い、かごをつくったり、ミラーのフレームをつくったりしていましたが、「色」が好きなわたしは、シルバー1色というのがなんだか物足りなくなって、カラフルなビーズなどの素材も使うようになりました。
ある日、海で流木を見つけたときに、「ここに小鳥がとまってたらかわいいな!」と思い、小鳥をどうやってつくろうかなぁ。と考えて、布でつくってみることにしたのがはじまりです。
はじめの2年くらいは、とまり木や鳥かごなど、小鳥のモチーフだけをつくっていたのですが、そのうちになにか違ったモチーフもつくってみたくなり、「動物を30種類つくってみよう!」と思い、ほかの動物をつくるようになって、今では100種類以上になりました。
動物の魅力は、表情があること
動物に惹かれるのは、やっぱり顔やかたちがユニークなところです。もともと動物が好きだし、単純に可愛いから、というのはもちろんで、自然とそこから始まりました。
それでも何年か続けていく中で別な表現もしたくなり、一度植物をつくったこともあります。布を染めて、コテをあてて、花びら一枚一枚から手づくりするという、布花の教室に通って学んでみました。とても奥深く、時間のかかる作業で、出来上がるものも「素敵だなぁ」と思っていたのですが、なんだか気づけば動物をつくってしまうのです。やっぱり、動物が好きなのだと思います。
動物をつくっているときはとても楽しくて、どんどん手が進みます。おそらく「表情」があるからなのではないかと思います。ひとつひとつ手しごとでつくられる動物たちは、顔もちがうし、形もちがう。「たったひとつ」だからこそ愛おしく思えるのです。まだまだ知らない動物もたくさんいるので、飽きることがないですね。
「恥ずかしくて見せられない」も乗り越えよう
「つくってみたものの、人に見せたりプレゼントしたりするのが恥ずかしくてできません」という方もよくいらっしゃいます。はじめは誰でもそうですよね。ましてや売り物にするなんて、とても考えられなくて当然だと思います。
正直、わたしも家庭科などは苦手なほうでしたし、いまだにミシンもできません。ときどき「何の動物だかわからない」と笑われることもあります。そんなときは、「ホントですよねー」とわたしも笑ってしまいます。
人それぞれ感覚は違うもの。「好み」だと思うのです。大切なのは、自分が「いい」と思えるかどうか。自分が心から気に入っているものであれば、何を言われても気にならないものです。
<実例解説 4つのステップ>
初めての方でも大丈夫、可愛い動物のつくりかた
【準備するもの】イメージ図・切り抜いた型紙・布2枚(表と裏)・飾りのリボン・針・糸(1m)
【STEP1】布を中表になるように重ね、裏になる方の布にチャコペンなどで形を描く。半返し縫いで背中の2cmを残して(綿つめ口)縫う。縫い目は2~3mmほどで。※角は二重に縫います。
【STEP2】縫い目から5mmくらいのところを残して周りをぐるりと切り、角に切込みを入れます。
※縫い目まで切らないように注意! 必ず縫ってから周りを切ること!(はじめに切ってしまうと縫いづらくなります。)
【STEP3】引っくり返して、綿を詰めます。綿を詰めたら、まつり縫いで閉じます。
※ピンセットなどを使うとやりやすいです。
【STEP4】 顔は自由に絵を描くように刺繍して、背中に飾りのリボンをボンドで貼ったら出来上がり♪ 『いぬみたいなバク』 完成!!!
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手づくりの魅力は、「たったひとつ」なところ
今まわりを見渡せば多くのものがデジタルなものに置き換えられているその一方で、手づくりの魅力に気づく人も実は増えています。
わたしがつくり手として感じる「手づくりの魅力」は、こんなことでしょうか。
・ひとつひとつ、じっくりと向き合い、ミリ単位の細部にわたるところまで、納得のいくまで手をほどこすことができる。
・少しずつカタチになっていくところに愛着がわき、心をこめてつくることができる。
時間をかけて、丁寧に手しごとをすると、心が豊かになるように思います。完成のイメージはあるとしても、手でつくることでやり方が無限に広がって、自由になれるような気がします。
もちろん、受け取る側としても「手づくり」のものをもらうとうれしいです。「この世にたったひとつの、自分だけのもの」と思うととても愛おしい気持ちになる。それをつくるためにかけられた時間ごと、受け取れた気がして心が温まりまるのです。
実際に、わたしの作品のお客さまからの反応もそういうものが多いです。手づくりなので、まったく同じものはなく、もう二度と出会えないという「一期一会」なところに、魅力を感じていただけたりします。
また、いつもちがったものがある、と楽しんでもらえることもあります。動物のモチーフは親しみやすいようで、顔の表情を見て笑ってくれたり、「癒されるー」なんて言ってもらえたりもします。
大切な人への贈りもの、またはご自身への贈りものとして、オーダーされることも多く、贈る方、贈られる方、それぞれのことを考えながら、心をこめてものづくりをしている時間は、自分にとってもとても大切で、温かい時間。笑顔を見ることが出来たとき、「ものづくりをしてきてよかった」とこの上なく幸せな気持ちになるのです。
可愛いどうぶつたちの作りかた
1. 連れて歩きたくなるような、心惹かれるどうぶつを探してみよう!
2. ヘンテコなかたちでも、ぶさいくでも大丈夫。にこにこしちゃうようなものをつくろう!
3. 途中でやめずに、まずはひとつ、かたちにしてみよう!
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トップ写真、一番下写真の撮影 : hiromi kawaguchi