よいファシリテーターの条件のひとつは、決まった時間内に滞りなく予定どおりにプログラムを終了させること、と思い込んでテキパキ仕切っていました。そのため少しでも予定より遅れてくると「うまく進行できずに失礼しました」とお詫びを
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参加者の思いを感じる方法
中山 隆文 ( ファシリテーター / Office NT 代表 )
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自由に生きるために
自分の思いと参加者の思いのギャップを楽しむ
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せっかく開催できたワークショップ(※)。少しでも多くの学びや気づきで喜んでもらいたいですよね。
自分がやりたいこと。伝えたいこと。開催前の準備で「あれも」「これも」「もっと詳しく」「もっとわかりやすく」など参加する方々に喜んでいただけるイメージが膨らむと、もっと工夫して充実した時間にしたくなります。しっかりプログラムを考え、話し合う時間や、作業する時間も具体的なイメージをもとに計画します。
以前の私は、よいファシリテーターの条件のひとつは、決まった時間内に滞りなく予定どおりにプログラムを終了させること、と思い込んでテキパキ仕切っていました。
当日のタイムスケジュールにあわせて進行すること、予定していた順番で進めることが参加者への「学び・気づき」の多い流れであり、守るべき重要な要素であると解釈し徹底してました。そのため少しでも予定より遅れてくると、
「時間が遅れてしまい、すみません」
「後半のプログラムを短くする必要がでてきますので、ご協力をお願いします。」
「申し訳ありません。最後のプログラムができなくなりました」
「うまく進行できずに失礼しました」
とお詫びをしながらプログラムを進めていたのです。
ある意味、馬鹿正直に開催側の状況を伝え、参加者は一方的にお詫びされて、
「何か悪いことでもしたの? 」
とばかりにワークショップへの集中も途切れがちになります。
そうならないように、予定していたプログラムを計画通りに終了させるため、盛り上がっている途中でも強引にプログラムを先へ進めたり、休憩時間を減らしたり、話し合い・対話の時間を後半になるほどに減らしたりして調整する術を身につけていました。ある意味、臨機応変に対応できてると錯覚していたのです。
ですが参加者のアンケートでは、
・駆け足だったので、理解がついていかなかった。
・もう少し他の方の意見を聞いてみたかった。
・時間が足りないと思う。
などワークショップのテーマや内容についてだけでなく、進行方法へのフィードバックが多いことも続きました。
※ワークショップとは、参加型の学びや創造のスタイル。講義形式との違いは、一方的な知識の授与が目的ではなく、参加者たちで協同し解をつくり出していくところ。新しいプロダクトやコミュニケーションを生み出す場であり、教育、アート、まちづくり、ビジネス、社会改革など多岐にわたる分野で実践されています。 |
時間通りに終わることが全てではない
たしかに、結婚式の司会進行や余興などでの進行役ならば、お店を借りてる時間内にすべてのプログラムを終了させる必要はあります。ですが、ワークショップでは必ずしも重要ではなかったのです。そのことを理解していないわたしは、いろいろなワークショップに参加していていても気がつかなかったのですが、ワークショップの開催をお手伝いして、初めて知ったことがありました。
参加者=予定された通りに進行しプログラムを終了している
開催者=状況をみて、進行内容の順番を変えたり、削除、追加して調整している
初めて当日だけのお手伝いで関わったワークショップは、当時、私の知る限り経験豊富なファシリテーター4人がプログラムデザインをし、普段の仕事でもファシリテーションを使うような方々向けの「合意形成」を学ぶワークショップでした。
開始ギリギリまでプログラムの見直しを行い、タイムスケジュールもあって、ないような進行ですが参加している方々の満足度は高く、最終的に参加した方々が多くの学び・気づきを体験した時間となっていました。
そのときに初めて、ワークショップを進行するにあたって大切なこと。
『場(参加している方々も含めて)の雰囲気を確認する』
を知った瞬間でもありました。
多くの方が同じ内容のワークショップに何度も参加する方は少ないかと思います。そのため事前に告知されていた内容が実施され、学び気づきを持ってかえることができるかが気にしたい点であり、どのようにプログラムの内容が変わったかは解説されない限り気がつきません。
お芝居では公演まで何度も練習した内容も、初日と中日と最終日と役者のアドリブなども入って内容や演出が違っていると聞きます。演劇ファンの方には初日と最終日へ観にいく方もいるという話も聞いたことがあります。
観覧する人もワークショップへ参加した方も、終わりよければ全て良しなのです。参加者は気がつかないまま、プログラム内容も時間配分も変更されていたのですが、結果的に満足度も高くなり全体の雰囲気もよくなっているのです。参加者の様子を確認し、状況を見て対話の時間を長くしたり、解説を簡略化したり、理解の深度を聞いて、丁寧に説明しています。
そのように柔軟性のある対応と判断はある意味、ベテランのファシリテーターが4人もいたからできた技かもしれません。では、まだ経験の浅い自分が、その方々のようにするにはどうしたら良いのだろうか?
あらためて別の機会に注意して観察していると、いくつか共通している行為があったのです。
その1:ワークショップを開始する前に、早く集合した参加者と、さりげなく話をしている。
その2:参加者の中でムードメーカー的な役割りを担いそうな方を見つけている。
その3:今日のアジェンダ(項目、メニュー)を使って、参加者全員に今、何をしてるか途中で報告している。
その4:休憩時間にも参加者へ話しかけたり、気軽に声をかけてもらえる雰囲気を作っている。
これらは、いったい何を意味しているのかというと、『場(参加している方々も含めて)の雰囲気を確認する』行為そのものなのです。
時間配分や内容の微調整を行う判断基準を、開催側の思い込みや経験軸ではなく、参加者の期待や気持ちや理解を軸にするために情報を集めているのです。
たとえば
「何を楽しみにして参加しようと思ったか」
「今日のプログラムで、期待している項目は何か」
「疲れてないか(集中できているか)」
など、直接、参加者から聞くこともあれば、参加者同士の会話から聞き取れることもあったり、参加者自らが話してくれることもあります。それらを丁寧に聴き、当日のプログラムに反映していたのです。こんな経験をしたことはありませんか?
参加したトークイベントで感じた違和感
「参加者の言葉から思いを感じとる」
この気づきをえてから、トークショー的なイベントやワークショップに参加したときに今まで感じなかった違和感を持つようになりました。
たとえば、私が何回か参加したあるトークイベント型ワークショップでの出来事です。
当日のプログラム ゲストスピーカーAのトーク (テーマとは違う内容や脱線した話題で予定時間もオーバー) ゲストスピーカーBのトーク (Aが押したので駆け足で説明し、用意していたパワーポイントの資料もそこそこに) A×B対談 (話たりなかった内容の補足で終わり、テーマに即した内容は少し… ) 質疑応答 (時間が少ない。自分の番まで回らず) |
後半に登場する方(スピーカーB)との質疑応答、こぼれ話などが聞きたかったのに、最初に登場した方(スピーカーA)の説明時間に時間が取られて、一番楽しみにしていた方の話は駆け足。登壇者同士のトークセッション内容も、説明の補足で終わってしまう。質疑応答の時間となっても、大勢いる参加者から代表者的に質問しやすい雰囲気もないし、誰かが最初に質問したとたん、手を上げる人も増えて、結果的に時間が少なく、自分の番までこない。
当日の司会進行者は、参加者の様子ではなくゲストスピーカーに気を配りすぎたため、
・参加者は何を期待して来たのか?
・あらためて、どんなテーマ設定をしていたのか?
・本当に目的を達成したイベントになっていたのか?
という違和感を感じて終わります。
ですが、参加者は全員が先に書いたように「こういうもの」としか認識できないため、とくに強い不満も感じず、期待していた方に会える、少しだけ直接会話する機会もある、または名刺交換もできるなど、それなりに満足した印象となります。
ゲストスピーカーに自由に話してもらう設定をしても、枠の時間だけを伝えるだけでなく何に時間をかけても良いのか、必ずやっておいたほうが良いことは何かぐらいは、事前にゲストスピーカーの方と確認しておくほうが良かったかもしれません。
何か失敗や、不満があったときはダイレクトに伝わってきますが、判断する基準もなく初めて経験するワークショップならば、参加者は失敗や不満すら気がつかずに終わってしまい、大満足までは到達しなくても満足レベルになってる気がします。
参加者にプログラムの進行方法について講評してもらう必要はありませんが、参加者が期待していたことは何か?を思い込みや想定だけでなく、実際に聞ける機会を作っておくと、その場に全員が納得できるバランスの良いワークショップになるかもしれません。
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ワークショップ参加者の満足が高まる方法 1. 参加者の声を聴く機会はありますか? 2. 参加者と開催者のギャップに気がついてますか? 3. 終わりよければ全て良し! |
ファシリテーター中山隆文さんが教える はじめてのワークショップづくり
TOOLS 58 はじめてのワークショップづくり
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Photo: Puma Lab