TOOLS 58 はじめてのワークショップづくり/ 中山 隆文( ファシリテーター / Office NT 代表 )

 30代になると社内でのポジションも変化し責任も変化する。立場が上がるにしたがって会社で失敗したときのリスクが高くなります。 だったら、自分たちで「失敗しても許される場」をつくろう! 知見ある人を招いて「勉強する機会」をつくろう!
TOOLS 58
はじめてのワークショップづくり
中山 隆文  ( ファシリテーター  /  Office NT 代表 )

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自由に生きるために
気軽に「3人の集まり」からはじめよう

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子どもからお年寄りまで男女関係なく幅広い方にむけて、いろいろなワークショップが開催され、ワークショップという言葉を耳にする機会が増えました。でも、ワークショップってなに? という方もまだまだ多いのではないでしょうか。

「セミナー、研修、勉強会、座談会、イベント、トークライブと何が違うの?」という人もいれば、「 ワークショップって、なにかのお店? 」フリーマーケットと同じように想像する方もいます。わたしも最初はそうでした。

はじめに確認しておくと、わたしが考えるワークショップとは、「みんな楽しみながら考え発見共有する場」です。

 

みんな = 参加者もスタッフも進行役も、参加する全員が、一方通行ではなく、双方向で関わりを持つ
楽しむ = その瞬間瞬間に没頭している。真剣でもあり笑える瞬間もあり一喜一憂できる状態
考える = 深くても浅くても、話を聞き、受け止め、自分の言葉や思いを確認していく
発見する = 自分への発見、他者からの発見、グループでの発見、何かの気づきを大切にする
共有する =どんな思いや意見も発信し、他の方の思いや意見も受け止め、気づきを持ち帰る

 

研修とワークショップの違いやワークショップの定義などで、いろいろな意見や考え方があるかもしれませんが、「発見(気づき)を共有する場(機会・時間)=ワークショップ」と考えています。

 

あなたにもできるワークショップ 4つのタイプ 

 

世の中で多くのワークショップが毎日開催され、多くの方が学びの機会を体験されていますが、わたしが知る範囲で大きく4つにワークショップのタイプは分類されます。

 

(A)知識伝達型 = 知見や経験を多くの人に伝えるワークショップ 。伝えたいコト、知りたいコトを学びあう場

(B)課題解決型 =「?」「!」をみんなで考えカタチにするワークショップ。いろいろなアイデアで課題を解決する方向や方法を探す場

(C)交流親睦型 = 関係を深め、意識を共有するワークショップ 。目的や目標を理解し、個々の関係を構築する場

(D)体験実践型 = 体験や実践を通じて、興味を持ってもらうワークショップ。やってみて、実感し興味関心を高める場

 

例えば、

・映画監督との対談や読書会ワークショップは「A
・地域の問題解決方法などを話しあうワークショップタイプは「B
・会社の部署と部署の交流するワークショップは「C
・オリジナルのろうそくを作るワークショップタイプは「D

といったぐあい。ふたつのタイプを融合しているワークショップもあるでしょう。共通して言えるのは、冒頭に伝えた「発見を共有する場」であること。

こうして分類してみると、だれでもワークショップができる気がしませんか。 自分だったら「あれ」かな、「これ」かな、と想像してませんか? もし一瞬でも脳裏をよぎった思いつきがあれば、それをメモとして書き出してみましょう。それは実現できますし、ワークショップを開催できます。

 

「それでは実際に食べられる野草を狩りに行きます」

 

「自分の理想の働き方について各チームごとに話してみましょう」

 

 

思いつきを邪魔する
2つのマイナス思考をどう乗りこえるか 

 

アイデアは浮かんだ。では、実際に開催してみようと思ったときに、特に初めてのときはどなたでも、さまざまな不安が出てきます。実際にワークショップを開催するときにストップしてしまうマイナス思考は大きく2つあります。

 

1. 他にも知識経験が豊富な方もいるし、自分が開催するのは変かも…。

その分野で有名な方がいる、自分より知見豊かな方を知っている、先生と思われるほどではない。 など他者と比べて、自分がするにはもっと勉強や経験、実績が必要と考えてしまう場合。

もしかすると考えない人もいるかもですが、わたしは必ず頭の中に登場します。でも大丈夫。知識が足りないけど興味ある内容で開催したいなら、自分自身が学べるワークショップをつくればよいのです。

例えば、夏休みの最終日まえに宿題をする勉強会を友人の家で一緒にした経験ってありませんか? 算数が得意な友人、国語が得意な友人、社会が得意な友人、どれも苦手なわたし。呼びかけて集まって、一緒に宿題をして得意な友人が他を教えて答えをチェックするといった具合に。 そして、わたしは呼びかけただけで、得意で教えることは1つもなし。でも全員が宿題を終わらせる。 苦手な科目も得意な友人がいれば早く答えが写せて(だめですが)終わらせることに成功! これもワークショップ!

いま、よく開催されている読書会もワークショップです。理解が難しい本でも知見ある方の解説があると理解が早く深くなりますよね。学びあえ、気づき、発見できる場をセッティングするだけでも参加者は満足できるものなのです。

 

2. 参加者がぜんぜん集まらないかも…。

募集しても、だれも来なかったらどうしよう。どうやったら集まるのか。参加費は無料がいいのか。 開催する前から、たくさん人を集めよう、完璧にやろうと気負いすぎてしまう場合もよくあります。

でも、そんな気負いは必要ありません。最初は小さく、3人ぐらいでちょうどいいのではないでしょうか。 たとえば、こんな感じで。

・ 企画主催する人
・ ざっくり内容を知っている人
・ 何も知らないけど賛同してくれる人

ひとりぐらいは予備知識が少ない人がいたほうが発見や客観的な質問などが聞けるので良いかもしれません。 そこから、5人、7人、10人と増えていくのか、5~7人ぐらいの人数で回数を重ねていくのか。これは、様子を見ながら考えていけばいいでしょう。

わたしが最初に体験したワークショップは3人でした。もしかしたらただの「打合せ」と言われても差がないような…。30代が集まり、異業種交流会をベースにしたマーケティング勉強会でした。これが楽しかったのです。社会に出て20代のうちなら失敗も許されるし、無知であっても寛容でいてもらえたものです。しかし30代になると社内でのポジションも変化し責任も変化する。そのときに会社で「勉強」という体裁での挑戦は失敗したときのリスクが高いので、勇気が必要になります。 だったら、自分たちで「失敗しても許される場」をつくろう! 情報共有や発表体験や知見ある人を招いて「勉強する機会」をつくろう! となり、『関西お仲間マーケティング勉強会』という名の会を立ち上げました。 その第1回が発起人と賛同者、そしてわたしも入れた3人。

そう! さっき書いた3人で、何も知らないでひょっこり参加したのが、わたしです。

そんな小さなキッカケでしたが、この勉強会の主宰メンバーとして毎月開催を5年継続することとなり、最大で30人近く集まる会に育ちました。この勉強会でできた仲間とは、今も場所を東京に変えて繋がっています。 ちなみに、スタート時点でわたしはマーケティングの知識は何もなかったのですが、今はWEBマーケティングに関連する内容なら少しは自信がつきました。

何がキッカケでどうなるかはわかりませんが、何かを知りたくなった時など、気軽に学べる場をつくるのは、そんなにハードルの高いことではありません。最初は3人くらいでスタートする気軽さで、ちょうどいいのです。

ここで大切なこと。

・ やりたいワークショップは何か
・ 開催し終了した時に、自身も含めて「発見し共有」できることは何か

この2つが整理して明確になっていたら、ワークショップは成功です。「何か」を発見し共有できるための方法をこの後で考えていけばプログラムが完成します。なんなら、プログラムも一緒に考えてもらうワークショップにしても良いですしね。

 

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はじめてのワークショップづくり
1.   発見を共有する場が、ワークショップ
2.   やりたいワークショップは何か、考える
3.   終えた時に「発見し共有」できるゴールを明確にしてみる

 


中山隆文

中山隆文

(なかやま たかふみ) ファシリテーター、コミュニケーションプランナー、クリエイティブディレクター。1973年、京都府生まれ。映像、印刷、WEBの制作経験と、社内広報や社内業務設計の経験を通じて、制作側と発注側、個人とチーム、チームと組織、それぞれの立場から見た問題解決案を企画提案を生業としながら、現在、チームファシリテーション研究会メンバー、アートファリテーションプロジェクトメンバーとして、チーム内コミュニケーションの活性方法を研究し、チームコミュニケーション、チームビルディングを学ぶワークショップをほぼ毎月開催。Office NT代表。日本ファシリテーション協会会員、千歳船橋駅前広場運営準備会メンバー。