ちいさなお店をはじめたこと。~等身大で、自由な働きかた~【第10話】大切さは名前と同じ。自分たちのロゴマークはどう作るか<デザイナー編>

ちいさなお店をはじめたこと。

sasamoto_s「人間ってどんなに覚悟しても、時間とともにゆるくなる生き物なんですよ。キチンと自分たちの理念や想いに基づいたロゴを作って、それを日々目にすることで行動や意識が変わる、という効果はバカにできないと思いますね」

第10話 大切さは名前と同じ。自分たちのロゴマークはどう作るか <デザイナー編>

 

こんにちは。ノマディックラフト ヨメです。

ノマディックラフトの活動のなかで、契機といえる出来事はいくつかありましたが、その大きなひとつが自分たちのロゴマークを作ったこと。ロゴができたことで店や活動の見え方が変わった、かみ砕くと「しっかり活動しているんですね」と評価されやすくなったというのでしょうか。名刺やショップカード、袋などの小物や付帯物にも統一感が出て、より“らしさ”が出しやすくなったのは第9話で触れたとおりです。

そんな大活躍してくれているロゴマーク、デザイナーにどう頼めば思いが伝わるのか、料金はいくらくらいかかるのか、など分からないことはたくさんありますよね。そこで今回は、餅は餅屋とばかりデザイナーに聞いてみよう! と、私たちのロゴを作ってくれたデザイン事務所『 project.E, inc 』さんにご協力を依頼。自分たちらしいロゴマークを世に生み出すためのポイントについて、2回に渡りお届けいたします。

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お話しを伺ったのは『project.E, inc』代表の太田 ロビン 紳さん。企業やブランドのビジュアル戦略やブランディングまで一手に手がけている方です。ノマディックラフトでは2013年にロゴの制作を依頼、合わせて名刺とショップカードもデザインしていただきました。

さて、ここからは太田さんとヨメの対談形式でお届けしたいと思います。

 

覚悟を背負う
それがロゴマークの役割

 

デザイナーにこんなことを聞くのは恐縮なのですが… そもそもロゴって必要なのでしょうか? (ヨメ)

「ははは (笑)。ロゴがないまま活動している企業やブランドもたくさんありますよ。ただ僕の考えでは、ないより絶対にあったほうがいい、と断言できますね。ロゴを作りたいという相談の多くは『ブランドや活動のイメージを強めたい』とか『目立つ印象にして売れるようにしたい』などのニーズが背景にあります。でも、ロゴを作る本当の意味はそこではありません。ロゴマークというのは、自分たちがどんな思いで何を伝えるために活動しているか、という世界観の表れ。一度作れば、ウェブサイトや名刺などあらゆるものに登場して、自分の意志をすべてのツールに込めることができる。お店やブランド、会社にとってロゴマークは『この世界観や理念を背負って活動するぞ! 』という覚悟の表明のようなものなんです」(太田さん)

たしかに、私たちもロゴマークを使うようになってから「自分たちらしさ」をより意識するようになった気がします。

「人間ってどんなに覚悟しても、時間とともにゆるくなる生き物なんですよ。キチンと自分たちの理念や想いに基づいたロゴを作って、それを日々目にすることで行動や意識が変わる、という効果はバカにできないと思いますね」

 

沖縄出身、京都育ちの太田さん。2005年に滋賀から発信した伝説的カルチャー誌『alpha and omega Ⓡ 』を創刊、2010年より東京に拠点を移し、数々のデザインワークやブランディングを担当。写真家としても作品を発表していらっしゃいます。ライターのヨメが『alpha and omega Ⓡ 』にコラムを掲載していただいたのが出会いのきっかけ。

 


実際に「プロにお願いして、ロゴマークを作りたい! 」と思ったとき、どうやって相性のよいデザイナーさんを探せばよいのでしょうか?

「ポイントとして『誰に頼むのか』『いくらで作るのか』という2点が決まれば、話は進んでいくはずです。まずは『誰』ですが、知り合いでおしゃれなロゴを使っている人に紹介をお願いしたり、インターネットでデザイン事務所を検索してみたりなど、情報収集をするといいですね。次に『いくらで』ですが、正直なところロゴデザインの価格はデザイナーによってピンキリです。今後もよい関係を築いていくため、まずは率直に『ロゴマークを作ろうと考えているのですが、だいたいの目安価格はいくらですか? 』と、気になるところに問い合わせしてみるのが一番。デザインのテイストが好きなのは大前提として、自分が払える等身大の価格で、できるだけ親身に相談にのってくれる人を選ぶとよいのではないでしょうか」

驚くほど安い値段で作ってくれる人もいれば、目の玉の飛び出るような価格の人もいますよね。どうして人によって、こんなに値段が違うのでしょう。

「デザインというのは知的財産なんです。だから価格の違いは、露出頻度と関係があります。より多くの人の目につくような大手企業のロゴだと、そのぶん価格は上がります。僕の今までの経験から言えば、ちいさいお店や個人作家さんがロゴマークを作るとしたら、デザイン事務所なら10~15万円、フリーランスのデザイナーなら5万円くらいを目安にするとよいと思います」

ちなみに、値段の違いって完成度に影響するんですか? 

「お金をかければいいものができる、というのは間違いだと思いますよ。実際、まだ若くて実績が少ないから単価が安いだけで、センスのいいデザイナーはたくさんいます。心の中にあるイメージを形にする作業を行うわけですから、金額だけに気を取られず、コミュニケーションの取りやすさや人間としての相性なども大切にするといいですね」

 

ちいさな店や作家の熱意
デザイナーのやる気に火をつける


よいロゴマークを作るために、デザイナーさんに対して私たちができる準備って何かありますか? 

「デザイナーはプロですけど、神ではないんです。だから『プロに任せておけばOK』みたいなスタンスだとよいロゴにはなりません。要望を打合わせるとき、自分がどんな思いでやっているのか、恥ずかしがらずにちゃんと伝えるのが思いのほか大切です。デザイナーの心にその熱意が伝わると、やはり完成度が違う。活動に込める思いやこれから何がしたいかなど、前もってメモにまとめておくと役に立つと思います」

逆に、これやるとモチベーション下がるんだよね… っていう行為は (笑)? 

「わりとよくあるのですが『カッコいいロゴを作りたいんです! 』と熱くご相談いただき、がっちり打合せもして、いざ見積もりを送ると音信不通になる… という人は決して少なくないんです(笑)。『最初に予算を聞いたほうがいい』とアドバイスしたのは、それが理由。いきなりお金の話をするのははばかられるかもしれませんが『だいたい予算は10万』などと教えていただければ、『10万だとこんなご提案ができます。15万だとこのように変わります』など、実情に合わせた打合せができるんです。最初から『5万でやりたい』と言ってくれたら『僕の会社ではお受けできませんが、若手デザイナーを紹介します』ということができるかもしれない。そのほうが、お互いに時間も労力も無駄になりません」

ちなみに、いろんな会社から見積もりをとるのはよいのですか?

「はい、よいと思いますよ。同じ金額でも提示される内容や担当デザイナーの対応は様々だと思うので、キチンと比較検討して納得いくところとやればいいと思います。ただ、他から提案されたアイデアをよその会社に持っていくのは、絶対にしてはいけないマナー違反なので、それはご注意ください」

 

お金のことなど話しづらいトピックも率直にお答え頂き、感謝の極み。「デザインはアートに近い場所にあるけど、アートではありません。発注者とデザイナーが一緒に作り上げていくものですから、分からないことは遠慮せず、どんどん質問をぶつけていいんですよ」と太田さん。

 

どんなロゴマークを使うかは
どんなを着て生きるのか、と実は同じこと

 

私たちのように、ちいさいお店や個人での活動だと、そんなにお金がかけられない人もたくさんいると思うんです。コストを圧縮するよい方法ってありますか? 

「コンセプトや理念をしっかり盛り込んだロゴマークを作り、長く使って育てていくのが理想ではあります。でも、スタートアップでまだお金が用意できないなら、最近増えているクラウドソーシングのようなものを利用して安いデザイナーを探し、最低限の納得がいくものを作って、まずは3~4年使う。そして経験も増え、金銭的な体力もついてきたら、心から納得のいくロゴをコンセプトの見直しも兼ねて作るとよいと思います」

デザイナー選びは、自分の状況によって使い分けてよいものなんですね。

「デザイン、と考えてしまうと難しく思えますが、普段着ている洋服と同じ、と考えてみてはどうでしょう?  自分がいくらの洋服を着ているのか、知らない人はほとんどいないはずです。全身ファストファッションの人もいれば、ハイブランドで固めている人もいる。外から見える服はセレクトショップで買うけど、下着は量販店でいい、という人もいるでしょう。世の中に溢れている安い服でも、今はそれなりにおしゃれができます。しかし、ちゃんと身銭を切っていい服を着ると、見た目の印象にクオリティがはっきり表れる。それにちゃんと対価をかけたぶん『自分はいい服を着ると決めたんだ』と意識が変わり、相応の振る舞いをするようになる。デザインやロゴを作るのも、仕組みは同じことなんですよ」

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次回は、ノマディックラフトのロゴが白紙の状態からどうやって生まれてきたのか、デザイナーである太田さんと、発注者である店主、それぞれの目線からお届けしようと思います。どうぞお楽しみに!

取材ご協力/project.E,inc 

 

 ノマディックラフトのイベント出店情報 

安穏朝市 
@東京中央区・築地本願寺前広場
10月18日(日) 9~15時
詳細は  http://annon-asaichi.blogspot.jp
毎月1度、本願寺さんの広場で開かれる暮らしの温もりや匂いを感じる素朴な朝市です。採れたての産直野菜から暮らしの雑貨までが揃います。私たちも看板犬レラと一緒に、ゆるゆると出店中。築地の場外市場からも歩いてすぐ。気持ちいい休日の朝、ぜひ足をお運びください。.
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テラデマルシェ
@東京台東区・宋雲院 10月24日(土)、25日(日)11~17時
http://terademarche.jimdo.com/
上野駅は浅草口から徒歩5分。台東区役所のすぐそばにある、風情あるお寺・宋雲院さんで開かれる手作り市です。作家が作る雑貨やアクセサリー、素材にこだわったスイーツなど約50ブースが集合します。2回目の出店となりますが、今回は看板犬レラも連れて行けそうです。広いお寺の本堂に、作家さんたちの作品がずらりと並んで見応えがありますよ!

 

(次回もお楽しみに。隔週土曜更新です)
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 連載バックナンバー

第1話 家=店。人が思うよりもずっとちいさな投資でお店をはじめてみた(2015.6.13)
第2話 店から出て人に会う、出会いをつくる。〈イベント出展篇〉(2015.6.26)
第3話 1人2役 × 2。兼業夫婦は不安定? 時間も予定も「自由」のメリット・デメリット(2015.7.11)
第4話 なんで「少数民族の手仕事」? それはやっぱり「好き」だからです(2015.7.25)
第5話 暑さに負けず蚊に負けず。探して洗って、よみがえる古布たち 〈 仕入れ旅篇 〉(2015.8.8)
第6話 どうしてそんなに自由なの!? 現地の人たちと商品を作る(2015.8.22)
第7話 モン族の女性に聞いた、美しい刺繍の裏側にある物語(2015.9.5)
第8話
 小商いでも管理は大切。入るお金、出ていくお金何がある?(2015.9.19)
第9話 大切さは名前と同じ。自分たちのロゴマークはどう作るか<デザイナー編>(2015.10.03)

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オーディナリー編集部がノマディックラフト参加の展示会を観に行った話

【レポート】遠い国の伝統的な手仕事がいっぱい!

 

【関連サイト】
ノマディックラフト ウェブサイト http://nomadicraft.com/
ノマディックラフト 店主ブログ http://blog.shop.nomadicraft.com/
ノマディックラフト Facebook https://www.facebook.com/nomadicraft
木内アキ(ライターとしての仕事) ウェブサイト http://take-root.jp/

 

 


ノマディックラフト ヨメ

ノマディックラフト ヨメ

自然・旅・民族をテーマに、タイ、ベトナム、ラオスの山岳地帯に住む少数民族の手仕事を扱う、西小山のアトリエショップ『nomadicraft』を店主であるダンナとともに運営。母から子へ、脈々と受け継がれてきた素朴で美しい手仕事を紹介しながら、作り手である女性たちに仕事の機会を提供し、貧困の和を断ち切るための支援も行っている。ふだんはフリーランスのライター・木内アキとして「女性にまつわる人・旅・暮らし」をキーワードに、雑誌や書籍を中心に執筆活動中。目標は「キチンとした自由人」。 ノマディックラフト 店主ブログ http://blog.shop.nomadicraft.com/ 木内アキ ウェブサイト http://take-root.jp/