舛廣純子が聞く「しなキャリ図鑑」 【第36話】 フリーアナウンサーのチカラ / あさがみちこさんの場合

masuhirojunko_long_banner自分がやりたいことを貫くだけではなく、人から求められ、それをやって、それが評価されて、つながっていくのが向いている仕事。頂いたお仕事が自分のやりたい事とベクトルが違っても、その違うはあくまで主観で、相手はできると思うから依頼してくれている。
連載「しなキャリ図鑑」とは  【毎月1回更新 / 第4月曜】
「しなやかに生きる人のためのキャリア図鑑」の略称。キャリアカウンセラー舛廣純子が、イキイキと働く仕事人にインタビューし、その仕事に大切なチカラを中心にキャリア・仕事そのものも掘り下げます。10年後の未来に自分がどんな風に仕事をしているのかも見えづらくなった今の時代。インタビューを読むことで、自分の持っている力にも気づいたり、したことのない仕事に興味を持ったり、これから伸ばしたい自分の力を見つけられたなら、あなたの仕事人生も変化に対してさらに強くてしなやかなものになっていくかもしれません。

 

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第36   フリーアナウンサーのチカラ 
伝えるものを信じ、伝える相手を愛し、相手の求めるもの察知し伝える「伝えるエキスパート」

TEXT : 舛廣 純子

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教えてくれた人
 
あさが みちこ フリーアナウンサー 

1973年、埼玉県出身。フリーアナウンサー 。日本収納検定協会理事。小劇場の舞台から、商業演劇を経て、テレビ・ラジオでキャリアを積んだ「伝えるエキスパート」。印象的なハスキーボイスでのナレーションや、アドリブを交えながら進行するMCは評価も高く、「セーラームーン展」「STARWARS展」などのプレスツアーや、コンペティション・ウエディングや出版パーティーなど年間100本以上のMCを担当。趣味であった片づけにおいてもキャリアを積み、2017年より一般社団法人日本収納検定協会の理事に。セミナーでのテンポのいい語り口調は好評で、大手企業や中国でも片づけの講座を担当している。現在は、講師に向けた話し方講座・MCの養成なども手掛けている。2003年~2018年4月までニッポン放送系列「みんなでニッポン日曜日」でレポーターを担当。2018年10月より「竹内都子の聴きかじり、まるかじり」にレギュラー出演中。石井光三オフィス所属。

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<フリーアナウンサーにとって大切な能力はなんですか?>  
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1. 商品(伝えるもの)そのものを信じるチカラ  好意的関心  柔軟性  多様性理解    

ラジオでいうなら情報、例えばイベントの面白さや価値などを的確に切り取って伝えること。的確に切り取るためには、その商品そのものに良さがあることを信じることが大事だと考えています。その商品を信じていないと、それは声に乗ってしまうし、上手く伝わらない。私は頂いたお仕事は基本お引き受けするのですが、中には引き受けた後、その商品が自分にとって価値を伝えづらいモノだったりすることも正直あります。でも、どんなモノにも必ず良さはあると思っています。たとえ味が好みでなくてもそのパッケージが魅力的だとか、その商品のまわりにいる人がステキな人たちなど。自分が伝えるものには責任は持ちたい。だから自分がそのモノやコトを信じ、宝物探しのように良さを見つけます

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2. 伝える相手を好きになるチカラ   好意的関心 関係構築力 

 

リスナーさんだったら、その時間をわざわざ割いて聞いてくれるのがありがたい。講座だったら来てくださるだけでありがたい。それだけで愛情が湧いてくるんですよね。中国で片づけの講座をする時なんて、広い国内を移動するのに何時間もかけてたい、通訳はつくものの、私が日本語でやることのリスクも理解した上で来てくださる。もうハグしたくなるぐらいありがたいですよね。おそらく、そういう好きになるチカラがあると言葉の壁すら越えて、自分が伝えたいものが伝わるんじゃないでしょうか。自分自身の感情はかなりコントロールしていますが、伝える相手を好きという前提があるからこそ伝わるものがあると信じています。

 

3. 相手が何を感じているかを察知するチカラ  観察力 対人理解力 

講師向けの講座の際、相談でよくあるのが、「空気が悪くてうまく話せない」「むすっとしている人の反応が気になってうまく話せない」というもの。そんな時私はいつも「自分が空気を作ればいい」と言います。むすっとしている人も、ふたを開けたら実は一生懸命話を聞いている人かもしれないし、その表情が標準だったりすることもある。そもそも納得している表情がそういう人もいます。だからそういう人の反応や表情で流されない。いつでも平常心でいるように心がけています。そのうえで、伝えよう伝えようとするのではなく、相手をよく見て、相手が何を感じているのかを察知する。それは一方向のインフォメーションではなく、双方向のコミュニケーションが重要で意味のあることだと考えているからです。「伝えるより伝わる」―これを心がけています。

 

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<なぜフリーアナウンサーになったのですか?>  
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芸能の世界に足を踏み入れたのは、高校生の時に吉本興業でアルバイトを始めたことがきっかけでした。はじめは電話番などをしていたのですが、ナイナイさんや雨上がり決死隊さん、FUJIWARAのお2人や宮川大輔さんが星田英利さんとコンビを組んでいたチュパチャップス、へびいちごさんやバッファロー吾郎さんといった芸人さんたちが「天然素材」というユニットを結成したのを機に、メンバーに同行して身の周りのケアやファンクラブの運営などの仕事を手伝うようになったんです。

その頃ちょうど高校生なのでその先の進路を考えなくてはいけなかったのですが、私ずっと親に対して反抗期で(笑)。大学にも行きたくなく、かといって就職もしたくなく、進路を決めかねていたんです。そんな時に宮川大輔さんとの会話の中で「役者ってすごいよね」という話になり、「大学に行かないで済む道、みーつけた」とある劇団の養成所に入りました。お芝居をしたいとかではなく、大学に行かないことを正当化するための養成所という選択肢でした。

当初は役者になるべく、なんとなく舞踊や発声、ダンスのレッスンをやっていました。養成所をやめてからは、小劇場の舞台に立たせてもらってました。その後大きな舞台に立たせてもらうようになったんですけど、稽古場の空気や先輩方とのやりとりが息苦しかったんです。

そんな時、演出家の白井晃さんに「あさが、無理に笑わなくていいよ」と言われたことがありました。きっと、無理に合わせようとしていたのを見透かされてしまったのでしょうね。そういっていただいたのを機に、同調するのをやめるようになったら、すごく楽になりました。そして、市川準監督にも「あなたは決まりきったセリフを言っても伸びないから好きにやってみな」と言っていただき、CMでも映画でも自由にやらせてもらっているうちに「自然でいいんだ」って思えるようになり、役者の仕事もちょっと好きになっていきました。

ちなみに私、基本的に流れに従うタイプで、頂いたお仕事は何でもやっています。それは布施明さんと舞台でご一緒した際に「君はお芝居以外のこともやってみた方がいいよ」と言ってくださったことが大きく影響しています。

その後、千葉テレビの教育番組のレギュラーが決まり、その番組のスタジオMC、現場レポーター、取材、ナレーションといった今の仕事のもととなるような仕事をさせてもらい、様々なことを吸収しました。取材などを通して、瞬時にいろいろなものをキャッチしたり、老若男女たくさんの人から分け隔てなく、警戒されず、楽しく、本当に思っていることを聴き出す力も身に付いていきました。

ただテレビ番組ゆえに、誰もいないのに、笑顔で仕事をしなくてはいけないことに、違和感を持ったり、教育番組ゆえの苦しさも抱えるようになってしまったんです。たとえば取材で障害を持つ子と過ごしている中で、彼らのたぐいまれなる才能・特技に触れるたび、「普通ってなんなんだろう、障害ってなんなんだろう」って考え出したら立ち止まってしまう自分がいたんですよね。

他にもテレビという映像を扱う仕事だからこそ、不幸や災害の時ですら、「絵」を求めてしまう世界に、大きな違和感を抱くようにもなり、自分の中で続けるのが難しくなりました。スタッフの方は皆大好きでしたが、誰にも言わず1人で結論を出し、「子どもが欲しいから」というウソの口実で、3年目の更新をお断りしてしまったんです。今だったら、モノの見方を変えて、楽しみを見つけながら仕事として取り組むことはできたのかもしれませんが、20代の自分には、「逃げる」という選択肢しかなかったんです。

降板してからしばらくして、その番組の関係者の方と話す機会がありました。その時、「一緒に番組を作ってきたのに。自分一人でやめることを決めたこと、僕たちはとても悲しかったんだよ。」と言われました。私が辞めて一年後に番組自体が終了したことも聞きました。その時「私、プロじゃなかったんだな」って気付いたんです。自分がやりたいことと自分が求められていることには違いがあるということを自覚し、「自分がやりたいことを貫くだけではなく、人から求められ、それをやって、それが評価されて、つながっていくのが向いている仕事。頂いたお仕事が自分のやりたい事とベクトルが違っても、その違うはあくまで主観で、相手はできると思うから依頼してくれている。だからこそ、頂いたお仕事をこれからは全うしていこう」と。初めてプロというものを意識し、決意した出来事でしたね。 

千葉テレビを辞めた後、MCやナレーションの仕事が増え、出産後すぐにラジオのレギュラーが決まりました。ラジオの仕事は今もレギュラーがあり、20年近くのキャリアがありますが、実はラジオが一番嫌いな仕事です(笑)。嫌いというと語弊があるかもしれませんが、ラジオの仕事は私にとって難しく、奥深く、常に修行で、常に挑戦なのです。

テレビよりラジオの方が言ってはいけないコトバがたくさんありますし、みんなが見ていないものを見えるように伝える難しさもあります。やり始めて3か月くらいは無条件に楽しかったのですが、間の取り方や、取材力、聴いている人がイメージできるよう伝える技術など考えだしたら、難しさのほうが強くなりました。今も「楽しいことに楽はない」と肝に銘じて仕事をしています。あっ、大嫌いだけど大好きです(笑)。

ラジオの仕事をすることで、プロである事がどういう事かも考えることができました。「みんなでニッポン日曜日」という番組で、毎週都内各地を巡って中継していたんですが、担当して4年目位で足を骨折してしまったんです。その時ディレクターから「骨折して… と言って中継したら、みんな心配しかしないから、放送ではそれを言わないでね」と言われました。

最初は骨折していることや痛いことを口に出したい自分もいたのですが、回を重ねるうちに「ゼロベースで話をきいてもらって、あさがって相変わらずバカだなとか、その場所へ行ってみたい!!とかリスナーの人に感じてもらうほうが大事だな」って。「今風邪ひいていて」とか「自分は今日寝不足」とか、そんな自分のマイナスな情報はいらない情報で、皆がいかに心地よくラジオを聞いたり、講座を受けられるかを考えてしゃべろうって思うようになりましたね。

当然生放送を15年もやっているといろんな事が起きるんです。胃腸炎で点滴しているのに抜け出して現場に行ったり、瓦を割ろうとしたのに瓦は割れず右の拳にヒビが入ったり… 声は正直です。そんな状況をも自分が楽しんでいないと、声で伝わってしまうのですよね。ラジオのリスナーさんは、その番組を聞きたいがためにその時間ラジオをつけてくださる方が多いので、その人たちにとって楽しくて有意義な時間になるよう意識しています。

ラジオの仕事に加えて、フリートークができることを買われてMCの仕事も増えていきました。イベント、記者会見、ウエディングなどでもMCをやらせていただいていますが、単に進行するだけでなく、その内容に寄り添って伝えることを大事にしています。

そのためにイベントの内容や出演者、その出演者の作品を観たり、話すのが好きな人なのか否かなどをリサーチしたり、事前に勉強しています。そうすることで、MCとして質問した時に、期待する反応が出なかったとしても、「この人ならもう一歩話を深められるな」「この人はこれ以上はやめておこう」など、その場で判断して調整することができます。

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臨機応変にフリートークができるのも、準備あってこそです。私は準備が仕事の8割だと思っています。捨て駒がいっぱいあってもいいんです。8しか準備していないと10の話はできないけど、100の話を準備していれば10の話をすることができます。それはMCだけでなく、講師をする時でもなんでも同じです。準備をしていないと不安になるし、予定調和になったり、もやもやを抱えた状態になる可能性があって、それは嫌なんです。基本的にインフォメーションの提供だけではなく、双方向のやりとりを大事にしているもので、そのためにも準備は欠かせません。

ウエディングもいろいろなことが起きます。だからあらゆることを想定しておきます。たとえば、結婚をご両親が賛成されていない場合。もし、新郎新婦のご両親が花束贈呈を断ったら?… と想定し、その場合どこで何をしてどう調整をするのか等々。

ただし、取材の時だけは、最低限の情報だけで臨むようにしています。なぜなら、あまりにも情報を入れると、その情報に左右されてしまうからです。自分で取材した生で見たもの、聴いたものを、自分のコトバで素直に伝えたいと考えていて、そういうスタイルをとっています。そうすることで、自分らしい観点で伝えることができているのではないかと。

私のおしゃべりのベースは「天然素材」のメンバーと一緒に過ごした時にでき上がった気がします。収録やLive、稽古のあと、食事や飲みに行くと、そこでも皆さん競うように面白い話をしてたんです。リハーサルの合間や移動の時も抜群に面白かった。あそこでエピソードトークの作り方を学ばせてもらったように思います。どんなに演出家や振付師に怒られても、疲れていても、集まったら楽しい雰囲気を作っていた。彼らのサービス精神は私にも大きな影響を与えてくれました。

もちろん私はお笑い芸人ではないので、笑いをマストにしていないですし、笑わせようとしてないのですが、話を聞いてくださる方に興味を持ってもらうようにはしています。どんな話をする時も、自分が、体感、体験した事をリアルにイメージしてもらえるように伝えることを心がけています。

たとえばただ「ハンバーグがおいしかった」というよりも、「市原悦子さんみたいなおばあちゃんが作っていたハンバーグがとてもおいしかった」と言うほうが、「いったいどんなハンバーグなんだ?」って、その後も興味を持ってもらえますよね。

そして話す時には安易なコトバを使わないようにしていますね。「でも」「だって」、は否定するコトバなのでなるべく使いません。「楽しすぎた」とか「面白すぎた」という「~すぎた」も意識的に使いません。何が楽しかったのか、面白かったのかをちゃんと伝えたいからです。

あとは、年齢に合ったコトバも大事だなと意識しています。40を過ぎてコトバを扱う人が「やっぱ」とか「やばい」というようなコトバを発するのって、少し残念な気分になるんです。それがSNSなどの文字ベースであっても。仕事柄いろんな方にお会いする機会があるんですが、トップの方たちって、言葉遣いが丁寧なんですよね。コトバをきちんと使うことで、人とのコミュニケーションは圧倒的にスムーズで効率的になります。

コトバは最強のテクノロジーです。コトバを粗雑に扱う人が多くても流されずに、大事に紡いでいきたいという思いを巡らせています。コトバは宝物にも武器にもなる。だからこそ、何のコトバを使うのかはしっかり選ぶようにしています。

 

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<フリーアナウンサーとはどんな仕事?>

 

話しにまつわるいろいろな仕事をしています。ラジオのレポーターやアシスタント、イベントやウエディングでのMC、ナレーション。そして片づけの講座。それらにまつわる打ち合わせや資料読み込み・リサーチに台本や講座のスライド作成といった事前準備があります。ラジオの場合は取材もあります。

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<一日の仕事スケジュールは?>

例えば、ラジオ収録/MCの日は…

5:30         起床 掃除 洗濯 夕食の準備
8:30-9:30    買い出し
9:30-11:00   デスクワーク
12:30-16:00  ラジオの収録
16:00-17:30  ウエディングの打ち合わせ
18:30-21:30  イベントの打ち合わせ
22:00         帰宅
23:00-1:00    次の日の仕事の準備
1:00                             就寝

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<仕事のやりがいや面白みはどんなことですか?> 

MCの仕事では、「今回の記者発表、君のおかげでうちの役者がいつもよりたくさん話せてよかった」と言われたり、その人の意外な一面を引き出せた時は心の中でガッツポーズします。自分自身を評価されるというより、私自身はあくまで媒介なので、伝えたかった人や物、情報といった商品がよりよく伝わることが嬉しいんです。

講師を養成する仕事では、講師の人が話すことを好きになってくれるのがやりがいです。

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<一番嬉しかった経験はどんなことですか?>

一昨年から中国でも中国人向けに、片づけにまつわる講座を担当しています。その一環として、片づけの講師養成をした時、ある受講者が言ってくれたんです。

「私は今まで講師をやるのが苦痛だった。写真を撮ってもらってもいつも険しい顔をしていて、生徒さんにも怖いと言われ、講師を辞めたいぐらいだった。でもあさが先生の講座で、そんなことも気にしなくてよくって、伝わるってことを意識する、あとは自分がやっていることを好きだってことが外に出せればいいんだ、と単純なメソッドが入り込んですごく楽になった。それにあさが先生がただ楽しそうにやっているのを見ていたら、あっこれがいいのだと腑に落ちた」と。

そのコトバを聞いた時、「私が伝えたいことが伝わったのだ~」と泣きたくなるほど嬉しかったです。さらにその方が、次にお会いした時「本当に今講座に登壇するのが楽しくて仕方がない」と言ってくださったことは、強く印象に残っています。

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<逆に今まででもっとも大変だった経験は?>

 

MCや生放送は、穴をあけることのできない仕事です。たとえ友達が亡くなっても、そこにすぐには駆け付けられず、悲しみに浸ることもできず、仕事では笑っていなくてはなりません。その感情のコントロールは、始めたころは大変でした。

そして、私にはフリーアナウンサーの肩書きがあるものの、局のアナウンサーあがりではないので、どこかで劣等感を持っていました。でも「たとえ局アナ出身でも仕事がないと嘆いている人がいる中で、私はありがたい事にたくさん仕事をいただいている。きれいに話すことではなく、私の声やテンポ、アドリブなどを求めてオファー下さっている。」と客観的に自分を捉えた事で、そこもクリアしていくことができました。

 

 

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<伝え方のプロの仕事の未来はどうなっていくと思いますか?>

 

ITが進んでいく中で、意外とコミュニケーション能力を問われている人が多いなと感じています。自由大学で「心に届ける 声学」という講義を開講していますが、そういった学びはこれからも需要がある気がしています。「どうやって伝わるように伝えるか」ということは結構ニーズがあると感じていますし、イーラーニングとかではなく、リアルな場での講座が増えていくのではとみています。

今一般の人たちもユーチューブやSNSなどで簡単に発信できるようになってきてはいますが、だからこそプロとアマチュアの違いは必ず見えてきて、プロとしてのスキルをしっかり持てることが重要ではないでしょうか。

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<他に向いていそうな仕事はありますか?>

取材をしていく中で、ありがたいことに様々な仕事をチャレンジさせていただきました。話す仕事に関しては幅広くやってきています。反抗期の娘からは「母は話すしか能がないくせに」と言われたこともありますが(笑)。几帳面なので、文房具屋さんで小さいモノを陳列するなど細かいことをする仕事も向いているはずです。

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キャリアカウンセラー舛廣純子の  シゴトのチカラ考察  .

 

軽快でテンポの良いトークと力みすぎない心地よいハスキーボイスでインタビューの時間もまるで「おしゃべり」のように話がポンポン展開していく。ものすごく頭の回転が速く、瞬時に相手の求めているものを察知しながら、笑いのあるエピソードをちりばめ、聴く人を飽きさせない。

あさがさんにインタビューした帰り道、そんな印象を私は持っていました。そしていざテープ起こしをして原稿を書くタイミングで、私の中であさがさんは「伝えるエキスパート」「話すプロの人」なのだなということが確信になりました。

今までインタビューを沢山の人にさせていただいてきましたが、テープ起こしの時ですら「くくくっ」「ぷっ」と笑いながら原稿を起こしたことは初めて。この記事には乗り切らない小話の連続で、まるでそのテープは一つの作品のように面白く感じられました。そして書き言葉に変換していくプロセスであさがさんの話す言葉が、いかに短文で、相手に聞きやすく、かつ具体例を交えた「わかりやすい話し方」であるかがよくわかりました。テープ起こしがとてもしやすいのです。また、オープンマインドにフレンドリーに話しだすそのコミュニケーションスタイルがあるからこそ、インタラクティブなコミュニケーションが可能なのだろうということも改めて実感しました。

何よりすごいのは、フレンドリーさとかわいらしいハスキーボイス、ちょこちょこ挟まれる笑いで、その話の技術がコーティングされていて、「話の技術がある人」ということが前面に出ないこと。「面白く楽しい話」に仕上がっていることなのでしょう。「熟練ってこういうことを言うのだろうな」改めてそんな風に実感しました。

もう一つ、あさがさんとお話してものすごく強く感じたのは「プロ意識」。準備の仕方、現場に臨む姿勢、視聴者や受講者といったお客様への目線感情制御力、ハードなスケジュールとタスク管理-どれをとってもプロであり、ストイックで自己管理能力の高い方だなと感じました。

芸能の世界に生きる人は、たとえ事務所に所属していても、誰もが自己責任を強く求められる環境の中で仕事をしています。長くその世界で生き抜いてきたあさがさんには、そういったプロとしての姿勢が染みついているように感じました。そうでなければ生き抜けない世界なのかもしれません。

反抗期の娘さんが言う「話すしか能がないくせに」というコトバ。それは、それだけあさがさんが「話す」「伝える」というフィールドでプロフェッショナルであり続けた、ある意味褒めコトバなのかもしれませんね。

 

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(次回もお楽しみに。不定期ですが頑張って更新します) =ーー

ご意見ご感想をお待ちしています 編集部まで

連載バックナンバー

第0話 連載開始に寄せて(2016.11.14)
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第3話 セラピストのチカラ – 狩野香織さんの場合(2016.12.26)
第4話 ソーシャルワーカーのチカラ – 金子充さんの場合(2017.1.9)
第5話 イメージアップコーディネ―ターのチカラ – 矢吹朋子さんの場合(2017.1.23)
第6話 石のインポーターのチカラ – 根岸利彰さんの場合(2017.2.13)
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19話 企業人事のチカラ– マチダミキさんの場合(2017.9.25)    
第20話 自然栽培料理家のチカラ – 溝口恵子さんの場合(2017.10.9)  
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第22話 育爪士(いくづめし)のチカラ / 嶋田美津惠さんの場合(2017.11.14)
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第24話 観光協会職員のチカラ / 渡辺美樹さんの場合(2017.12.25)
第25話 理学療法士のチカラ / 斉藤桃さんの場合(2018.1.22)
第26話 ライフプランナー(生命保険営業)のチカラ / 日野悟さんの場合(2018.2.26)
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第28話  シニア不動産コンサルタントのチカラ / 若杉アキラさんの場合(2018.4.23)
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第30話  オペラ歌手のチカラ / 鵜木絵里さんの場合(2018.7.23)
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第34話  脳科学マーケティングコンサルタントのチカラ / 永春啓太さんの場合(2018.12.24)
35話  学びの場のプロデューサーのチカラ / 高橋龍征さんの場合(2019.4.15)

 過去の舛廣純子さんの働きかたエッセイ 

TOOLS 13   自分を好きになるリフレーミング
TOOLS 19   後悔しない道の選び方(前編)
TOOLS 20  後悔しない道の選び方(後編)
 

舛廣さんってどんな人?

PEOPLE 04 舛廣純子(キャリアカウンセラー)
就職は子育ての最終章。就活生の親に読んで欲しい本を出版

 


舛廣純子

舛廣純子

ますひろ じゅんこ フリーランスキャリアカウンセラー。1972年、東京都出身。日本女子大学人間社会学部文化学科卒業後、化粧品商社に営業職として入社。会社の民事再生、自身の出産・育児を機に2 回の転職を経験。自らの転職経験からキャリア支援に関心を持つようになり、社会保険労務士、キャリアカウンセラーの資格を取得。2007 年、キャリアカウンセラー・講師として独立。大学生の就職支援・キャリア教育、社会人の転職支援・キャリア形成支援を中心に活動。支援学生の高い就職率とわかりやすいセミナーには定評がある。特技は長所探し。2013年12月に学研教育出版から『就活生に親が言ってはいけない言葉 言ってあげたい言葉』を出版。ブログ:http://ameblo.jp/shuukatsumamanoblog/