自由に生きるために
欲しい服がないなら、自分で作ろう
スカートがない
中年になると、巷で売っているスカート、若い人向けのデザインって、着られたとしても居心地が悪い。無理して若いカラに潜り込んだ中年の肉体がムズムズする。見た目だって違和感があって、なんだかキレイじゃないし。「もうワタシ、スカートなんてはかないわ」服飾デザイナーの田村志子さんに愚痴っていたら・・・美しい笑顔であっさり「ほしいものが見つからないなら、自分で作ればいいんですよ」事もなげに言うのである。それは、あなたなら出来るのでしょうけど・・・。
子供の頃からオートクチュール
お洋服のデザインや素材に、独特のこだわりがある田村さん、小さな頃から売っている服より、周りのオトナ(おばさまは有名メゾンのパタンナー!)が作ってくれる、趣味のよいステキな子供服ばかり着ていたんだって。今でも彼女、既製服が気に入ることはめったにないらしい。せいぜい「直せばなんとか着れるかな」レベルが見つかる程度。まれに心臓撃ち抜かれるほど気に入った服は、それこそ天井知らずのお値段だから・・・何よりもお洋服大好き、納得のいくものしか着たくないなら、作るしかない、ってことらしい。
今お召しのその個性的なかわいいワンピースも手作り?
「もちろん!」
でも、それってあなたみたいにスキルがある、特別な人だけのお話よねえ・・・。
「そんなことない。スカートって、きっと思っているより簡単よ。」
不器用で家庭科の通知表2でも? 運針さえままならないし、ミシンもないんだけど・・・。
にわかデザイナー、人生初のスカートに挑む
そんなわけで、美しい田村先生に促され、スカートを縫うことになりました。まずはデザイン、下手くそな絵を描いてほしいスカートのイメージを説明。綿か麻のしっかりした生地で、年齢を問わない形がいいの。フランスのおばあさんが着ているみたいな、ひざ下丈で、ふんわりギャザー、ウエストベルトが太めで・・・若くても年を取ってもキレイに着られるユニバーサルなスカートをずっとずっとずっと探していたの、ワタシ。
「そういうシンプルなギャザースカートなら、長方形を2つ縫い合わせればできちゃう。後は、手縫いの縫い方を3つマスターすれば、半日くらいで縫えるんじゃないかな」
え、まさか手縫いでスカート?
「はい、フル手縫いで。だってミシンはお持ちじゃないんですよね。洋服ってね、オートクチュールの高価なものほど、手縫いが多いものなの。繊細なシルクなんかの素材は、ミシンではきれいに縫えないことが多いから。高級服に施されたプロの手仕事を見ると、法外な値段でも、納得できるなって思う。」
ステッチひとつで、見る人が見れば、服の良さがわかるってことなのね。オートクチュールで使う縫い方を習えるとなると、なんだかテンション上がりますわ。
手仕事ワンダフル
まずは「返し縫い」。裁断した生地を筒状に縫い合わせる。縫い目がミシンみたいに一直線になる縫い方。一針縫っては戻り、また一針。ファスナーは「星止め」。高価なスカートのファスナーはこの縫い方で表にきれいにステッチが出るんだって。裾やベルトの合わせは「まつり縫い」。針目が外にでないように、丁寧にちょっとずつ縫う。
単調な作業だし、針目もガチャガチャだけど、一針ごとに平面の布がスカートの形に近づいていく・・・気づいたら30分、夢中で手仕事。あんなに退屈、大嫌いと思っていた針仕事が、楽しくてしょうがない。「ワタシ、縫い物大好きみたい」ごちゃごちゃ抵抗していたことが恥ずかしいくらいウキウキ、生まれ変わったみたいよ。
「きれいに仕上がることも大事だけど、うまくできなくても一針、一針、丁寧にじっくりと作ること。そうやって時間をかけて自分で縫った服にこそ、特別な価値が生まれるのだと思うのです。しかも、自分の好きなデザインで、サイズもぴったりなら着心地もよいし、簡単には捨てられなくなる。」心から服を愛する田村さんならではの哲学。集中してものを作る喜び、形になる興奮、スカートへの愛が、針を持ってみた今、よくわかります。
モノの価値を自分で決めるために
モノの価値って、誰かが値札をつけて決めるんだと思ってた。ほしいものを自分で作ることができれば、誰かの、えらい人の、社会の、価値観からも自由になれるのかもしれない。自分はこう、という価値観がもてれば、もっともっと好きなものに囲まれて、楽しくすごせる気がしてきた。もっと気楽にこういうのが好き、こういうのがほしい、って思っていいのだ。で、もし、どうやったら手に入るか、わからなければ、知っている人に聞けばいい。それがインディペンデントな幸福のカタチなのかも。初手縫いのスカート、不格好だけれど、デザインもユニバーサルでずっとはけそう。なによりこれをはいたワタシ、今までよりちょっとキレイじゃない?
スカートのつくり方 | |
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①生地1.5メートル、手縫い用糸、ファスナー、フックなど調達 | |
②道具は揃えてから始めましょう | |
③アイロンがけはとっても大事 | |
④裁断 今回のパターンはシンプルに長方形だけ!カンタン | |
⑤ファスナー部分をあけて、後ろ中心を縫う: 【縫い方1】返し縫い | |
⑥アイロンで縫ったところを割り、ピンキングばさみで端を処理する | |
⑦ギャザーを寄せる: スカート円周の1/4ずつぐし縫いで縫い、ベルトの長さにギャザーをよせてアイロンでつぶす | |
⑧ベルトを縫う: 返し縫い | |
⑨ベルトとスカート本体を縫う: 【縫い方2】まつり縫い | |
⑩ファスナーをつける: 【縫い方3】星止め | |
⑪裾をまつる:まつり縫い | |
⑫ウエストにフックをつける ⑬アイロンをかけて完成! |
プロフィール | |
田村志子(たむらゆきこ) |