【ハナサクトキ】 霜月 バラ(フェア ビアンカ)

Vol.2 バラ(フェア ビアンカ) 11月の花  バラ(フェア ビアンカ)

 

うっとり甘いミルラの香り

バラは年に2回、春と秋に見頃を迎えます。秋はブライダルシーズンということもあって、この時期市場にはブーケや装花に欠かせないお花として、たくさんのバラがいっせいに出回ります。バラと言えば、誰もが知っていてどこのお花屋さんにも置いてある代表的なお花。その色も花形も数多く見かけますが、中でもわたしが一番好きなバラが、このフェアビアンカという白バラです。

大好きな色合いのバラはたくさんたくさんあるのに、どうして白バラなんだろう…。なんでこんなにいつもこの花に惹かれるんだろう…。それは、他と比べることの出来ないほどうっとり甘いミルラの香りに、強烈に惹き寄せられるからでした。ミルラとは没薬の事で、聖書にも登場するほど古くから使われていた樹脂を原料とする香料です。清々しさと温かさを持ち合わせた、ムスクのように甘く、ドキドキ&クラクラする良い香りなのです。(香りをお届け出来ないのがとても残念です!) さらに、固い蕾の時にはサーモンピンクだった花びらは、開花すると共に幾重にも重なって、ほんのり淡いピンク色を含んだアイボリーに変わるのです。


このバラの花びらは柔らかく、傷も付きやすく開きやすいので、優しく丁寧に扱わないといけません。でもこのバラには特有の棘がほとんどありません。自分の身を守るために相手を傷つける、痛い棘を持っていないのです。花の仕事を始めたばかりの修行時代、他のバラの棘取りに苦戦しながら初めてこのバラに出会いました。その時、「思わず近付きたくなるほどの魅力を持っているのに、まったく無防備で無垢な感じ」がとてもして、作業の大変さも吹き飛んでしまうほど一目惚れをしてしまいました。


香りは人の記憶と密接に結びついていると言われているので、記念日やとびきりのお祝いの日には、香りのあるお花をプレゼントするのも素敵な演出だなぁと思います。実際にわたしも、ウエディングシーンでは花嫁が持つブーケに香りのある花をよく使っています。当日の緊張を和らげるのはもちろん、香りと共に大切な瞬間を焼き付けてもらえたらとても嬉しいな・・・と思いながら花選びをしています。

これからも、花を通じて様々なシーンのお手伝いを続けて行けたら・・・。喜んでいただける素敵なサプライズを、お花で仕掛けて行けたら・・・。それが花の仕事をするわたしの原動力にもなっています。

 

 


バラとの付き合い方   ~ Malmö’s advice  ~
1. 茎は、水を吸い上げる面積を増やすため斜めに切る
2. 活ける時に水に浸かりそうな余分な葉は取る
3. 少しでも長く楽しむために、直接風が当たらないなるべく涼しい場所に飾る

 

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菊池裕子

菊池裕子

Malmö (マルメ)主宰 /「いつも」の花と「特別」な花をあつかう花屋。「いつも」の花は、日々の暮らしがちょっぴり楽しくなるような。「特別」な花は、とびきりの日がもっと輝くような。それぞれにこだわった花を、ナチュラルなテイストで提案している。駒沢にあるCOPAINDA gallery(コパンダギャラリー)内の小さな花屋。