クリスマスの頃に咲く、バラのような美しい花
この花に原色はほとんどなく、わたしの好きなニュアンス色が多い事もあって、出回る時期は花束で良く使っています。総称をへラボレスと言い、実際この時期に開花するのはへラボレス・ニゲルという白い一重咲きの品種のみなのですが、日本ではへラボレス属全体を指してクリスマスローズと呼び、花屋でもこの名前で流通しています。
花びらに見える5枚片は実は萼片(花びらの付け根にある小さな葉)です。花びらは…と言うと、退化して小さな蜜腺として中央に残っています。そのため、花期がとても長いのが特徴で、最近では「(花びらが)散らない花」という事もあり、合格祈願として贈られるお花でもあるそうです。
うつむき加減に咲く一見華奢な花に見えますが、鉢植えや庭咲きのものは意外と寒さにも強く、少しくらい放っておいても簡単に枯れたりしません。しかも毎年必ず花を咲かせてくれます。茎は真っ直ぐで、葉も一年中緑が濃く、花自体は儚そうに見えても実は芯の強い、凛とした気品を感じさせるお花なのです。
花屋をしていると、いつも向き合う花の姿を見て、背筋がしゃんとする事が良くあります。早朝仕入れに行く冬の市場は、日が登りきっていないので暗い、寒い、しかも眠い…の三重苦です。それでも数分するとシャキッと元気になっているのは、植物たちの生命(エネルギー)を貰っているからなのだと思います。ただひたすらにそこで咲くのを待っている。そのシンプルな姿に、時にハッとさせられるのです。
一年の中でも特に忙しく、毎日追われるように過ぎて行く師走ですが、この一年への感謝をしながら過ごしつつ、また来年も元気に楽しく花の仕事が出来ますように…という願いも込めながら、いつも年末を迎えています。同じ花がふたつとしてないように、新しい年をまた新しい気持ちで、花たちと共に。
クリスマスローズとの付き合い方
~ Malmö’s advice ~
1. 茎は水を吸う面積が多くなるように斜めに切る。
2. 花瓶の水は茎の半分以上が浸かるくらい入れる。
3. 弱ってきたら、茎を切った後ぬるま湯(15㎝くらい)に2時間ほど漬けておくと元気になる。